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乱世下威区編 上
戦士の覚悟
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澄男と別れて数秒が経ったと思うが、私の中では既に一時間が経ったように思える。
擬巖正宗の側近と思われる敵、かつて西支部の地下シェルターで暴れ回り私とレク・ホーラン、そしてハイゼンベルクの三人がかりで挑んでなおも翻弄してのけた存在との決闘は、絶望の一言に尽きた。
私と同等の実力者三人がかりでようやく戦いが成立する相手だったのだ。今回はレク・ホーランもハイゼンベルクもこの場におらず、その戦力差は埋めようのない歴然とした差となってのしかかる。
「くっ……!」
強い。力が、ではなく、戦闘力がとにかく高い。
今は双剣を使っているが、間合いは槍を使う私の方が有利のはずなのに、槍よりも遥かに小さい刃を巧みに使いこなしてこちらの槍撃を受け流してくる。まるで洗剤が塗りたくられた壁へ無心に槍を当てているかのような手応えのなさだ。
私は一向に有効打が打てていない一方で、彼女は受け流した直後に生じる私の後隙を的確に狙って切り結んできており、決定打にはなっていないものの有効打は確実に積み上がってしまっている。このままだと手傷を負いすぎて血が足りなくなる事態になりかねない。
回復するべきか、否。それは愚策だ。そもそもそんな隙はどこにもない。
事実上相手が一方的に有効打を与えられている戦況、少しでも攻撃を緩めてしまえば有効打どころか次の瞬間には致命打になる。
間合いで有利を取り、攻撃の勢いで防御を兼ねることで辛うじて致命打を避けられているだけで、この均衡が崩れれば残された道は死である。
もっとも安全かつ確実な方策としてはもう一人、それこそレク・ホーランに囮役を買ってもらうことぐらいだが、この場にいない者を勘定に入れたところで無駄な思索であった。
もはや数えるのも億劫になるほどの回数切り結びあった頃、甲高い金属が鳴り響き、お互い大きく距離を取った。その機を逃さず、己の周囲の床に氷の膜を張り巡らせる。
床を滑りやすくすることで、細かな足運びを困難にする作戦だ。この程度の小細工、慣れられれば対応されるだけでその場凌ぎにしかならないが、対応するまでは自分の間合いへ容易に踏み込ませない猶予を作り出すことができる。
息を整え、彼女を見据える。
実力差は明白。このまま戦い続けても、勝敗の結果は見えている。敗北とは、すなわち死。私が死ねば、おそらくだが澄男がどうなるか分からない。
一度失うことを知った彼は仲間を守ることに執着している。彼を暴走させないためにも、この場を生き抜けねばならない。
だが、しかし。
澄男の攻撃で死ぬとは思っていなかったのもあるのか。いや、それを予想していたと言ってもいい。
だからこそ理屈では測れない何かが、相反する何かが、もう無視できないぐらいにまで大きくなっていることを自覚する。
「あなた……本当は私たちと敵対したいわけじゃ、ないんじゃない?」
少女―――三舟雅禍は顔色一つ変えなかったが、私は見逃さなかった。ほんの僅か、意識しないと分からないほどに絶妙な動作、双剣の柄を一瞬強く握りしめたことを。
「西支部に攻め込んできたあの日……本当ならあなた、地下シェルターに避難していた請負人たちを私たちに気づかせず皆殺しにできたんでしょう? どうしてそうしなかったの?」
ほんの僅かな所作も見逃すまいとありったけの意識を雅禍に向けた。
本家邸で作戦会議をしていた際、西支部で起こった出来事を事細かに話すと弥平は言っていた。
その刺客は、おそらく擬巖に反目しようとしている、と。
「地下シェルターから請負人を一人逃したのも、私たちをわざと地下シェルターに誘き出すためだったんでしょう? どうして自分をわざと窮地に追いやったのかしら?」
察しの悪い馬鹿のフリをしつつ、過剰に刺激しないように声色に注意を払う。
窮地に陥り仮に死ねば、当主から命じられた責務は果たせない。それは暴閥界において、明確な叛逆に等しい。
「もしも本当に私たちと敵対する気がないのなら、私も矛を下ろすと約束するわ。擬巖正宗は、まもなく我らが当主に討たれる。だからあなたは心配することは……」
「それは無理だ」
このまま畳み掛けようとした矢先、私の言葉はドス黒い鋭利な刃で、見事に切り裂かれる。
私と彼女の間合いは、それほど離れてはいないが、錯覚か幻覚か、その距離は一気に遠く離れたように思えた。
「暴閥に希望などあるものか。お前が矛を収めたところで、お前の主が私を殺す」
「だから、それは私が説得して……」
「笑わせるな! そんなこと、できるはずがない!」
暗黒の居間に怒号が響いた。その怒号はただの怒りの叫びにあらず。憎悪と怨念入り混じり、黒い炎で焼き尽くさんとする赫怒の咆哮。
「暴閥界において、上位者からの命令は絶対。従者でしかないお前に、何ができる!!」
怒りに塗り潰され、少女の瞳が激しく血走る。その剣幕に、思わず二の句が継げなくなる。
雅禍の言っていることは正しい。暴閥は元より、この武市において強者からの命令は絶対。弱肉強食の摂理に忠実な武市は、強者からの言葉をなによりの誉とする。それはもはや神託とも言え、逆らえばその時点で死が決定してしまうのだ。
流川や花筏が特殊なだけで、擬巖家を筆頭とするほとんどの暴閥では``弱者は強者に絶対服従。逆らうなら死ね``が当たり前なのである。
そう、なんら間違ってはいない。彼女が流川や花筏という例外ケースを知らない、という点を除いては。
「我が主は寛大な御方。敵意がないと知れば私から口添えができるわ」
「信じられるか。正宗様は既に宣戦を布告された。降伏した私が誅殺されない保証など、どこにあるというのだ」
「それは、だから私が」
「大体、そんな甘言で矛を収めると思っているのか? 間抜けにも惑わされた私の隙を突き、始末するとしか思えないが?」
違う、と言いたいが、逆の立場なら自分もそう思ってしまうと思わず言葉を喉奥へ飲み込んでしまった。次の言葉が出てこないと知るや、雅禍の緊張は最高潮に達する。
澄男らとともに生活を始めて四ヶ月目が経とうとしている今、澄男の間抜けなところが移ってしまったのだろう。よくよく考えなくても、何の保証もない言葉で敵を説得できるわけがなかった。
澄男の真似事でもしようとしたのか、それとも澄男と行動を共にしすぎて自分も馬鹿になってしまったのか。どっちにしろ昔の私を思えば、考えられない行動だ。
何の証拠もない言葉で、人が救えるわけもないというのに。
「なら……勝負しない?」
「……なに?」
突然、意味不明なことを言われ、眉をひそめる。かくいう私も今さっき思いついただけあって、何故今それをしようと思ったのか、理屈では理解できていない。
「この世界は弱肉強食。弱きは食われ、強きが生き残る。ならその摂理に倣い、単純に勝った方が負けた方の言いなりになるってことでどう?」
三舟雅禍と私。位は私の方が上だ。でも戦いが始まろうとしている今では、無意味な差である。
弱肉強食の摂理は、全ての者に公平だ。戦いが始まり、そして決着がついたとき、立っていられた者が勝者であり、格上であり、敗者を含めたその全てを総取りできる。
私の願いを、私の思いを、彼女に突き通すには、もうこの手しかない。
「……なるほど。悪くない提案だ」
血走った剣幕から一転、少女から張り詰めた糸が僅かだが解ける。
「才能があった私を取り立てていただいた恩はある。そうでなければ、私に待っていたのは惨めな死だけだっただろうから」
双剣の柄を握りしめる。同時に、全身から沸々と妖気が漂い始めた。それは彼女の体内霊力を元手に編み出された、濃厚な霊圧。
「私は無能だ。できるなら、お前とお前の主のような関係を築きたかったが……私には戦いの才しかない。ならばせめて、取り立てていただいた御恩に報いるのみ」
雅禍は消えた。だが次の瞬間、持っていた槍が鋼鉄の塊にでもなったかのように重くなり、両腕が悲鳴をあげた。
私からそれなりに距離をあけていたはずだが、私の動体視力をも凌ぐ速度で間合いを抉った。双剣と槍が火花を散らし、霊圧でどこまでも研ぎ澄ませた刃は未曾有の圧力へと化けてのしかかる。
その力は、もはや華奢な少女が放てる代物ではない。肉が、骨が、そして床が。私の脚を伝い、そのことごとくが絶叫した。
霊圧が火花となって辺りを照らす。氷属性霊力を練り込んで防御力を高めるが、彼女の霊圧がことごとく抉り融かしていく。
もはや言葉の語らいは無意味だ。彼女は体内霊力を元手に無理矢理な身体強化を行なっている時点で、その覚悟は生半可な言葉では揺らぐまい。ならば。
「流川本家若頭補佐、水守家当主``凍刹``水守御玲。全身全霊を以て、あなたを討つ!!」
体内霊力を解き放つ。出し惜しみなし、後先考えなしの全力解放。それが何を意味するか、考える必要もない。
澄男のように不死でもなければ、久三男のように神がかった才能もない。況してや弥平のように側近として必要な全ての能力を極めたわけでもない。ただ防御力とタフさに自信があるだけの凡愚。
でも、もしも澄男なら。彼と私が対峙したあのとき、私の全てを受け止め、その全てを許した澄男なら。命を賭して突貫する者が目の前にいて、その者と腹を割って話したいと思った彼ならば―――。
「ごめんなさい……できるなら、あなたの隣をもっと歩んでみたかった……勝手な私を、どうか許して」
交錯する、霊圧。防御も回避も、その全てをかなぐり捨てた。最大限に研ぎ澄ませた刃を、全身全霊で以て振るう。
その刃に乗せたのは霊力でもなければ魔法でも魔術でもない。もっともっと、ずっと強かなもの。今ここに、互いの``命``を賭した戦いが、甲高い産声をあげた。
擬巖正宗の側近と思われる敵、かつて西支部の地下シェルターで暴れ回り私とレク・ホーラン、そしてハイゼンベルクの三人がかりで挑んでなおも翻弄してのけた存在との決闘は、絶望の一言に尽きた。
私と同等の実力者三人がかりでようやく戦いが成立する相手だったのだ。今回はレク・ホーランもハイゼンベルクもこの場におらず、その戦力差は埋めようのない歴然とした差となってのしかかる。
「くっ……!」
強い。力が、ではなく、戦闘力がとにかく高い。
今は双剣を使っているが、間合いは槍を使う私の方が有利のはずなのに、槍よりも遥かに小さい刃を巧みに使いこなしてこちらの槍撃を受け流してくる。まるで洗剤が塗りたくられた壁へ無心に槍を当てているかのような手応えのなさだ。
私は一向に有効打が打てていない一方で、彼女は受け流した直後に生じる私の後隙を的確に狙って切り結んできており、決定打にはなっていないものの有効打は確実に積み上がってしまっている。このままだと手傷を負いすぎて血が足りなくなる事態になりかねない。
回復するべきか、否。それは愚策だ。そもそもそんな隙はどこにもない。
事実上相手が一方的に有効打を与えられている戦況、少しでも攻撃を緩めてしまえば有効打どころか次の瞬間には致命打になる。
間合いで有利を取り、攻撃の勢いで防御を兼ねることで辛うじて致命打を避けられているだけで、この均衡が崩れれば残された道は死である。
もっとも安全かつ確実な方策としてはもう一人、それこそレク・ホーランに囮役を買ってもらうことぐらいだが、この場にいない者を勘定に入れたところで無駄な思索であった。
もはや数えるのも億劫になるほどの回数切り結びあった頃、甲高い金属が鳴り響き、お互い大きく距離を取った。その機を逃さず、己の周囲の床に氷の膜を張り巡らせる。
床を滑りやすくすることで、細かな足運びを困難にする作戦だ。この程度の小細工、慣れられれば対応されるだけでその場凌ぎにしかならないが、対応するまでは自分の間合いへ容易に踏み込ませない猶予を作り出すことができる。
息を整え、彼女を見据える。
実力差は明白。このまま戦い続けても、勝敗の結果は見えている。敗北とは、すなわち死。私が死ねば、おそらくだが澄男がどうなるか分からない。
一度失うことを知った彼は仲間を守ることに執着している。彼を暴走させないためにも、この場を生き抜けねばならない。
だが、しかし。
澄男の攻撃で死ぬとは思っていなかったのもあるのか。いや、それを予想していたと言ってもいい。
だからこそ理屈では測れない何かが、相反する何かが、もう無視できないぐらいにまで大きくなっていることを自覚する。
「あなた……本当は私たちと敵対したいわけじゃ、ないんじゃない?」
少女―――三舟雅禍は顔色一つ変えなかったが、私は見逃さなかった。ほんの僅か、意識しないと分からないほどに絶妙な動作、双剣の柄を一瞬強く握りしめたことを。
「西支部に攻め込んできたあの日……本当ならあなた、地下シェルターに避難していた請負人たちを私たちに気づかせず皆殺しにできたんでしょう? どうしてそうしなかったの?」
ほんの僅かな所作も見逃すまいとありったけの意識を雅禍に向けた。
本家邸で作戦会議をしていた際、西支部で起こった出来事を事細かに話すと弥平は言っていた。
その刺客は、おそらく擬巖に反目しようとしている、と。
「地下シェルターから請負人を一人逃したのも、私たちをわざと地下シェルターに誘き出すためだったんでしょう? どうして自分をわざと窮地に追いやったのかしら?」
察しの悪い馬鹿のフリをしつつ、過剰に刺激しないように声色に注意を払う。
窮地に陥り仮に死ねば、当主から命じられた責務は果たせない。それは暴閥界において、明確な叛逆に等しい。
「もしも本当に私たちと敵対する気がないのなら、私も矛を下ろすと約束するわ。擬巖正宗は、まもなく我らが当主に討たれる。だからあなたは心配することは……」
「それは無理だ」
このまま畳み掛けようとした矢先、私の言葉はドス黒い鋭利な刃で、見事に切り裂かれる。
私と彼女の間合いは、それほど離れてはいないが、錯覚か幻覚か、その距離は一気に遠く離れたように思えた。
「暴閥に希望などあるものか。お前が矛を収めたところで、お前の主が私を殺す」
「だから、それは私が説得して……」
「笑わせるな! そんなこと、できるはずがない!」
暗黒の居間に怒号が響いた。その怒号はただの怒りの叫びにあらず。憎悪と怨念入り混じり、黒い炎で焼き尽くさんとする赫怒の咆哮。
「暴閥界において、上位者からの命令は絶対。従者でしかないお前に、何ができる!!」
怒りに塗り潰され、少女の瞳が激しく血走る。その剣幕に、思わず二の句が継げなくなる。
雅禍の言っていることは正しい。暴閥は元より、この武市において強者からの命令は絶対。弱肉強食の摂理に忠実な武市は、強者からの言葉をなによりの誉とする。それはもはや神託とも言え、逆らえばその時点で死が決定してしまうのだ。
流川や花筏が特殊なだけで、擬巖家を筆頭とするほとんどの暴閥では``弱者は強者に絶対服従。逆らうなら死ね``が当たり前なのである。
そう、なんら間違ってはいない。彼女が流川や花筏という例外ケースを知らない、という点を除いては。
「我が主は寛大な御方。敵意がないと知れば私から口添えができるわ」
「信じられるか。正宗様は既に宣戦を布告された。降伏した私が誅殺されない保証など、どこにあるというのだ」
「それは、だから私が」
「大体、そんな甘言で矛を収めると思っているのか? 間抜けにも惑わされた私の隙を突き、始末するとしか思えないが?」
違う、と言いたいが、逆の立場なら自分もそう思ってしまうと思わず言葉を喉奥へ飲み込んでしまった。次の言葉が出てこないと知るや、雅禍の緊張は最高潮に達する。
澄男らとともに生活を始めて四ヶ月目が経とうとしている今、澄男の間抜けなところが移ってしまったのだろう。よくよく考えなくても、何の保証もない言葉で敵を説得できるわけがなかった。
澄男の真似事でもしようとしたのか、それとも澄男と行動を共にしすぎて自分も馬鹿になってしまったのか。どっちにしろ昔の私を思えば、考えられない行動だ。
何の証拠もない言葉で、人が救えるわけもないというのに。
「なら……勝負しない?」
「……なに?」
突然、意味不明なことを言われ、眉をひそめる。かくいう私も今さっき思いついただけあって、何故今それをしようと思ったのか、理屈では理解できていない。
「この世界は弱肉強食。弱きは食われ、強きが生き残る。ならその摂理に倣い、単純に勝った方が負けた方の言いなりになるってことでどう?」
三舟雅禍と私。位は私の方が上だ。でも戦いが始まろうとしている今では、無意味な差である。
弱肉強食の摂理は、全ての者に公平だ。戦いが始まり、そして決着がついたとき、立っていられた者が勝者であり、格上であり、敗者を含めたその全てを総取りできる。
私の願いを、私の思いを、彼女に突き通すには、もうこの手しかない。
「……なるほど。悪くない提案だ」
血走った剣幕から一転、少女から張り詰めた糸が僅かだが解ける。
「才能があった私を取り立てていただいた恩はある。そうでなければ、私に待っていたのは惨めな死だけだっただろうから」
双剣の柄を握りしめる。同時に、全身から沸々と妖気が漂い始めた。それは彼女の体内霊力を元手に編み出された、濃厚な霊圧。
「私は無能だ。できるなら、お前とお前の主のような関係を築きたかったが……私には戦いの才しかない。ならばせめて、取り立てていただいた御恩に報いるのみ」
雅禍は消えた。だが次の瞬間、持っていた槍が鋼鉄の塊にでもなったかのように重くなり、両腕が悲鳴をあげた。
私からそれなりに距離をあけていたはずだが、私の動体視力をも凌ぐ速度で間合いを抉った。双剣と槍が火花を散らし、霊圧でどこまでも研ぎ澄ませた刃は未曾有の圧力へと化けてのしかかる。
その力は、もはや華奢な少女が放てる代物ではない。肉が、骨が、そして床が。私の脚を伝い、そのことごとくが絶叫した。
霊圧が火花となって辺りを照らす。氷属性霊力を練り込んで防御力を高めるが、彼女の霊圧がことごとく抉り融かしていく。
もはや言葉の語らいは無意味だ。彼女は体内霊力を元手に無理矢理な身体強化を行なっている時点で、その覚悟は生半可な言葉では揺らぐまい。ならば。
「流川本家若頭補佐、水守家当主``凍刹``水守御玲。全身全霊を以て、あなたを討つ!!」
体内霊力を解き放つ。出し惜しみなし、後先考えなしの全力解放。それが何を意味するか、考える必要もない。
澄男のように不死でもなければ、久三男のように神がかった才能もない。況してや弥平のように側近として必要な全ての能力を極めたわけでもない。ただ防御力とタフさに自信があるだけの凡愚。
でも、もしも澄男なら。彼と私が対峙したあのとき、私の全てを受け止め、その全てを許した澄男なら。命を賭して突貫する者が目の前にいて、その者と腹を割って話したいと思った彼ならば―――。
「ごめんなさい……できるなら、あなたの隣をもっと歩んでみたかった……勝手な私を、どうか許して」
交錯する、霊圧。防御も回避も、その全てをかなぐり捨てた。最大限に研ぎ澄ませた刃を、全身全霊で以て振るう。
その刃に乗せたのは霊力でもなければ魔法でも魔術でもない。もっともっと、ずっと強かなもの。今ここに、互いの``命``を賭した戦いが、甲高い産声をあげた。
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