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参上! 花筏ノ巫女編
南支部代表の秘密?
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森から帰ってきた俺たちを出迎えたのは、南支部のトップたるトト・タートこと猫耳パーカーと、戦力外オッサンズの護衛のために待機させていたシャルとナージだった。
「おま、早くね!?」
何気に金髪野郎が素で驚く顔を見るのは初めてかもしれない。
俺らは二人で一体をやったわけだが、猫耳パーカーはたった一人。タイマンでスケルトンの亜種に挑みに行っていたぐらいだから負けることはないだろうとは思っていたが、それにしても仕事が速すぎる。
さらに言うなら着ている服に汚れは一切なく、俺らがここに戻ってくるまでに一服する余裕があったんじゃないかってくらいゆったりとした印象だ。
俺や金髪野郎でさえスケルトンと遭遇するまでの登山で少し汚れたし、俺が森の一部を焼き払ったせいで服に煤もついているし、茂みに隠れたりしていたから枯葉や土だってついている。
正直、実はサボっていたんじゃないかと疑いたくなるほどに、あんまりにも猫耳パーカーは無事すぎた。
「私は回復済んだんで、レクパイセンもサクッと回復済ませてくださいっす」
「い、いや待ってくれ。その前に……クッソ失礼を承知で聞くぜ? お前、本当にスカルウィザード倒してきたのか?」
金髪野郎もどうやら同じ疑念を抱いていたらしい。多分絶対ないと思いつつも、サボっていたんじゃないかと疑いをかけたようだ。
「あー、やっぱり気になります? オッサンたちにも同じこと聞かれたんすよね。仕事速すぎーって」
「そりゃお前、服に乱れも汚れも綻びもないし……傷とかは回復薬で治したとしても、なんつーか……正直ちょっと外で軽く立ちションして帰ってきたって印象しか感じられねぇんだよな……」
「ええ!? 私、女の子なんで立ちションなんてしないっすよ!」
顔を赤らめながら、内股にしつつ両手で股間を隠す猫耳パーカー。その仕草に自分の言ったことに遅れて気づいた金髪野郎は、急ぎ気味に首を左右に振った。
「悪りぃ! 違うんだ! 例えミスった! セクハラって思っちまったらすまねぇ……!」
「いやまあ、酔ったオッサンズはもっと際どいこと言ってくるんで、個人的に全然大丈夫なんすけど……パイセン、なんか疲れてません? 行く前と比べて心なしかやつれてる気が……」
「まあな、主にこの新人のせいでな……」
「俺、悪くないお」
「どの口が言ってんだよ」
「いへーらはらへは!!」
また額に青筋を立てながら俺の頬をつまんでくる。今の俺はさぞかし変な顔になっているだろうがまあいい。さっきも言った通り俺は悪くない。ただ自分のやり方を突き通しただけである。
「しっかしマジで速いな、相手はスカルウィザードだぜ?」
頬をつまんでくる金髪野郎を振りほどいた頃には、金髪野郎の興味は既に猫耳パーカーに移っていた。
人の頬をつまんでおいてシカトとか癪にも程がある野郎だが、かくいう俺も猫耳パーカーの戦いっぷりが純粋に気になっているのは事実である。本来ならやり返してやるところだが、俺も猫耳パーカーを注視する。
「物理無効に加えて魔法防御は標準型スケルトン以上。俺じゃこのパワー馬鹿の新人抜きで倒せる自信皆無なんだが、どんな技使いやがったんだ?」
「別に技ってほど大層なもん使ってねーっすけど、まあ……霊力使うの結構得意な方なんで、それなりに。そんなに気になるってんなら話しましょーか?」
スタミナの回復は必要でしょうし、と茶色い小瓶を二本手渡してくる。何のことはない、ただのスタミナドリンクである。
確かに体力や霊力の消費はそんなにだが、多少ながらも山登りしたし、骸骨野郎を実際に消し炭にしているからスタミナは消費していると言われればしている。だからといってヘトヘトってわけでもないんだが、これから御玲たちと合流するにあたって何が起こるか分からない。油断して負けるとかクソ間抜けだし、休めるときに休んでおいた方がいいのは考えるまでもなかった。
俺たちは少しの間スタミナ回復することにし、その間、猫耳パーカーの戦いっぷりを詳しく聞くことにした。
本人は恥ずかしがりながらも色々話してくれていたが、ジャイロを筆頭とするオッサンたちが、実際に現地に行ってもいない癖に隙あらば補足説明というの名の猫耳パーカー自慢を挟んでくるので、俺の中で記憶が半ばごちゃごちゃになってしまったのだが、覚えている範囲で答えるなら、こんな感じになる。
他の班と別れたトト・タートは、寄り道も何もせず、すぐに索敵を始めていた。
現南支部最高実力者であるトト・タートは、凄腕の魔導師。魔法、厳密には霊力に関することならば、南支部の誰も敵わないほど優秀な少女である。
齢十三歳という若人でありながら、本部所属の請負官の中でもごく僅かな上位者しか使えないような高度な魔法を涼しい顔で平然と扱う姿は、まさに南支部を支えるオッサンたちにとって、夢と希望と若さ溢れるエースであった。
そんな彼女がいま使っている魔法は``魔法探知``、``探査``の二種類の無系魔法。
無属性の魔法の系譜は一般に``無系魔法``、属性を帯びた魔法の系譜は``属性系魔法``と呼ばれているが、特に``無系魔法``の系譜は無数に存在する。
この二つの魔法は、その無数ある系譜のうち、更に``探知系``という系譜に分類される魔法である。
どれも就職当時は使えなかったが、必要性に迫られて以降、魔法陣のサンプルを一眼見ただけで構造を理解し、すぐに使いこなせてみせた。今や請負人魔導師が扱うほとんどの魔法を何の苦なく使うことができる彼女だからこそ、一人でヘルリオン山脈の登山が行えるのである。
「いやー、真っ昼間っつーのに、相変わらず薄暗れー森っすね」
魔法を展開しながら、スケルトンのみならず他の魔生物の乱入も警戒する。
ヘルリオン山脈は人の世から隔絶された大自然。魑魅魍魎が跋扈する、化け物たちの楽園である。人間にとっては地獄以外の何物でもないこの場所で、スケルトン以外の魔生物が乱入してくることなど当然起こりうる。
ヘルリオン山脈での任務は、本来ならばフェーズB以上。支部勤めの請負人が単身で踏み入っていい場所ではない。索敵を隙なく行わなければ任務で討伐するべき魔生物とは全く別の魔生物に次々と襲われ、即帰らぬ人になってしまう。
だからこそ彼女の集中力は尋常ではない。魔法を維持し、なおかつ全方位に意識を集中させて乱入に備えている。これに加えて気温は三十五度以上、湿度も森の中に入ったおかげで八割に達しようとしている。環境の過酷さも相まって、既に全身汗だくの状態だった。
「……こんなとき、姉様なら……」
トト・タートは、優秀だ。支部の請負人はおろか、本部の請負官すら使いこなすのに努力が必要な魔法も、魔法陣を見ただけで構造を理解し、すぐに習得してしまうほどに。だが彼女自身は、それでも未熟さを感じていた。
彼女の前には必ず、どれだけ走っても追いつくこと叶わない、屈強な姉の姿があったからだ。
自慢の姉は、自分が知る限り世界で最強の存在。この程度で汗だくになどならず、むしろ辛さすら感じさせない涼しい笑顔で、どんどん前に進んでしまうことだろう。
姉と比べれば、まだまだ未熟者だ。もっともっと修行して、この程度涼しい顔でこなせるくらい強くなりたい。それが彼女の思いであった。
「……妖気」
脳裏に姉の後ろ姿が、魔法によって感じ取れた不穏な気配によって掻き消える。
彼女は請負人になって日は浅いが、その意識の高さは本部の請負官と引けを取らない。敵らしき存在の気配を察知したその瞬間から、彼女の顔つきはプロのそれへと変化する。
「二時の方向……アレか」
彼女は目が良い。視力は数値換算で五.〇を優に超える。その凄まじい視力で、彼女は的確に敵の位置を捉えた。
漆黒のオーラを全身から漂わせるローブ姿をした骸骨が一体。スカルウィザード。目撃情報にあった通りの、スケルトン系亜種である。
スカルウィザードはまだトト・タートを視認できていない。相手は探知系魔法を使わないので、気配察知範囲にさえ入らなければ、先制されることはない。それを利用し、トトは戦うための下準備および確認をすばやく行う。
まずは属性耐性。
スカルウィザードのみならず、スケルトン系の魔生物は全て共通して闇属性を持つ。操る霊力も高密度な闇の霊力であるため、重要なのは闇属性耐性となる。
相手が普通のスケルトンか、スカルハンターであれば物理攻撃への対策も必要となるが、スカルウィザードは物理攻撃を一切行わない。全ての攻撃手段は魔法のみなので、属性耐性を極限まで高めてしまえば、それだけダメージのほとんどを軽減できてしまう。
そのため、本来ならば闇属性耐性を一時的に強化する無系魔法を使い、少しでも防御を固めるのが魔導師としての一般的な立ち回り方となる。
気になるトトの闇属性耐性だが、実は完全耐性ほどではないにせよ極めて高い。スカルウィザードの攻撃でさえ素のフィジカルで大幅に軽減してしまえるほど、闇属性に対して高い耐性を保有していた。
魔法には強化限界が存在する。どれだけ魔法効果を重複させても、完全耐性にまで重複強化させることはできない。耐性強化魔法を使ったところで霊力の無駄遣いにしかならず、属性耐性面で下準備は必要ないと判断を下す。
次に、魔法毒への対処。
スケルトン系の魔生物は接触時および全ての攻撃に盲目、不活、流血、疲労の四種類の魔法毒を付与する固有能力を持つ。特に強力なのが盲目と不活で、これら二種類の魔法毒にあてられると視覚が潰され、霊力回復と魔法の使用が絶望的になってしまう。
ここに疲労の魔法毒が重なることで、猛烈な倦怠感とともに肉体的な動作や感覚が鈍くなり、流血の魔法毒により傷口からの出血が止まらなくなることで継続的にダメージを受け続ける羽目になる。
もたもたしていると流血の魔法毒で失血死するか、魔法毒で苦しんでいる最中に八つ裂きにされるかのいずれかの結末を辿ることになるだろう。
トトは魔法毒への耐性に、そこまで自信があるわけではなかった。何も対策を講じなければ、少なくとも盲目と不活にあてられる可能性は高い。
本来ならばここで、盲目の魔法毒に対して有効な``視覚保護``、不活の魔法毒に対して有効な``霊流活性``、疲労の魔法毒に対して有効な``肉体活性``、流血の魔法毒に対して有効な``止血``といった無系魔法を行使して魔法毒への耐性を高めるのだが、魔法を何種類も発動させると消費霊力がそれだけ多くなってしまう。
当然、攻撃に使う分は残しておかなければならない。トトの霊的ポテンシャルは二百四十と澄男に迫るほど高いが、霊力吸収、霊力生成といった都合の良い能力など持ち合わせていない。回復手段は回復薬を飲むか、それこそ時間経過による自然回復のみである。
残りの霊力量だが、既に探知系魔法で半分ほど使ってしまっている。対策魔法を三種類も使うとそれだけで枯渇してしまう。魔法は効果が強力で確実、そして多彩なものが多いが、どれも消費霊力が高くつくのが玉に瑕なのだ。
そこで用いるのが、姉から指南され、体に叩き込まれた``霊力操作``という体術である。
人類社会ではあまり知られていないことだが、生物の体内に宿る霊力は、霊脈と呼ばれる管を通って体内を循環する。
血液が心臓を介して大動脈から各臓器に繋がった血管へと流れ、最終的に静脈を通って心臓へ帰ってくるのと同じように、霊力は肝臓から無数の霊脈へ送り出され、最終的に数多の霊脈を経て肝臓へと帰ってくるのである。
元来、霊脈は血管と違って肉眼、はたまた顕微鏡などを使っても観測することはできないが、己の体内に宿る霊力に意識を向け、霊力を可視化するほどに霊力の使い方を熟達することができたなら、体内に宿る霊力と、その霊脈を観て感じ、さらには自在に操作することができるようになるのだ。
魔法毒とて、その実体は霊力である。
身体機能を阻害する要因となっている霊力に意識を向け、それを体外へ排出するように霊脈を組み替えて循環を整えてしまえば、対策魔法を使わずとも魔法毒を無効化することが理論上可能となる。
簡単に言ってのけたが、これは非常に高度な体術であり、並大抵の修行では習得できるものではない。しかしこの手法により、対策魔法で本来使われてしまう霊力を、戦闘に割り振ることが可能となったわけだ。
体内の霊脈を視認し、魔法毒を受けてもいいように霊脈を組み替える。下手に組み替えると自分の霊力ごとダダ漏れ状態になるため、魔法毒にあてられるまでは、体外へ繋げた霊脈は閉じておく。あてられたら、その都度弁を開くイメージで魔法毒を外へ排出すればいいだけだ。
これで粗方、下準備と確認は終えた。あとは戦略である。
大雑把には、今回サモナーを倒すために目の前のウィザードは短期決戦で討つ必要がある。だからといって霊力を出し惜しみせず湯水のように使っていたら、サモナーの分は南支部に一旦帰還して回復するにしても、乱入などの予定外に対応する余力がなくなってしまう。
そこで、また霊力操作体術の出番だ。
「意識を集中……霊力の流れを掴んで、属性を変換……」
目を瞑り、体内と、全身の皮膚近辺の霊力に意識を向ける。
スケルトン系の魔生物は厄介な固有能力も相まって、その戦闘力は高いが闇に対するは光というように、光属性に対して致命的に弱いという弱点がある。
トトはどの属性にも適性がなく、本来ならば無属性の霊力しか扱えない。だが観念―――つまりイメージを霊力に加えて練り込むことで、戦闘時に扱う霊力に限り、任意の属性に霊力を変換、付与することが可能となる。
元が無属性なので一々体内で変換してから体外へ放つ必要が出てくるが、相手は闇属性しか持たないスカルウィザードなので、単純に光属性に変換して出力すればいいだけである。
トトにとって、これほど安上がりな変換はない。
ちなみに、トトは体内の霊力だけでなく、皮膚の表面に接している体外霊力までなら、己の体術で操作できる。つまり、体内霊力だけで賄うのではなく、ある程度体外の霊力も自分の霊力として操ることで、少しでも体内霊力の消費を抑えられるということだ。
「これでもまだまだなんすよね。ウチには特定範囲の空間全ての霊力を操れる姉がいるし……うぅ、どうやったらそんな真似できるんすか……」
またもや姉の凄さを思い出し、思わず泣きたくなるが、今は仕事だ。ここはグッと堪えた。
とにもかくにも、戦う準備は整った。乱入に気を配りながらも、トトは堂々とスカルウィザードの気配察知範囲に入り込む。
乱入や帰還に備えて余力を残しておきたいし、まだ討伐対象としてスカルサモナーも控えているため、ウィザード相手には超短期決戦。物理攻撃主体の標準型やスカルハンターと違い、魔法攻撃しか行わないスカルウィザードは、攻撃する際に必ず詠唱を行う必要がある。
その隙に先手を打つ。
「でやぁ!!」
ウィザードの間合いに隙なく踏み込み、一撃。トトの拳撃が詠唱中のウィザードの左胸を貫いた瞬間、ウィザードの左半身が真っ白な光の爆発とともに消し飛ぶ。
スカルウィザードの野太い悲鳴。左半身を初手で消し飛ばされ、魔法詠唱は瓦解する。
トトは全身に光属性の霊力を纏っている。闇属性の存在たるスケルトン系魔生物にとって、効果抜群だった。物理のダメージ分は案の定無効化されてしまうが、光属性を纏った拳撃は、スカルウィザードに確かなダメージを与えたのだ。
悲鳴をあげ、漆黒の眼窩からトトを射殺そうとするスカルウィザードだったが、トトは全く動じる様子などない。すかさず華麗な上段回し蹴りを披露し、スカルウィザードの頭部を蹴り砕く。
「畳み掛けるっす」
頭部と左半身を失い、持ち前の固有能力で身体だけでも復元しようとするスカルウィザードだが、トトに慈悲はない。ここからは独壇場だった。
右腕を潰し、足を破壊。詠唱はおろか、立つことすらできないようにしたのち、右半身の胴体だけ残ったウィザードの破片を鷲掴む。
破片一つでも残していると、スケルトン系魔生物は固有能力で何度でも復活する。まさに死を超克した存在なのだ。しかし逆に言えば、その破片すら残さず消し去ってしまえば、復活しようがないとも言えるのである。
スケルトン系魔生物は、動物などの白骨死体に高密度化した闇の霊力が宿ったもので、その実体は集合した闇の霊力そのもの。つまり、その霊力さえなんとかしてしまえば討伐できる。
南支部のエースにして霊力操作を扱うトト・タートにとって、霊力さえなんとかしてしまえばいいだけならば、もはや赤子の手を捻るより簡単な作業だった。
「任務完了っす!」
持ち前の霊力操作で、闇の霊力を変換する。
これを行うにはスカルウィザードと十分に接触している必要があり、流石に四肢や頭部がある状態では厳しい。霊力操作中に、魔法で袋叩きにされてしまうからだ。
流石に魔法を真正面から受け続けると、魔法毒の排出が間に合わない。ダメージもそれなりに受けてしまうので、やるのなら下拵えをきちんとする必要があった。
右半身の骨の塊のみとなったウィザードは、彼女の手を起点にして無属性の霊力に変換されていく。そして文字通り無となり、大気中に散った。無属性の霊力と化してしまえば、もはや空気と変わらない。存在していないも同義だった。
服装の乱れを整え、そそくさと森を後にする。
倒したからと油断していると、他の魔生物に乱入されてしまう。まだサモナーとの戦いも控えている。無駄な体力と霊力の消費は抑えなければならない。
その上、探知系魔法で体内霊力の半分を使ってしまった。一旦森を出て南支部に帰り、霊力回復薬を服用して霊力を回復。その後、手こずってそうな班と合流してケリをつける。
想定通り、体力は有り余っている。霊力はともかく、あの程度の戦闘は準備運動になるかどうかぐらいだ。一つの目的を果たしなら、迅速に次の目的を完遂する。
目にも止まらぬ速さで森を走り抜けるトト・タート。彼女が森に入ってスカルウィザードを倒し、再び森から出てくるまで、たった十二分間の出来事であった。
「とまぁ……色々と外野による誇張が混じっちゃってるっすけど、大体こんな感じっすかね」
「いや、こんな感じっすかねって。お前ね……」
俺も金髪野郎もその場で固まって唖然としていた。
感想を一言に要約して言うなら、無駄がない。むしろなさすぎて鮮やかという言葉がふさわしい。
霊力操作とかいう聞いたこともない技も使っていたし、完全に達人か何かの所業である。なんでこんな実力者が南支部の代表で留まっているのか。
もしスカルウィザードの相手を俺がソロでやるってなっていたら、同じ真似ができただろうかと考えたとき、正直深く考えるまでもなく無理だと悟らされたほどに、猫耳パーカーの手腕は一切文句のつけようがないものだった。
顔に汗を滲ませながら、思考の海に身を投じる。
文句のつけようがない戦いなのは認めるが、否応もなく悟らされてしまったのは流川本家の当主として結構悔しい。
仮に俺がソロで倒すことになっていたとしても、スカルウィザードを倒せないことはないだろう。戦い方がパワー押しになるだけで、結果は変わらないはずだ。
効率で勝てるっかって言われたら無理だって話なだけで、パワーなら俺に分がある。ソロなら金髪野郎に止められることもないだろうし、煉旺焔星で森ごとすべて焼き尽くせばワンパンだ。なら効率もクソもなく俺の方が速く狩れる。
よし、大丈夫だ。俺は負けてない。
「何お前、一人黙ってニヤついてんだよ、気持ち悪いな」
「えッ、いや、なんでもねぇよ! ちょっと考え事してただけだ!」
思考の海を泳いでいたせいで自信を取り戻した瞬間の感情が漏れ出てしまったらしい。年下の女の子にムキになって戦闘シミュレーションしていたとか、バレたらクッソ恥ずかしすぎて死ねる。猫耳パーカーにもそうだが、金髪野郎にもバレるわけにはいかない。これは俺の、男のプライドの問題なのだ。
金髪野郎は尚も俺に怪訝な視線を向けながらも、またもや興味を猫耳パーカーに移す。
「しっかしすげぇ奴だな。それでまだ勤め始めて半年も経ってねぇんだろ? 新進気鋭の超新星ってのは噂で聞いてたが、こりゃ噂以上だぜ」
「ちょ、そりゃ言いすぎっすパイセン!」
「いやいや言いすぎじゃねぇって。こりゃ俺もうかうかしてらんねぇな。年下の後輩にタイマンで負けたとあっちゃあ、男が廃るってもんだ」
「そ、そんなことないっす! タイマンならパイセンの方が……」
「いや、わかんねぇぜ? 今度やってみるか?」
「いやいやいやいや! 遠慮しとくっす……」
ははは、そうかい、と軽い感じでけらけらと笑う金髪野郎。だが俺はこの二人の仕草というか体から滲み出ている気配を見逃さなかった。
謙虚気味に遠慮すると言った猫耳パーカーからも、冗談交じりにタイマン誘った金髪野郎からも、殺気というほどじゃないが、地味に霊圧が漏れ出ていたのだ。
なんだかんだいって、本音では試してみたいのかもしれない。タイマンしたらどっちが強いか。
俺だって咄嗟に脳内で戦闘シミュレーションしたくらいだ。理性では戦う理由がないからとかテキトーな理由つけて避けるにしても、本能では白黒つけたくなる性分なのである。きっと二人も、なんだかんだで同じ性分を持っているのかもしれない。
「んまあ、とかく、だ」
感慨に浸っていると、金髪野郎はジャイロってオッサンが運んできていた小瓶の束から、一本手に取る。その小瓶は桃色に光り輝いている液体が封入されており、一口で飲み干せる程度の量しか入っていない。
それが何なのかを俺が疑問を投げるよりも速く、金髪野郎が猫耳パーカーに問いかけた。
「霊力回復薬借りるぜ。任務終わった後で返すから、ツケといてくれや」
「あー、別にいいっすよ。ウチの霊力回復薬は私の手作りなんで、全品無料配布っす。在庫も腐るほどあるんで、何本でもどーぞっす」
「はぁ!? え……!? いや待って、手作りだと!? それを無料配布だぁ!?」
「まあもちろん、いつもは南支部のオッサンズ限定っすよ? でも今は同じ任務を乗り越える同士ですし、特別贈呈っす」
「いやいやそういうことじゃなくて……」
また金髪野郎が素っ頓狂な声を上げた。スカルウィザードの武勇伝で一世を風靡したのも束の間、またここにきて重大発言をブチかましやがったからだ。
「霊力回復薬を自作だと? この回復薬、市販の奴と純度同じだろ……?」
「まあ、はい。そうらしいっすね。私はただ市販の奴を見たり飲んだりして、見様見真似で作っただけなんすけど、割とこれが上手くいったっぽくて」
「いやいやいやいや……待ってくれ」
頭を左右に振り、処理が追いつかないって感じの表情を浮かべる金髪野郎。一方、猫耳パーカーは一人頭を抱えて混乱する金髪野郎の態度に困惑する。
「み、見様見真似で作れるもんじゃあ……専門技術とかがいる、結構高度な薬品だぞ? 請負機関で作れる奴なんて本部の……」
「そー言われても困るっす。正味、そんなムズイもんでもなかったし……霊力に精通してる奴なら割と誰でも作れるもんなんじゃないんすか?」
「請負機関の魔導師は戦闘で扱う知識は豊富だが、それ以外は無知だったりするのが大概だからな」
「そうなんすか……ウチの実家だと、霊力の知識なんて十歳になるまでには体と頭に叩き込まれるんすけど、アレが普通だと思ってました」
「なんだそりゃ……恐ろしすぎんかお前の実家」
「ですよね! 私もそー思ってたところっす」
金髪野郎が辟易するほどとなると、余程トチ狂った真似をしているのだろう。
霊力回復薬を作る方法は、俺が金髪野郎から聞いた超原始的なやり方しか知らない。本来どの程度の作成難易度なのかは知らんが、金髪野郎のリアクションを見る限り、一朝一夕でできるようなものじゃないのは、この俺でも理解できた。
まあ、俺にはどうでもいい話なので、そこまで重く捉えることでもないのだが。
俺たちは猫耳パーカーに言われるがまま、霊力回復薬を十本もらった。意図としては二人で五本ずつ使えって感じで渡してきたんだろうが、俺には必要ない。全部金髪野郎に渡し、腹の足しにしてもらった。
金髪野郎が霊力回復し、再出撃の準備を整えている間に猫耳パーカーは南支部から出撃していた。おそらく御玲たちの班へ向かったんだろう。俺たちも物資を持って、すぐに向かわねば。
「この回復薬全部……手作り、かぁ……マジで市販……いや、この品質……下手すりゃ市販よりも……」
「……まだ言ってんのかよ」
感動と驚きが隠せないのか、配布された南支部印の回復薬をまじまじと観察しながら、俺たちも現地へ走る。
いつもは説教ばかりの金髪野郎が、現地に着くまで回復薬に独り見惚れていたことなど、俺以外知る由もない事実である。
「おま、早くね!?」
何気に金髪野郎が素で驚く顔を見るのは初めてかもしれない。
俺らは二人で一体をやったわけだが、猫耳パーカーはたった一人。タイマンでスケルトンの亜種に挑みに行っていたぐらいだから負けることはないだろうとは思っていたが、それにしても仕事が速すぎる。
さらに言うなら着ている服に汚れは一切なく、俺らがここに戻ってくるまでに一服する余裕があったんじゃないかってくらいゆったりとした印象だ。
俺や金髪野郎でさえスケルトンと遭遇するまでの登山で少し汚れたし、俺が森の一部を焼き払ったせいで服に煤もついているし、茂みに隠れたりしていたから枯葉や土だってついている。
正直、実はサボっていたんじゃないかと疑いたくなるほどに、あんまりにも猫耳パーカーは無事すぎた。
「私は回復済んだんで、レクパイセンもサクッと回復済ませてくださいっす」
「い、いや待ってくれ。その前に……クッソ失礼を承知で聞くぜ? お前、本当にスカルウィザード倒してきたのか?」
金髪野郎もどうやら同じ疑念を抱いていたらしい。多分絶対ないと思いつつも、サボっていたんじゃないかと疑いをかけたようだ。
「あー、やっぱり気になります? オッサンたちにも同じこと聞かれたんすよね。仕事速すぎーって」
「そりゃお前、服に乱れも汚れも綻びもないし……傷とかは回復薬で治したとしても、なんつーか……正直ちょっと外で軽く立ちションして帰ってきたって印象しか感じられねぇんだよな……」
「ええ!? 私、女の子なんで立ちションなんてしないっすよ!」
顔を赤らめながら、内股にしつつ両手で股間を隠す猫耳パーカー。その仕草に自分の言ったことに遅れて気づいた金髪野郎は、急ぎ気味に首を左右に振った。
「悪りぃ! 違うんだ! 例えミスった! セクハラって思っちまったらすまねぇ……!」
「いやまあ、酔ったオッサンズはもっと際どいこと言ってくるんで、個人的に全然大丈夫なんすけど……パイセン、なんか疲れてません? 行く前と比べて心なしかやつれてる気が……」
「まあな、主にこの新人のせいでな……」
「俺、悪くないお」
「どの口が言ってんだよ」
「いへーらはらへは!!」
また額に青筋を立てながら俺の頬をつまんでくる。今の俺はさぞかし変な顔になっているだろうがまあいい。さっきも言った通り俺は悪くない。ただ自分のやり方を突き通しただけである。
「しっかしマジで速いな、相手はスカルウィザードだぜ?」
頬をつまんでくる金髪野郎を振りほどいた頃には、金髪野郎の興味は既に猫耳パーカーに移っていた。
人の頬をつまんでおいてシカトとか癪にも程がある野郎だが、かくいう俺も猫耳パーカーの戦いっぷりが純粋に気になっているのは事実である。本来ならやり返してやるところだが、俺も猫耳パーカーを注視する。
「物理無効に加えて魔法防御は標準型スケルトン以上。俺じゃこのパワー馬鹿の新人抜きで倒せる自信皆無なんだが、どんな技使いやがったんだ?」
「別に技ってほど大層なもん使ってねーっすけど、まあ……霊力使うの結構得意な方なんで、それなりに。そんなに気になるってんなら話しましょーか?」
スタミナの回復は必要でしょうし、と茶色い小瓶を二本手渡してくる。何のことはない、ただのスタミナドリンクである。
確かに体力や霊力の消費はそんなにだが、多少ながらも山登りしたし、骸骨野郎を実際に消し炭にしているからスタミナは消費していると言われればしている。だからといってヘトヘトってわけでもないんだが、これから御玲たちと合流するにあたって何が起こるか分からない。油断して負けるとかクソ間抜けだし、休めるときに休んでおいた方がいいのは考えるまでもなかった。
俺たちは少しの間スタミナ回復することにし、その間、猫耳パーカーの戦いっぷりを詳しく聞くことにした。
本人は恥ずかしがりながらも色々話してくれていたが、ジャイロを筆頭とするオッサンたちが、実際に現地に行ってもいない癖に隙あらば補足説明というの名の猫耳パーカー自慢を挟んでくるので、俺の中で記憶が半ばごちゃごちゃになってしまったのだが、覚えている範囲で答えるなら、こんな感じになる。
他の班と別れたトト・タートは、寄り道も何もせず、すぐに索敵を始めていた。
現南支部最高実力者であるトト・タートは、凄腕の魔導師。魔法、厳密には霊力に関することならば、南支部の誰も敵わないほど優秀な少女である。
齢十三歳という若人でありながら、本部所属の請負官の中でもごく僅かな上位者しか使えないような高度な魔法を涼しい顔で平然と扱う姿は、まさに南支部を支えるオッサンたちにとって、夢と希望と若さ溢れるエースであった。
そんな彼女がいま使っている魔法は``魔法探知``、``探査``の二種類の無系魔法。
無属性の魔法の系譜は一般に``無系魔法``、属性を帯びた魔法の系譜は``属性系魔法``と呼ばれているが、特に``無系魔法``の系譜は無数に存在する。
この二つの魔法は、その無数ある系譜のうち、更に``探知系``という系譜に分類される魔法である。
どれも就職当時は使えなかったが、必要性に迫られて以降、魔法陣のサンプルを一眼見ただけで構造を理解し、すぐに使いこなせてみせた。今や請負人魔導師が扱うほとんどの魔法を何の苦なく使うことができる彼女だからこそ、一人でヘルリオン山脈の登山が行えるのである。
「いやー、真っ昼間っつーのに、相変わらず薄暗れー森っすね」
魔法を展開しながら、スケルトンのみならず他の魔生物の乱入も警戒する。
ヘルリオン山脈は人の世から隔絶された大自然。魑魅魍魎が跋扈する、化け物たちの楽園である。人間にとっては地獄以外の何物でもないこの場所で、スケルトン以外の魔生物が乱入してくることなど当然起こりうる。
ヘルリオン山脈での任務は、本来ならばフェーズB以上。支部勤めの請負人が単身で踏み入っていい場所ではない。索敵を隙なく行わなければ任務で討伐するべき魔生物とは全く別の魔生物に次々と襲われ、即帰らぬ人になってしまう。
だからこそ彼女の集中力は尋常ではない。魔法を維持し、なおかつ全方位に意識を集中させて乱入に備えている。これに加えて気温は三十五度以上、湿度も森の中に入ったおかげで八割に達しようとしている。環境の過酷さも相まって、既に全身汗だくの状態だった。
「……こんなとき、姉様なら……」
トト・タートは、優秀だ。支部の請負人はおろか、本部の請負官すら使いこなすのに努力が必要な魔法も、魔法陣を見ただけで構造を理解し、すぐに習得してしまうほどに。だが彼女自身は、それでも未熟さを感じていた。
彼女の前には必ず、どれだけ走っても追いつくこと叶わない、屈強な姉の姿があったからだ。
自慢の姉は、自分が知る限り世界で最強の存在。この程度で汗だくになどならず、むしろ辛さすら感じさせない涼しい笑顔で、どんどん前に進んでしまうことだろう。
姉と比べれば、まだまだ未熟者だ。もっともっと修行して、この程度涼しい顔でこなせるくらい強くなりたい。それが彼女の思いであった。
「……妖気」
脳裏に姉の後ろ姿が、魔法によって感じ取れた不穏な気配によって掻き消える。
彼女は請負人になって日は浅いが、その意識の高さは本部の請負官と引けを取らない。敵らしき存在の気配を察知したその瞬間から、彼女の顔つきはプロのそれへと変化する。
「二時の方向……アレか」
彼女は目が良い。視力は数値換算で五.〇を優に超える。その凄まじい視力で、彼女は的確に敵の位置を捉えた。
漆黒のオーラを全身から漂わせるローブ姿をした骸骨が一体。スカルウィザード。目撃情報にあった通りの、スケルトン系亜種である。
スカルウィザードはまだトト・タートを視認できていない。相手は探知系魔法を使わないので、気配察知範囲にさえ入らなければ、先制されることはない。それを利用し、トトは戦うための下準備および確認をすばやく行う。
まずは属性耐性。
スカルウィザードのみならず、スケルトン系の魔生物は全て共通して闇属性を持つ。操る霊力も高密度な闇の霊力であるため、重要なのは闇属性耐性となる。
相手が普通のスケルトンか、スカルハンターであれば物理攻撃への対策も必要となるが、スカルウィザードは物理攻撃を一切行わない。全ての攻撃手段は魔法のみなので、属性耐性を極限まで高めてしまえば、それだけダメージのほとんどを軽減できてしまう。
そのため、本来ならば闇属性耐性を一時的に強化する無系魔法を使い、少しでも防御を固めるのが魔導師としての一般的な立ち回り方となる。
気になるトトの闇属性耐性だが、実は完全耐性ほどではないにせよ極めて高い。スカルウィザードの攻撃でさえ素のフィジカルで大幅に軽減してしまえるほど、闇属性に対して高い耐性を保有していた。
魔法には強化限界が存在する。どれだけ魔法効果を重複させても、完全耐性にまで重複強化させることはできない。耐性強化魔法を使ったところで霊力の無駄遣いにしかならず、属性耐性面で下準備は必要ないと判断を下す。
次に、魔法毒への対処。
スケルトン系の魔生物は接触時および全ての攻撃に盲目、不活、流血、疲労の四種類の魔法毒を付与する固有能力を持つ。特に強力なのが盲目と不活で、これら二種類の魔法毒にあてられると視覚が潰され、霊力回復と魔法の使用が絶望的になってしまう。
ここに疲労の魔法毒が重なることで、猛烈な倦怠感とともに肉体的な動作や感覚が鈍くなり、流血の魔法毒により傷口からの出血が止まらなくなることで継続的にダメージを受け続ける羽目になる。
もたもたしていると流血の魔法毒で失血死するか、魔法毒で苦しんでいる最中に八つ裂きにされるかのいずれかの結末を辿ることになるだろう。
トトは魔法毒への耐性に、そこまで自信があるわけではなかった。何も対策を講じなければ、少なくとも盲目と不活にあてられる可能性は高い。
本来ならばここで、盲目の魔法毒に対して有効な``視覚保護``、不活の魔法毒に対して有効な``霊流活性``、疲労の魔法毒に対して有効な``肉体活性``、流血の魔法毒に対して有効な``止血``といった無系魔法を行使して魔法毒への耐性を高めるのだが、魔法を何種類も発動させると消費霊力がそれだけ多くなってしまう。
当然、攻撃に使う分は残しておかなければならない。トトの霊的ポテンシャルは二百四十と澄男に迫るほど高いが、霊力吸収、霊力生成といった都合の良い能力など持ち合わせていない。回復手段は回復薬を飲むか、それこそ時間経過による自然回復のみである。
残りの霊力量だが、既に探知系魔法で半分ほど使ってしまっている。対策魔法を三種類も使うとそれだけで枯渇してしまう。魔法は効果が強力で確実、そして多彩なものが多いが、どれも消費霊力が高くつくのが玉に瑕なのだ。
そこで用いるのが、姉から指南され、体に叩き込まれた``霊力操作``という体術である。
人類社会ではあまり知られていないことだが、生物の体内に宿る霊力は、霊脈と呼ばれる管を通って体内を循環する。
血液が心臓を介して大動脈から各臓器に繋がった血管へと流れ、最終的に静脈を通って心臓へ帰ってくるのと同じように、霊力は肝臓から無数の霊脈へ送り出され、最終的に数多の霊脈を経て肝臓へと帰ってくるのである。
元来、霊脈は血管と違って肉眼、はたまた顕微鏡などを使っても観測することはできないが、己の体内に宿る霊力に意識を向け、霊力を可視化するほどに霊力の使い方を熟達することができたなら、体内に宿る霊力と、その霊脈を観て感じ、さらには自在に操作することができるようになるのだ。
魔法毒とて、その実体は霊力である。
身体機能を阻害する要因となっている霊力に意識を向け、それを体外へ排出するように霊脈を組み替えて循環を整えてしまえば、対策魔法を使わずとも魔法毒を無効化することが理論上可能となる。
簡単に言ってのけたが、これは非常に高度な体術であり、並大抵の修行では習得できるものではない。しかしこの手法により、対策魔法で本来使われてしまう霊力を、戦闘に割り振ることが可能となったわけだ。
体内の霊脈を視認し、魔法毒を受けてもいいように霊脈を組み替える。下手に組み替えると自分の霊力ごとダダ漏れ状態になるため、魔法毒にあてられるまでは、体外へ繋げた霊脈は閉じておく。あてられたら、その都度弁を開くイメージで魔法毒を外へ排出すればいいだけだ。
これで粗方、下準備と確認は終えた。あとは戦略である。
大雑把には、今回サモナーを倒すために目の前のウィザードは短期決戦で討つ必要がある。だからといって霊力を出し惜しみせず湯水のように使っていたら、サモナーの分は南支部に一旦帰還して回復するにしても、乱入などの予定外に対応する余力がなくなってしまう。
そこで、また霊力操作体術の出番だ。
「意識を集中……霊力の流れを掴んで、属性を変換……」
目を瞑り、体内と、全身の皮膚近辺の霊力に意識を向ける。
スケルトン系の魔生物は厄介な固有能力も相まって、その戦闘力は高いが闇に対するは光というように、光属性に対して致命的に弱いという弱点がある。
トトはどの属性にも適性がなく、本来ならば無属性の霊力しか扱えない。だが観念―――つまりイメージを霊力に加えて練り込むことで、戦闘時に扱う霊力に限り、任意の属性に霊力を変換、付与することが可能となる。
元が無属性なので一々体内で変換してから体外へ放つ必要が出てくるが、相手は闇属性しか持たないスカルウィザードなので、単純に光属性に変換して出力すればいいだけである。
トトにとって、これほど安上がりな変換はない。
ちなみに、トトは体内の霊力だけでなく、皮膚の表面に接している体外霊力までなら、己の体術で操作できる。つまり、体内霊力だけで賄うのではなく、ある程度体外の霊力も自分の霊力として操ることで、少しでも体内霊力の消費を抑えられるということだ。
「これでもまだまだなんすよね。ウチには特定範囲の空間全ての霊力を操れる姉がいるし……うぅ、どうやったらそんな真似できるんすか……」
またもや姉の凄さを思い出し、思わず泣きたくなるが、今は仕事だ。ここはグッと堪えた。
とにもかくにも、戦う準備は整った。乱入に気を配りながらも、トトは堂々とスカルウィザードの気配察知範囲に入り込む。
乱入や帰還に備えて余力を残しておきたいし、まだ討伐対象としてスカルサモナーも控えているため、ウィザード相手には超短期決戦。物理攻撃主体の標準型やスカルハンターと違い、魔法攻撃しか行わないスカルウィザードは、攻撃する際に必ず詠唱を行う必要がある。
その隙に先手を打つ。
「でやぁ!!」
ウィザードの間合いに隙なく踏み込み、一撃。トトの拳撃が詠唱中のウィザードの左胸を貫いた瞬間、ウィザードの左半身が真っ白な光の爆発とともに消し飛ぶ。
スカルウィザードの野太い悲鳴。左半身を初手で消し飛ばされ、魔法詠唱は瓦解する。
トトは全身に光属性の霊力を纏っている。闇属性の存在たるスケルトン系魔生物にとって、効果抜群だった。物理のダメージ分は案の定無効化されてしまうが、光属性を纏った拳撃は、スカルウィザードに確かなダメージを与えたのだ。
悲鳴をあげ、漆黒の眼窩からトトを射殺そうとするスカルウィザードだったが、トトは全く動じる様子などない。すかさず華麗な上段回し蹴りを披露し、スカルウィザードの頭部を蹴り砕く。
「畳み掛けるっす」
頭部と左半身を失い、持ち前の固有能力で身体だけでも復元しようとするスカルウィザードだが、トトに慈悲はない。ここからは独壇場だった。
右腕を潰し、足を破壊。詠唱はおろか、立つことすらできないようにしたのち、右半身の胴体だけ残ったウィザードの破片を鷲掴む。
破片一つでも残していると、スケルトン系魔生物は固有能力で何度でも復活する。まさに死を超克した存在なのだ。しかし逆に言えば、その破片すら残さず消し去ってしまえば、復活しようがないとも言えるのである。
スケルトン系魔生物は、動物などの白骨死体に高密度化した闇の霊力が宿ったもので、その実体は集合した闇の霊力そのもの。つまり、その霊力さえなんとかしてしまえば討伐できる。
南支部のエースにして霊力操作を扱うトト・タートにとって、霊力さえなんとかしてしまえばいいだけならば、もはや赤子の手を捻るより簡単な作業だった。
「任務完了っす!」
持ち前の霊力操作で、闇の霊力を変換する。
これを行うにはスカルウィザードと十分に接触している必要があり、流石に四肢や頭部がある状態では厳しい。霊力操作中に、魔法で袋叩きにされてしまうからだ。
流石に魔法を真正面から受け続けると、魔法毒の排出が間に合わない。ダメージもそれなりに受けてしまうので、やるのなら下拵えをきちんとする必要があった。
右半身の骨の塊のみとなったウィザードは、彼女の手を起点にして無属性の霊力に変換されていく。そして文字通り無となり、大気中に散った。無属性の霊力と化してしまえば、もはや空気と変わらない。存在していないも同義だった。
服装の乱れを整え、そそくさと森を後にする。
倒したからと油断していると、他の魔生物に乱入されてしまう。まだサモナーとの戦いも控えている。無駄な体力と霊力の消費は抑えなければならない。
その上、探知系魔法で体内霊力の半分を使ってしまった。一旦森を出て南支部に帰り、霊力回復薬を服用して霊力を回復。その後、手こずってそうな班と合流してケリをつける。
想定通り、体力は有り余っている。霊力はともかく、あの程度の戦闘は準備運動になるかどうかぐらいだ。一つの目的を果たしなら、迅速に次の目的を完遂する。
目にも止まらぬ速さで森を走り抜けるトト・タート。彼女が森に入ってスカルウィザードを倒し、再び森から出てくるまで、たった十二分間の出来事であった。
「とまぁ……色々と外野による誇張が混じっちゃってるっすけど、大体こんな感じっすかね」
「いや、こんな感じっすかねって。お前ね……」
俺も金髪野郎もその場で固まって唖然としていた。
感想を一言に要約して言うなら、無駄がない。むしろなさすぎて鮮やかという言葉がふさわしい。
霊力操作とかいう聞いたこともない技も使っていたし、完全に達人か何かの所業である。なんでこんな実力者が南支部の代表で留まっているのか。
もしスカルウィザードの相手を俺がソロでやるってなっていたら、同じ真似ができただろうかと考えたとき、正直深く考えるまでもなく無理だと悟らされたほどに、猫耳パーカーの手腕は一切文句のつけようがないものだった。
顔に汗を滲ませながら、思考の海に身を投じる。
文句のつけようがない戦いなのは認めるが、否応もなく悟らされてしまったのは流川本家の当主として結構悔しい。
仮に俺がソロで倒すことになっていたとしても、スカルウィザードを倒せないことはないだろう。戦い方がパワー押しになるだけで、結果は変わらないはずだ。
効率で勝てるっかって言われたら無理だって話なだけで、パワーなら俺に分がある。ソロなら金髪野郎に止められることもないだろうし、煉旺焔星で森ごとすべて焼き尽くせばワンパンだ。なら効率もクソもなく俺の方が速く狩れる。
よし、大丈夫だ。俺は負けてない。
「何お前、一人黙ってニヤついてんだよ、気持ち悪いな」
「えッ、いや、なんでもねぇよ! ちょっと考え事してただけだ!」
思考の海を泳いでいたせいで自信を取り戻した瞬間の感情が漏れ出てしまったらしい。年下の女の子にムキになって戦闘シミュレーションしていたとか、バレたらクッソ恥ずかしすぎて死ねる。猫耳パーカーにもそうだが、金髪野郎にもバレるわけにはいかない。これは俺の、男のプライドの問題なのだ。
金髪野郎は尚も俺に怪訝な視線を向けながらも、またもや興味を猫耳パーカーに移す。
「しっかしすげぇ奴だな。それでまだ勤め始めて半年も経ってねぇんだろ? 新進気鋭の超新星ってのは噂で聞いてたが、こりゃ噂以上だぜ」
「ちょ、そりゃ言いすぎっすパイセン!」
「いやいや言いすぎじゃねぇって。こりゃ俺もうかうかしてらんねぇな。年下の後輩にタイマンで負けたとあっちゃあ、男が廃るってもんだ」
「そ、そんなことないっす! タイマンならパイセンの方が……」
「いや、わかんねぇぜ? 今度やってみるか?」
「いやいやいやいや! 遠慮しとくっす……」
ははは、そうかい、と軽い感じでけらけらと笑う金髪野郎。だが俺はこの二人の仕草というか体から滲み出ている気配を見逃さなかった。
謙虚気味に遠慮すると言った猫耳パーカーからも、冗談交じりにタイマン誘った金髪野郎からも、殺気というほどじゃないが、地味に霊圧が漏れ出ていたのだ。
なんだかんだいって、本音では試してみたいのかもしれない。タイマンしたらどっちが強いか。
俺だって咄嗟に脳内で戦闘シミュレーションしたくらいだ。理性では戦う理由がないからとかテキトーな理由つけて避けるにしても、本能では白黒つけたくなる性分なのである。きっと二人も、なんだかんだで同じ性分を持っているのかもしれない。
「んまあ、とかく、だ」
感慨に浸っていると、金髪野郎はジャイロってオッサンが運んできていた小瓶の束から、一本手に取る。その小瓶は桃色に光り輝いている液体が封入されており、一口で飲み干せる程度の量しか入っていない。
それが何なのかを俺が疑問を投げるよりも速く、金髪野郎が猫耳パーカーに問いかけた。
「霊力回復薬借りるぜ。任務終わった後で返すから、ツケといてくれや」
「あー、別にいいっすよ。ウチの霊力回復薬は私の手作りなんで、全品無料配布っす。在庫も腐るほどあるんで、何本でもどーぞっす」
「はぁ!? え……!? いや待って、手作りだと!? それを無料配布だぁ!?」
「まあもちろん、いつもは南支部のオッサンズ限定っすよ? でも今は同じ任務を乗り越える同士ですし、特別贈呈っす」
「いやいやそういうことじゃなくて……」
また金髪野郎が素っ頓狂な声を上げた。スカルウィザードの武勇伝で一世を風靡したのも束の間、またここにきて重大発言をブチかましやがったからだ。
「霊力回復薬を自作だと? この回復薬、市販の奴と純度同じだろ……?」
「まあ、はい。そうらしいっすね。私はただ市販の奴を見たり飲んだりして、見様見真似で作っただけなんすけど、割とこれが上手くいったっぽくて」
「いやいやいやいや……待ってくれ」
頭を左右に振り、処理が追いつかないって感じの表情を浮かべる金髪野郎。一方、猫耳パーカーは一人頭を抱えて混乱する金髪野郎の態度に困惑する。
「み、見様見真似で作れるもんじゃあ……専門技術とかがいる、結構高度な薬品だぞ? 請負機関で作れる奴なんて本部の……」
「そー言われても困るっす。正味、そんなムズイもんでもなかったし……霊力に精通してる奴なら割と誰でも作れるもんなんじゃないんすか?」
「請負機関の魔導師は戦闘で扱う知識は豊富だが、それ以外は無知だったりするのが大概だからな」
「そうなんすか……ウチの実家だと、霊力の知識なんて十歳になるまでには体と頭に叩き込まれるんすけど、アレが普通だと思ってました」
「なんだそりゃ……恐ろしすぎんかお前の実家」
「ですよね! 私もそー思ってたところっす」
金髪野郎が辟易するほどとなると、余程トチ狂った真似をしているのだろう。
霊力回復薬を作る方法は、俺が金髪野郎から聞いた超原始的なやり方しか知らない。本来どの程度の作成難易度なのかは知らんが、金髪野郎のリアクションを見る限り、一朝一夕でできるようなものじゃないのは、この俺でも理解できた。
まあ、俺にはどうでもいい話なので、そこまで重く捉えることでもないのだが。
俺たちは猫耳パーカーに言われるがまま、霊力回復薬を十本もらった。意図としては二人で五本ずつ使えって感じで渡してきたんだろうが、俺には必要ない。全部金髪野郎に渡し、腹の足しにしてもらった。
金髪野郎が霊力回復し、再出撃の準備を整えている間に猫耳パーカーは南支部から出撃していた。おそらく御玲たちの班へ向かったんだろう。俺たちも物資を持って、すぐに向かわねば。
「この回復薬全部……手作り、かぁ……マジで市販……いや、この品質……下手すりゃ市販よりも……」
「……まだ言ってんのかよ」
感動と驚きが隠せないのか、配布された南支部印の回復薬をまじまじと観察しながら、俺たちも現地へ走る。
いつもは説教ばかりの金髪野郎が、現地に着くまで回復薬に独り見惚れていたことなど、俺以外知る由もない事実である。
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