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風吹かず…止みて終わるか?

女赤ひげ、矢島祥子先生

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【和歌集蛇足⑧】「ガンはやさしい病気」と何かのエッセーで読んだ覚えがあります。なぜかと云うにガン(死)の宣告を受けてからまだ幾許かの時間が与えられるからです。しかしとは云え猶予の思いは雲散霧消し、今までの自分の人生と向き合わざるを得なくなる。誰もです。その自覚と覚悟をガンは与えてくれるのでそう云われるのでしょう。私もそうでした。しかし幸運にも東海大付属病院で手術・治療を受けて俗世に復帰することができました。カミユの「異邦人」が死刑を免れて放免になったようなものです。その折りの嬉しさと気概をこの章の「退院の…」に認めて生き直しを計ったのですが…。しかるに世の不条理は相も変わらず私を待ち受けて居、カンダタこと私の足を捉えて離しません。幾そ度か数えることも出来ないうっ屈に沈み行くしかなかったのですが、しかし世の不条理と云えば下記に紹介する矢島祥子先生に起きた厄事ほど不条理なものはありませんでした。先生が引かなかったように、私も引くことはできない。七転び…どころか七千転び八千起きであっても老兵行脚の転戦をし続けます。〔※次章ではしかし不条理へのうっ屈を現代短歌をまじえて一度詠みます。はた、理解を被る為か、自省を誘う為か、定かではありませんが…〕

蟻のまち愛の医師(くすし)のゐたまひき魔の殺めしが光いや増せり

クオバディスドミニ君慕はしや暁(あかつき)に復活しませさがため励む
※上2首、大阪釜ヶ崎の人々に身を奉げきった医師、矢島祥子先生を詠みました。先達と慕えばこそ。

【釜ヶ崎市愛隣地区で活動する矢島祥子先生。自らの退院を自分で祝って、また退院以後の生活への励ましとして、お写真ともに拙歌を掲載させていただきました】
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