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海を渡る風

アルプスの少女ハイジ…ならぬビッショフ夫人

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名はハイジ「ナイストゥミーチュー」と笑みつつ我らを迎へぬフラウ・ビッショッフ
※フラウ(Frau.)とは「~夫人」の意味。

賢しそうな碧眼で『さてこの2人(すなわち私と松山氏)はどちらが兄貴分で、それぞれどんな為人(ひととなり)なのかな』などと一瞬でも探るようにしてから背後に控えるキッチンの従業員2人を引き合わせてくれた。「こっちがフレディでこっちがドリスだ」それぞれの名を云い私たちに握手をさせる。ドリスはにこやかにフレディは『なに?ヤポーニッシュ(日本人)?ふん、どんな野郎たちなんだ?』とでも云いたげな表情をして握手をしてくれる。それを見届けると「よし。じゃ、アイネモーメント(ちょっと待ってくれ)。いま女房を呼んで君たちを案内させるから」と云ったあとでビッショフ氏は自分たちのプライベートフロアである3Fへと階段を上がって行った。フレディとドリスはキッチンの仕事場へと戻る。階上のドアを開けざまそこで「トゥ(おい)、ハイジ…!」と彼の細君を呼んだようだ。いくばくもなくその細君を連れて戻って来、私たちにいま一度それぞれの名を彼女に告げさせて紹介してから「俺は仕事に戻るよ」とばかりフライパンを揺するゼスチャアをして見せ、私たちを彼女に託したのだった。そのあとビッショフ夫人ことハイジ奥様がすべてを仕切ってくれた。夫人の年は30代半ばぐらいだったろうか仲々魅惑的な人だったが私や松山には(に限らずフレディやドリス、他の給仕人たちすべてに対して)飽くまでも主人と使用人の立場から物を云う人だった。ただ何か物を云いつける時は必ず「YOU CAN…(…してください)」を付ける人で人柄が偲ばれた。私と松山にはすべて英語で接してくれたのである。私たち2人を引き連れて1Fに降りプライベイトと記されたドアを開ける。そこには中廊下が続いていて左右にいくつかの小部屋があり左奥の部屋のドアを開けて「ここがあなたたちの部屋よ」と案内してくれた。六畳間よりやや広いくらいの部屋で左右にベッドが2つある。小さなテーブルと椅子も置かれて居、ひとつしかない窓の外はこのレストランの裏側だった。

【ご存知アルプスの少女ハイジ。同名のビッショフ夫人は日本でこのアニメが流行っていることを知っていた。pinterestより拝借】


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