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やるせなき格差と難民たち

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我が身一つを養うに窮々として来た五十過ぎの、頭の禿げ上がったしがない独身男。斯くも老朽化したビルを後生大事に抱え込み、固く心を鎖して生きて来た私は成程悪魔の云うがごときゴミそのものだ。どうかすれば冷たい街を形成する立派な一員でさえあったかも知れない。清しいA子の魂に触れて、文字通り肌感覚で今までの生き方を反省せざるを得なかったのである。さて思い切って飛び出した無人と思われた街だったがよく見れば通りの其処彼処、ビルの隙間や角などに、身を寄せ合いながら隠れ潜んでいる人々の姿があった。彼らはいったい何者だったろうか?闊歩する魔王の巨躯に怯え、それでいてどのビルにも入れてもらえないでいる人たち。シリアやイラク始め世界の難民たち、あるいは経済格差難民とも呼ぶべき世界のホームレスたちとも見えたことだった。またそこには心の拠り所を失って家出したB子のような少女たちの姿もあったろうか。その彼らの姿をA子の身体から発する後光が照らす。私には見せ、魔王からは逆にその視界を奪う、金色に輝く、何とも云われぬほどやわらかく、慈愛に充ちた天上の光が。しかしそのA子ら二人に向かって決して此処に隠れろとは云わない、云えない彼ら難民たちでもあった。災禍が自らに及ぶからで、その辺は魔王の出来の素地と云い、常闇の東京メガロポリス出現の素地と云い、いずれも我々自身の原罪に絡む、私ごときには明晰に出来ない、判らない、しかし何ともやるせない彼ら難民たちと、もとより我々自身の姿ではあった。

【戦乱から、格差から逃れ、ドロップアウトする人たち。作品前by Gerd Altmann、後by Dimitris Vetsikas】
 

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