一葉恋慕・大森編

多谷昇太

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第二章 まとの蛍

最後にまた小説返歌

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確かにそうだ。世が人がというよりは自分の無明こそが自分を更生させず、闇に引き止めているのかも知れない。一葉に負けぬいまのこの不遇を「どうしようか」ではなく、ひたすら自分は「どうあるべきか」を探り、そして「大事なものは何であったか」を求め続けることが肝要なのだろう。しかし云うは易しである。今晩これからも、また私のこれからの人生も、それぞれ闇はなお深くなるのだろう。一葉同様光はまだいっかな見えない…。
いつの日か彼女とまたこうして人生や文学を語り合えるだろうか。時空の隙間に入る直前一葉が私の肩に頭をあずけてくれた。恋しい。いとおしい。この人こそが。まさに一葉恋慕である。その一葉がいま、消えた…。

―小説返歌―
世が人がとありかかりとひたみちに云ふが空しさ己心の魔ななり

花と咲きお蝶呼びたし我妹子をうもれ木ままでは果さざるらん

            【わが師匠、樋口一葉】
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