63 / 93
愚弟怨讐編 下
異形どもの実力
しおりを挟む
死、という究極の絶望から一転。唐突に救いの手が差し伸べられた。
今まで信じた事なんてこれっぽっちもありゃあしなかったけど、もしこの世に神なんて奴がいるとするなら、なんで俺みたいなグズに救いの手をさしのべるのだろう。
復讐しか考えられない割に何も成せないような奴より、もっとさしのべてやるべき人は溢れるほどいるだろうに。
神なんてものの存在を前提にしてる時点で、もう自分がどうかしてるとしか思えないが、言える機会は今みたいな九死に一生を得たときぐらいだろうから、あえて言ってやる。
感謝はする。でもぶっちゃけ、クソ卑怯だわお前。嫌いだ。いるなら一回ツラァ貸せ、テメェの左頬に渾身の右ストレートブチこんでやっからよ。雲の上かどっかしらねぇが、偉そうに踏ん反り返ってんじゃねぇぞダボが。後お前姿不定すぎんだよ実体がねえのかジジイなのかはっきりしやがれややこしいんだよクソが。
自分でも何言ってんの馬鹿かとツッコミたくなるようなワケ分からんことを心中で呟く俺だったが、とりあえず言いたい事を言ったらスッキリしたので、一息つく。
そして、目の前に突然現れた囚人たちに、ふと目をやった。
コイツらと共同。正直正体もよくわからん奴らと息なんざ合うわけないと思ったが、どこまでやれるか試す価値はある。
背丈は俺や御玲なんかよりもずっと小さい。ホントに意志をもったぬいぐるみだ。そんなメルヘンチックの塊みたいな連中が、ヴァズとかいう殺人ロボとやりあえるのか。
二人だけじゃ、どう足掻いても敵わなかった相手だ。むしろあくのだいまおうとかいう、容姿だけじゃなく名前からしてふざけたラスボスみたいな奴が戦った方がいいんじゃないかって思えてくるが、戦うのはあくまであのぬいぐるみどもらしい。
殺人ロボ相手に、メルヘンの塊がどこまでやれるか。
「ではミキティウス。貴方が要です、頼みましたよ」
「要かぁ……俺そういうガラじゃないけど、まあいっか。この姿で喧嘩すんの、初めてだし。分かりましたよー」
「まぁたアイツが主役かよ」
「しゃあねぇじゃん。こん中で雷属性系使えんの、アイツとパオングさんだけだし」
悪態をつく小熊を諭すように、黄緑色の蛙がまあまあ、と小熊の肩に手を置く。俺はなるほどな、と心中で呟いた。
機械のもう一つの弱点。それは電気だ。
機械にとって、電気は動力源だが、当然、過度な量の電気を流せば中身が壊れる。何事も許容できる量が最適ってワケだ。
あのミキティウスって奴が雷の使い手らしいが、さて。どう動く。
「んじゃあ行きますかーっと!!」
小学生ぐらいの背丈をした、ロン毛の少年が、消えた。
思わず、目を見開いてしまった。速い、なんてものじゃない。一瞬空間転移の魔法を使ったのか、と思ってしまった。
ミキティウスの空色の髪の毛に稲妻が走ったと思いきや、姿が雷撃となり、ものすごい速さでヴァズに近づいたのだ。
姿形が稲妻と化したと思いきや、数体の残像のような空色のモヤが、ヴァズの目の前に現れる。だがそれも一瞬、そのモヤは瞬く間にヴァズの身体を素通りしていく。
そして空色のモヤがヴァズの背後で全て合わさり、再びロン毛の少年を描いたとき、がしゃん、という金属音した。俺たちは音源に目をやる。するとそこには―――。
殺人アンドロイド、カオティック・ヴァズが膝をついていた。
槍に貫かれようが、凍らせようが、業火に焼かれようが、それら全てをもろともしなかった鋼の塊が、たった数体の空色のモヤが身体を素通りしただけで膝をつき、蹲っている。
信じられない。一体、何が起こった。何をどうやったら、そんな芸当ができる。
思索の渦に飛び込もうとするが、ロン毛の少年ミキティウスはヴァズだけじゃなく、俺たちの思索すらも見逃さない。
また空色のモヤが走った。モヤとともに一瞬稲妻が走ったと思いきや、目にも止まらぬ速度で、蹲るヴァズの背に向き直る。
そして、躊躇なく右、左、右、左、とリズミカルにパンチを繰り出した。
パンチ一撃ごとに放たれる並々ならない雷撃。ヴァズの鋼鉄の体が空色の鞭で打たれ、それらが遠く離れた俺たちの肌までも掠める。
割と距離が離れてるってのに、まるで肌を連続的に針で刺されまくってるように痛い。パンチの威力も尋常じゃなく、衝撃が俺たちの骨や肉にも伝わってきて、一撃打つごとに轟音と衝撃波が砂埃として空を舞い、地面に見事な蜘蛛の巣を描いている。
こりゃあ少なくともヴァズと同等、下手すりゃそれ以上。姿はホントにロン毛の小学生なのに、戦闘能力が尋常じゃねえ。
「思考破棄。反射対応モード」
弱点や隙を突かれボコボコにされても尚、ヴァズから闘志が消えることはない。
ミキティウスに向けられるミニガンの銃口。もはや目と鼻の先、物理的に考えて避けられる距離じゃない。
銃口が回転し始める。あのままだとミキティウスは蜂の巣に―――。
「お前、まさかこの俺をそんなもんで蜂の巣にするつもりかい?」
ミキティウスは懐から布切れを出した。俺は思わず、奴が出した装備、というかアイテムに目を疑う。
己が蜂の巣にされる。
こんな極めてシリアスな状況で、凄まじい速度で回避するか、もしくは甘んじて蜂の巣にされるか以外ではどうしようもないという二者択一の状況で、奴は何を思い、何を考えたのだろう。いや、もしかしたら何も考えてないただの馬鹿野郎なのかもしれない。
奴は突然、女物のパンツを頭から被ったのだ。
何をしている。何を考えている。なんで風穴だらけにされるという状況でパンツを被るなどという酔狂な真似ができるのか。
分からない。分かるワケがない。頭がおかしい。そんな安直な言葉しか出てこないくらいに、奴が見せた行動は、全くの意味不明だった。
「後は任せたぞ、ナージ!」
「あぁん? オメェ、後で食糞な」
「なんで!?」
ミニガンが炸裂した。
猛回転する銃口から際限なく放たれる弾丸のシャワー。それらを避けるなど人間では到底できる所業じゃない。況してやゼロ距離、なおかつパンツを被るという明らかに無駄な自殺行為までしておいて、無事ですむはずがない。少なくとも俺と御玲は、そう確信した。
だがミキティウスという名の少年は、予想を容易く覆した。
俺たちの眼は、既にミキティウスを写してはいなかった。いや、悔しいが写せなかったというべきだろう。
速い、なんてものじゃない。まるでテレポーテーションを短時間に連続で繰り返しているかのような像を捉えるのが、持ち前の動体視力の限界だった。
物理的にありえない動きをしているのは明白。``顕現``か。否、魔法陣の姿はない。つまり相手は魔法など一切使っていない。
単純な肉体性能。ミニガンから放たれる霊力弾の弾速よりも速く見切り、速く動いて避けている。ただ、それだけなのだ。
人知を超えた回避を連続で行っていたミキティウスだったが、再び姿が掻き消える。
空色のモヤのようなものが、また空中を走った。ミニガンを回転させるヴァズの目の前に、何かが現れて―――。
がごん、という鈍い音が鳴り響いた。鋼鉄の塊たるヴァズが、独りでに吹っ飛んでいく姿とともに。
「本当なら俺とアンタは互角だったかもしれないが、アンタは生憎俺の戦闘スタイルを知らない。つまり、初見殺しってヤツだ。悪く思わないでくれよ」
どうやってヴァズの間合いに詰め寄ったのか。気がつけばヴァズが立っていた位置には、ずっと弾丸シャワーを尋常じゃない速度で避けていたはずのミキティウスがいた。
そういえば、カエルが言っていた。雷属性系を使えるのは、ミキティウスとパオングだけだと。
機械は電気が供給源、しかし一度に大量に流せばいろんな部品がブッ壊れる。
雷にすらなれる身体。そして残像すら残さない回避性能。
言うまでもない、初見殺し。あらかじめ戦闘スタイルや癖、固有の能力を熟知してない限り、対応できるはずもない。
初見殺しな上に、機械の弱点を的確に突いている。この戦い、最初からヴァズには分が悪い采配だったワケだ。
おそらくこの戦略を考えたのは、俺たちの背後でミキティウスの戦いを俯瞰する、怪しげな紳士だろう。
だが一つだけ、どう考えても分からないことがある。いや、考える必要もないし、多分意味なんて絶対ないのだろうが、あえて問いたい。
なんで、パンツ被ったのだろうか。
「じゃあいくか」
ミキティウスによる雷を含んだ物理攻撃のラッシュにより、大幅に認識能力が低下したヴァズに追い打ちをかけるが如く、一匹の熊のぬいぐるみが、空を飛んだ。
空に広がる一対の翼。ミキティウスには遠く及ばないが、飛行速度は速い。砂埃が舞い、木々が強く揺らめくほどの衝撃波が放たれる。
「んじゃまずは……妙技``排便空襲``からいっとくか」
ナージは飛びながら態勢を変えた。翼の形態そのままに、彼はこれまた何を考えたのか、ヴァズ付近の上空でうんこ座りをし始めた。
それはまさしく、和式便所で用を足すが如き姿勢。
まさかここで。いや、今はそんな場面じゃない。違う。空気的に、雰囲気的に違う。今やるべきはソレじゃない。本当にするワケが。いや、でもあの姿勢。
「おら鉄クズ。オイル代わりだ、俺の糞食らいな」
まごう事なき``アレ``が、天空から放たれた。
空気抵抗を受けつつも、大陸の重力に引っ張られ自由落下する``アレ``。
よく見ると一個ではなかった。機体の底面に張り付いた爆弾を都市に浴びせるが如く、焦げ茶色をした``アレ``が、数えきれないほど沢山降り注がれる。
それらはもはや、汚物の空襲。本来ならば下水道へと消えるべき物体が、空から焼夷弾の如く大量に降ってくるという煉獄。
ミキティウスの華麗かつ圧倒的な戦況から一変。戦場は一気に地獄絵図へと姿を変えた。
反射的に、本能的に、思わずバックステップで距離を離す。
頭上から降ってくる汚物の射程圏外へ、とにかく距離を離す。
理性が働かなければ、危うくそのまま逃げ出すところだった。でもありえるか。相手は弟が兄を殺すために派遣した殺人ロボットとはいえ、一応今は戦いだ。
でもあの熊のぬいぐるみは、あろうことか戦場で脱糞したのだ。一般に``ウンコ``と呼ばれる、汚物の中の汚物を撒き散らかしたのだ。
汚いなんてものじゃない。そもそも、一体何を考えているのか。分からない。ミニガンを突きつけられて平然と女物のパンツを被るミキティウスも分からないが、ナージはもっと分からない。
「おいテメェ!!」
思わず怒鳴る。あまりにもワケの分からない行動をとるぬいぐるみに、憤慨と疑問の念を込めながら。
「舐めてんのか!! マジで……何してる!?」
「あぁ? 脱糞ですけど? 空から糞撒き散らしてるんですけど?」
「認めた!? いや……お前、おかしいだろ!? なんでこの状況で用足してんだ!! ふざけてんのか!?」
「ふざけてねぇよ、真面目に脱糞してんだよ」
「そこ真面目じゃなくていいから!! 真面目にするところ違うから!!」
「馬鹿かオメェどんな状況でも盛大に脱糞できる、それが真の男ってもんだろうが」
「いや意味分かんねぇよ!! ただの変質者だろそれ!!」
「変質者ならミキティウスだろ。見てみろよアイツ、頭にパンツ被ってんぜ」
「公衆の面前で糞撒き散らかしてるテメェよりマシだわ!! やめろ、今すぐやめろ!!」
「ごめん無理。だって俺の攻撃手段、ほとんど糞しかないし。というか糞以外邪道だろ。剣とか魔法なんてもんなんざ、例えるなら路上にほっとかれて干からびた犬の糞並みに糞だぜ?」
「いや明らかに糞撒き散らかす方が邪道だよね!? お前、実は攻撃手段の無さを棚上げして自分に無いものを邪にしたいだけだろ!!」
痛烈な叫びもむなしく、彼の表情は変わらない。なんの躊躇いもなく次の一手を打つ。
「ああそうだよ。だって俺、糞するしか能がねぇもん」
翼をはためかせ、ナージはうんこ座りから、お父さん座りへと体勢を変えた。その瞬間、ナージの身体はみるみるうちに薄い茶色から焦げ茶色へと変化する。
それはまるで大腸にとどまること数日、水分を吸われ続け、もはやカッチコチになってしまった糞の如く。
『澄男とか言ったっけ。オメェは力押し以外に能がねぇんだろ? だったらその糞で、弟の糞なんざ塗り潰しちまえ。情報? 知るか糞食らえ、ってな』
霊子通信でナージの声が直接脳味噌に反芻する。
久三男は戦いに情報が必要と言った。もっとまともな、先を見据えた戦いをするべきだと、一人前を気取って吐き捨てた。
そしてカオティック・ヴァズというカラクリで、それを証明してみせた。
なら自分はどうか。それで納得しているか。
確かに久三男の実力は身を以て知った。戦死寸前にまで追い込まれた。でも久三男の理屈に納得しているかどうかと言われれば、していない。
裏鏡のときと答えは同じ。誰がなんと言おうと、自分が決めたやり方を突き通す。
今更利口になるつもりもないし、人に褒められるような人間になるつもりもない。身勝手に、自己中に、自分がやりたいと思ったことをやる。たとえ悪党と呼ばれようとも。
そう。``俺``って奴はこうじゃなきゃいけねえ。それ以外の生き方なんざ、どうあがいたってできるワケねぇんだ。
危うく、見失なっちまうところだったぜ―――。
俺は乾いた笑いをか細く漏らす。そして両手の拳を強く、強く握り締めた。
「やべぇ。澄男さん、御玲さん、パオングさんのところまで離れてくだせえ!!」
カエルが突然、パオングの方へ手招きしながら大声で叫ぶ。シャルも速く来いよー死ぬぞー、と裸エプロンをはためかせながら手招きする。
まず何をやらかすつもりなのかと聞きたかったが、前衛のカエルとシャルがなりふり構わず後ろに下がり始めたため、渋々俺たちもパオングの所まで下がる。
彼らが自分の所まで集まったのを確認すると、戦場にいる、全員を包囲するほどの広く茶色い魔法陣が展開した。
「``部分無効:地属性系``」
パオングが呪文を唱えた、次の瞬間だった。
鳴り響く轟音。思わず耳を塞いでしまうほどの大音響とともに、大地には広大な蜘蛛の巣状のヒビが走った。
木々が次々と倒れていき、大地の神が咆哮する。不幸にも、裏手は山だった。
木々が倒れたことで地面に張り巡らされていた根が無くなったのだ。土は行く手を失い、そのまま土砂となって崩れ落ちる。
土砂崩れ。地震や暴風雨によって引き起こされるはずの自然災害が、戦場と化した水守家領のほとんどを呑みこんでいった。焦げ茶色の菩薩と化したナージによって引き起こされた、大地震によって。
「待ってください!? このままでは私たちまで……」
勢い留まらぬ土砂崩れに顔を引きつらせる御玲だったが、唐突にパーオパオパオパオと長い鼻を天高く上げて笑いだしたパオングが、慰めるようにして奴の肩に手を置いた。
「メイドよ、心配するでない。土砂崩れは、年がら年中発情期に苛まれておる、そこの中年男が片づけてくれよう」
「腐☆腐!! ついにボクの出番ってワケだね!!」
「あれ待って。オレの出番なくね? オレ、総隊長なんだけど。一応、この軍団の隊長なんだけど!!」
カエルの叫びは何者の鼓膜も揺らさなかった。
「いでよ、ボクのち◯こ!!」
裸エプロンの中年男が唐突に卑猥なワードを口ずさむ。すると、シャルの股間から煌々と光り輝く何かが、ゆっくりと引き抜かれた。
現れたるは、純白に輝く一本の棒。煌びやかに光り輝くそれは、シャルの体躯に似合わない大槍だった。
柄の部分は黒いが、棒の部分は銀色という異色を放つ槍。全てを押し流さんと迫る土砂崩れを前に、シャルは大槍を片手に持ち、仁王立つ。
彼の身体より生まれ、彼のみが持つことを許された神槍は、彼の手の中にあるのが嬉しいのか一層、その輝きを増した。
体躯に合わぬ槍を構え、切っ先を土砂へ向ける。
二人はシャルのやろうとしていることが分からなかった。いくら槍とはいえ、周囲の大木すらも一瞬で生き埋めにしてしまうほどの土石流を止められるわけがない。
薙ぎ払える量ではないし、投げたところで意味もない。況してや、刺し貫きにいくなど自殺行為も甚だしい。
なら、彼は何をしようというのか。困惑する俺たちとは裏腹に、あくのだいまおうや、ぬいぐるみ達の顔に陰りは見受けられない。
「あぁ~!! くる、くるくるくるぅ~!! この……この体の奥底から湧き上がるリビドー……!! んんんんんぎもぢいいいいいいいい!!」
突如、裸エプロンの中年男は呻いた。
槍を構えながらも、小さい身体をよじらせ、顔を赤らめ、過呼吸気味に吠える。
「さあ土石流!! このボクをぐちゃぐちゃにして、めちゃくちゃにして、生き埋め窒息プレイを堪能させてみせろ!! いやむしろしたいぜひさせてほしいんほおおおおおああああああああ!!」
俺たちは身構えた、シャルの豹変ぶりに。酒を飲みすぎて酩酊し、あらゆる理性のタガが外れたオヤジの如く、体の奥底から湧き上がっている何かに悶える姿に。
もはやそれは、アレである。言葉にする必要もないし、今の状況で吐く言葉ではないの確かだ。しかしながらあえて言葉にするとしたら、アレが適切だろう。
「コイツ、ただのドMじゃねぇかぁ!!」
迫る土石流の中、俺の怒号が響いた。土石流が全てを飲み込む音をかき消して。
「いや……おま……マジ何してんの!? 今の状況分かってんの!? 今そういう場面じゃねぇだろ!?」
「あ、ああああああ~!! も、もうイク!! イクイクイクイクイイイイイイイイ~…………!!」
槍の切っ先に溜まる白い球体。
光の粒子が寄り集まってできたそれは、シャルの大いなる宣誓とともに、その輝きを炸裂させたのだった。
「イッくうううううう!!」
俺の制止を見事にかき消し、視界の全ては白銀に染まる。
鼓膜が破れそうになる轟音。土石流の音すら聞こえなくなるほどのすさまじい爆音と、爆心からかなり離れているのにも関わらず身体全体を打ちつける猛烈な風圧が、五感の全てを支配する。
今までのぬいぐるみどもがやってきた中でも、最大にして一番ドがつくほどの広範囲破壊攻撃。おそらくアイツらの切り札だろう。
もう、感想という感想が出てこない。多分、コイツが一番ヤバい。隙あらば猥褻物の名を口にしてるから正直文字どおり頭がイッてる奴だとは思ってたけど、これはぶっちゃけ、想像以上だ。
爆音と風圧が無くなる、俺たちは目を開けた。
「マジ……かよ」
俺たちを呑み込まんと迫ってきていた土石流は、影も形もなく消え失せていた。草も木も、何も無く、禿げた土壌が広がってるだけで、後はホントに何も無い。
強いて何が残っているのか、と問われたなら、地面にうつ伏せに押しつけられ、土砂まみれになっているヴァズと、土石流すらも消しとばす霊力の塊を浴びても尚、ヴァズの上に石像の如くのしかかっているナージのみといったところか。
「いかがでしょう。私どもの強さ、ご納得いただけましたでしょうか」
真横に立っていた妖異な紳士、あくのだいまおうは、自分より背丈の低い俺の顔を覗き込む。
納得もクソも、予想外すぎて何も言葉が出てこない。パッと見、子供がままごとで使うただそれだけために存在しているようなぬいぐるみと同じ姿をしているのに、持っている力はあまりに強すぎる。
姿だけでも異形だが、力もまた異形のそれに恥じないだけの代物だ。ただのぬいぐるみ程度の奴が、一体どんな突然変異を起こしたら土石流を一方的に消しとばせる力を得られるのか。
でも不思議だ。つい最近あらゆる反則を平然と使いこなす銀髪野郎とやりあったせいか、俺自身、あまり驚いていないように思える。もう感覚という感覚が麻痺してきてるらしい。
「どうでしょう。ご所望であれば、ショーの続きをいたしますが?」
あくのだいまおうは、尚も顔を覗き込んでくる。
続きなんて、する必要ない。むしろ見ているこっちが困惑しているぐらいなんだから、十分すぎるデモンストレーションだ。
信用するとかしないとか、この際どうでもいいと言ってしまいたくなるし、そんな小さい事を気にしていた自分が馬鹿みたいに思えてくる。
でも、執り行うよう指示したデモンストレーションを聴衆として垣間見、見終わって後に頭によぎった、ただ一つだけ感想を言うなら、この一言に尽きるだろう。
「テメェら一体……何者なんだ」
そう、ただ、この一言に尽きるのだ。
竜人と化し、力を爆発的に高めた俺と、その援護をする御玲をもってして手も足も出なかったカラクリを、一方的に嬲り殺しにできる強さを持ち、なおかつまるで昔から仲間だったことを思わせる、手際の良い連携。
相手に反撃の隙を与えず、的確に抉りこむが如く追撃をしていく姿。まさに理想的な戦闘を見せてくれた。
ただ感情のまま突っ走り、結局色んな尻拭いを御玲や弥平にさせていた自分と違って。
これだけの戦いができる有能が、無名なワケがない。自然災害すら鎮める力を持ちながら、今まで一体、人知れずどこで何をして生きていたというのか。
「まあ、私どもについては追々。それよりも、当主殿。判定を」
あくのだいまおうは顔に貼り付けたような笑顔で、はぐらかした。
判定を、と言われてもただただ凄い、という感想しかなくむしろ今まで偉そうに振舞ってたのを謝りたいぐらいなんだが、よくよく考えればデモンストレーションして実力を証明しろと言ったのは俺なワケで、判定しないのは尚更無礼というもの。
気が進まないが、致し方ない。
「文句は無い。合格だ」
その言葉を聞き、ありがたき幸せ、とあくのだいまおうは頭を下げた。
やめてくれ、と言いたくなる気持ちを抑えつつも、俺は土砂まみれになっているヴァズに向き返る。
「お前らはもういい。ここからは俺がやる」
ぬいぐるみたちの追撃を受けながら、それでも尚まだ動こうとするヴァズ。
流石は久三男が作った殺人アンドロイドというべきか、奴のバイザーからは尾俺を抹殺するという堅い意志が伝わってくる。
当然、ここで引き下がる気はない。売られた喧嘩は買ってこそだ。ぬいぐるみどもが強いことは分かった、でもコイツらにカタをつけさせるワケにはいかない。
「いいえ、澄男さん。貴方は戦線から離脱してください」
ヴァズへ踏み出そうとした俺の肩を、あくのだいまおうは強く握る。顔をしかめ、力一杯、彼の手を振りほどいた。
「ざけんじゃねぇ。確かにテメェらの活躍には感謝してる。だが売られた喧嘩を途中で投げ出すつもりなんざ更々ねぇよ」
「貴方のするべきことはなんですか。ここであの機械を木っ端微塵に破壊することなのですか」
「そうだよ」
「違いますね。貴方に喧嘩を売ったのは、あの機械じゃない。あの機械を作った父親。違いますか」
「……」
「大丈夫です、貴方に無断で破壊してしまったりはしませんよ。貴方は、貴方が向かうべき本当の戦場へ、先に向かってください」
朗らかに、でもどこか作り笑いめいた不自然な表情を禁じえないあくのだいまおう。何か手玉に取られてるみたいな感覚に、俺は感謝七割怒り三割という微妙な心境で、金冠を載せた象パオングに向き直る。
あくのだいまおうの左横にちょこんと佇んでいたパオングは、長い鼻を唸らせて大柄に笑った。
「パァオング!! 本家派当主殿、この我欲の神パオングが、貴殿の望む場所へ誘ってしんぜよう!! さて、どこがご所望か? なんなりと申されよ」
俺が向かうべき本当の戦場。あの殺人ロボットの生みの親が偉そうに引きこもっている場所。それは―――。
死んだ魚の目を光らせ鼻を蛇のように唸らせる象に、俺は唇を釣り上げた。そして悪どい笑いでパオングの問いかけに答えたのだった。
「決まってんだろ。万年引きこもりの弟の部屋だよ。久しぶりにカチコミしたらぁ!!」
今まで信じた事なんてこれっぽっちもありゃあしなかったけど、もしこの世に神なんて奴がいるとするなら、なんで俺みたいなグズに救いの手をさしのべるのだろう。
復讐しか考えられない割に何も成せないような奴より、もっとさしのべてやるべき人は溢れるほどいるだろうに。
神なんてものの存在を前提にしてる時点で、もう自分がどうかしてるとしか思えないが、言える機会は今みたいな九死に一生を得たときぐらいだろうから、あえて言ってやる。
感謝はする。でもぶっちゃけ、クソ卑怯だわお前。嫌いだ。いるなら一回ツラァ貸せ、テメェの左頬に渾身の右ストレートブチこんでやっからよ。雲の上かどっかしらねぇが、偉そうに踏ん反り返ってんじゃねぇぞダボが。後お前姿不定すぎんだよ実体がねえのかジジイなのかはっきりしやがれややこしいんだよクソが。
自分でも何言ってんの馬鹿かとツッコミたくなるようなワケ分からんことを心中で呟く俺だったが、とりあえず言いたい事を言ったらスッキリしたので、一息つく。
そして、目の前に突然現れた囚人たちに、ふと目をやった。
コイツらと共同。正直正体もよくわからん奴らと息なんざ合うわけないと思ったが、どこまでやれるか試す価値はある。
背丈は俺や御玲なんかよりもずっと小さい。ホントに意志をもったぬいぐるみだ。そんなメルヘンチックの塊みたいな連中が、ヴァズとかいう殺人ロボとやりあえるのか。
二人だけじゃ、どう足掻いても敵わなかった相手だ。むしろあくのだいまおうとかいう、容姿だけじゃなく名前からしてふざけたラスボスみたいな奴が戦った方がいいんじゃないかって思えてくるが、戦うのはあくまであのぬいぐるみどもらしい。
殺人ロボ相手に、メルヘンの塊がどこまでやれるか。
「ではミキティウス。貴方が要です、頼みましたよ」
「要かぁ……俺そういうガラじゃないけど、まあいっか。この姿で喧嘩すんの、初めてだし。分かりましたよー」
「まぁたアイツが主役かよ」
「しゃあねぇじゃん。こん中で雷属性系使えんの、アイツとパオングさんだけだし」
悪態をつく小熊を諭すように、黄緑色の蛙がまあまあ、と小熊の肩に手を置く。俺はなるほどな、と心中で呟いた。
機械のもう一つの弱点。それは電気だ。
機械にとって、電気は動力源だが、当然、過度な量の電気を流せば中身が壊れる。何事も許容できる量が最適ってワケだ。
あのミキティウスって奴が雷の使い手らしいが、さて。どう動く。
「んじゃあ行きますかーっと!!」
小学生ぐらいの背丈をした、ロン毛の少年が、消えた。
思わず、目を見開いてしまった。速い、なんてものじゃない。一瞬空間転移の魔法を使ったのか、と思ってしまった。
ミキティウスの空色の髪の毛に稲妻が走ったと思いきや、姿が雷撃となり、ものすごい速さでヴァズに近づいたのだ。
姿形が稲妻と化したと思いきや、数体の残像のような空色のモヤが、ヴァズの目の前に現れる。だがそれも一瞬、そのモヤは瞬く間にヴァズの身体を素通りしていく。
そして空色のモヤがヴァズの背後で全て合わさり、再びロン毛の少年を描いたとき、がしゃん、という金属音した。俺たちは音源に目をやる。するとそこには―――。
殺人アンドロイド、カオティック・ヴァズが膝をついていた。
槍に貫かれようが、凍らせようが、業火に焼かれようが、それら全てをもろともしなかった鋼の塊が、たった数体の空色のモヤが身体を素通りしただけで膝をつき、蹲っている。
信じられない。一体、何が起こった。何をどうやったら、そんな芸当ができる。
思索の渦に飛び込もうとするが、ロン毛の少年ミキティウスはヴァズだけじゃなく、俺たちの思索すらも見逃さない。
また空色のモヤが走った。モヤとともに一瞬稲妻が走ったと思いきや、目にも止まらぬ速度で、蹲るヴァズの背に向き直る。
そして、躊躇なく右、左、右、左、とリズミカルにパンチを繰り出した。
パンチ一撃ごとに放たれる並々ならない雷撃。ヴァズの鋼鉄の体が空色の鞭で打たれ、それらが遠く離れた俺たちの肌までも掠める。
割と距離が離れてるってのに、まるで肌を連続的に針で刺されまくってるように痛い。パンチの威力も尋常じゃなく、衝撃が俺たちの骨や肉にも伝わってきて、一撃打つごとに轟音と衝撃波が砂埃として空を舞い、地面に見事な蜘蛛の巣を描いている。
こりゃあ少なくともヴァズと同等、下手すりゃそれ以上。姿はホントにロン毛の小学生なのに、戦闘能力が尋常じゃねえ。
「思考破棄。反射対応モード」
弱点や隙を突かれボコボコにされても尚、ヴァズから闘志が消えることはない。
ミキティウスに向けられるミニガンの銃口。もはや目と鼻の先、物理的に考えて避けられる距離じゃない。
銃口が回転し始める。あのままだとミキティウスは蜂の巣に―――。
「お前、まさかこの俺をそんなもんで蜂の巣にするつもりかい?」
ミキティウスは懐から布切れを出した。俺は思わず、奴が出した装備、というかアイテムに目を疑う。
己が蜂の巣にされる。
こんな極めてシリアスな状況で、凄まじい速度で回避するか、もしくは甘んじて蜂の巣にされるか以外ではどうしようもないという二者択一の状況で、奴は何を思い、何を考えたのだろう。いや、もしかしたら何も考えてないただの馬鹿野郎なのかもしれない。
奴は突然、女物のパンツを頭から被ったのだ。
何をしている。何を考えている。なんで風穴だらけにされるという状況でパンツを被るなどという酔狂な真似ができるのか。
分からない。分かるワケがない。頭がおかしい。そんな安直な言葉しか出てこないくらいに、奴が見せた行動は、全くの意味不明だった。
「後は任せたぞ、ナージ!」
「あぁん? オメェ、後で食糞な」
「なんで!?」
ミニガンが炸裂した。
猛回転する銃口から際限なく放たれる弾丸のシャワー。それらを避けるなど人間では到底できる所業じゃない。況してやゼロ距離、なおかつパンツを被るという明らかに無駄な自殺行為までしておいて、無事ですむはずがない。少なくとも俺と御玲は、そう確信した。
だがミキティウスという名の少年は、予想を容易く覆した。
俺たちの眼は、既にミキティウスを写してはいなかった。いや、悔しいが写せなかったというべきだろう。
速い、なんてものじゃない。まるでテレポーテーションを短時間に連続で繰り返しているかのような像を捉えるのが、持ち前の動体視力の限界だった。
物理的にありえない動きをしているのは明白。``顕現``か。否、魔法陣の姿はない。つまり相手は魔法など一切使っていない。
単純な肉体性能。ミニガンから放たれる霊力弾の弾速よりも速く見切り、速く動いて避けている。ただ、それだけなのだ。
人知を超えた回避を連続で行っていたミキティウスだったが、再び姿が掻き消える。
空色のモヤのようなものが、また空中を走った。ミニガンを回転させるヴァズの目の前に、何かが現れて―――。
がごん、という鈍い音が鳴り響いた。鋼鉄の塊たるヴァズが、独りでに吹っ飛んでいく姿とともに。
「本当なら俺とアンタは互角だったかもしれないが、アンタは生憎俺の戦闘スタイルを知らない。つまり、初見殺しってヤツだ。悪く思わないでくれよ」
どうやってヴァズの間合いに詰め寄ったのか。気がつけばヴァズが立っていた位置には、ずっと弾丸シャワーを尋常じゃない速度で避けていたはずのミキティウスがいた。
そういえば、カエルが言っていた。雷属性系を使えるのは、ミキティウスとパオングだけだと。
機械は電気が供給源、しかし一度に大量に流せばいろんな部品がブッ壊れる。
雷にすらなれる身体。そして残像すら残さない回避性能。
言うまでもない、初見殺し。あらかじめ戦闘スタイルや癖、固有の能力を熟知してない限り、対応できるはずもない。
初見殺しな上に、機械の弱点を的確に突いている。この戦い、最初からヴァズには分が悪い采配だったワケだ。
おそらくこの戦略を考えたのは、俺たちの背後でミキティウスの戦いを俯瞰する、怪しげな紳士だろう。
だが一つだけ、どう考えても分からないことがある。いや、考える必要もないし、多分意味なんて絶対ないのだろうが、あえて問いたい。
なんで、パンツ被ったのだろうか。
「じゃあいくか」
ミキティウスによる雷を含んだ物理攻撃のラッシュにより、大幅に認識能力が低下したヴァズに追い打ちをかけるが如く、一匹の熊のぬいぐるみが、空を飛んだ。
空に広がる一対の翼。ミキティウスには遠く及ばないが、飛行速度は速い。砂埃が舞い、木々が強く揺らめくほどの衝撃波が放たれる。
「んじゃまずは……妙技``排便空襲``からいっとくか」
ナージは飛びながら態勢を変えた。翼の形態そのままに、彼はこれまた何を考えたのか、ヴァズ付近の上空でうんこ座りをし始めた。
それはまさしく、和式便所で用を足すが如き姿勢。
まさかここで。いや、今はそんな場面じゃない。違う。空気的に、雰囲気的に違う。今やるべきはソレじゃない。本当にするワケが。いや、でもあの姿勢。
「おら鉄クズ。オイル代わりだ、俺の糞食らいな」
まごう事なき``アレ``が、天空から放たれた。
空気抵抗を受けつつも、大陸の重力に引っ張られ自由落下する``アレ``。
よく見ると一個ではなかった。機体の底面に張り付いた爆弾を都市に浴びせるが如く、焦げ茶色をした``アレ``が、数えきれないほど沢山降り注がれる。
それらはもはや、汚物の空襲。本来ならば下水道へと消えるべき物体が、空から焼夷弾の如く大量に降ってくるという煉獄。
ミキティウスの華麗かつ圧倒的な戦況から一変。戦場は一気に地獄絵図へと姿を変えた。
反射的に、本能的に、思わずバックステップで距離を離す。
頭上から降ってくる汚物の射程圏外へ、とにかく距離を離す。
理性が働かなければ、危うくそのまま逃げ出すところだった。でもありえるか。相手は弟が兄を殺すために派遣した殺人ロボットとはいえ、一応今は戦いだ。
でもあの熊のぬいぐるみは、あろうことか戦場で脱糞したのだ。一般に``ウンコ``と呼ばれる、汚物の中の汚物を撒き散らかしたのだ。
汚いなんてものじゃない。そもそも、一体何を考えているのか。分からない。ミニガンを突きつけられて平然と女物のパンツを被るミキティウスも分からないが、ナージはもっと分からない。
「おいテメェ!!」
思わず怒鳴る。あまりにもワケの分からない行動をとるぬいぐるみに、憤慨と疑問の念を込めながら。
「舐めてんのか!! マジで……何してる!?」
「あぁ? 脱糞ですけど? 空から糞撒き散らしてるんですけど?」
「認めた!? いや……お前、おかしいだろ!? なんでこの状況で用足してんだ!! ふざけてんのか!?」
「ふざけてねぇよ、真面目に脱糞してんだよ」
「そこ真面目じゃなくていいから!! 真面目にするところ違うから!!」
「馬鹿かオメェどんな状況でも盛大に脱糞できる、それが真の男ってもんだろうが」
「いや意味分かんねぇよ!! ただの変質者だろそれ!!」
「変質者ならミキティウスだろ。見てみろよアイツ、頭にパンツ被ってんぜ」
「公衆の面前で糞撒き散らかしてるテメェよりマシだわ!! やめろ、今すぐやめろ!!」
「ごめん無理。だって俺の攻撃手段、ほとんど糞しかないし。というか糞以外邪道だろ。剣とか魔法なんてもんなんざ、例えるなら路上にほっとかれて干からびた犬の糞並みに糞だぜ?」
「いや明らかに糞撒き散らかす方が邪道だよね!? お前、実は攻撃手段の無さを棚上げして自分に無いものを邪にしたいだけだろ!!」
痛烈な叫びもむなしく、彼の表情は変わらない。なんの躊躇いもなく次の一手を打つ。
「ああそうだよ。だって俺、糞するしか能がねぇもん」
翼をはためかせ、ナージはうんこ座りから、お父さん座りへと体勢を変えた。その瞬間、ナージの身体はみるみるうちに薄い茶色から焦げ茶色へと変化する。
それはまるで大腸にとどまること数日、水分を吸われ続け、もはやカッチコチになってしまった糞の如く。
『澄男とか言ったっけ。オメェは力押し以外に能がねぇんだろ? だったらその糞で、弟の糞なんざ塗り潰しちまえ。情報? 知るか糞食らえ、ってな』
霊子通信でナージの声が直接脳味噌に反芻する。
久三男は戦いに情報が必要と言った。もっとまともな、先を見据えた戦いをするべきだと、一人前を気取って吐き捨てた。
そしてカオティック・ヴァズというカラクリで、それを証明してみせた。
なら自分はどうか。それで納得しているか。
確かに久三男の実力は身を以て知った。戦死寸前にまで追い込まれた。でも久三男の理屈に納得しているかどうかと言われれば、していない。
裏鏡のときと答えは同じ。誰がなんと言おうと、自分が決めたやり方を突き通す。
今更利口になるつもりもないし、人に褒められるような人間になるつもりもない。身勝手に、自己中に、自分がやりたいと思ったことをやる。たとえ悪党と呼ばれようとも。
そう。``俺``って奴はこうじゃなきゃいけねえ。それ以外の生き方なんざ、どうあがいたってできるワケねぇんだ。
危うく、見失なっちまうところだったぜ―――。
俺は乾いた笑いをか細く漏らす。そして両手の拳を強く、強く握り締めた。
「やべぇ。澄男さん、御玲さん、パオングさんのところまで離れてくだせえ!!」
カエルが突然、パオングの方へ手招きしながら大声で叫ぶ。シャルも速く来いよー死ぬぞー、と裸エプロンをはためかせながら手招きする。
まず何をやらかすつもりなのかと聞きたかったが、前衛のカエルとシャルがなりふり構わず後ろに下がり始めたため、渋々俺たちもパオングの所まで下がる。
彼らが自分の所まで集まったのを確認すると、戦場にいる、全員を包囲するほどの広く茶色い魔法陣が展開した。
「``部分無効:地属性系``」
パオングが呪文を唱えた、次の瞬間だった。
鳴り響く轟音。思わず耳を塞いでしまうほどの大音響とともに、大地には広大な蜘蛛の巣状のヒビが走った。
木々が次々と倒れていき、大地の神が咆哮する。不幸にも、裏手は山だった。
木々が倒れたことで地面に張り巡らされていた根が無くなったのだ。土は行く手を失い、そのまま土砂となって崩れ落ちる。
土砂崩れ。地震や暴風雨によって引き起こされるはずの自然災害が、戦場と化した水守家領のほとんどを呑みこんでいった。焦げ茶色の菩薩と化したナージによって引き起こされた、大地震によって。
「待ってください!? このままでは私たちまで……」
勢い留まらぬ土砂崩れに顔を引きつらせる御玲だったが、唐突にパーオパオパオパオと長い鼻を天高く上げて笑いだしたパオングが、慰めるようにして奴の肩に手を置いた。
「メイドよ、心配するでない。土砂崩れは、年がら年中発情期に苛まれておる、そこの中年男が片づけてくれよう」
「腐☆腐!! ついにボクの出番ってワケだね!!」
「あれ待って。オレの出番なくね? オレ、総隊長なんだけど。一応、この軍団の隊長なんだけど!!」
カエルの叫びは何者の鼓膜も揺らさなかった。
「いでよ、ボクのち◯こ!!」
裸エプロンの中年男が唐突に卑猥なワードを口ずさむ。すると、シャルの股間から煌々と光り輝く何かが、ゆっくりと引き抜かれた。
現れたるは、純白に輝く一本の棒。煌びやかに光り輝くそれは、シャルの体躯に似合わない大槍だった。
柄の部分は黒いが、棒の部分は銀色という異色を放つ槍。全てを押し流さんと迫る土砂崩れを前に、シャルは大槍を片手に持ち、仁王立つ。
彼の身体より生まれ、彼のみが持つことを許された神槍は、彼の手の中にあるのが嬉しいのか一層、その輝きを増した。
体躯に合わぬ槍を構え、切っ先を土砂へ向ける。
二人はシャルのやろうとしていることが分からなかった。いくら槍とはいえ、周囲の大木すらも一瞬で生き埋めにしてしまうほどの土石流を止められるわけがない。
薙ぎ払える量ではないし、投げたところで意味もない。況してや、刺し貫きにいくなど自殺行為も甚だしい。
なら、彼は何をしようというのか。困惑する俺たちとは裏腹に、あくのだいまおうや、ぬいぐるみ達の顔に陰りは見受けられない。
「あぁ~!! くる、くるくるくるぅ~!! この……この体の奥底から湧き上がるリビドー……!! んんんんんぎもぢいいいいいいいい!!」
突如、裸エプロンの中年男は呻いた。
槍を構えながらも、小さい身体をよじらせ、顔を赤らめ、過呼吸気味に吠える。
「さあ土石流!! このボクをぐちゃぐちゃにして、めちゃくちゃにして、生き埋め窒息プレイを堪能させてみせろ!! いやむしろしたいぜひさせてほしいんほおおおおおああああああああ!!」
俺たちは身構えた、シャルの豹変ぶりに。酒を飲みすぎて酩酊し、あらゆる理性のタガが外れたオヤジの如く、体の奥底から湧き上がっている何かに悶える姿に。
もはやそれは、アレである。言葉にする必要もないし、今の状況で吐く言葉ではないの確かだ。しかしながらあえて言葉にするとしたら、アレが適切だろう。
「コイツ、ただのドMじゃねぇかぁ!!」
迫る土石流の中、俺の怒号が響いた。土石流が全てを飲み込む音をかき消して。
「いや……おま……マジ何してんの!? 今の状況分かってんの!? 今そういう場面じゃねぇだろ!?」
「あ、ああああああ~!! も、もうイク!! イクイクイクイクイイイイイイイイ~…………!!」
槍の切っ先に溜まる白い球体。
光の粒子が寄り集まってできたそれは、シャルの大いなる宣誓とともに、その輝きを炸裂させたのだった。
「イッくうううううう!!」
俺の制止を見事にかき消し、視界の全ては白銀に染まる。
鼓膜が破れそうになる轟音。土石流の音すら聞こえなくなるほどのすさまじい爆音と、爆心からかなり離れているのにも関わらず身体全体を打ちつける猛烈な風圧が、五感の全てを支配する。
今までのぬいぐるみどもがやってきた中でも、最大にして一番ドがつくほどの広範囲破壊攻撃。おそらくアイツらの切り札だろう。
もう、感想という感想が出てこない。多分、コイツが一番ヤバい。隙あらば猥褻物の名を口にしてるから正直文字どおり頭がイッてる奴だとは思ってたけど、これはぶっちゃけ、想像以上だ。
爆音と風圧が無くなる、俺たちは目を開けた。
「マジ……かよ」
俺たちを呑み込まんと迫ってきていた土石流は、影も形もなく消え失せていた。草も木も、何も無く、禿げた土壌が広がってるだけで、後はホントに何も無い。
強いて何が残っているのか、と問われたなら、地面にうつ伏せに押しつけられ、土砂まみれになっているヴァズと、土石流すらも消しとばす霊力の塊を浴びても尚、ヴァズの上に石像の如くのしかかっているナージのみといったところか。
「いかがでしょう。私どもの強さ、ご納得いただけましたでしょうか」
真横に立っていた妖異な紳士、あくのだいまおうは、自分より背丈の低い俺の顔を覗き込む。
納得もクソも、予想外すぎて何も言葉が出てこない。パッと見、子供がままごとで使うただそれだけために存在しているようなぬいぐるみと同じ姿をしているのに、持っている力はあまりに強すぎる。
姿だけでも異形だが、力もまた異形のそれに恥じないだけの代物だ。ただのぬいぐるみ程度の奴が、一体どんな突然変異を起こしたら土石流を一方的に消しとばせる力を得られるのか。
でも不思議だ。つい最近あらゆる反則を平然と使いこなす銀髪野郎とやりあったせいか、俺自身、あまり驚いていないように思える。もう感覚という感覚が麻痺してきてるらしい。
「どうでしょう。ご所望であれば、ショーの続きをいたしますが?」
あくのだいまおうは、尚も顔を覗き込んでくる。
続きなんて、する必要ない。むしろ見ているこっちが困惑しているぐらいなんだから、十分すぎるデモンストレーションだ。
信用するとかしないとか、この際どうでもいいと言ってしまいたくなるし、そんな小さい事を気にしていた自分が馬鹿みたいに思えてくる。
でも、執り行うよう指示したデモンストレーションを聴衆として垣間見、見終わって後に頭によぎった、ただ一つだけ感想を言うなら、この一言に尽きるだろう。
「テメェら一体……何者なんだ」
そう、ただ、この一言に尽きるのだ。
竜人と化し、力を爆発的に高めた俺と、その援護をする御玲をもってして手も足も出なかったカラクリを、一方的に嬲り殺しにできる強さを持ち、なおかつまるで昔から仲間だったことを思わせる、手際の良い連携。
相手に反撃の隙を与えず、的確に抉りこむが如く追撃をしていく姿。まさに理想的な戦闘を見せてくれた。
ただ感情のまま突っ走り、結局色んな尻拭いを御玲や弥平にさせていた自分と違って。
これだけの戦いができる有能が、無名なワケがない。自然災害すら鎮める力を持ちながら、今まで一体、人知れずどこで何をして生きていたというのか。
「まあ、私どもについては追々。それよりも、当主殿。判定を」
あくのだいまおうは顔に貼り付けたような笑顔で、はぐらかした。
判定を、と言われてもただただ凄い、という感想しかなくむしろ今まで偉そうに振舞ってたのを謝りたいぐらいなんだが、よくよく考えればデモンストレーションして実力を証明しろと言ったのは俺なワケで、判定しないのは尚更無礼というもの。
気が進まないが、致し方ない。
「文句は無い。合格だ」
その言葉を聞き、ありがたき幸せ、とあくのだいまおうは頭を下げた。
やめてくれ、と言いたくなる気持ちを抑えつつも、俺は土砂まみれになっているヴァズに向き返る。
「お前らはもういい。ここからは俺がやる」
ぬいぐるみたちの追撃を受けながら、それでも尚まだ動こうとするヴァズ。
流石は久三男が作った殺人アンドロイドというべきか、奴のバイザーからは尾俺を抹殺するという堅い意志が伝わってくる。
当然、ここで引き下がる気はない。売られた喧嘩は買ってこそだ。ぬいぐるみどもが強いことは分かった、でもコイツらにカタをつけさせるワケにはいかない。
「いいえ、澄男さん。貴方は戦線から離脱してください」
ヴァズへ踏み出そうとした俺の肩を、あくのだいまおうは強く握る。顔をしかめ、力一杯、彼の手を振りほどいた。
「ざけんじゃねぇ。確かにテメェらの活躍には感謝してる。だが売られた喧嘩を途中で投げ出すつもりなんざ更々ねぇよ」
「貴方のするべきことはなんですか。ここであの機械を木っ端微塵に破壊することなのですか」
「そうだよ」
「違いますね。貴方に喧嘩を売ったのは、あの機械じゃない。あの機械を作った父親。違いますか」
「……」
「大丈夫です、貴方に無断で破壊してしまったりはしませんよ。貴方は、貴方が向かうべき本当の戦場へ、先に向かってください」
朗らかに、でもどこか作り笑いめいた不自然な表情を禁じえないあくのだいまおう。何か手玉に取られてるみたいな感覚に、俺は感謝七割怒り三割という微妙な心境で、金冠を載せた象パオングに向き直る。
あくのだいまおうの左横にちょこんと佇んでいたパオングは、長い鼻を唸らせて大柄に笑った。
「パァオング!! 本家派当主殿、この我欲の神パオングが、貴殿の望む場所へ誘ってしんぜよう!! さて、どこがご所望か? なんなりと申されよ」
俺が向かうべき本当の戦場。あの殺人ロボットの生みの親が偉そうに引きこもっている場所。それは―――。
死んだ魚の目を光らせ鼻を蛇のように唸らせる象に、俺は唇を釣り上げた。そして悪どい笑いでパオングの問いかけに答えたのだった。
「決まってんだろ。万年引きこもりの弟の部屋だよ。久しぶりにカチコミしたらぁ!!」
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
【完結】タイムリープするのに代償がないとでも?
白キツネ
SF
少年・山田圭は、ある日、連絡が途絶えた彼女・本間雛を助けるためにタイムリープを経験する。けれど、タイムリープできた過去は、圭が望む過去ではなかった。
圭はより理想的なタイムリープを望み、ある人物と出会う。
圭は何を犠牲にして、理想を望むのか?その理想は本当に、圭の理想なのか?
カクヨムにも掲載しております。
王家の影一族に転生した僕にはどうやら才能があるらしい。
薄明 喰
BL
アーバスノイヤー公爵家の次男として生誕した僕、ルナイス・アーバスノイヤーは日本という異世界で生きていた記憶を持って生まれてきた。
アーバスノイヤー公爵家は表向きは代々王家に仕える近衛騎士として名を挙げている一族であるが、実は陰で王家に牙を向ける者達の処分や面倒ごとを片付ける暗躍一族なのだ。
そんな公爵家に生まれた僕も将来は家業を熟さないといけないのだけど…前世でなんの才もなくぼんやりと生きてきた僕には無理ですよ!!
え?
僕には暗躍一族としての才能に恵まれている!?
※すべてフィクションであり実在する物、人、言語とは異なることをご了承ください。
色んな国の言葉をMIXさせています。
Beyond the soul 最強に挑む者たち
Keitetsu003
SF
西暦2016年。
アノア研究所が発見した新元素『ソウル』が全世界に発表された。
ソウルとは魂を形成する元素であり、謎に包まれていた第六感にも関わる物質であると公表されている。
アノア研究所は魂と第六感の関連性のデータをとる為、あるゲームを開発した。
『アルカナ・ボンヤード』。
ソウルで構成された魂の仮想世界に、人の魂をソウルメイト(アバター)にリンクさせ、ソウルメイトを通して視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚、そして第六感を再現を試みたシミュレーションゲームである。
アルカナ・ボンヤードは現存のVR技術をはるかに超えた代物で、次世代のMMORPG、SRMMORPG(Soul Reality Massively Multiplayer Online Role-Playing Game)として期待されているだけでなく、軍事、医療等の様々な分野でも注目されていた。
しかし、魂の仮想世界にソウルイン(ログイン)するには膨大なデータを処理できる装置と通信施設が必要となるため、一部の大企業と国家だけがアルカナ・ボンヤードを体験出来た。
アノア研究所は多くのサンプルデータを集めるため、PVP形式のゲーム大会『ソウル杯』を企画した。
その目的はアノア研究所が用意した施設に参加者を集め、アルカナ・ボンヤードを体験してもらい、より多くのデータを収集する事にある。
ゲームのルールは、ゲーム内でプレイヤー同士を戦わせて、最後に生き残った者が勝者となる。優勝賞金は300万ドルという高額から、全世界のゲーマーだけでなく、格闘家、軍隊からも注目される大会となった。
各界のプロが競い合うことから、ネットではある噂が囁かれていた。それは……。
『この大会で優勝した人物はネトゲ―最強のプレイヤーの称号を得ることができる』
あるものは富と名声を、あるものは魂の世界の邂逅を夢見て……参加者は様々な思いを胸に、戦いへと身を投じていくのであった。
*お話の都合上、会話が長文になることがあります。
その場合、読みやすさを重視するため、改行や一行開けた文体にしていますので、ご容赦ください。
投稿日は不定期です
転生幼児は夢いっぱい
meimei
ファンタジー
日本に生まれてかれこれ27年大学も出て希望の職業にもつき順風満帆なはずだった男は、
ある日親友だと思っていた男に手柄を横取りされ左遷されてしまう。左遷された所はとても忙しい部署で。ほぼ不眠不休…の生活の末、気がつくとどうやら亡くなったらしい??
らしいというのも……前世を思い出したのは
転生して5年経ってから。そう…5歳の誕生日の日にだった。
これは秘匿された出自を知らないまま、
チートしつつ異世界を楽しむ男の話である!
☆これは作者の妄想によるフィクションであり、登場するもの全てが架空の産物です。
誤字脱字には優しく軽く流していただけると嬉しいです。
☆ファンタジーカップありがとうございました!!(*^^*)
今後ともよろしくお願い致します🍀
自衛隊のロボット乗りは大変です。~頑張れ若年陸曹~
ハの字
SF
日比野 比乃(ヒビノ ヒノ)。国土防衛組織、陸上自衛隊第三師団“機士科”所属の三等陸曹、齢十七歳。
自衛隊最年少の人型機動兵器「AMW」乗りであり、通称「狂ってる師団」の期待株。そして、同僚(変人)達から愛されるマスコット的な存在……とはいかないのが、今日の世界情勢であった。
多発する重武装テロ、過激な市民団体による暴動、挙げ句の果てには正体不明の敵まで出現。
びっくり人間と言っても差し支えがない愉快なチームメンバー。
行く先々で知り合うことになる、立場も個性も豊か過ぎる友人達。
これらの対処に追われる毎日に、果たして終わりは来るのだろうか……日比野三曹の奮闘が始まる。
▼「小説家になろう」と同時掲載です。改稿を終えたものから更新する予定です。
▼人型ロボットが活躍する話です。実在する団体・企業・軍事・政治・世界情勢その他もろもろとはまったく関係ありません、御了承下さい。
100000累計pt突破!アルファポリスの収益 確定スコア 見込みスコアについて
ちゃぼ茶
エッセイ・ノンフィクション
皆様が気になる(ちゃぼ茶も)収益や確定スコア、見込みスコアについてわかる範囲、推測や経験談も含めて記してみました。参考になれればと思います。
司書ですが、何か?
みつまめ つぼみ
ファンタジー
16歳の小さな司書ヴィルマが、王侯貴族が通う王立魔導学院付属図書館で仲間と一緒に仕事を頑張るお話です。
ほのぼの日常系と思わせつつ、ちょこちょこドラマティックなことも起こります。ロマンスはふんわり。
もしニートの俺が変な島に漂流したら
佐藤さん
SF
佐藤大輔23歳はニートである。
親の脛を齧って齧りまくるヘタレの青年が、起きると見たことのない島にたどり着いていた。
これはニートがニートを脱却するための、死屍累々の奮闘記である。
一章から三章(全三章)
ニートである佐藤大輔は無人島に漂流してしまった。持ち物は着ている服とくしゃくしゃのチョコスティックだけ。
持ち合わせのない彼に迫るのは、絶滅したはずの獣たちだった
新章
大輔の母、佐藤佳以子は無人島に降り立った。佐藤佳以子は息子を捜し求めて、地球上で最も賢い喋るゴリラを尋ねた。
閑話休題
これは終末人類史の「前置き」である。
リノベーション編
日本の大阪に住むくぅーちゃんは、とある少女に出会い、あらぬ方向に人生が進んでいく。
アポカリプス・インパクト
日本を中心に起きた衝撃が世界を包み、終わりを迎えて3年が経った。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる