喜劇・魔切の渡し

多谷昇太

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第二場 和子の自宅

家の中に上がり込む悪魔と天使

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黒子、カラスを操りながら下手に下がる。

天使「面目ねえだ。つい興奮しちまって……」
悪魔「けっ。女に興奮する天使がいるけえ、まったく……それにしてもおめえいつまで俺につき纏う気だ?あ?和子の尻、充分に拝んだだろ?もう帰(けえ)れよ。おりゃあ和子ん家(ち)でひとっ風呂浴びて行くんだからよ」
天使「それだっちゃ。おらもひとっ風呂浸かりてえだよ。いっしょに入れてけろ」
悪魔「抜かせよ。誰がてめえなんかと……俺は和子と入りてえんだ」
天使「なぬ?!和子と?……馬鹿云うんでねえ。そったらばいい思いさせてたまっかよ。そんなことはハア、絶対に許されねえ。男風呂と女風呂を弁えるだ」
悪魔「うるせえ。こっちとら超次元生物の悪魔様よ。男湯も女湯もオカマ湯もあるけえ。誰とでも自由自在だ」
天使「いんにゃ、そうでねえ。おめえが憑ける相手でなけりゃ一緒に風呂さ入ることは叶わねえだ。人間の想念に憑けてのオラたちだってこと忘れるな。それともおめえ、和子に憑依出来っかよ?あ?」
悪魔「……うーん、ちくしょう。そりゃダメだ」
天?使「だっぺ?んじゃハア、時によって天使の心も悪魔の心も持つ和子さの父、良夫さんと入るべえよ。な?」
悪魔「うーん、すっかたなかっぺなあ……ばかやろ、移っちまったじゃねえか。仕方ねえ、いいよ、それで。じゃ家ん中に入ろ。噂をすれば影だ。良夫の野郎、すぐそこの角まで来てらあ。おい、こっち来い」

悪魔と天使、和子宅の舞台側正面にまわる。

天使「なんでこっちから入れるだね?玄関からお邪魔すればいいだに……」
悪魔「ばかやろ、舞台のセットだからだよ。ガタガタ云わずに上がれ。おう、為子、邪魔するぜ」
天使「為子さん、お邪魔……いや、お邪天しますだ」
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