無頼少年記 ~最強の戦闘民族の末裔、父親に植えつけられた神話のドラゴンをなんとかしたいので、冒険者ギルドに就職する~

ANGELUS

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防衛西支部編

ようやく始まる作戦会議

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 毎度のことながら、金髪野郎御用達の空飛ぶクソカッコいい車で北支部がある中威区なかのいく北部都市郊外から、中威区なかのいく西部都市境界線までやってきた。金髪野郎は何故かそこで車を止め、全員車から降りるよう指示してくる。

「おい、なんでこんな所で降りるんだよ。あんな壁、この車なら余裕で超えられるだろ」

 まだ目的地までは数十キロメトほどあると思うが、俺たちの道のりを阻むように、霊力コンクリでできているであろう、灰色の壁が空高く聳え立っていた。

 正直高すぎて首を最大限傾けて見上げても末端が見えないし、左も右も無限に続いているんじゃないかと思うほどずっと続いているが、何も無限に続いているわけもない。金髪野郎の車は空を飛べるので、どれだけ高い壁だろうが飛び越えられるはずだ。

「この壁は通称``西戦せいせんの壁``って呼ばれててな。原則出入りできない仕様になってんだよ」

 また金髪野郎の雑学談義が始まった。

 俺たちの前の行く手を阻むように聳え立つクソ高い壁``西戦せいせんの壁``は、今から十年以上昔、中威区なかのいく西部都市にて起こる紛争が他の都市に飛び火するのを防ぐため、``任務長``ラークラー・ヴェナンディグラムが八大魔導師の一柱ひとりである``地のグランダル``テラース・グランダルに造らせた、地属性系戦略級防御壁である。

 高さ一万八千キロメト、円周九千キロメトに及ぶその広大な防御壁は、壁の頂上を頂点にして中威区なかのいく西部都市全体を覆う超大規模結界が天空に展開されており、その結界に探知されると``雷のアーサーソルド``キトー・アーサーソルドによる超長距離精密雷属性系魔法狙撃により、如何なる物体もたちまち撃墜・消滅させられてしまう。

 この防御壁を越えるには、あらかじめ本部に出入りの許可を得ている必要があるが、俺たちは本部からの特待受注任務を帯びて此処に来ている。通れなかったら、どうやって任務を果たせばいいのかって話になる。

「だからって車置いてくこたぁねぇだろうよ……」

 とりあえず壁のことは理解した。確かに言われてみれば中威区なかのいく西部都市は中威区なかのいく内じゃ最も治安の悪い闇都市。二十四時間単位で情勢が変化する激戦区で、その戦火が他の都市に飛び火するなんざ傍迷惑この上ない。他を巻き込まない形で勝手に潰し合う分には好きにしたらいいが、日夜紛争しているような奴らに、そんな殊勝な気遣いを期待するだけ馬鹿を見るだけだ。だったら隔離してしまった方が速いし確実なのはスジが通った話ではある。

 それでも俺たちが乗ってきた車は金髪野郎の私物だ。俺たちは本部からの特待受注任務を帯びて西部都市へ入ろうとしている身で、既に出入りの許可は本部から得ている。だったら金髪野郎の私物であるクソカッコいい車を乗って行っても特段問題にならないはずだ。

「西部都市は探知系魔法が編み込まれた高度な結界に覆われてて、それに探知されると問答無用で``雷のアーサーソルド``に狙撃されるって話をさっきしたろ?」

「それがどうした」

「この車は確かに俺の私物だが、残念ながら狙撃対象に例外はない。たとえ請負人の私物でも、一定の武装が施された飛翔体は撃墜されちまう」

「いやだから俺らって出入りの許可とってんだろ? なんで撃墜されなきゃならねぇんだよ」

「例えばだ。この車が西部都市の連中に盗まれたとする。そうなると、ソイツらはどうする?」

「……運転して遠くに逃げる?」

「それもあるが、俺の車は特注でな。自衛ができるよう、一定の武装が施してある。そんな特殊車両が紛争に参加してるギャングスターどもの手に渡っちまったりしたら?」

 そこまで言われ、ぐうの音も出なくなる。

 確かに、そんな事態になれば面倒なことになるのは目に見えている。劣勢を悟った奴らが逃走手段として金髪野郎の車を盗まない保証はどこにもなく、武装も施してあるならそのまま盗んで紛争に利用することくらい、何食わぬ顔でしやがるだろう。

 西部都市の外に逃げられでもしたら捕まえるのは至難となり、紛争に利用されれば間接的にとはいえ金髪野郎含めた俺らが紛争に加担したと周囲から認識されかねない。そう考えると、覇権争いに熱中しているギャングスターや中小暴閥ぼうばつに油を注ぐような事態になるくらいなら、例外なく結界に干渉しようとする全ての物体を破壊してしまった方が確実ということになる。

 治安が悪すぎるってのはこうも面倒でかったるいのかと内心辟易する。

「つーわけで、俺の車は此処でお役御免だ。幸い此処は任務請負機関公認の駐車場だから変な奴に盗まれることもねぇしな」

 そう言って全員が車から降りると魔法陣が展開され、車が地中へと沈んでいく。それを見て思わず目を丸くしてしまう。

「すげぇだろ? 空間創造魔法で造られた立体駐車場よ。これはあの``三大魔女``様が魔法陣を描いたらしい。全く、どんな技術力してんだか」

 感心を通り越して呆れてすらいる金髪野郎をよそに、俺は御玲みれいと顔を見合わせる。御玲みれいは俺ほど顔に出ていないが、表情が心なしか少し強張っているように見えた。車が魔法陣の中に沈んでいく様子を見て驚かない方が難しい。

「とりあえずここからはむーさんの背に乗って……ん?」

 金髪野郎が親指で百足野郎を指し示したそのとき、何かに気づいたように目線が虚空を向く。

 別に気絶したわけじゃない。側から見たら金髪野郎が突然何もない空を見上げているように見えるが、俺たちならば分かる。

 俺たちの任務請負証にも、グループ通話の招待が届く。招待主はなんと驚き、西支部監督官``竜殺のジークフリート``だった。全員招待を受け入れ、西支部監督官が作ったであろう精神世界へ入り込む。

『は、初めまして~。西支部監督官を務めております、ヒルテ・ジークフリートって言います~、よろしくお願いしまーす……』

 部屋に入ると、そこには天然パーマの野郎がへこへこ何度も頭を下げていた。

 弥平みつひらから前もって資料を渡されていたから容姿だけは薄ら記憶にあるんだが、やはりというべきか、竜を殺した人間ってほどの気迫というか貫禄というか、威厳的なものは何も感じられない。

 一言で言うと、天然パーマのチャラ男だ。

 櫛でとかしたと思えないほどボサボサの髪は万年寝癖塗れの愚弟を思い起こさせるが、奴と異なるところを述べるなら、目が死んでいることぐらいだろうか。まるで死んだ魚みたいな目だ。ぱっと見ただの弱そうなチンピラ風のチャラ男だが、その目からは何度か絶望やら失望やら悲しみやら怒りやら、それなりに負の感情を背負って今までを生きてきた背景を思わせる。

 外見だけなら周りから格下扱いされても文句言えないレベルでクソ雑魚感が拭えないが、人は見かけに寄らない。こんなナリでも西支部監督官を務められているのだから、チンピラ臭いチャラ男に見えるからといって舐めてかからない方が良さそうだ。

『あのー……とりあえず混乱というか齟齬を未然に防ぐため、こちらからご連絡したいことがございまして』

『待て。一言言わせろ』

 手で制し、何か話を続けようとした西支部監督官の言葉を遮る。意図が分からず、俺も西支部監督官も目を丸くするが、金髪野郎が目を吊り上げたことで、西支部監督官の顔色が少し強張る。

『お前、西支部の監督官だろ? なんたって敬語使ってんだ』

『え……? だって親しくないですし、初対面ですし、なにより年上ですし……』

『そりゃそうだが、敬語っつーのは格上に使うもんだ。俺は北支部の監督官でお前は西支部の監督官。年はちげぇが立場は同じ。畏まるもんじゃあねぇ』

『いやまあ……そうです、けど……』

『それに、だ。監督官っつーのは、いわば支部の大黒柱。その大黒柱が別の支部の同格相手に畏まってみろ、その支部の下のモンに舐められるだけだぞ』

 腰に手を当て、何故か俺をチラ見しながらため息をつく金髪野郎。呆れが伝わったのか、西支部監督官は申し訳なさげに頭を掻く。

『この武市もののふしにおいて、下に見られるってのは余計な面倒事を抱え込む要因にしかならねぇ。特に西なんて面倒事しか起きてねぇような場所だ。そこらの奴に舐められて付け入る隙を作っちまうなんざ、絶対あっちゃならねぇぞ』

『お、おう……心しときま……しとくよ』

『それでいい。ただでさえ激戦区だ。舐められたら終いの覚悟でいた方が良いぜ。味方にも敵にも、な?』

 ただでさえ睨んでいると勘違いされかねない目尻を上げて言い募ったと思いきや、声音が心なしか柔らかくなる。

 何かとつけては意見が対立することが多い俺と金髪野郎だが、今回だけは心の底から納得の一言しかない。

 舐められたら終い。それは幼少の頃から、母さんに言われ続けてきた言葉だ。戦いを生業にする者にとって、格下扱いされればそれだけでちょっかいやら嫌がらせを受ける羽目になる。表現として可愛く言ったが、ぶっちゃければ格下は武力制圧されても文句は言えない立場にあるのだ。

 弱きは挫かれ、強きが生き残る。それが摂理であり、唯一普遍の絶対ルールなのだ。

『さて、話は変わるんだが……』

 柔和な態度を示したのも束の間。金髪野郎は再び剣呑な雰囲気を醸し出す。

『うちの支部の新人の一人、百代ももよって奴がそっちに行ってないか? 行方を探してるんだが、とんと見当がつかなくてな』

 腕を組み、探るような視線を西支部監督官に浴びせる。

 そういえば、今回の特待受注任務の指定人員に、彼女の名前があったんだったか。北支部に所属していると本人は言っていたが、その姿を誰も見たことがないという異例の新人。金髪野郎が本部に登録情報を照合しなければ、彼女が本当に北支部所属なのか、判断つけられなかったほどだ。

 その百代ももよってやつの正体は俺と御玲みれい、そして澄連すみれんだけが知っている。花筏はないかだ家当代―――花筏百代はないかだももよ裏鏡水月りきょうみづきや俺の母さんなどと並ぶ、圧倒的強者。

 十把一絡げの強者とは格が違う彼女が誰からも悟られず行動できるくらい、余裕でできても不思議じゃないと思えてしまう。案の定、カラクリなど分かろうはずもないが、実際にできているのだから、それだけの能を持った奴だということは明白だ。

『そのことで連絡してきたんだ。ついさっき、その百代ももよって女の子が西支部へやってきた』

 西支部監督官はさっきと打って変わって面倒くさげに頭を掻きながら恐る恐るといった感じで金髪野郎の視線を窺う。

 流石は規格外、既に西支部に到着していたらしい。俺も堂々と重役出勤してきた身なので人の事は言えないが、中々勝手な真似をする奴である。

 もしかしたら勝手に動いたっていう自覚もないかもしれない。以前面と向かった感覚からして、あまり細かいことを気にしない性格だと思えたからだ。

『じゃあ早速ソイツを呼び出してくれ』

『え? 別に俺ン所に着いてからでも……』

『んいや。今すぐだ』

 金髪野郎の声音が一気に低くなる。ただでさえ目つきの悪い人相をしているのに、加えてドスの効いた声とジトっとした視線を浴びせられたら堪らない。

 速攻で気圧された西支部監督官は急いで精神世界を後にすると、一分も経たずして張本人とともに再びログインしてきた。

『そなたら遅いぞ! いつまで待たせ』

『この馬鹿野郎!! たく今回の新人はどいつもこいつも勝手な行動ばっかしやがって!! そこに座れそこに!!』

『むむ!?』

 予想外にも程がある態度に流石に面食らったのか、勢いのまま百代ももよは指を刺された場所へ正座する。何故だか俺も矢面に立たされた気がしたが、多分気のせいだろう。

 それにしても巫女をやっているだけあって姿勢がクソ綺麗だ。ピンと伸びた背筋に、品を感じさせる座った仕草。背筋からは武達者を思わせる強力な体幹が窺え、素人目からも日頃から正座し慣れていることがよく分かる。

 正直綺麗すぎて恥ずかしながら見惚れてしまったが、怒り心頭の金髪野郎にとって、巫女の行儀の良さなど砂塵のようなものにすぎないようだ。

『お前には色々聞きたいことがある!! まずお前、任務こなしてるのか?』

 まあ、気になるよね。思わず百代ももよに向かって合掌する。

 俺も金髪野郎に問い質されるときは言い訳を考えるのに四苦八苦しているのだ。彼女も俺と同じ身分を隠している間柄。さて彼女はどんな言い訳をするつもりなのだろうか。

『あんまりにも姿が見えんから周りの奴らに聞き込みしたが、お前の姿を見たことないと口揃えて言ってたぞ? どういうことだ? もしやお前、籍置くだけ置いて任務全くしないクチか?』

 金髪野郎の言葉に、そういう奴らもいるのかと少し興味が湧いてくる。

 任務なんて面倒だし、ノルマとかもなく同じことの繰り返しだから面白味なんてかけらもない。継続するのが至難と言ってもいいくらいの任務ばかりだが、百代ももよは額に汗を滲ませ、急いで顔と両手を左右に振る。

『誤解じゃ! わっちは任務をこなしておる! それが認識できないのは仕方なきことなのじゃ!』

『仕方がねぇわけねぇだろ阿呆。任務こなしてるなら北支部に一日一回は必ず顔を出してるはずだ、任務受注は支部ビル内でしかできねぇんだからよ』

 腰に手を当て、肩を竦める金髪野郎。一方、百代ももよは額に汗を垂らしながら唸り声をあげる。

 任務請負証はその請負人の脳内に存在しているため、任務受注はどこでもできると思われがちだが、実はそうじゃない。何故かというと機関則の一文に``支部個人防衛の原則``ってのがあるらしいからだ。

 例えば任務受注がどこでもできたとしたら、わざわざ支部ビルに足を運ぶ必要がなくなってしまう。各々必要な任務を必要な数だけこなしたら家に帰ればよくなってしまうからだ。でもそれだと緊急任務レベルの大規模な災害が起こったとき、皆がバラバラな所にいると、その分対処が遅れてしまう。

 皆がちんたらちんたら集合している間に、異変や災害とかで街一つ消滅―――なんて間抜けな話である。だったら常に決まった場所に戦力が集まるようにしておけば、より迅速な対応がしやすくなるってわけだ。

 そこまで考えると、俺らから見て百代ももよは北支部ビルで誰にも悟られず姿も見せず、任務を受注し、こなしてきたことになる。果たして、そんな真似が物理的に可能なのだろうか。普通なら無理だろうが、花筏百代はないかだももよは普通の枠組みには入らない。俺らが知る数あるうちの規格外の一人なのだ。

『むー……しもうた。姉様方や爺から逃れるための``人除け``の影響で、認識齟齬が起きておるのか……』

『んだそれ意味分からんぞ。嘘つくんならもっとマトモな嘘つけよ』

『否、嘘ではない! 本当じゃ! 体内霊力を操作することで、外界との霊流と同期してじゃな……』

『あー分かった分かった。言い訳なら現地に着いてから聞く。なんにせよ報連相を欠いたことに変わりはない。お前がいないせいで本部に人員交代の申請するか迷ったぐれぇだし、説教は受けてもらう』

『んなぁー!! 後生じゃ頼む!! 独神様に誓って嘘ではない!! いや確かに万人には理解し難いかもしれぬが先程言った動作を無意識運用することで……』

『はいはいお前が嘘つくのが下手くそなことだけは分かったよ、ほら正座しろ正座』

『んなぁー!! 違うと言うとろうにぃー!!』

 流石に無理があると思うんだ。

 おそらく百代ももよが言っている事は本当だろう。金髪野郎同様、何言っているのか理解はまるでできないが、言っている事を信じるならその所業は物理的な何かを超えた、霊力を利用することで初めて成せる超常的な真似だ。パオングが言っていた、魔法陣を必要としない``霊力操作``なる技で初めて実現するのだろう。

 援護したいところだが、俺や御玲みれいの理解力では金髪野郎を納得させるだけの説明は無理、もっと別の人材が必要になる。可哀想だが、ここは素直に説教を受けてもらうとしよう。

 こうして三十分ほど正座のまま、報連相を欠かさないことを堅く誓うまでこっ酷く金髪野郎に絞られた。

 尚も自分の身技の正当性を主張していたが、金髪野郎には全く信じてもらえず、最後辺りは瞳を潤わせながら半べそをかいていた。まあ自分の主張がことごとく封殺され、一方的に誓いまで立てられるのだから、無理もない。可哀想などという感情なんて滅多なことでは湧いてこない俺でさえ、ちょっと見てられなくなるくらいには不憫だった。

 身分を隠して請負人に身をやつし、なにかしら超常的な真似をする度に説明を求められる者同士、同情するなという方が難しい。

『分かってると思うが、ぜっっったい西支部から動くなよ。なんなら部屋からも出るな!!』

『おいおい待てよオメェ、それだとこの女が催したとき部屋で漏らすことになるぞ』

『そうだよトイレには行かせてあげなよ!!』

『トイレは別に構わねぇよ!! そっちにも女性請負人の一人や二人はいるだろ、ソイツを見張りにつけてもらえ!!』

 珍しくナージとシャルが金髪野郎に食ってかかる。

 予想外のメンツから至極どうでもいいことを糾弾されたせいか、金髪野郎の金髪から色素が抜け落ちたように思える。まだ任務は始まっていないのに、酷いやつれようだ。

『レク、いっかいおちつこ……? のどこわれる』

『あ、ああ……そうだな……』

 流石のポンチョ女も金髪野郎の背中に擦り寄る。金髪野郎はポンチョ女がソファ代わりにしていた、百足野郎の黒光りする肌に横たわった。

『ジークフリートだっけか……俺たちはむーさんの背に乗ってそっちに向かう。多分だが……まあ一時間はかかるかな、それまで百代ももよのお守りを頼む……』

『やれやれ……任されたよ。面倒だけど』

 肩を竦めながら苦笑いを浮かべるジークフリートと呼ばれたチャラ男は、いまだ半べそをかく百代ももよを連れて、霊子通信からログアウトしていった。続いて俺らも意識を現実世界へ戻す。

 ``西戦せいせんの壁``は特例許可を得た請負人ならば、専用ゲートから出入りできる。ここからは百足野郎の背に乗って大移動だ。

 ゲートを潜ってから、百足野郎の背中で揺られること約一時間。

 百足野郎の背に乗っている間は暇なので景色を眺めていたのだが、やはり最悪の治安を誇るだけあって、中威区なかのいく西部都市の景観はお世辞にも良いと言えない有様だった。

 一応、都市というだけあって景色は都会って感じなのだが、まず活気がほとんどない。人気も皆無で、建っている建物もほとんどが何かに壊された傷跡を抱えるものばかり。よく見れば高層ビルを含め、ほとんどが廃屋と化していた。

 一番びっくりしたのは、ミサイルでもブチこまれたのか、上半分がごっそりなくなってそのまま廃屋と化したビルがいくつかあったことだ。かつてはそれなりの人が賑わう都会だったのだろうが、中威区なかのいくギャングや暴閥ぼうばつ上威区かみのいく連中との度重なる紛争で人はいなくなり、廃屋と壊れたビルの残骸だけが残るゴーストタウンになっちまったのだろう。

 今やここは西支部請負人と、あとは覇権争いに熱中している暴閥ぼうばつやギャングどもの根城となっているわけだ。

「日夜情勢が目まぐるしく変わるのも納得だぜ、事実上戦地じゃねぇかここ……いてて……」

 百足野郎の堅い装甲肌に一時間揺られていたせいで、ケツが痛い。

 百足野郎の行軍は想像の倍以上に速く、正直ロケットの上に乗っているかのような気分だった。流石に金髪野郎の空飛ぶ車には及ばないが、いざとなれば地形を無視して直線距離で突き進める点で、陸路移動では百足野郎の背に乗るのが最速かもしれない。

 今回は建物を破壊せず道なりに進んだので普通に一時間かかったが、建物をぶっ壊しながら直線距離で進んでいたら、おそらく三十分は短縮できていたと思う。

 ただ俺や御玲みれいが勝手に背に乗れば、拒否られる気しかしないってのが難点だが。

 正門前まで俺たちを出迎えに来てくれたのは、霊子通信の部屋を作ったジークフリートとかいう西支部監督官だ。

「ようやく打ち合わせができそうだな……」

「なんか、もうにんむのはんぶんおえたきぶんだぜ」

「気張れブルー……まだ何も始まってない」

 珍しく以心伝心する二人。金髪野郎の疲労が伝染したのか、ポンチョ女の眠そうな目が更に眠たさを訴えかけてくる。

「そんじゃ行くか。みんな、俺についてきてくれ」

 西支部監督官は、怠そうに頭を掻きながら正門のゲートをくぐる。

「うぇくっっっさ!! 生臭!? なんだこれ」

 奴についていくように金髪野郎、ポンチョ女、俺、御玲みれい澄連すみれんの順に正門をくぐると、思わず鼻を摘んだ。

 外観は今までの支部と同じ構造をしているのだが、問題はそこじゃない。ロビー全体に万遍なく広がる海鮮物に似た生臭い匂いが鼻腔にこびりついて離れようとしない。振りほどこうにも、ロビーを満たす空気全体に染み込んでいるせいで、どうしようもない状態になっていた。

「酷い匂いですね……」

 中々感情が表に出ないことに俺の中で定評がある御玲みれいすら、明らかな嫌悪を顔で示している。それくらい、臭いのである。

 これが特待受注任務じゃなかったら、今すぐに逃げ出しているくらいだ。

「うおおおおおおあああああああ!! この匂い!! この生臭さ!! ち◯こが!! ボクのち◯こが漲る……!! 溢れる!!」

 俺らが嫌悪感を隠さない一方で、その小さい体から霊力を目一杯放ち、霊圧からその爆上がりのテンションを表現するアホのぬいぐるみが一匹、前に出る。つられて続々とアホどもが思い思いの行動を取り始める。

「こりゃ最高だぜ!! 個人的にはもっと汚ぇ方が好みだが、久しぶりに汚くて身体ウズウズしやがる!! ゲロり甲斐のある不潔さだ!!」

「おお、おおお、おおおお……!! 道端に沢山のパンツが……!! ここは、ここはヴァルハラですか……!?」

「ほう? 誰かここで小便しやがったな。便所以外で排泄するたぁ、今の文明の人類も捨てたもんじゃねぇな」

 カエル総隊長を筆頭にミキティウス、ナージが勝手にロビー内を歩き回っては、盛大に寝転がったり床を舐めたりとやりたい放題し始める。これ以上は流石にマズイ。 

「お、おいおいおいやめろお前ら!! 汚ぇから!! 完全にヤベェ奴らになってっから!! 周り見ろ周りを!!」

「おおおおおおおお!! ボクのち◯こおおおおおおおお!! これはもう、ボクのち◯こに施された第一の封印を解くしか」

「うるせえ!!」

 腰を四十度以上仰け反らせ、わけのわからない封印を解こうとするアホを足で踏みつける。周囲の奴らになにかしら言われる前に床をベロベロ舐めているカエルと早速と言わんばかりに野糞しだすナージ、そして床に落ちているパンツを被ろうとするミキティウスを全員抱え上げると、全員床に叩きつけて無かったことにした。

「えっと……」

「何も言うな。今のは幻覚だ。ただの幻、なんてことはないさははは」

「いやその使い魔さっき喋って……」

「……それ以上喋ったら殺す。喋らなくても言おうとしたら殺す」

 西支部監督官、だからなんだ。今までを無かったことにするなら、御玲(みれい)以外の奴らをブチのめして記憶を消すことも視野に入れる。今のはただの幻だった。そういうことにする。

 何故かって。俺がそうすると決めたからだ。

「……話は変わるが、しっかし生臭いな……掃除してんのか?」

 雰囲気を察してくれたのか、俺と同じく身内の恥を隠したくなったのか。嘆息しながら西支部監督官に視線を向ける。西支部監督官は申し訳なさげに頭を掻いた。 

「いやぁ……昨日、ウチのもんがここで夜通し乱交パーティやってたもんで、多分そのせいじゃねぇかなぁ……と」

「……うん。深くは聞かねぇよ……」

 金髪野郎は今にも死にそうな顔で目を逸らした。

 ランコーパーティなるものがよくわからんが、俺に踏みつけられながらも下半身からち◯こを露出させたシャルが鼻血を出しながら幸せそうな笑顔で親指を立てているあたり、ロクなことじゃないのは察しがついた。深くは知らない方が幸せってやつである。

「お前、西支部の監督官だろ……ロビーの掃除ぐらい、事務員に指示してやらせろよ」

 苦虫を噛み潰したかのような表情でロビーを見渡す。

 俺たちは北を始めとして南、東とほとんどの支部のロビーを見てきたが、どの支部も程度の差こそあれど、そこそこ掃除は行き届いていた。少なくとも生臭さで鼻を摘む事態には一度も遭ったことはない。

 毎日通っている北支部ビルのロビーだって、事務員を中心に日勤時間外に掃除をすると請負人にも任務報酬にボーナスが入るルールによって、夜勤の奴らが主に行っており、毎朝ロビーはそこそこ清潔に保たれている状態だ。

 しかし今回やってきた西支部のロビーは、一言で言い表すならゴミ屋敷である。そこいらじゅうに大量のゴミ袋や生ゴミがそのまんま床に散乱、飲み物のカップや弁当の残骸から、壁や床に何をこぼしたのかすらもはや分からない大量のシミ、雨漏りしているわけでもあるまいに、床には水溜りが多数。しまいには、誰のものなのかすら分からない下着類のゴミまで放り捨てられている始末である。

 お世辞にも掃除をしているようには思えない、不潔な環境が拡がっていた。

 ついこの間まで流川るせん本家邸新館も物置部屋と化していた空き部屋がカビとヘドロの楽園と化していたし、俺からあまり強く出れないのだが、それだけ汚い場所で長期間居たいかと問われれば、答えは否である。

 不潔を好む性格でもなし。ゴミが氾濫するほどとなると、掃除できるのなら掃除したい気分に苛まれる。

「いやぁ……掃除の張り紙とか勧告とか、やってんだけどねぇ……ウチの連中って基本、清潔には頓着しねぇもんで……」

 だが西支部監督官はやれやれと肩をすくめて、額に汗を滲みせながら、目線を逸らした。その言葉に、俺を含め澄連すみれん以外の全員が絶句する。

 生ゴミやらなにやらが散乱するほど汚いぐらいなのに、それすら気にしないのは流石にマズイのではなかろうか。俺も存外清潔には頓着しない方だけど、生ゴミが散乱して生臭さが充満しているようなら流石に掃除しようかなぐらいの感情は湧く。

 汚いのはともかく臭いのは気になるし、無視するのは難しいからだ。

「俺もぺーぺーの頃は結構辛かったけど、慣れちまうと割と平気になるんだよね。いやー、慣れって怖い怖い」

 へらへらと笑う西支部監督官。慣れてしまっていいのだろうか。流石に病気になりそうなもんなんだが。

「……ま、まあいいや。とりあえず執務室に案内してくれ」

「んいやー……それなんだけどさ」

 金髪野郎は肩をすくめながら、目の前に広がる情景を振り払うように頭を左右に振る。西支部監督官は、申し訳なさげに頭を掻いた。

「うち執務室ないんで、俺の私室でいいすかね? というか、そこ以外だと場所ないけど……」

「……は? 執務室がない?」

 意味が分からんといった様子で、訝しげに首を傾げる。金髪野郎もだが、俺たちも同様に西支部監督官の言っている意味を図りかねていた。

 今まで北、南、東となんだかんだ三つの支部を行き来してきたが、そのどれも執務室という専用オフィスが存在していた。部屋の内装こそ、その支部の監督官の性格が反映されていたが、執務室がないなんてパターンは初である。

 ベテランの金髪野郎も、その返しは予想外だったらしい。何度か瞬きしつつも、なんとか平静を装う。

「……執務室がないってどういうことだ? 普通、どの支部にも専用オフィスは用意されてるはずだろ」

「いやー……その、ほら、ここって治安クソ悪いだろ? そのせいか、幾度となく執務室が破壊されててな……執務室だった部屋ならいくつかあるんだが、どれも名残程度にしか残ってないんだ」

「破壊って……まあ、そうか……」

 金髪野郎は何を理解したのか、額に手を当てながら首を振る。

 執務室が幾度となく破壊される。想像できる事態としては、魔法で執務室が爆撃されたり、執務室にいたら暗殺されかけたり、執務室がクソ請負人に占拠されてその機能を失ったりと、俺の拙い想像力でも三通りぐらいは思い浮かぶ。

 個人的にはどれもありえるから甲乙つけがたいが、爆撃と暗殺は普通にありそうだ。実際、執務室ごと昇天した監督官も何人かいるだろう。そうなると、執務室を作るよりも自室を執務室扱いしてしまった方がいいってなるわけだ。

 暗殺ならともかく、爆撃となると穏やかじゃない。流石最悪の治安を誇るだけはある。

「まあ他所の人を自分の部屋に招き入れるのは、なんつーか恥ずかしいけど……ここほど汚くねぇから安心してくれ」

 辺り一面ゴミだらけのロビーを見渡し、苦笑する西支部監督官。

 汚いのはともかく生臭いのは堪ったものじゃないので、それはありがたい。他の奴らも特に異論はないのか、黙って西支部監督官の背をついていく。

 コイツの私室はビルの三階にあるらしいが、それまでの道のりも中々のものだった。

 まずビルに備え付けられているエレベータは使えない。何年か前、西支部に侵攻してきたギャングスターとの戦いで破壊されて以後、一度も修理されておらず、既に廃屋化しているからだ。

 修理頼めよと思ったが、おそらく手続きとかが面倒な上にどうせ直してもまた壊されるとかそんな理由で、直す気が起こらなかったのだろう。そう考えると階段があるならそれでいいかって考えに落ち着くのも無理からぬ話でもあった。

 そしてもう一つはロビーも存外に汚かったが、私室までの道のりもまた中々の汚さだったことだ。ゴミ袋や生ゴミがそこらじゅうに散乱しているのは当たり前、中にはゴミ溜めの中、盛大ないびきをかきながら酒瓶を抱いて全裸で寝ている奴らがちらほらいた。

 廊下で裸になって寝ている奴らがいたことには流石に驚きを隠せず、俺も御玲みれいも目を丸くさせ、金髪野郎とポンチョ女は顔を見合わせると肩をすくめあっていた。当の西支部監督官は申し訳なさげな顔をしていたが、驚きも呆れもしていないあたり、空の酒瓶に囲まれて昼寝ブチかましている光景はただの日常なのだろう。

 異常も慣れれば日常としか思えなくなるあたり、人間の環境適応能力って凄いなと改めて思い知らされた。

 色んなゴミと全裸の飲んだくれが当然の如く道を阻む階段を昇り、私室があるフロアにまでたどり着くとそこは廃墟と化したホテルの廊下みたいな所に風景が切り替わる。だが各部屋から女の喘ぎ声と何かを打ちつけ合う軽い音がドア越しから喧しくも鳴り響いていた。

 ポンチョ女と御玲みれいは露骨に嫌悪感を顔に描き、金髪野郎は額に手を当てて首を左右に振る。俺は何故だか分からないが、思考停止していた。

 なんとなく、なんとなく何をしているのか理屈は分かるのだが、何故か俺の本能が、それ以上の想像をさせまいと阻んでいた。想像した瞬間、正気を失ってしまうような、そんな気がしたのだ。

 無知は罪という言葉があるが、この世には知らないことの方が幸せだという言葉もある。

 基本何事にも無知で、少しくらいは知っておけよと周りから釘を刺される俺だが、これだけは釘をいくらぶっ刺されようと知りたくない。というか、知る必要は一生ない。

 何かを打ちつけ合う音と女の喘ぎ声を嫌でも耳に入れながら廊下を歩くこと数十分。ようやく西支部監督官の足が止まった。そのドアは、他の部屋のドアと変わらない、何の変哲もない普通のドアだった。

「ここが俺の部屋だ。まあ何もねぇ部屋だが、くつろいでいってくれ」

 そう言って部屋のドアを開けると、西支部監督官は「やれやれ……」と小声で呟き、俺らもその場で固まってしまった。それもそのはず。

「こ、これ! 何をしとる!?」

「え? ジークの下着を漁ってるんだよ? 百代ももよも一緒に漁ろーよ!」

「わっちは女子おなごぞ、そのような……は、はしたない真似はせぬ!」

「へぇ……もしかして百代ももよって……しょじあだっ!?」

 なんかやらしい指の動きさせながら、赤面して顔を手で覆う巫女に悪い顔で近づく女の子を、西支部監督官は頭をかち割る勢いでソイツの脳天に手刀をブチかます。

 その流れるような攻撃に一切の躊躇はなく、無感情ですらあった。

 人の部屋の下着を漁る女。西支部監督官は、まだ優しい奴だ。俺なら部屋ごと消滅させているかもしれない。仲間なら全身大火傷させるぐらいに留めるが。

「悪りぃなぁ、ウチのアホが手癖悪くて」

「手癖が悪いどころではなかろうて……そなたは……し、下着を漁られて、何も思わぬのか?」

「いやそんなこたぁねぇけど……コイツ、いくら言ったって聞きゃあしねぇからな……慣れた方が早ぇっつーかなんつーか……」

「流石ジーク! 西支部の監督官を務めるだけあるね! そーゆーすぐ慣れちゃうとこ、ボク大好きだよ! チュッ!!」

「やめろやめろ気持ち悪い。つか慣れたくて慣れたわけじゃあねぇからな? 慣れないとやってけねぇから慣れただけだからな? できるんなら少しは俺の言うこと聞いてほしいぜ全く……」

 キス顔で抱きついてきた女を振り解く。西支部監督官の正論を聞くや否や、顔ごと逸らして口笛を吹き始めた。どうやら都合の悪いことを聞く気はないらしい。

 西支部監督官はまた「やれやれ……」と呟いて、俺たちの方に向いた。

「まあコイツの凶行はおいといてだ……とりあえずテキトーに座ってくれ。椅子とかはねぇからそこらにテキトーにな。なんなら俺のベッドを椅子がわりにしてもいいぜ」

 その言葉に全員がマジか、という顔をする。

 他人のテリトリーだし、別にお菓子とか食い物まで用意しとけとか図々しく求めはしないが、俺らが来るの分かっているなら、せめて椅子くらいは用意しておいて欲しかった。まさかの友達でもなんでもない奴の部屋の床に直接座ることになるのは予想外だ。

 ベッドを椅子代わりにと言われたが、流石にただの他人のベッドに座るほど、俺は猛者じゃない。その証拠に、俺を含め他の奴らもベッドに座ろうとしていない。

 各々とりあえず綺麗そうな、汚れや埃がなさそうな床を見つけては早い者勝ちと言わんばかりに座っていく。モタモタしていると汚い所に座らせられそうなので、俺もすかさず割と綺麗そうな場所を見つけて座り込む。

「んじゃ、話し合い始めっかー」

 西支部監督官は気怠げにベッドに横たわると、仰向けになって盛大に欠伸する。

 今まで色んな作戦会議に参加してきたが、ここまで間の抜けた会議は初めてだ。俺としてはこれぐらい緩い方が居心地良いのだが、そう思わないのが金髪野郎と俺のメイドである。

「……とりあえず、自己紹介していくか。知っての通り、北支部監督官のレク・ホーラン。巷じゃ``閃光``とか言われてる」

「ブルー・ペグランタン。むかでつかい」

 なんか自己紹介していく流れになったので、ポンチョ女に続き、俺、御玲みれい澄連すみれんの順で自己紹介していく。相変わらず澄連すみれんの自己紹介はやかましく、金髪野郎含め、北支部勢は全員真顔になっていたが、西支部勢は流石というべきか、あまりひいてはいない様子。

 特に西支部請負官の下着を漁っていた金と黒のメッシュ髪の女は、シャルの自己紹介に、新しい玩具を見つけて好奇心が抑えられない無邪気な子供みたく目を光らせていた。

 やっぱり人の下着を漁る変な奴だからこそ、澄連すみれんのおかしなところに惹かれるのだろうか。類は友を呼ぶってことわざを作った奴は、中々の慧眼を持っていたに違いない。

「んじゃ次は俺らか。西支部監督官、ヒルテ・ジークフリートだ。色々あって竜を討伐しちゃって、畏れ多くも``竜殺``って呼ばれる身になっちゃいました」

「ボクはブリュンヒルト! 気軽にブリューンって呼んでね! 趣味はセックス、よろしくねシャルちゃん! 後でチ〇ポみせて!」

「……ヴェルナー・ハイゼンベルクなのね。詳しく話すつもりはないし、今日限りの付き合いだろうけど、精霊なのね。よろしくなのね」

 西支部勢のメンツの濃さに、出そうになった声を飲み込んでしまった。

 西支部勢の自己紹介、正直な所感を言うと、澄連すみれんに負けないくらい個性的だ。というか、今までかかわってきたどの支部の連中よりも、ぶっ飛んでいる奴らだと思う。

 ブリュンヒルトとかいう奴は仲間の下着を漁るだけあって、澄連すみれんの現身みたいな奴だし、西支部請負官も二つ名がナリと不釣り合いすぎるが、特に俺が目を引いたのはハイゼンベルクと名乗った、羽の生えた幼女だ。

 デフォルメされたかのような羽は、ナージの翼を思い起こさせる。正直、羽の生えた奴なんて澄連すみれんぐらいなもんだと思っていたのに、普通にいるのだから幻覚でも見ている気になってくる。

 人間しか近場にいないはずの武市もののふしに、一体どういう生活をしていたら出会うのだろう。流石に西支部だからって理由だけで片付けられるものじゃないと思うのだが。

「……いやまあ、愛玩奴隷を侍らせるなんざ個人の自由だから否定はしねぇけどよ……セーレーとかわけわからん呼び方強要させてるのは、監督官としてちょいと自覚足りてねぇんじゃねぇかお前」

「待ってくれ誤解だ」

 幼女の自己紹介に思うところがあったのだろう。金髪野郎は冷ややかな視線を西支部監督官に投げつけた。ポンチョ女に至っては、もはや相手を凍てつかせる勢いだ。

「確かにコイツは姿形からして愛玩奴隷に見えなくもないが、本当に精霊なんだ。それも結構高位の……あだっ」

「お前ら、すこぶる失礼なのね……! 好きでこんな姿になってるんじゃないのね!」

 頬をリスみたいに膨らませ、その小さい手で西支部監督官の頭をぶっ叩く。すぱこん、と可愛らしい音が若干場を和ませるが、金髪野郎は尚も呆れたような表情を浮かべるのみで、それ以上は何も言わなかった。

 俺らには澄連すみれんというメルヘンの世界からはみ出した摩訶不思議存在がいるので、精霊と言われれば、何処で知り合ったのかという疑問こそあれ本当にそういう存在なのだろうなと納得できるのだが、喋るぬいぐるみみたいなものと関わりのない奴らからすれば、ただただ見苦しい言い訳にしか思えないだろう。

 金髪野郎の言う通り、ぱっと見は愛玩奴隷みたいなものだ。見てくれだって悪くないし、言葉遣い以外は可愛げがある。小さいし、愛玩用にはちょうどいいサイズである。

「んで、どうする? 小隊規模とはいえ一人一人の兵力はレベチだぞ。悠長に構えてる暇はねぇと思うが?」

「んぁー……それなぁ……」

 埒が明かないと思ったのか、乱れた場の雰囲気を咳で払いのけ、強制的に本題を切り込む。それを察してか、頭を掻きながら西支部監督官がベッドから身を起こした。

「面倒なことになったよなぁ……なんで急にそんな兵力が来るんだ? 俺らが何したってんだ」

「うーん……ギャングスターとか色々殺しまくってきたから、その仕返しとかじゃない?」

「人間の考えることなんて、私が知るわけないのね」

「ほんっっっと暢気だなぁ…………………」

 鼻をほじりながら壁にもたれかかる西支部監督官に、二の句が継げなくなる金髪野郎。

 確かに今、全能度五百程度の連中が小隊規模で今にも攻めてこようってときの雰囲気じゃない。まるで昔、高校に通わされていたときに見た、部活の控え室でサボっている不真面目な運動部員同士の会話って感じである。

「まあ理由はどうでもいいや。なんにせよここにくることに変わりねぇし、レイドしてくるならやるしかねぇわな」

「それでもボクは抵抗するよ、だね!」

「そのセリフの出所が気になるが、まあ……そんなところだな。ちょうど奴も復帰したことだし」

「……奴?」

 金髪野郎の目尻が上がる。何が出るか分からない西支部、既にロビーの惨状で驚かされている時点で、警戒心は鰻登り状態なのだろう。それに反して俺は西支部監督官と大して変わらないテンションなのだが、隣の座っている御玲みれいもまた真剣な面差しをしていたので、とりあえず姿勢だけは正しておく。

「ああ、今日ギガレックスがシャバに出てきてな。いつも騒いでてクソ面倒な奴だが、今回の任務には適任かと思ってよ」

「ぎ、ギガレックスだと……? あの``赫怒かくど``の二つ名で有名な、西支部最大の問題児……?」

「あいつ、たしかうけおいしょーていししょぶんくらってこーそくされてなかったっけ」

「ああ、本部の豚箱で臭え飯食ってるって聞いてたが、もう出やがったのか……」

 金髪野郎とポンチョ女から剣呑な雰囲気が滲み出る。俺と御玲みれいは相変わらず誰のことだかさっぱりなので、お互い小首を傾げ合うばかりだ。

「まさかお前、頭数にいれるつもりじゃねぇだろうな?」

「むしろいれない方が面倒だぞ?」

 いよいよもって背をのけぞらせ、溜息を吐き散らかす金髪野郎。ポンチョ女からも重苦しい雰囲気が流れる中、俺は思い切ってみることにした。

「なあ。そのギガレックス? って誰?」

 いつまでもこんな重苦しい雰囲気でいるのはかったるい。正直なんでそんな事もしらねぇんだよとか思われるのはクソ面倒だが、御玲みれいも知らない事だし、ここはコイツらも素直に教えてくれるだろう。

 そもそもな話、そんな得体の知れない奴を何の説明もなしに絡めと言われても無理がある。

「えっとねー、まあ簡単に言うと西支部の前監督官だよ! ジークが来るまでずっと西支部のトップだった人なんだ!」

 予想に反し、金髪野郎でもなければ西支部監督官でもなく、気づけば西支部監督官のベッドに潜り込んでいた金髪と黒髪のメッシュの女が解説を入れてきた。西支部監督官は手を組んでくるソイツを鬱陶しげに振り解く。

「まあ、力だけは強ぇからな……制御が効かねーのが致命的な奴だが」

「勘弁だぜ……ウチにも澄男すみおとかいう似たような奴がいるってのに、問題児二人は面倒見きれねぇぞ」

 何気に俺も槍玉にあげられる。

 そのギガレックスって奴がどんな奴かは知らないが、知らない奴に似たような奴呼ばわりされるのは気に食わない。ちょっと一発蹴りでも入れるかと思ったら、御玲みれいがすかさず俺の左腕を鷲掴み、睨んでくる。俺は小さく舌打ちして、矛を収めた。 

「でもよぉ……多分アイツのことだから、絶対ついてくるぜ?」

「まあ……そうだろうな。会いたくねぇ……」

 金髪野郎が珍しく床に寝転がった。

 西支部の惨状を見て体裁とかどうでもよくなったのか、ギガレックスって奴が余程かったるい奴なのか。個人的には面倒くさくなったって感じだが。

「北支部監督官さんよ。鉢合わせたらまず喧嘩売られるだろうから、テキトーに流してくださいや。それと百足使いも多分売られると思うから先に言っとくぜ」

「監督官のお前が言い聞かせておけよと普通なら思うが、ギガレックスなら仕方ねぇよな……はぁ、だりぃ……」

「けんかうってくんならブチのめすけど、それでもいーよな?」

「そりゃ構わねーけど、マジ喧嘩は勘弁願いたいぜ。一応このビル、現在進行形で終わらない補修工事の真っ只中なんでね」

 面倒くさげに、そして暢気に欠伸をかます西支部監督官。喧嘩は日常茶判事なのか、サクッと喧嘩を容認するあたりがもはや清々しい。ギガレックスって野郎はかなりの厄介な奴のようだ。

「とりま話を戻すぞ。つっても少数精鋭で正面から迎撃するしか手はねぇわけだが」

 金髪野郎によって話は振り出しに戻される。

 全能度五百ってのは、この前の東支部での任務のときにブチのめしたアサシンと同じくらいの肉体能力を持っているってことだ。

 俺らからしたら結局のところ雑魚なことに変わりはないのだが、ソイツらが雑兵扱いされているってことは、ソイツらを統率している指揮官は全能度五百を超えていると見て間違いはないことである。

「確かに参加するとなると他の奴らじゃ物の数に入らねー。俺らとアンタらでなんとかするしかねーだろうな」

「じゃあ他の奴らは避難だな」

「ああ。モヒカン連中には地下に隠れておくように伝えておく」

 頼んだ、とサクッと方針が決まる。

 全能度五百は俺らからしたら雑魚だとはいえ、支部勤めの奴らからしたら化け物集団だ。手も足も出ないまま皆殺しにされるのがオチだろう。邪魔なだけだし、戦場は広いことに越したことはない。

「前衛班と地下のモヒカンどもを守る班の二班に別れたいな。全能度五百の怪人どもだ、火力の高い奴らを前衛班に入れたい」

「だったらギガレックス、むーさん、百代ももよ、そんでそこの新人と使い魔連中が適任だな」

 金髪野郎が俺を指差しながら、視線を西支部監督官に投げる。

 前に出て暴れ回るだけでいいってんなら、特に異論はない。正直守るより一方的にブチのめす方が個人的にも動きやすいので、他の奴らに異論がないなら前に出て敵をブチのめす班に入りたいところだ。

「マジ? そのぬいぐるみども、あたまかずにいれんのかよ」

 俺を含め、名前を挙げられた奴のほとんどは異論なしの雰囲気を醸し出す中で、異論というより疑問を呈したのはポンチョ女だ。

 とりあえず他人のフリをしておく。ポンチョ女の疑問符はごもっともだが、個人的には有耶無耶のまま話を進めたかったからだ。

「あん? んだよ便秘七日目のコンクリ便みてぇなツラしやがって、俺らじゃ不満だってのか?」

「おおありだのぐそやろー、テメーらじゃまなんだよしょーじき」

「邪魔とかそんなつれないこと言わないで、ここは俺秘蔵のパンツで手を打ちませんか」

「いらねーよ、きたねーもんぶらさげてよってくんなロンげ」

「あらやだもうこの子ったら、全く我儘ねえ……じゃあボクのち〇こ貸してあげるから、大人しくしてなさい」

「だからいらねーって!! さっきからきたねーし、じゃまだっつってんだ!! ゴミみてーなもんさらしてねーでむこーいってろカス!!」

 まあ、気持ちも分からなくもない。傍観者に徹しながら、内心ポンチョ女に同意する。

 俺からしたら仲間だし、それを差し引いても性格や姿形はどうあれ有能なことに変わりないので邪魔とまでは思わないが、やかましいとは思ってしまう。ポンチョ女からしたら仲間でもなんでもない上に百足野郎未満の存在なので、ウザったいことこの上ないだろう。なにせ百足野郎がいたら大体は事足りるわけだし、行動を共にするメリットはほとんどないと言ってもいい。

「んいや、ソイツらは前衛だ。正門前の戦力は多いことに越したこたぁねぇし」

 金髪野郎はポンチョ女の言い分を一刀両断する。ポンチョ女はこれでもかと表情で抗議するが、金髪野郎はそれを華麗に無視。視線を澄連すみれんトリオの事実上トップ、カエル総隊長へ移した。

「正直、今回は東支部のときみてぇに味方の頭数が多いわけじゃねぇ。監督官として使い魔……ってわけじゃねぇんだろうが、まあ使い魔の手も借りてぇって感じなわけよ。どうなんだ?」

「オレは別に構いやしやせんよ。オレに限らず、全員楽しかったらなんでもいいし。ちょいと面倒くせぇのが気になりやすがね」

 他の奴らと混じってふざけ倒すのかと思いきや、案外シリアスなことに少し目を丸くする。カエルは瞼から飛び出したように見えるクソデカい目玉を動かし、ポンチョ女の袖口で顔だけ出している百足野郎を見つめる。

 そういや金髪野郎と初めて出会ったとき、コイツら百足野郎に過剰反応していた記憶がおぼろげにある。思い返してみれば初対面以降、澄連すみれんと百足野郎が関わったところを見たことがないし、関わるにしても御玲みれいが間に入っていた。今回は御玲みれい澄連すみれんは別働、直接的にかかわるのは何気に今回が初になる。

「むーさんなら心配いらねぇよ、ブルーに変なことしなけりゃカチキレたりしねぇさ」

 金髪野郎は珍しく暢気だ。戦闘力のある使い魔と百足、澄連すみれんの方からウザ絡みしなければ問題ないという判断は、正直妥当だろう。俺がどうにかできるものでもなし、見なかったことにしておこう。

「他は全員西支部の地下シェルターを守る班でいいか?」

「そうだな。俺は守る方が得意なんでね、そっちの役回りの方がありがたい」

「問題ありません」

「がんばろー!」

「面倒なのね……」

 各々浮かべる感情は違えど、承諾の意志を表明する。

「んじゃ、全員持ち場につこうぜ。あとは状況次第ってことで」

 これ以上話す事は特にない。今回は東支部にいたイラ・バータリーみたいな守りに特化した奴がいない以上、前衛の俺らがどれだけ相手の頭数を減らせるかが勝利の分け目となるだろう。

 西支部の請負人を守らなければならないことを考えると必然的に西支部ビル内が戦場と化すし、相手も全能度が五百ともなれば、銃火器を使うしか能のないクソ雑魚ってわけでもない。雑魚であることに変わりないにせよ、面倒なことである。

「ホント、争いの絶えねぇ国だな……」

 誰にも聞こえないくらい小さな声で、ぼそりと呟く。

 他人事のように言っているが、この国を今のようにしたのが自分の親族だと考えると、途端にぐうの音も出ない気分に苛まれるのだった。
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