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抗争東支部編
地下迷宮籠城戦 ~対仙獄觀音エリア~
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東支部代表``剛堅のセンゴク``の二つ名で有名な少女、名を仙獄觀音。齢十代にして、かつて東支部を支配していた暴閥勢力とギャング勢力をたった一人で淘汰し、東支部を解放した偉人だが、此度もまた、彼女の無双っぷりが光っていた。
「いくら数を揃えようと無駄だ。覇道とは対極の道を行くお前たちに、勝機はない」
仙獄觀音の周りにのさばるは、数百人にも及ぶギャングたち。死んでこそいないが、力を使い果たし、もはや戦う力など残っていない。まだ意識が残っている最後の一人に歩み寄り、戦意を挫いていた。
「く、くそ! この数をたった一人で……! 化け物かよ……!」
男は戦意こそないが、男であるがゆえなのか、絞りに絞り出したであろう皮肉を溢すが、立ち上がることはない。彼女から放たれる濃密な覇気―――``殺意の波動``が、男を強く抑えつけているからだ。
「仮に魔法や魔術が使えたとて私には効かないが、それにしてもお前たちは我らを舐めすぎだな。銃火器如きで我々を殺れると思っているのか?」
ギャングたちは魔法や魔術など使えない。武器は己の肉体と、申し訳程度に装備した手持ちサイズの銃火器のみ。
そこらの請負人や非戦闘民、傭兵程度の戦闘民ならば殺せるだろうが、相手は東支部の主戦力。そこらの請負人とは隔絶した実力を持っている。銃火器で殺せるならば、今頃東支部はギャングに天下統一されていることだろう。
「お前たちの雇い主はまだ地上だな? 予備の兵がまだいるなら早く呼べ。私が全て相手をする」
仙獄觀音は戦いの最初から最後まで、自分の心配をかけらもしていなかった。していたのは仲間、護海竜愛の心配だ。
不死性を有するフリージアはともかく、エルシアやパラライズは銃火器攻撃一発でも当たれば致命傷になりうる。
武術の鍛錬こそしているが、まだ銃弾を受け止めたり、跳ね返したり、跳弾で相手を的確に戦闘不能へ追い込んだりといった達人並みの力量は持ち合わせていない。
エルシアは数で押し切られる可能性もあるし、パラライズはスピードと瞬発力こそ護海竜愛最速なのは間違いないが、攻撃能力と肉体強度、そして魔法や魔術に関する技量が致命的だ。ほんの僅かな隙が死に直結してしまう。
イラに関しては、イラがいるエリアまでの通ずる道を塞いでいるため、迷宮を掘削して進んでくる人外級の実力者でもない限り、イラが脅かされることはない。他のエリアからは、そもそも道がないので心配する必要もない。
だからこそまだ余力のある自分が積極的に相手をした方が、チーム全体の負担を軽くすることができるのである。
「さあ、早く呼べ。なんなら雇い主の連中でも構わん」
仙獄觀音はギャングの大群のみならず、そこらの中位暴閥の連中にも負ける気は全くない。ギャングと中位暴閥なら、個人戦闘能力は当然中位暴閥の者たちの方が高いが、それでも彼女を凌ぐほどではない。彼女からすれば、ギャングの連中一人一人を十倍にした程度の戦力だ。数千単位でも十分対応できる。
「そ、そうかよ……だったら望み通りにしてやるぜ……!」
戦意喪失していたギャングの表情が一変、活路が見出せたと言わんばかりに顔色が明るくなる。
彼の片手には通信器らしきものが握られていた。一人一人に持たせていたのか、今となっては分からないがそこは問題ではない。仙獄觀音は直感する。その通信器の先にいる、強者の気配を。
『ご苦労。ここからは俺が相手をする』
「ありがとうございます、雅和様!」
『仙獄觀音の場所を教えてくれた礼だ。受け取るがいい』
「…………え?」
男が雅和の言葉を聞いて顔を明るくしたのも束の間。男の持っている通信器が輝き始めた。仙獄觀音はその変化を決して見逃さない。
男は何が起こったのか理解できていないが、彼女はこれから起こる事象を的確に予測していた。
「くっ、下衆め!」
ギャングといえど、相手は人間。投げ捨てろ、と言おうとしたが、もう遅い。爆発までもう一秒もなく、投げ捨てられたとて男の死は確定している。
エリア内に爆音が鳴り響く。せっかく殺さずに気絶させておいた男たちもろとも、爆風がエリア内を包み込んだ。
この程度の爆発でイラ特製の地下迷宮が壊れることはないし、仙獄觀音もかすり傷一つつくことはないが、間違いなくあの男は粉微塵となった上、あえて気絶させた男たちも何百人かは絶命してしまった。それだけで、今回の敵の黒幕の非道さが窺えた。
「私を殺すためだけに……これだけの人命を……おのれ!!」
仙獄觀音が纏う、殺意の波動が密度を増す。
一時の感情で纏っている覇気を乱すなど武術を高める志を持つ者としては失格もいいところだが、目の前で大量殺戮されて黙っている方が神経を疑うというものだ。
敵とはいえ、こうも人命を捨て駒の如く扱う非道を許すわけにはいかない。
「必ず……必ず捕縛してやるぞ。天淵剛覇流空手師範代、この仙獄觀音がな……!!」
相手は兵に通信器を持たせていた。おそらく霊子通信用媒体で、位置情報も記録されているはずだ。敵軍の首魁は、必ずこのエリアにやってくる。兵の掃討が終われば自ずと幹部クラスが出向いてくると踏んでいたが、探す手間が省けたというものだ。
「さあ、来い!!」
彼女の気合は、既に充分すぎるほどに高まっていた。自ずとくるであろう、残虐非道な敵将軍を討つために。
「いくら数を揃えようと無駄だ。覇道とは対極の道を行くお前たちに、勝機はない」
仙獄觀音の周りにのさばるは、数百人にも及ぶギャングたち。死んでこそいないが、力を使い果たし、もはや戦う力など残っていない。まだ意識が残っている最後の一人に歩み寄り、戦意を挫いていた。
「く、くそ! この数をたった一人で……! 化け物かよ……!」
男は戦意こそないが、男であるがゆえなのか、絞りに絞り出したであろう皮肉を溢すが、立ち上がることはない。彼女から放たれる濃密な覇気―――``殺意の波動``が、男を強く抑えつけているからだ。
「仮に魔法や魔術が使えたとて私には効かないが、それにしてもお前たちは我らを舐めすぎだな。銃火器如きで我々を殺れると思っているのか?」
ギャングたちは魔法や魔術など使えない。武器は己の肉体と、申し訳程度に装備した手持ちサイズの銃火器のみ。
そこらの請負人や非戦闘民、傭兵程度の戦闘民ならば殺せるだろうが、相手は東支部の主戦力。そこらの請負人とは隔絶した実力を持っている。銃火器で殺せるならば、今頃東支部はギャングに天下統一されていることだろう。
「お前たちの雇い主はまだ地上だな? 予備の兵がまだいるなら早く呼べ。私が全て相手をする」
仙獄觀音は戦いの最初から最後まで、自分の心配をかけらもしていなかった。していたのは仲間、護海竜愛の心配だ。
不死性を有するフリージアはともかく、エルシアやパラライズは銃火器攻撃一発でも当たれば致命傷になりうる。
武術の鍛錬こそしているが、まだ銃弾を受け止めたり、跳ね返したり、跳弾で相手を的確に戦闘不能へ追い込んだりといった達人並みの力量は持ち合わせていない。
エルシアは数で押し切られる可能性もあるし、パラライズはスピードと瞬発力こそ護海竜愛最速なのは間違いないが、攻撃能力と肉体強度、そして魔法や魔術に関する技量が致命的だ。ほんの僅かな隙が死に直結してしまう。
イラに関しては、イラがいるエリアまでの通ずる道を塞いでいるため、迷宮を掘削して進んでくる人外級の実力者でもない限り、イラが脅かされることはない。他のエリアからは、そもそも道がないので心配する必要もない。
だからこそまだ余力のある自分が積極的に相手をした方が、チーム全体の負担を軽くすることができるのである。
「さあ、早く呼べ。なんなら雇い主の連中でも構わん」
仙獄觀音はギャングの大群のみならず、そこらの中位暴閥の連中にも負ける気は全くない。ギャングと中位暴閥なら、個人戦闘能力は当然中位暴閥の者たちの方が高いが、それでも彼女を凌ぐほどではない。彼女からすれば、ギャングの連中一人一人を十倍にした程度の戦力だ。数千単位でも十分対応できる。
「そ、そうかよ……だったら望み通りにしてやるぜ……!」
戦意喪失していたギャングの表情が一変、活路が見出せたと言わんばかりに顔色が明るくなる。
彼の片手には通信器らしきものが握られていた。一人一人に持たせていたのか、今となっては分からないがそこは問題ではない。仙獄觀音は直感する。その通信器の先にいる、強者の気配を。
『ご苦労。ここからは俺が相手をする』
「ありがとうございます、雅和様!」
『仙獄觀音の場所を教えてくれた礼だ。受け取るがいい』
「…………え?」
男が雅和の言葉を聞いて顔を明るくしたのも束の間。男の持っている通信器が輝き始めた。仙獄觀音はその変化を決して見逃さない。
男は何が起こったのか理解できていないが、彼女はこれから起こる事象を的確に予測していた。
「くっ、下衆め!」
ギャングといえど、相手は人間。投げ捨てろ、と言おうとしたが、もう遅い。爆発までもう一秒もなく、投げ捨てられたとて男の死は確定している。
エリア内に爆音が鳴り響く。せっかく殺さずに気絶させておいた男たちもろとも、爆風がエリア内を包み込んだ。
この程度の爆発でイラ特製の地下迷宮が壊れることはないし、仙獄觀音もかすり傷一つつくことはないが、間違いなくあの男は粉微塵となった上、あえて気絶させた男たちも何百人かは絶命してしまった。それだけで、今回の敵の黒幕の非道さが窺えた。
「私を殺すためだけに……これだけの人命を……おのれ!!」
仙獄觀音が纏う、殺意の波動が密度を増す。
一時の感情で纏っている覇気を乱すなど武術を高める志を持つ者としては失格もいいところだが、目の前で大量殺戮されて黙っている方が神経を疑うというものだ。
敵とはいえ、こうも人命を捨て駒の如く扱う非道を許すわけにはいかない。
「必ず……必ず捕縛してやるぞ。天淵剛覇流空手師範代、この仙獄觀音がな……!!」
相手は兵に通信器を持たせていた。おそらく霊子通信用媒体で、位置情報も記録されているはずだ。敵軍の首魁は、必ずこのエリアにやってくる。兵の掃討が終われば自ずと幹部クラスが出向いてくると踏んでいたが、探す手間が省けたというものだ。
「さあ、来い!!」
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