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不思議な邂逅、義男と惑香
会長、高山花枝
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「嫌だ、そんなに入れ込まないでくださいよ。それほど大した会じゃないんですから。ふふふ」と失笑するのに「あ、いや、これは失礼。つい…。何せ新しい女性などというインパクトのある言葉を聞くと、思わず感興をもよされまして、ははは。それでそのう…そのある著名な方というのは?これはいったいどなたのことなんです?」明かすべきか否か惑香は一瞬沈思するように「はい、それは…ご存知でしょうか?高山花枝という有名なファッションデザイナーを」と会長の名を告げる。
「高山花枝?はいはい、もちろん存じ上げてますとも。表参道にあるあのゴージャスなビル。日本のオートクチュールの草分け的な方でしたよね」
「はい、そうです」
「そのお知り合いなんですか?」
「い、いいえ、知り合いだなんて…そんな大それた者じゃないんです、私。ただ、その…」
「ただ、その…?」
まるでダンスにやさしくエスコートするような塩梅で惑香の開陳を促す義男の口調と表情には惑香への隠せぬ愛情があふれている。しかしそれをきちっと抑えてみせる克己心もが同時にそこにはあって、それが惑香の目には好もしい限りだ。ぐいぐいと引かれて行くのを止めようがない。義男にはなんでも話していいような安堵感に駆られままに惑香の口は開いた。
「はい。そのう…私、会長に、あ、いや、だからその高山花枝に私…心酔しているんです。この方が作られたゼフィルスの会というのは…」とばかり会の所以を惑香は語る。このまま長広舌のセリフを惑香に語らせてもいいが、それではやはり読者の方々に些か嫌味な気もするので、ここはひとつ語り手たる私が代弁要約することと致しましょう。
「高山花枝?はいはい、もちろん存じ上げてますとも。表参道にあるあのゴージャスなビル。日本のオートクチュールの草分け的な方でしたよね」
「はい、そうです」
「そのお知り合いなんですか?」
「い、いいえ、知り合いだなんて…そんな大それた者じゃないんです、私。ただ、その…」
「ただ、その…?」
まるでダンスにやさしくエスコートするような塩梅で惑香の開陳を促す義男の口調と表情には惑香への隠せぬ愛情があふれている。しかしそれをきちっと抑えてみせる克己心もが同時にそこにはあって、それが惑香の目には好もしい限りだ。ぐいぐいと引かれて行くのを止めようがない。義男にはなんでも話していいような安堵感に駆られままに惑香の口は開いた。
「はい。そのう…私、会長に、あ、いや、だからその高山花枝に私…心酔しているんです。この方が作られたゼフィルスの会というのは…」とばかり会の所以を惑香は語る。このまま長広舌のセリフを惑香に語らせてもいいが、それではやはり読者の方々に些か嫌味な気もするので、ここはひとつ語り手たる私が代弁要約することと致しましょう。
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