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参上! 花筏ノ巫女編
現れた天災
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澄男たちがむーちゃんたちを援護するため、御玲たちが澄男たちと合流するため、各々一つの場所に集合しつつあった頃。
``骸骨の軍勢``とはまた別の場所で、禍々しくも邪悪な妖気を漂わせる骸骨が、刻一刻と距離を縮め始めていた。
その骸骨の風貌は、一見すれば普通のスケルトンとなんら変わらない。だが、そのサイズはスケルトンの何倍も大きく、まさに巨人のようである。
さらにもう一つ相違点を挙げるなら、その骸骨巨人は大剣を装備していた。
巨人でなければ持つことすら叶わぬほど巨大な大剣。刀身から柄に至るまで、その全てが闇に塗り潰されている。光を一切通さぬ大剣は、地面を抉りながら大地に根付く生命を無差別に狩り尽くしていく。
強烈な闇属性の霊力によって、大地に根づいた生命が変質しているのだ。彼らはただの無垢なる命であったが、闇属性の力に触れたことにより、一度枯れ果てた後、宵闇に潜む闇の魔物として蘇る。
大地を抉り草木の生命の息吹を歪める邪悪な大剣を持ち、巨人の如き荘厳な体躯を他者全てに見せつける巨大な骸骨。スケルトンの上位種にして、スケルトン系魔生物の頂点―――スケルトン・アーク。
ヘルリオン山脈に生息する、数ある天災級魔生物のうちの一体。たった一体で、人類という種そのものを絶滅に追いやれる暴威である。
むーちゃんが``骸骨の軍勢``と交戦している最中、スケルトン・アークは刻一刻と澄男たちとの距離を縮める。
各所に集中する闇属性の霊力に魅入られたのか、それは分からない。だがスケルトン・アークは間違いなく澄男たちを捉えていた。魔生物、ことスケルトン系魔生物は異種族に対し容赦がない。生物的地位など、彼らには無意味なのだ。
異種族は、全て敵。それは澄男たちとて例外ではない―――。
真っ昼間だってのに、森の中は夜みたく暗い。
さっきまで明るかったのだが、急に黒いベールでも覆い被さったかのように、空が真っ暗闇に染まったのだ。星など当然の如く見えないが、なんと太陽すら見えない始末である。光が灯ることのない常闇が、方向感覚を狂わせてくる。
「こりゃあむーさんが道残してくれてなかったら終わってたな。それに、心なしか霊力も上手く扱えん。光属性系が阻害されてるのか」
金髪野郎が額に汗を滲ませながら、手をくぱくぱさせつつも押しのけられた木々の間を進んでいく。
今の状況を簡単に説明すると夜並みの暗さに加え、無造作に押しのけられた木々や草木に絡まれないように、なおかつさっさと進むという、クソ面倒を絵に描いたような状況である。
百足野郎が道を作っていなかったら、御玲との合流など絶望的になっていただろう。道も分からない上に真っ暗闇じゃ、俺らが遭難してしまう。
「しっかし流石に暗い……気合で視界を明るくできねぇかな……」
などとアホみたいな独り言を言ってみる。できるはずもないが、真っ昼間なのに太陽すら見えないほど暗いのは控えめに言って害悪だ。太陽がないのに蒸し暑さは変わらないし、正直意味が分からない状況である。
せめて視界くらい真っ昼間と同じくらい明るくなってほしいもんだが―――。
「ん?」
刹那、突然周囲が明るくなった。まるで真っ暗な部屋の電気を点けたみたいに、突然である。
気のせいかと思い、咄嗟に周囲を見渡してみる。でも現実は変わらない。周りが真っ暗闇に見える前と同じくらい、視界が拓けて見えている。
一体全体、なんだっていうのか。確かに視界だけでも明るくならないかなと念じたけれど、別に魔法を使ったわけでもないし、霊力を使おうと思って踏ん張ったわけでもない。
ただ独り言を呟いて念じただけ。目の前が暗いから明るくなってくれと、そう願っただけである。なにかしらの魔法にでもかかったかと思ったが、速攻で考えを切り替える。
「なんかよくわかんねぇが都合が良い。これでよく見えるぜ!」
細かいことは気にしない。それが俺の流儀である。都合が悪くなったのならともかく、都合が良くなったのなら、その状況を存分に利用するべきだ。そこに疑問を抱く必要はない。
今は緊急時。前を向いてさっさと御玲たちに合流するのが先決である。
「何だ突然」
俺が突然盛大に独り言をしゃべり散らかしたので、流石におかしいと思ったのだろう。怪訝な顔で俺を見つめてきた。意気揚々とありのままを伝える。
「…………まるで暗視能力が備わったとでも言いたげだな。まあ冗談が言えるのならまだ大丈夫そうか」
「は? 冗談なわけあるか。いま真っ昼間と大して変わらねぇ視界だぞ」
金髪野郎は辟易した表情を浮かべながら、視線を猫耳パーカーに移す。
また変なこと言ってるぞアイツ、みたいな顔がすごく気に食わないが、猫耳パーカーは落ち着いていた。
「任務請負証の視覚共有機能で確かめてみるのはどうすか」
猫耳パーカーの提案に、なるほど、と金髪野郎が納得する。
確かめる方はともかく確かめられる方の俺は任務請負証にそんな機能があることにドン引きだった。あまりにも上手くいっただけにその場の勢いで答えてしまったが、言わなきゃ良かったと後悔する。
任務請負証には全能度測定機能やら霊子通信機能やら、色々と多彩な機能が満載だが、その中の一つに感覚共有機能というものがある。
同じ任務を受注している請負人同士に限られるが、双方の合意があれば味方同士の感覚情報を共有することで、情報共有をより円滑化することを目的に実装された。
最初はキモい機能だなと思ったが、金髪野郎の話を聞いて評価を改める。説明下手な俺にとって、この機能は願ってもない代物だったからだ。
自分で言うのもなんだが、俺は説明力がない。大体の状況把握は久三男や弥平に任せているし、説明そのものは御玲にやらせている始末だ。俺がやると十中八九説明不足だのなんだので伝わらず、イライラするハメになってしまう。
任務中、言葉での説明に困ったときはこの機能を使ってみんなと情報共有すればいいのだ。なんと便利な機能だろうか。これを思いついた奴を褒め称えてやりたい気分だ。
「パイセンが思いつかないなんて珍しいっすね。もしかして知らなかったとか?」
「んいや、知ってたが正直使う機会が全くなかったからな……説明は言葉で大体足りるし、その場にいなけりゃ霊子通信機能で事足りるからな」
「ふむふむ」
「そもそもの話、唐突に暗視能力に目覚めたとか宣う新人なんざ前例がねぇ。まさか初めて使う機能が、新人の言うことの真偽を確かめるために使うことになるなんて思いもしなかったぜ」
「あははー……確かに、私もこれは予想できなかったっすね」
俺が目の前にいるってのに、本音をぶちまけあう支部代表殿達。俺は苦笑いを溢しながらも、額に青筋を浮かべさせる。
「別に嫌なら真偽とか確かめなくてもいいんだゾ。その新人たる俺が暗視能力に目覚めたっつってんだから、それを信じればいいだけの話だしサ」
「いや、そりゃ無理だろ。わけわからんことを言ってる奴がいるんだから、信じるも何も確かめるのが道理ってもんだ」
「へー……つまり新人を信用する器量がねぇと」
「……あのなぁ……!」
金髪野郎の眉間に大きな皴が寄り、大きくため息を吐いた。そのため息には完全に怒りの感情が色濃く混じっている。剣呑とした雰囲気が身体から滲み出すや否や、俺にガンを飛ばしてきやがった。
いつもは温厚で冷静な金髪野郎に似つかわしくない、鋭利な視線が俺を貫く。
「これは仕事だぞ? 本来なら暗視能力に目覚めたとかアホほざいた時点で任務から外してやるところだ。そうせず確かめてやろうって言ってんだから、まだマシな扱いされてると思いやがれ」
「……あん? じゃあテメェは俺がバカみてぇに冗談ほざいたって言いてぇのか?」
「俺に限らず誰もがそう思うだろうよ。逆の立場になって考えてみろや」
「ああ!? 舐めた口叩いてんなよカス、この状況で冗談言うほど寝ぼけてるわけねぇだろうが!! テメェこそ考えてから物言えや!!」
「だからよぉ……!!」
金髪野郎の目が突然血走った。初めて見る、金髪野郎のマジギレ顔。それにちょっと気を取られちまったのか。気がつけば俺は胸倉を掴まれ、近くの大木に押しつけられていた。
「俺からすりゃあ寝ぼけてるようにしか見えねぇっつってんだ!! それもこの緊急時に!! ブルーやお前のメイドの身が危ねぇってときにだ!! 二人に何かあったら、お前責任取れんのか!! ああ!?」
「ぐっ……!! 御玲は死なせねぇよ!! 仲間は死んでも守り切るってのが俺の絶対ルールだからな!! 他は知るか、俺は俺の信念を貫く!! テメェにどうこう言われる筋合いはねぇ!!」
胸倉を掴んでいた腕を、無造作に振りほどく。そして片手に火球を練り上げた。毎度おなじみ煉旺焔星である。それを見て、金髪野郎は今まで見たことないようなしかめっ面で俺を睨み、腰に引っ提げていた剣を抜いた。
「おう、こいよ。こいやコラァ、日和ってんのかクソ金髪? 二度と舐めた態度とれねぇようにしてやっからよ、やるんなら早くこいや!!」
「ちょ、二人ともッ。喧嘩はダメっすッ。仲間割れは任務の大敵っすよ!」
お互い飛びかかろうとした瞬間、猫耳パーカーが割って入り、その声音でお互い我に帰る。
ほんの少し嫌味を言うつもりが、なんか知らんけど喧嘩に発展していた。昔からそうだが、俺が本音を少しでも言うと何故か険悪な状況に陥ってしまう。
確かに昔から喧嘩腰な自覚はあるけれど、どうして毎度毎度こうなるのか。俺の言い方が悪いのかもしれんが、こればかりは俺の脊髄反射みたいなもんだし、どうにかしろってのが無理な話である。
だが、思えば今は緊急時。御玲の安否がかかっている状況で、金髪野郎と喧嘩している暇はない。ついついいつもの如く売り言葉に買い言葉な感じになっちまったが、今は冷静になるべきだ。
「ああ……悪い。思いがけねぇのが乱入してきて焦ってたせいか、少し言葉がキツくなっちまった。情けねえ限りだぜ、新人の何気ない煽りに乗っかっちまうとはよ」
金髪野郎がさっさと頭を下げてきた。思わず抜いちまったであろう剣も鞘にしまう。この雰囲気を無駄にするわけにはいかない。
「……いや、いい。俺は真面目に言った。それが分かってくれたら後はどうでもいいさ」
これ以上拗れると収拾つかなくなるし、なにより仲裁してくれた猫耳パーカーに失礼なので、ここらで手打ちみたいな感じに言っておいた。
こういうとき、俺も頭を下げるべきなんだろうか。俺は謝る、なんてことはほとんどしたことがない。あるとすればまだ俺が親父への復讐に燃えていた頃、久三男と命を賭けた大喧嘩をしたときぐらいなものだ。それが人生で最初の謝罪だった。
じゃあなんで滅多にやらんのかと問われれば、それは相手に頭を下げるという行為が、俺にとって相手に屈するという意味と同義だからだ。
俺は心から負けを認めたとかでもない限り、相手に屈するなんぞできやしない。それは本家派当主としての意地であり、俺個人のプライドなのだ。
「澄男さまー!」
暫時重たい沈黙が横たわる中、その沈黙を食い潰すように、御玲たちが帰ってきた。
ミキティウスに担がれた御玲と、カエルを肩に乗せて全速力で走ってきたであろうポンチョ女が急ブレーキをかけて俺たちの目の前に立ち止まる。
「良かった。良かったぞ御玲。本当に生きててよかった……!」
「ええ、でも状況は芳しくありません。報告しても?」
「構わん、話せ」
俺にとって今重要なのは御玲が生きて帰ってきたことただその一点に尽きるが、それを言っていたら話が進まない。御玲は相対した``骸骨の軍勢``に関して話し始める。
スケルトン・マッシブの総数は五百体、それに対して今戦っているのが百足野郎一匹。もうこの時点で絶望的にしか思えないのだが、俺としては百足野郎の判断は正しいと思った。正直な話、御玲とポンチョ女は戦力にならないからだ。
カエルやミキティウスはともかく、この二人は人間だ。相手が魑魅魍魎のバケモンとなれば、ロクな抵抗もできやしないだろう。特に百足野郎は徹底したポンチョ女ファーストだ。ポンチョ女を気にかける限り、全力など出せない。ポンチョ女を守る方にリソースを割くのだから自明の理である。
だからこそカエルとミキティウスに命じて、二人を戦線から離脱させたのだ。今頃百足野郎は、全ての制限が解除された状態で骸骨どもと死闘を繰り広げている最中だろう。
「百足さんが足止めしてくれてる感じっすか。このまま私たちも加勢するっすか?」
戦況報告を聞き金髪野郎に向き直る猫耳パーカー。
確かにいまいる全員でかかれば、なんとかできる確率は大きく跳ね上がる。
一応、予定していた討伐目標のスケルトン、スカルサモナー、スカルハンター、スカルウィザードはすでに討伐し終えている。このまま全戦力をスケルトン・マッシブたちに向けることは可能だ。
正直百足野郎一匹いたら事足りる気がほんのりするのが不思議だが、それは慢心だろう。万全を期するなら、全員でかかるべきなのは言うまでもないことである。
「だな。このまま全戦力をもって、スケルトン・マッシブを討伐する」
いま、この戦場での指揮官は金髪野郎だ。誰かの指示に従うなんざ癪だが、金髪野郎だと幾分かマシに思える。
俺に振り向いた金髪野郎に、首を縦に振って返す。他の連中も異論なしだ。
「よし、じゃあ早速行」
「っ!? 待ってくださいっす!!」
全員の了承は既に得られた。後は現地に向かって百足野郎に加勢するただそれだけ、と思ったそのとき。
さっきまで普通の顔をしていた猫耳パーカーが、何かに怯えているかのように身体を小刻みに振るわせ、俺たちを見た。パーカーの猫耳が、引きちぎれるんじゃないかってくらいピンっとそそり立っている。
「ヤバいのがこっちに来てるっす……なんかものすごいデカい、邪悪なのが……」
猫耳パーカーの震えは尋常じゃない。見ている俺たちも顔を見合わせ、百足野郎の元へ歩もうとする足を止めた。
御玲が猫耳パーカーの肩を撫で、安心させる。パーカーの猫耳が、ゆっくりと垂れ下がった。だが、変化は目紛しく俺たちを包み込む。
「レク、やべーやみのしょーきがながれてきてやがるぜ」
「スケルトン系か?」
「わかんねーけど、だとしたらただのがいこつやろーじゃねーな。もっとやばいやつ」
「おいおい、ここにきて勘弁してくれよマジで……」
探知に乏しい金髪野郎と俺も、近づく不穏な気配を感じ取れ始めていた。
草木を無造作にかき分ける音、太い木の幹が力づくでへし折られる音。それがどんどんどんどん大きくなっているのだ。明らかに図体のデカい巨人みたいな何かが、俺たちのいるこの場所に近づいてきているのが如実に伝わってくる。
「クソ……やっぱテメェかよ」
金髪野郎が見上げる先に立つは、俺らの身長の三倍くらいはある骸骨の巨人。
下手すりゃ人間の背丈よりデカい漆黒の大剣を引きずり、大剣だけじゃなく、身体全体から濃い闇の瘴気を撒き散らしている。
その瘴気の濃さは、今まで俺らが戦ってきたスケルトンどもなど比じゃない。思わず蒸せ返りそうになるほどの濃い闇が、空気を犯して俺たちの周囲を包み込んでいく。
「うげぇ、何なんだこの不快感は」
「闇属性の……霊力の……影響だ……ろう……な…………うっ」
「レク!」
「おいどうした!?」
突然フラッと倒れ込んだ金髪野郎の肩を、ポンチョ女がすばやく背負いこむ。意味が分からなくて思わず問い詰めてしまったが、原因は周囲を埋め尽くす闇の瘴気にあるのは明白だった。
「やみぞくせーのれーりょくにあてられたんだ。レクはあんままほーぼーぎょたかくねーから」
「お前は大丈夫なのか?」
「いや……けっこーしんどい……むーちゃんとのつながりでなんとかなってる、けど……」
まさかのここにきて二人が戦力外になるとかいう状況。いや元からポンチョ女には期待してなかったけど、金髪野郎は普通に戦力として頭数に入れていただけに、結構痛手だ。
こうなると戦えるのが俺、御玲、猫耳パーカー、カエル、ミキティウスの五人になるが、相手は骸骨。属性耐性の関係で、ダメージを与えられるのは俺と猫耳パーカーの二人だけ。他は陽動こそできてもダメージリソースになり得ないというクソみたいな状況である。
百足野郎がいたなら、話はかなり変わったのだが―――。
「いない奴のことを考えても時間の無駄、か。おい、猫耳パーカー!」
「一応名前、トト・タートっすけど! なんすか!」
「アレ……いけるか?」
「肉壁にはなれるっす」
「俺となら……どうだ?」
「死ぬ気でやれば、殺れそー?」
「陽動役で二匹と一人」
「かなり楽になるっすね」
「ならそれでいこう。お前ら、いけるか?」
陽動役というのは、御玲とカエル、ミキティウスのことだ。この場において、目の前の骸骨巨人の霊圧に耐えられるのは俺らだけ。ダメージリソースにならないからと棒立ちさせておくのも勿体ない。戦力不足は否めないし、遊ばせておくと俺と猫耳パーカーの負担がデカすぎる。
俺は不死身なので死にはしないが、他はそうではないのだ。いざとなれば、御玲の肉壁ぐらいにはなる覚悟である。
「御玲はなんとかノロマにしろ!」
「獲物が大きいですが、了解です」
「ミキティウスとカエル、お前らは陽動だ! 日頃ふざけたそのノリで、巨人の注意を引け!」
「「アイアイサー!!」」
時間がない。相手に先制される前に、必要最低限の指示を飛ばしていく。
何度か戦いをともにしてきただけあって、自分の仲間が何に適しているかは把握している。日頃日常生活における興味関心が薄い俺だが、戦いに関しては別だ。仲間の得手不得手を把握しておくのは、家長の務めってやつである。
相手が人間だったなら御玲を全力で頭数に数えられたのだが、最近敵の人外率が異常に高い。ダメージは与えられずとも、相手をノロマにするくらいには奮闘してくれるだろう。他の二匹は言うまでもない。
「まとまったっすね。んじゃ、いきますか」
目の前に凄まじい闇の瘴気を漂わせる骸骨巨人を前にしているというのに、猫耳パーカーは落ち着いていた。その落ち着きが、妙に俺から焦りを取り払っていく。
何故だか分からない、理由がハッキリしないが、なんでか猫耳パーカーとなら、相手が天災級魔生物でもなんとかできるような、そんな気がしたのだ。
俺と猫耳パーカー、そして背後には御玲、カエル、ミキティウス。戦力不足が否めないが妙に余裕のある俺たちは、大剣を携える骸骨巨人―――スケルトン・アークと対峙する。
``骸骨の軍勢``とはまた別の場所で、禍々しくも邪悪な妖気を漂わせる骸骨が、刻一刻と距離を縮め始めていた。
その骸骨の風貌は、一見すれば普通のスケルトンとなんら変わらない。だが、そのサイズはスケルトンの何倍も大きく、まさに巨人のようである。
さらにもう一つ相違点を挙げるなら、その骸骨巨人は大剣を装備していた。
巨人でなければ持つことすら叶わぬほど巨大な大剣。刀身から柄に至るまで、その全てが闇に塗り潰されている。光を一切通さぬ大剣は、地面を抉りながら大地に根付く生命を無差別に狩り尽くしていく。
強烈な闇属性の霊力によって、大地に根づいた生命が変質しているのだ。彼らはただの無垢なる命であったが、闇属性の力に触れたことにより、一度枯れ果てた後、宵闇に潜む闇の魔物として蘇る。
大地を抉り草木の生命の息吹を歪める邪悪な大剣を持ち、巨人の如き荘厳な体躯を他者全てに見せつける巨大な骸骨。スケルトンの上位種にして、スケルトン系魔生物の頂点―――スケルトン・アーク。
ヘルリオン山脈に生息する、数ある天災級魔生物のうちの一体。たった一体で、人類という種そのものを絶滅に追いやれる暴威である。
むーちゃんが``骸骨の軍勢``と交戦している最中、スケルトン・アークは刻一刻と澄男たちとの距離を縮める。
各所に集中する闇属性の霊力に魅入られたのか、それは分からない。だがスケルトン・アークは間違いなく澄男たちを捉えていた。魔生物、ことスケルトン系魔生物は異種族に対し容赦がない。生物的地位など、彼らには無意味なのだ。
異種族は、全て敵。それは澄男たちとて例外ではない―――。
真っ昼間だってのに、森の中は夜みたく暗い。
さっきまで明るかったのだが、急に黒いベールでも覆い被さったかのように、空が真っ暗闇に染まったのだ。星など当然の如く見えないが、なんと太陽すら見えない始末である。光が灯ることのない常闇が、方向感覚を狂わせてくる。
「こりゃあむーさんが道残してくれてなかったら終わってたな。それに、心なしか霊力も上手く扱えん。光属性系が阻害されてるのか」
金髪野郎が額に汗を滲ませながら、手をくぱくぱさせつつも押しのけられた木々の間を進んでいく。
今の状況を簡単に説明すると夜並みの暗さに加え、無造作に押しのけられた木々や草木に絡まれないように、なおかつさっさと進むという、クソ面倒を絵に描いたような状況である。
百足野郎が道を作っていなかったら、御玲との合流など絶望的になっていただろう。道も分からない上に真っ暗闇じゃ、俺らが遭難してしまう。
「しっかし流石に暗い……気合で視界を明るくできねぇかな……」
などとアホみたいな独り言を言ってみる。できるはずもないが、真っ昼間なのに太陽すら見えないほど暗いのは控えめに言って害悪だ。太陽がないのに蒸し暑さは変わらないし、正直意味が分からない状況である。
せめて視界くらい真っ昼間と同じくらい明るくなってほしいもんだが―――。
「ん?」
刹那、突然周囲が明るくなった。まるで真っ暗な部屋の電気を点けたみたいに、突然である。
気のせいかと思い、咄嗟に周囲を見渡してみる。でも現実は変わらない。周りが真っ暗闇に見える前と同じくらい、視界が拓けて見えている。
一体全体、なんだっていうのか。確かに視界だけでも明るくならないかなと念じたけれど、別に魔法を使ったわけでもないし、霊力を使おうと思って踏ん張ったわけでもない。
ただ独り言を呟いて念じただけ。目の前が暗いから明るくなってくれと、そう願っただけである。なにかしらの魔法にでもかかったかと思ったが、速攻で考えを切り替える。
「なんかよくわかんねぇが都合が良い。これでよく見えるぜ!」
細かいことは気にしない。それが俺の流儀である。都合が悪くなったのならともかく、都合が良くなったのなら、その状況を存分に利用するべきだ。そこに疑問を抱く必要はない。
今は緊急時。前を向いてさっさと御玲たちに合流するのが先決である。
「何だ突然」
俺が突然盛大に独り言をしゃべり散らかしたので、流石におかしいと思ったのだろう。怪訝な顔で俺を見つめてきた。意気揚々とありのままを伝える。
「…………まるで暗視能力が備わったとでも言いたげだな。まあ冗談が言えるのならまだ大丈夫そうか」
「は? 冗談なわけあるか。いま真っ昼間と大して変わらねぇ視界だぞ」
金髪野郎は辟易した表情を浮かべながら、視線を猫耳パーカーに移す。
また変なこと言ってるぞアイツ、みたいな顔がすごく気に食わないが、猫耳パーカーは落ち着いていた。
「任務請負証の視覚共有機能で確かめてみるのはどうすか」
猫耳パーカーの提案に、なるほど、と金髪野郎が納得する。
確かめる方はともかく確かめられる方の俺は任務請負証にそんな機能があることにドン引きだった。あまりにも上手くいっただけにその場の勢いで答えてしまったが、言わなきゃ良かったと後悔する。
任務請負証には全能度測定機能やら霊子通信機能やら、色々と多彩な機能が満載だが、その中の一つに感覚共有機能というものがある。
同じ任務を受注している請負人同士に限られるが、双方の合意があれば味方同士の感覚情報を共有することで、情報共有をより円滑化することを目的に実装された。
最初はキモい機能だなと思ったが、金髪野郎の話を聞いて評価を改める。説明下手な俺にとって、この機能は願ってもない代物だったからだ。
自分で言うのもなんだが、俺は説明力がない。大体の状況把握は久三男や弥平に任せているし、説明そのものは御玲にやらせている始末だ。俺がやると十中八九説明不足だのなんだので伝わらず、イライラするハメになってしまう。
任務中、言葉での説明に困ったときはこの機能を使ってみんなと情報共有すればいいのだ。なんと便利な機能だろうか。これを思いついた奴を褒め称えてやりたい気分だ。
「パイセンが思いつかないなんて珍しいっすね。もしかして知らなかったとか?」
「んいや、知ってたが正直使う機会が全くなかったからな……説明は言葉で大体足りるし、その場にいなけりゃ霊子通信機能で事足りるからな」
「ふむふむ」
「そもそもの話、唐突に暗視能力に目覚めたとか宣う新人なんざ前例がねぇ。まさか初めて使う機能が、新人の言うことの真偽を確かめるために使うことになるなんて思いもしなかったぜ」
「あははー……確かに、私もこれは予想できなかったっすね」
俺が目の前にいるってのに、本音をぶちまけあう支部代表殿達。俺は苦笑いを溢しながらも、額に青筋を浮かべさせる。
「別に嫌なら真偽とか確かめなくてもいいんだゾ。その新人たる俺が暗視能力に目覚めたっつってんだから、それを信じればいいだけの話だしサ」
「いや、そりゃ無理だろ。わけわからんことを言ってる奴がいるんだから、信じるも何も確かめるのが道理ってもんだ」
「へー……つまり新人を信用する器量がねぇと」
「……あのなぁ……!」
金髪野郎の眉間に大きな皴が寄り、大きくため息を吐いた。そのため息には完全に怒りの感情が色濃く混じっている。剣呑とした雰囲気が身体から滲み出すや否や、俺にガンを飛ばしてきやがった。
いつもは温厚で冷静な金髪野郎に似つかわしくない、鋭利な視線が俺を貫く。
「これは仕事だぞ? 本来なら暗視能力に目覚めたとかアホほざいた時点で任務から外してやるところだ。そうせず確かめてやろうって言ってんだから、まだマシな扱いされてると思いやがれ」
「……あん? じゃあテメェは俺がバカみてぇに冗談ほざいたって言いてぇのか?」
「俺に限らず誰もがそう思うだろうよ。逆の立場になって考えてみろや」
「ああ!? 舐めた口叩いてんなよカス、この状況で冗談言うほど寝ぼけてるわけねぇだろうが!! テメェこそ考えてから物言えや!!」
「だからよぉ……!!」
金髪野郎の目が突然血走った。初めて見る、金髪野郎のマジギレ顔。それにちょっと気を取られちまったのか。気がつけば俺は胸倉を掴まれ、近くの大木に押しつけられていた。
「俺からすりゃあ寝ぼけてるようにしか見えねぇっつってんだ!! それもこの緊急時に!! ブルーやお前のメイドの身が危ねぇってときにだ!! 二人に何かあったら、お前責任取れんのか!! ああ!?」
「ぐっ……!! 御玲は死なせねぇよ!! 仲間は死んでも守り切るってのが俺の絶対ルールだからな!! 他は知るか、俺は俺の信念を貫く!! テメェにどうこう言われる筋合いはねぇ!!」
胸倉を掴んでいた腕を、無造作に振りほどく。そして片手に火球を練り上げた。毎度おなじみ煉旺焔星である。それを見て、金髪野郎は今まで見たことないようなしかめっ面で俺を睨み、腰に引っ提げていた剣を抜いた。
「おう、こいよ。こいやコラァ、日和ってんのかクソ金髪? 二度と舐めた態度とれねぇようにしてやっからよ、やるんなら早くこいや!!」
「ちょ、二人ともッ。喧嘩はダメっすッ。仲間割れは任務の大敵っすよ!」
お互い飛びかかろうとした瞬間、猫耳パーカーが割って入り、その声音でお互い我に帰る。
ほんの少し嫌味を言うつもりが、なんか知らんけど喧嘩に発展していた。昔からそうだが、俺が本音を少しでも言うと何故か険悪な状況に陥ってしまう。
確かに昔から喧嘩腰な自覚はあるけれど、どうして毎度毎度こうなるのか。俺の言い方が悪いのかもしれんが、こればかりは俺の脊髄反射みたいなもんだし、どうにかしろってのが無理な話である。
だが、思えば今は緊急時。御玲の安否がかかっている状況で、金髪野郎と喧嘩している暇はない。ついついいつもの如く売り言葉に買い言葉な感じになっちまったが、今は冷静になるべきだ。
「ああ……悪い。思いがけねぇのが乱入してきて焦ってたせいか、少し言葉がキツくなっちまった。情けねえ限りだぜ、新人の何気ない煽りに乗っかっちまうとはよ」
金髪野郎がさっさと頭を下げてきた。思わず抜いちまったであろう剣も鞘にしまう。この雰囲気を無駄にするわけにはいかない。
「……いや、いい。俺は真面目に言った。それが分かってくれたら後はどうでもいいさ」
これ以上拗れると収拾つかなくなるし、なにより仲裁してくれた猫耳パーカーに失礼なので、ここらで手打ちみたいな感じに言っておいた。
こういうとき、俺も頭を下げるべきなんだろうか。俺は謝る、なんてことはほとんどしたことがない。あるとすればまだ俺が親父への復讐に燃えていた頃、久三男と命を賭けた大喧嘩をしたときぐらいなものだ。それが人生で最初の謝罪だった。
じゃあなんで滅多にやらんのかと問われれば、それは相手に頭を下げるという行為が、俺にとって相手に屈するという意味と同義だからだ。
俺は心から負けを認めたとかでもない限り、相手に屈するなんぞできやしない。それは本家派当主としての意地であり、俺個人のプライドなのだ。
「澄男さまー!」
暫時重たい沈黙が横たわる中、その沈黙を食い潰すように、御玲たちが帰ってきた。
ミキティウスに担がれた御玲と、カエルを肩に乗せて全速力で走ってきたであろうポンチョ女が急ブレーキをかけて俺たちの目の前に立ち止まる。
「良かった。良かったぞ御玲。本当に生きててよかった……!」
「ええ、でも状況は芳しくありません。報告しても?」
「構わん、話せ」
俺にとって今重要なのは御玲が生きて帰ってきたことただその一点に尽きるが、それを言っていたら話が進まない。御玲は相対した``骸骨の軍勢``に関して話し始める。
スケルトン・マッシブの総数は五百体、それに対して今戦っているのが百足野郎一匹。もうこの時点で絶望的にしか思えないのだが、俺としては百足野郎の判断は正しいと思った。正直な話、御玲とポンチョ女は戦力にならないからだ。
カエルやミキティウスはともかく、この二人は人間だ。相手が魑魅魍魎のバケモンとなれば、ロクな抵抗もできやしないだろう。特に百足野郎は徹底したポンチョ女ファーストだ。ポンチョ女を気にかける限り、全力など出せない。ポンチョ女を守る方にリソースを割くのだから自明の理である。
だからこそカエルとミキティウスに命じて、二人を戦線から離脱させたのだ。今頃百足野郎は、全ての制限が解除された状態で骸骨どもと死闘を繰り広げている最中だろう。
「百足さんが足止めしてくれてる感じっすか。このまま私たちも加勢するっすか?」
戦況報告を聞き金髪野郎に向き直る猫耳パーカー。
確かにいまいる全員でかかれば、なんとかできる確率は大きく跳ね上がる。
一応、予定していた討伐目標のスケルトン、スカルサモナー、スカルハンター、スカルウィザードはすでに討伐し終えている。このまま全戦力をスケルトン・マッシブたちに向けることは可能だ。
正直百足野郎一匹いたら事足りる気がほんのりするのが不思議だが、それは慢心だろう。万全を期するなら、全員でかかるべきなのは言うまでもないことである。
「だな。このまま全戦力をもって、スケルトン・マッシブを討伐する」
いま、この戦場での指揮官は金髪野郎だ。誰かの指示に従うなんざ癪だが、金髪野郎だと幾分かマシに思える。
俺に振り向いた金髪野郎に、首を縦に振って返す。他の連中も異論なしだ。
「よし、じゃあ早速行」
「っ!? 待ってくださいっす!!」
全員の了承は既に得られた。後は現地に向かって百足野郎に加勢するただそれだけ、と思ったそのとき。
さっきまで普通の顔をしていた猫耳パーカーが、何かに怯えているかのように身体を小刻みに振るわせ、俺たちを見た。パーカーの猫耳が、引きちぎれるんじゃないかってくらいピンっとそそり立っている。
「ヤバいのがこっちに来てるっす……なんかものすごいデカい、邪悪なのが……」
猫耳パーカーの震えは尋常じゃない。見ている俺たちも顔を見合わせ、百足野郎の元へ歩もうとする足を止めた。
御玲が猫耳パーカーの肩を撫で、安心させる。パーカーの猫耳が、ゆっくりと垂れ下がった。だが、変化は目紛しく俺たちを包み込む。
「レク、やべーやみのしょーきがながれてきてやがるぜ」
「スケルトン系か?」
「わかんねーけど、だとしたらただのがいこつやろーじゃねーな。もっとやばいやつ」
「おいおい、ここにきて勘弁してくれよマジで……」
探知に乏しい金髪野郎と俺も、近づく不穏な気配を感じ取れ始めていた。
草木を無造作にかき分ける音、太い木の幹が力づくでへし折られる音。それがどんどんどんどん大きくなっているのだ。明らかに図体のデカい巨人みたいな何かが、俺たちのいるこの場所に近づいてきているのが如実に伝わってくる。
「クソ……やっぱテメェかよ」
金髪野郎が見上げる先に立つは、俺らの身長の三倍くらいはある骸骨の巨人。
下手すりゃ人間の背丈よりデカい漆黒の大剣を引きずり、大剣だけじゃなく、身体全体から濃い闇の瘴気を撒き散らしている。
その瘴気の濃さは、今まで俺らが戦ってきたスケルトンどもなど比じゃない。思わず蒸せ返りそうになるほどの濃い闇が、空気を犯して俺たちの周囲を包み込んでいく。
「うげぇ、何なんだこの不快感は」
「闇属性の……霊力の……影響だ……ろう……な…………うっ」
「レク!」
「おいどうした!?」
突然フラッと倒れ込んだ金髪野郎の肩を、ポンチョ女がすばやく背負いこむ。意味が分からなくて思わず問い詰めてしまったが、原因は周囲を埋め尽くす闇の瘴気にあるのは明白だった。
「やみぞくせーのれーりょくにあてられたんだ。レクはあんままほーぼーぎょたかくねーから」
「お前は大丈夫なのか?」
「いや……けっこーしんどい……むーちゃんとのつながりでなんとかなってる、けど……」
まさかのここにきて二人が戦力外になるとかいう状況。いや元からポンチョ女には期待してなかったけど、金髪野郎は普通に戦力として頭数に入れていただけに、結構痛手だ。
こうなると戦えるのが俺、御玲、猫耳パーカー、カエル、ミキティウスの五人になるが、相手は骸骨。属性耐性の関係で、ダメージを与えられるのは俺と猫耳パーカーの二人だけ。他は陽動こそできてもダメージリソースになり得ないというクソみたいな状況である。
百足野郎がいたなら、話はかなり変わったのだが―――。
「いない奴のことを考えても時間の無駄、か。おい、猫耳パーカー!」
「一応名前、トト・タートっすけど! なんすか!」
「アレ……いけるか?」
「肉壁にはなれるっす」
「俺となら……どうだ?」
「死ぬ気でやれば、殺れそー?」
「陽動役で二匹と一人」
「かなり楽になるっすね」
「ならそれでいこう。お前ら、いけるか?」
陽動役というのは、御玲とカエル、ミキティウスのことだ。この場において、目の前の骸骨巨人の霊圧に耐えられるのは俺らだけ。ダメージリソースにならないからと棒立ちさせておくのも勿体ない。戦力不足は否めないし、遊ばせておくと俺と猫耳パーカーの負担がデカすぎる。
俺は不死身なので死にはしないが、他はそうではないのだ。いざとなれば、御玲の肉壁ぐらいにはなる覚悟である。
「御玲はなんとかノロマにしろ!」
「獲物が大きいですが、了解です」
「ミキティウスとカエル、お前らは陽動だ! 日頃ふざけたそのノリで、巨人の注意を引け!」
「「アイアイサー!!」」
時間がない。相手に先制される前に、必要最低限の指示を飛ばしていく。
何度か戦いをともにしてきただけあって、自分の仲間が何に適しているかは把握している。日頃日常生活における興味関心が薄い俺だが、戦いに関しては別だ。仲間の得手不得手を把握しておくのは、家長の務めってやつである。
相手が人間だったなら御玲を全力で頭数に数えられたのだが、最近敵の人外率が異常に高い。ダメージは与えられずとも、相手をノロマにするくらいには奮闘してくれるだろう。他の二匹は言うまでもない。
「まとまったっすね。んじゃ、いきますか」
目の前に凄まじい闇の瘴気を漂わせる骸骨巨人を前にしているというのに、猫耳パーカーは落ち着いていた。その落ち着きが、妙に俺から焦りを取り払っていく。
何故だか分からない、理由がハッキリしないが、なんでか猫耳パーカーとなら、相手が天災級魔生物でもなんとかできるような、そんな気がしたのだ。
俺と猫耳パーカー、そして背後には御玲、カエル、ミキティウス。戦力不足が否めないが妙に余裕のある俺たちは、大剣を携える骸骨巨人―――スケルトン・アークと対峙する。
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