75 / 106
防衛西支部編
地下シェルター前 ~レク・御玲サイド~
しおりを挟む
支部内の防衛組である私、レク・ホーラン、ヒルテ・ジークフリート、ブリュンヒルト、ヴェルナー・ハイゼンベルクは人の気配がしなくなった空のビルの雰囲気を嗜みつつ、澄男らが敵軍を駆逐してくれるのを静かに待っていた。
今回の敵は前回と違い、数は圧倒的に少ないものの、一人一人の質は比べものにならない。一人あたりの平均全能度は五百、それほどの相手ともなれば一般家屋や霊力で強化された高層ビルなど片手で破壊でき、魔術のみならず魔法もある程度使えるほどの強者になる。
その気になれば、たった一人で小国程度一日足らずで滅ぼせる。前回東支部で相手したギャングスターの寄せ集めが、羽虫の大群に思えてくる話である。
本来なら中威区西部都市存亡の危機レベルの戦災なのだが、では私たちにとっても危機的存在なのかと問われれば、実を言うとそうでもない。
矢面に立っているのは、澄男、マザー・ギガレックス、ブルー率いる黒百足、澄連トリオとそのおまけ、そして花筏百代である。
たった四人と五匹だけだが、彼らのような戦いに特化した者たちにとって、全能度五百の軍など何人いようと結果は変わらない。澄男の全能度は通常時で九百近くあり、全ての肉体能力が百を超えている。澄連や百代、黒百足も同様であり、この時点で全員が人類の種族限界を軽く超えている。正直、倒すだけなら普通に殴りかかるだけで十分なのだ。
精々以前のギャングスターを殴るよりも気持ち堅く感じる程度で、体感的には大差ないとすら思うのではなかろうか。少なくとも私の主人は「東支部で相手した雑魚より少し硬い程度の雑魚だった」とか言うだろう。
かくいう私からみても、全能度五百程度はなんら脅威に感じていない。
今まで戦ってきた敵のほとんどが全能度四桁クラスの、国や街はおろか、それこそ人類という種の存亡を脅かす化物ばかりだっただけで、自分の全能度は七百。余程技量に長けている強敵でもない限りは、真正面から敵の攻撃をノーガードで受け切ったとしても、かすり傷一つつかない自信がある。槍を抜くまでもなく、普通に殴るかビンタするだけで首の骨を背骨ごと粉砕することができるだろうし、大軍に魔法や物理でタコ殴りにされても肩凝りがとれるかなぐらいの気分でいられるだろう。
つまりだ。既に十分すぎる戦力が西支部に集中している今、この任務、もはや成功したも同然なのである。むしろ失敗する方が難しいのだが、胸中には一言で言い表せないほど濃密な違和感で一杯だった。
東支部のときと今回。繋がりがあるかどうかは分からないが、敵の思惑が全く見えてこない。
東支部のときは敵の将が欲に塗れていたため、だからこその派兵だったと思えばまだ納得できる。実際敵将は小物だったし、私たちが手を下さずとも東支部の者たちで倒せたぐらいだ。しかし実際は、明らかにその小物が従えられないような強者が、東支部の請負人を皆殺しにするために派遣されていた。
その思惑と因果関係は不明のまま東支部の主犯は何者かによって皆殺しにされ、真実への糸口は闇へと葬られたが、そのタイミングを見計らっていたかのように、今回の派兵である。
物的証拠は何もないが、敵の軍の派兵状況を読む限り、何者かが任務請負機関支部を潰そうとしている。何を目的にしているのかは分からないが、推測できる限りでは支部を掌握することで、中威区の実権をより確固なものにしようとしているのではないだろうか。
その先に求めているものまでは流石に推測すらできない。だが現実問題として東支部の掌握が失敗した今、敵の目論みの一つは潰せているはずだ。そして今回、西支部に差し向けられた敵の力は東支部のときの比ではない。もしかして、私たちがここに来るのを見越して戦力を持ってきているのだとしたら―――。
「どうした、えらく難しい顔してんな」
意識を没入させていたせいか、表情に出ていたらしい。心配になったのか、レク・ホーランの気持ち優しめの声音が鼓膜を撫でた。
一人で考えたところで答えは出ない。気を抜くわけではないが、胸の奥に刺さった棘を早めに抜いておきたいし、場数を踏んでいる者の考えを聞くのは決して悪い策ではないはずだ。
「敵の動きがあまりにも安直だなと思いまして」
「平均全能度五百の軍が侵攻しにきてる現状を、果たして安直の一言で済ませていいもんなのかね……」
予想していなかった返事に少し眉を顰めるが、レク・ホーラン視点に立ってみて、無理もないかと認識を修正する。
私たちからすれば一人あたりの強さが割増した程度でしかなく、前回も今回もあまり大した戦力差を感じていない。だがそれは私たちが流川に名を連ねる者だからで、レク・ホーランらからすれば西部都市を灰燼に帰する戦力として脅威視するのも無理からぬことだ。
彼もまた黒百足や澄男など、めっぽう力が強い者を前衛に置いていることから、油断は全くしていない。それが普通の反応なのだ。
「それに今回と前回がつながっている証拠もない……昨日の今日なのは、確かに何かしらありそうな気はするが、結局は気がする程度の話だしな……」
やはりレク・ホーランの認識を変えるのは難しい。彼の考えも一理あるからだ。
東支部で捕らえた者たちは、この中威区西部都市で皆殺しにされた。そして今日、謎の大軍が西支部に攻めてきている。これは偶然なのか必然なのか。それを判断する材料は、残念ながら手元にない。私たちは何故大軍が攻めてきているのか、その原因の調査を言い渡されているわけでもなし、ならば粛々と、その大軍を対処するしかないというのが妥当な結論になる。
「……ジークフリートさん」
暇そうに床に座り込んでうつらうつらと頭を揺らす男に、毅然とした態度で視線を投げる。
支部の監督官ともあろう者が防衛任務の最中に、それも平均全能度五百の軍が侵攻している現状下で居眠りができるのは中々の胆力と褒めてもいいが、裏を返せば危機感の不足とも言える。
確かに今、何一つとして逼迫していないが、私たちがいなければ抵抗という抵抗もできぬまま西支部は滅びていたのだ。少しくらいは緊張感を持っていて欲しいものである。
「聞きたいことがあるんですけど、今回のような事態は、西部都市ではよくあることなのですか?」
「いやー……滅多にねーかなー。上威区との街境付近ならあるかもしれねーが、ここは西部都市でも都心だし……」
眠たそうな目を擦り、私を見上げてくる西支部の監督官は、間抜けに欠伸をしながら頭を掻き、唸った。
「アンタたち外から来たんじゃないのね? だったら``西戦の壁``の存在は知ってるわよね、そう簡単に湧いて出てこれたら、みんな過労死しちゃうのね!」
ヒルテ・ジークフリートを擁護するように、近くをひらひらと蝶のように飛んでいた幼女が、不遜にも指を刺してがなり立ててくる。
それくらい知っとけよみたいな高圧的な態度は少し釈然としないが、確かにあの高く聳え立つ壁がある限り、並大抵の勢力は西部都市へ侵攻できない。それこそ壁を力づくで粉砕できるほどの高い膂力を持つ者か、転移魔法を使って壁やバリアを無視できる者に限られてくる。
「でもあの壁は、上威区街境付近までは建設されてねーからな。あそこからこっそり入ってきた可能性はなくもねーぞ」
「そんなのあまりにも低確率な話なのね、あそこがどれだけ激戦区か、知らないアンタじゃないのね!」
いやそうだけどよ、と面倒くさげに頭を掻くヒルテ・ジークフリート。
上威区の街境ともなると、そこは上威区へ勢力を伸ばしたい中威区各種勢力と、それらを排する上威区各種勢力が日夜血で血を洗う戦いを繰り広げているはず。常時戦場なわけだ。
戦火が絶えぬその場所から、誰からも目をつけられず都心まで侵攻するのは中々難しい。それ相応の実力がない限り、数多の火の粉を浴びて焼き尽くされてしまうからだ。
しかし現状、転移魔法なくして``西戦の壁``を超えるには、激戦区を経由して都心に向かうルートしか存在しない。一歩間違えれば戦火に焼き尽くされるリスクを背負ってまで、西支部を侵略したいのは何故なのか。侵略することで、彼らは何を得ようとしているのか。そのリスクに見合う、リターンとは。
「……仕方ないわね」
私は弥平ほど聡明でもなければ博識でもない。彼ならば僅かな情報から真実に容易く辿り着けるだろう。
彼はいま専従任務についており、通信管制を敷いている関係で直接霊子通信を送ることはできないが、代わりに久三男が窓口になってくれる。彼もかなり頭が回るので、的確な助言がもらえるはずだ。
頭の中で結論を出し、秘匿回線を用いて久三男へ霊子通信を繋ごうとしたそのとき。
「ブリューン!?」
さっきまで眠そうにしていたヒルテ・ジークフリートが突然立ち上がり、虚空に向かって叫びだす。
誰かに向かって話しているわけではないが、あたかも誰かに向かって話しているように見えるあたり、霊子通信による会話だ。それも全員にチャンネルしていないということは、相手側がなにかしら逼迫した事態に陥っているということ。
ブリューンといえば作戦会議のときにいた、金と黒のメッシュといったファンキーな髪形をしている請負人の女の子、ブリュンヒルトのことだ。
各々が所定の位置についた後、彼女はトイレに行くといって席を外していた。今思えば彼女が席を外して既に三十分以上経つ。
女の子だからトイレにかかる時間はそれなりにあるだろうと思うが、流石に長すぎる。
「やべーな。ブリューンが人質に取られた。俺一人で行かなきゃなんねー」
「相手は誰だ」
「ブリューンの口振りからして、多分機関則関係でなにかしらポカやらかしたせいでクビになった請負人の誰かだと思う。請負証剥奪処分の逆恨みってとこじゃねーかなぁ……」
「西支部らしい理由だぜ、まったくよう……」
やれやれと呟いて肩を竦める。
仲間が人質に取られたのに異様な落ち着きようだが、今この状況で焦るようなら器ではないだろう。
外部からの侵入を許してしまったのは痛手だが、相手がヒルテ・ジークフリートとの一対一を望んでいる以上、ブリュンヒルトの生存率を高めるためには一人で行くしかない。
私やレク・ホーランはどちらにせよこの場から離れられないし、なにより身内の不始末だから私たちが関わることでもないはずだ。
「ベルはここにいろ。俺が一人で……」
「兄貴ィィィィ!!」
次から次へと。支部ビル地下一階フロアから、何者かが凄まじい勢いで駆け上がってくる喧しい音が鼓膜を無造作に貫く。
地下にいるだけに音が反響して中々うるさいが、地下二階の避難シェルターフロアから顔を出したモヒカン頭が、息も絶え絶えの様子でヒルテ・ジークフリートへと駆け寄った。
「あ、兄貴!! やべぇっす!! マジやべぇ!!」
髪型がモヒカンなだけに語彙力もないのだろうか。暢気な偏見にほんの僅かに思考を巡らすが、過呼吸気味に走り寄ったその男の顔色が、完全に血の気が引いているのを見て思考を切り替える。
「とりあえず落ち着けよ。何があった」
モヒカン頭からただならぬものを感じているのだろう。脂汗を滲ませるモヒカン頭の肩に、眉間にしわを寄せながらも優しく手を置いた。
「な、仲間が殺られた!! どこからか湧いて出たか分かんねぇが、突然仲間が斬りつけられて……!!」
焦りがまだ残っているのか、説明がちぐはぐだ。しかしそれでもやべぇしか言えなかったさっきよりも明確になった。
「……地下二階への出入り口は、この階段以外になかったよな?」
拙い説明とはいえ、レク・ホーランもヒルテ・ジークフリートも目を丸くする。特にレク・ホーランは表向き冷静だが、額には僅かに汗が滲んでいた。
「あ、ああ。ここの階段以外からは行けないはずだ。穴でも掘らない限りはな」
苦笑い気味だが、彼からも焦りの色が隠せていない。
「とりあえず俺はブリューンの所に行く。ベル、お前はレクたちについていけ」
レク・ホーランとヴェルナー・ハイゼンベルクは真剣な面差しで首を縦に振る。一階ロビーへの階段を駆け上がっていくヒルテ・ジークフリートを見送りつつ、思考を深めた。
支部ビルは曲がりなりにも戦闘を前提において建設されているため、その実態は要塞である。使われている建材はただの霊力コンクリートなどではなく、対戦略級魔法用に特殊強化された建材が使われている。少なくとも戦術核規模の攻撃魔法ではビクともしない。
確かにシェルターは地下にあるが、地道に穴を掘って壁を突き破るなんて真似は現実的ではない。魔法的に装甲と化した建材を、人の力で破るのは至難だからだ。そうなると考えられる手段は―――。
「転移魔法……?」
ぼそりと呟くと、勢い良く私へ熱烈な視線を浴びせられる。
空間転移魔法``顕現``。任意の空間座標へ一瞬で移動できるその魔法は、既に失伝してしまっている伝説の大魔法。使用できる魔導師は世の中に存在しない、というのが通説だ。
大陸八暴閥が一柱、暴閥界最強たる流川家を除けば。
「レクさん、私は転移魔法を前提に動きます。異論はありますか?」
とりあえず体裁的に彼の顔色を窺っておく。
正直、転移魔法を使うような相手を前にして、悠長な真似をしている暇などないのだが、私が勝手な行動をすれば、それだけ自軍に混乱が生じかねない。その僅かな混乱が戦局の天秤を傾けかねない以上、レク・ホーランだけでも合意をとっておいた方が結果的に自軍の損害は減らせるはずだ。
「馬鹿言うな……と一蹴したい気分だが、この現状でそれ以外考えらんねぇ……か」
やはり腑には落ちていないようだが、受け入れはしたようだ。
テスと戦ったとき、澄男が彼の前で転移魔法の使用を仄めかしたことがあったが、あの出来事のお陰で飲み込みやすくなっているのかもしれない。当時は早まった真似をしたなと思っていたが、結果的に今回の無駄は減らせたのだから重畳である。
「しかし……転移魔法の使い手と渡り合うなんざ初めてだぞ。どうしたもんか……」
「本来なら敢えてここで待機して迎え撃つのが定石ですが……」
今までの修行内容を脳内で総動員させる。
戦の際、流川家が魔法戦術の十八番として用いていた有名なもので、``転移強襲``という戦術が存在する。
転移強襲とは文字通り、敵陣営の中心を刷り込み済みの魔生物で強襲し、中枢を撹乱させて戦力や指揮系統を破壊した後、追い討ちとばかりに攻略本隊を転移させ、一気呵成に敵軍を殲滅する戦術である。
武力統一大戦時代、流川家は転移魔法の絶対優位を最大限に活かし、自身に敵対するあらゆるの勢力を、この戦術でことごとく葬り去ってきた。
転移魔法を真似ようとした国も当然あったが、転移魔法は非常に高度な無系魔法であり、二千年にわたる大戦時代を経て完全に物にしてみせた流川家のようにはいかず、結局流川以外どの勢力も習得することのできないまま、流川の手によって消滅させられてしまった。
転移強襲をしてくることが分かっているのならば、転移してくる場所は予測できてしまう。だからと対処できるかと問われれば大半の者なら不可能だろうが、相手の力量次第では不可能ではない。要は即死さえしなければ、自身の肉体能力や回復手段、単純な胆力次第でなんとかなるからだ。
そもそも転移強襲は、一定水準以上の戦闘能力を持った魔生物を敵陣の中央に転移させることで、敵軍の中枢を撹乱もしくは破壊するのを前提に組み立てられた戦術である。
この場において自軍の中枢は私たち。ならば私たちの下へ強襲をかけるのが自然であり、既に私たちを警戒させてしまった以上、戦術的に半分は失敗しているのと同義なのだ。
何故敵は私たちの下へ強襲をかけなかったのか。推測するなら思い浮かぶのは一つのみ。
「西支部請負人の暗殺……?」
敵の目的は、東支部のときと同じく請負人の暗殺の可能性。だとするとここで敵が来るのを待っていても意味はない。目的を果たせば転移で西支部ビルから撤退すればいい話であり、私たちと戦う必要はないからだ。
東支部のときといい、今回といい、何故支部請負人の虐殺に拘るのか不明だが、推測が正しければ悠長に思考に耽っている暇はない。
「至急シェルターに向かいましょう。手遅れになる前に……」
私が俯きげに言うと、他も静かに頷いて階段を走って降りる私に続いたのだった。
今回の敵は前回と違い、数は圧倒的に少ないものの、一人一人の質は比べものにならない。一人あたりの平均全能度は五百、それほどの相手ともなれば一般家屋や霊力で強化された高層ビルなど片手で破壊でき、魔術のみならず魔法もある程度使えるほどの強者になる。
その気になれば、たった一人で小国程度一日足らずで滅ぼせる。前回東支部で相手したギャングスターの寄せ集めが、羽虫の大群に思えてくる話である。
本来なら中威区西部都市存亡の危機レベルの戦災なのだが、では私たちにとっても危機的存在なのかと問われれば、実を言うとそうでもない。
矢面に立っているのは、澄男、マザー・ギガレックス、ブルー率いる黒百足、澄連トリオとそのおまけ、そして花筏百代である。
たった四人と五匹だけだが、彼らのような戦いに特化した者たちにとって、全能度五百の軍など何人いようと結果は変わらない。澄男の全能度は通常時で九百近くあり、全ての肉体能力が百を超えている。澄連や百代、黒百足も同様であり、この時点で全員が人類の種族限界を軽く超えている。正直、倒すだけなら普通に殴りかかるだけで十分なのだ。
精々以前のギャングスターを殴るよりも気持ち堅く感じる程度で、体感的には大差ないとすら思うのではなかろうか。少なくとも私の主人は「東支部で相手した雑魚より少し硬い程度の雑魚だった」とか言うだろう。
かくいう私からみても、全能度五百程度はなんら脅威に感じていない。
今まで戦ってきた敵のほとんどが全能度四桁クラスの、国や街はおろか、それこそ人類という種の存亡を脅かす化物ばかりだっただけで、自分の全能度は七百。余程技量に長けている強敵でもない限りは、真正面から敵の攻撃をノーガードで受け切ったとしても、かすり傷一つつかない自信がある。槍を抜くまでもなく、普通に殴るかビンタするだけで首の骨を背骨ごと粉砕することができるだろうし、大軍に魔法や物理でタコ殴りにされても肩凝りがとれるかなぐらいの気分でいられるだろう。
つまりだ。既に十分すぎる戦力が西支部に集中している今、この任務、もはや成功したも同然なのである。むしろ失敗する方が難しいのだが、胸中には一言で言い表せないほど濃密な違和感で一杯だった。
東支部のときと今回。繋がりがあるかどうかは分からないが、敵の思惑が全く見えてこない。
東支部のときは敵の将が欲に塗れていたため、だからこその派兵だったと思えばまだ納得できる。実際敵将は小物だったし、私たちが手を下さずとも東支部の者たちで倒せたぐらいだ。しかし実際は、明らかにその小物が従えられないような強者が、東支部の請負人を皆殺しにするために派遣されていた。
その思惑と因果関係は不明のまま東支部の主犯は何者かによって皆殺しにされ、真実への糸口は闇へと葬られたが、そのタイミングを見計らっていたかのように、今回の派兵である。
物的証拠は何もないが、敵の軍の派兵状況を読む限り、何者かが任務請負機関支部を潰そうとしている。何を目的にしているのかは分からないが、推測できる限りでは支部を掌握することで、中威区の実権をより確固なものにしようとしているのではないだろうか。
その先に求めているものまでは流石に推測すらできない。だが現実問題として東支部の掌握が失敗した今、敵の目論みの一つは潰せているはずだ。そして今回、西支部に差し向けられた敵の力は東支部のときの比ではない。もしかして、私たちがここに来るのを見越して戦力を持ってきているのだとしたら―――。
「どうした、えらく難しい顔してんな」
意識を没入させていたせいか、表情に出ていたらしい。心配になったのか、レク・ホーランの気持ち優しめの声音が鼓膜を撫でた。
一人で考えたところで答えは出ない。気を抜くわけではないが、胸の奥に刺さった棘を早めに抜いておきたいし、場数を踏んでいる者の考えを聞くのは決して悪い策ではないはずだ。
「敵の動きがあまりにも安直だなと思いまして」
「平均全能度五百の軍が侵攻しにきてる現状を、果たして安直の一言で済ませていいもんなのかね……」
予想していなかった返事に少し眉を顰めるが、レク・ホーラン視点に立ってみて、無理もないかと認識を修正する。
私たちからすれば一人あたりの強さが割増した程度でしかなく、前回も今回もあまり大した戦力差を感じていない。だがそれは私たちが流川に名を連ねる者だからで、レク・ホーランらからすれば西部都市を灰燼に帰する戦力として脅威視するのも無理からぬことだ。
彼もまた黒百足や澄男など、めっぽう力が強い者を前衛に置いていることから、油断は全くしていない。それが普通の反応なのだ。
「それに今回と前回がつながっている証拠もない……昨日の今日なのは、確かに何かしらありそうな気はするが、結局は気がする程度の話だしな……」
やはりレク・ホーランの認識を変えるのは難しい。彼の考えも一理あるからだ。
東支部で捕らえた者たちは、この中威区西部都市で皆殺しにされた。そして今日、謎の大軍が西支部に攻めてきている。これは偶然なのか必然なのか。それを判断する材料は、残念ながら手元にない。私たちは何故大軍が攻めてきているのか、その原因の調査を言い渡されているわけでもなし、ならば粛々と、その大軍を対処するしかないというのが妥当な結論になる。
「……ジークフリートさん」
暇そうに床に座り込んでうつらうつらと頭を揺らす男に、毅然とした態度で視線を投げる。
支部の監督官ともあろう者が防衛任務の最中に、それも平均全能度五百の軍が侵攻している現状下で居眠りができるのは中々の胆力と褒めてもいいが、裏を返せば危機感の不足とも言える。
確かに今、何一つとして逼迫していないが、私たちがいなければ抵抗という抵抗もできぬまま西支部は滅びていたのだ。少しくらいは緊張感を持っていて欲しいものである。
「聞きたいことがあるんですけど、今回のような事態は、西部都市ではよくあることなのですか?」
「いやー……滅多にねーかなー。上威区との街境付近ならあるかもしれねーが、ここは西部都市でも都心だし……」
眠たそうな目を擦り、私を見上げてくる西支部の監督官は、間抜けに欠伸をしながら頭を掻き、唸った。
「アンタたち外から来たんじゃないのね? だったら``西戦の壁``の存在は知ってるわよね、そう簡単に湧いて出てこれたら、みんな過労死しちゃうのね!」
ヒルテ・ジークフリートを擁護するように、近くをひらひらと蝶のように飛んでいた幼女が、不遜にも指を刺してがなり立ててくる。
それくらい知っとけよみたいな高圧的な態度は少し釈然としないが、確かにあの高く聳え立つ壁がある限り、並大抵の勢力は西部都市へ侵攻できない。それこそ壁を力づくで粉砕できるほどの高い膂力を持つ者か、転移魔法を使って壁やバリアを無視できる者に限られてくる。
「でもあの壁は、上威区街境付近までは建設されてねーからな。あそこからこっそり入ってきた可能性はなくもねーぞ」
「そんなのあまりにも低確率な話なのね、あそこがどれだけ激戦区か、知らないアンタじゃないのね!」
いやそうだけどよ、と面倒くさげに頭を掻くヒルテ・ジークフリート。
上威区の街境ともなると、そこは上威区へ勢力を伸ばしたい中威区各種勢力と、それらを排する上威区各種勢力が日夜血で血を洗う戦いを繰り広げているはず。常時戦場なわけだ。
戦火が絶えぬその場所から、誰からも目をつけられず都心まで侵攻するのは中々難しい。それ相応の実力がない限り、数多の火の粉を浴びて焼き尽くされてしまうからだ。
しかし現状、転移魔法なくして``西戦の壁``を超えるには、激戦区を経由して都心に向かうルートしか存在しない。一歩間違えれば戦火に焼き尽くされるリスクを背負ってまで、西支部を侵略したいのは何故なのか。侵略することで、彼らは何を得ようとしているのか。そのリスクに見合う、リターンとは。
「……仕方ないわね」
私は弥平ほど聡明でもなければ博識でもない。彼ならば僅かな情報から真実に容易く辿り着けるだろう。
彼はいま専従任務についており、通信管制を敷いている関係で直接霊子通信を送ることはできないが、代わりに久三男が窓口になってくれる。彼もかなり頭が回るので、的確な助言がもらえるはずだ。
頭の中で結論を出し、秘匿回線を用いて久三男へ霊子通信を繋ごうとしたそのとき。
「ブリューン!?」
さっきまで眠そうにしていたヒルテ・ジークフリートが突然立ち上がり、虚空に向かって叫びだす。
誰かに向かって話しているわけではないが、あたかも誰かに向かって話しているように見えるあたり、霊子通信による会話だ。それも全員にチャンネルしていないということは、相手側がなにかしら逼迫した事態に陥っているということ。
ブリューンといえば作戦会議のときにいた、金と黒のメッシュといったファンキーな髪形をしている請負人の女の子、ブリュンヒルトのことだ。
各々が所定の位置についた後、彼女はトイレに行くといって席を外していた。今思えば彼女が席を外して既に三十分以上経つ。
女の子だからトイレにかかる時間はそれなりにあるだろうと思うが、流石に長すぎる。
「やべーな。ブリューンが人質に取られた。俺一人で行かなきゃなんねー」
「相手は誰だ」
「ブリューンの口振りからして、多分機関則関係でなにかしらポカやらかしたせいでクビになった請負人の誰かだと思う。請負証剥奪処分の逆恨みってとこじゃねーかなぁ……」
「西支部らしい理由だぜ、まったくよう……」
やれやれと呟いて肩を竦める。
仲間が人質に取られたのに異様な落ち着きようだが、今この状況で焦るようなら器ではないだろう。
外部からの侵入を許してしまったのは痛手だが、相手がヒルテ・ジークフリートとの一対一を望んでいる以上、ブリュンヒルトの生存率を高めるためには一人で行くしかない。
私やレク・ホーランはどちらにせよこの場から離れられないし、なにより身内の不始末だから私たちが関わることでもないはずだ。
「ベルはここにいろ。俺が一人で……」
「兄貴ィィィィ!!」
次から次へと。支部ビル地下一階フロアから、何者かが凄まじい勢いで駆け上がってくる喧しい音が鼓膜を無造作に貫く。
地下にいるだけに音が反響して中々うるさいが、地下二階の避難シェルターフロアから顔を出したモヒカン頭が、息も絶え絶えの様子でヒルテ・ジークフリートへと駆け寄った。
「あ、兄貴!! やべぇっす!! マジやべぇ!!」
髪型がモヒカンなだけに語彙力もないのだろうか。暢気な偏見にほんの僅かに思考を巡らすが、過呼吸気味に走り寄ったその男の顔色が、完全に血の気が引いているのを見て思考を切り替える。
「とりあえず落ち着けよ。何があった」
モヒカン頭からただならぬものを感じているのだろう。脂汗を滲ませるモヒカン頭の肩に、眉間にしわを寄せながらも優しく手を置いた。
「な、仲間が殺られた!! どこからか湧いて出たか分かんねぇが、突然仲間が斬りつけられて……!!」
焦りがまだ残っているのか、説明がちぐはぐだ。しかしそれでもやべぇしか言えなかったさっきよりも明確になった。
「……地下二階への出入り口は、この階段以外になかったよな?」
拙い説明とはいえ、レク・ホーランもヒルテ・ジークフリートも目を丸くする。特にレク・ホーランは表向き冷静だが、額には僅かに汗が滲んでいた。
「あ、ああ。ここの階段以外からは行けないはずだ。穴でも掘らない限りはな」
苦笑い気味だが、彼からも焦りの色が隠せていない。
「とりあえず俺はブリューンの所に行く。ベル、お前はレクたちについていけ」
レク・ホーランとヴェルナー・ハイゼンベルクは真剣な面差しで首を縦に振る。一階ロビーへの階段を駆け上がっていくヒルテ・ジークフリートを見送りつつ、思考を深めた。
支部ビルは曲がりなりにも戦闘を前提において建設されているため、その実態は要塞である。使われている建材はただの霊力コンクリートなどではなく、対戦略級魔法用に特殊強化された建材が使われている。少なくとも戦術核規模の攻撃魔法ではビクともしない。
確かにシェルターは地下にあるが、地道に穴を掘って壁を突き破るなんて真似は現実的ではない。魔法的に装甲と化した建材を、人の力で破るのは至難だからだ。そうなると考えられる手段は―――。
「転移魔法……?」
ぼそりと呟くと、勢い良く私へ熱烈な視線を浴びせられる。
空間転移魔法``顕現``。任意の空間座標へ一瞬で移動できるその魔法は、既に失伝してしまっている伝説の大魔法。使用できる魔導師は世の中に存在しない、というのが通説だ。
大陸八暴閥が一柱、暴閥界最強たる流川家を除けば。
「レクさん、私は転移魔法を前提に動きます。異論はありますか?」
とりあえず体裁的に彼の顔色を窺っておく。
正直、転移魔法を使うような相手を前にして、悠長な真似をしている暇などないのだが、私が勝手な行動をすれば、それだけ自軍に混乱が生じかねない。その僅かな混乱が戦局の天秤を傾けかねない以上、レク・ホーランだけでも合意をとっておいた方が結果的に自軍の損害は減らせるはずだ。
「馬鹿言うな……と一蹴したい気分だが、この現状でそれ以外考えらんねぇ……か」
やはり腑には落ちていないようだが、受け入れはしたようだ。
テスと戦ったとき、澄男が彼の前で転移魔法の使用を仄めかしたことがあったが、あの出来事のお陰で飲み込みやすくなっているのかもしれない。当時は早まった真似をしたなと思っていたが、結果的に今回の無駄は減らせたのだから重畳である。
「しかし……転移魔法の使い手と渡り合うなんざ初めてだぞ。どうしたもんか……」
「本来なら敢えてここで待機して迎え撃つのが定石ですが……」
今までの修行内容を脳内で総動員させる。
戦の際、流川家が魔法戦術の十八番として用いていた有名なもので、``転移強襲``という戦術が存在する。
転移強襲とは文字通り、敵陣営の中心を刷り込み済みの魔生物で強襲し、中枢を撹乱させて戦力や指揮系統を破壊した後、追い討ちとばかりに攻略本隊を転移させ、一気呵成に敵軍を殲滅する戦術である。
武力統一大戦時代、流川家は転移魔法の絶対優位を最大限に活かし、自身に敵対するあらゆるの勢力を、この戦術でことごとく葬り去ってきた。
転移魔法を真似ようとした国も当然あったが、転移魔法は非常に高度な無系魔法であり、二千年にわたる大戦時代を経て完全に物にしてみせた流川家のようにはいかず、結局流川以外どの勢力も習得することのできないまま、流川の手によって消滅させられてしまった。
転移強襲をしてくることが分かっているのならば、転移してくる場所は予測できてしまう。だからと対処できるかと問われれば大半の者なら不可能だろうが、相手の力量次第では不可能ではない。要は即死さえしなければ、自身の肉体能力や回復手段、単純な胆力次第でなんとかなるからだ。
そもそも転移強襲は、一定水準以上の戦闘能力を持った魔生物を敵陣の中央に転移させることで、敵軍の中枢を撹乱もしくは破壊するのを前提に組み立てられた戦術である。
この場において自軍の中枢は私たち。ならば私たちの下へ強襲をかけるのが自然であり、既に私たちを警戒させてしまった以上、戦術的に半分は失敗しているのと同義なのだ。
何故敵は私たちの下へ強襲をかけなかったのか。推測するなら思い浮かぶのは一つのみ。
「西支部請負人の暗殺……?」
敵の目的は、東支部のときと同じく請負人の暗殺の可能性。だとするとここで敵が来るのを待っていても意味はない。目的を果たせば転移で西支部ビルから撤退すればいい話であり、私たちと戦う必要はないからだ。
東支部のときといい、今回といい、何故支部請負人の虐殺に拘るのか不明だが、推測が正しければ悠長に思考に耽っている暇はない。
「至急シェルターに向かいましょう。手遅れになる前に……」
私が俯きげに言うと、他も静かに頷いて階段を走って降りる私に続いたのだった。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
底辺エンジニア、転生したら敵国側だった上に隠しボスのご令嬢にロックオンされる。~モブ×悪女のドール戦記~
阿澄飛鳥
SF
俺ことグレン・ハワードは転生者だ。
転生した先は俺がやっていたゲームの世界。
前世では機械エンジニアをやっていたので、こっちでも祝福の【情報解析】を駆使してゴーレムの技師をやっているモブである。
だがある日、工房に忍び込んできた女――セレスティアを問い詰めたところ、そいつはなんとゲームの隠しボスだった……!
そんなとき、街が魔獣に襲撃される。
迫りくる魔獣、吹き飛ばされるゴーレム、絶体絶命のとき、俺は何とかセレスティアを助けようとする。
だが、俺はセレスティアに誘われ、少女の形をした魔導兵器、ドール【ペルラネラ】に乗ってしまった。
平民で魔法の才能がない俺が乗ったところでドールは動くはずがない。
だが、予想に反して【ペルラネラ】は起動する。
隠しボスとモブ――縁のないはずの男女二人は精神を一つにして【ペルラネラ】での戦いに挑む。

【完結】ご都合主義で生きてます。-商売の力で世界を変える。カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく-
ジェルミ
ファンタジー
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
その条件として女神に『面白楽しく生活でき、苦労をせずお金を稼いで生きていくスキルがほしい』と無理難題を言うのだった。
困った女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
この味気ない世界を、創生魔法とカスタマイズ可能なストレージを使い、美味しくなる調味料や料理を作り世界を変えて行く。
はい、ご注文は?
調味料、それとも武器ですか?
カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく。
村を開拓し仲間を集め国を巻き込む産業を起こす。
いずれは世界へ通じる道を繋げるために。
※本作はカクヨム様にも掲載しております。
引きこもり転生エルフ、仕方なく旅に出る
Greis
ファンタジー
旧題:引きこもり転生エルフ、強制的に旅に出される
・2021/10/29 第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞 こちらの賞をアルファポリス様から頂く事が出来ました。
実家暮らし、25歳のぽっちゃり会社員の俺は、日ごろの不摂生がたたり、読書中に死亡。転生先は、剣と魔法の世界の一種族、エルフだ。一分一秒も無駄にできない前世に比べると、だいぶのんびりしている今世の生活の方が、自分に合っていた。次第に、兄や姉、友人などが、見分のために外に出ていくのを見送る俺を、心配しだす両親や師匠たち。そしてついに、(強制的に)旅に出ることになりました。
※のんびり進むので、戦闘に関しては、話数が進んでからになりますので、ご注意ください。
俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜
早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。
食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した!
しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……?
「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」
そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。
無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!
【完結】神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ~胸を張って彼女と再会するために自分磨きの旅へ!~
川原源明
ファンタジー
秋津直人、85歳。
50年前に彼女の進藤茜を亡くして以来ずっと独身を貫いてきた。彼の傍らには彼女がなくなった日に出会った白い小さな子犬?の、ちび助がいた。
嘗ては、救命救急センターや外科で医師として活動し、多くの命を救って来た直人、人々に神様と呼ばれるようになっていたが、定年を迎えると同時に山を買いプライベートキャンプ場をつくり余生はほとんどここで過ごしていた。
彼女がなくなって50年目の命日の夜ちび助とキャンプを楽しんでいると意識が遠のき、気づけば辺りが真っ白な空間にいた。
白い空間では、創造神を名乗るネアという女性と、今までずっとそばに居たちび助が人の子の姿で土下座していた。ちび助の不注意で茜君が命を落とし、謝罪の意味を込めて、創造神ネアの創る世界に、茜君がすでに転移していることを教えてくれた。そして自分もその世界に転生させてもらえることになった。
胸を張って彼女と再会できるようにと、彼女が降り立つより30年前に転生するように創造神ネアに願った。
そして転生した直人は、新しい家庭でナットという名前を与えられ、ネア様と、阿修羅様から貰った加護と学生時代からやっていた格闘技や、仕事にしていた医術、そして趣味の物作りやサバイバル技術を活かし冒険者兼医師として旅にでるのであった。
まずは最強の称号を得よう!
地球では神様と呼ばれた医師の異世界転生物語
※元ヤンナース異世界生活 ヒロイン茜ちゃんの彼氏編
※医療現場の恋物語 馴れ初め編
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる