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覚醒自動人形編 上
急襲
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澄男たちと霊子通信を切った弥平は、久三男と霊子通信を繋いだ状態のまま、無数にある高層ビルの屋上で、敵軍の偵察に徹していた。
弥平がいる場所は、中威区北部郊外。その中で高層マンションが最も多い住宅地帯である。
彼が地面に降りないのは、屋上の方が一度に様々なものを見渡すことができるという密偵ならではの効率化による癖だが、今回は事情が少し違った。
高層ビルをかいくぐり、舗装された道路を埋め尽くす大量のロボット軍団。もはや地上に人間が歩ける場所はない。一体どこからこれほどの兵力を導入できたのかは謎だが、物理的に地上からの索敵は不可能なのは、考えるまでもないことだった。
現在、流川弥平の姿は誰にも見えない。街中を夥しく埋め尽くすテスカトリポールのみならず、突然現れた謎の軍勢に抵抗しようと己の武力を振りかざす武市民にさえも。
その秘密は彼が着ている装備の一つ、霊学迷彩・甲型にある。
霊学迷彩とは、自身の体内霊力を大気中の霊力と同一化させる魔法陣を組み込んだ迷彩装備であり、性能の低い順から丙型、乙型、甲型の三種類がある。
巷で一般人でも手に入るのは丙型まで。大型企業や組織の暗部、国家規模で使用されるのが乙型。そして人類の技術力の関係上、現時点で流川家しか使えないとされているのが甲型である。
霊学迷彩は迷彩に組み込む魔法陣の質によって性能が変化する。丙型は``魔法``の下位互換たる``魔術``によって不可視化が実現されており、それは乙型も同様だ。
乙型と丙型の違いは、丙型の霊学迷彩にある弱点を``魔術``で実現できる範囲内で改良したか否かにあるが、甲型の不可視効果は、それらとは一線を画する性能を持っている。
丙乙型に組み込まれているのは、装備した者を不可視化させるのに必要な``魔術``だが、甲型は``魔法``が組み込まれている。
``魔術``と``魔法``は名前こそ似ているが性能が全く異なるもので、その中でも``魔術``とは、体内霊力量が低い者でも扱えるよう、消費霊力と魔法陣を描くために必要な情報量を極限まで削った即席魔法である。
消費霊力と情報量が抑えられているのだから、当然効能は弱い。熟練者のみが扱える``魔法``などとは、比べるべくもないものなのだ。
「あの軍勢が、全てロボットだとは……」
住民たちの抵抗によって街中の至る所で火花が散る。高層ビルの屋上から偵察していた弥平は、大地を埋め尽くしながら歩く鉄の塊たちを見下し、思わず本音を漏らした。
流川本家派当主―――流川澄男の影として諜報活動を行っていたのだが、事態の経緯は久三男や御玲からの報告で、粗方把握し終えている。
武市外縁部に突如として現れた謎のロボット兵団。誰にも悟られることもなく、あの久三男をして「何の前触れもなく突然現れた」と言わしめた事実は、弥平に衝撃を与えた。
人類大陸ヒューマノリア上空には無数の人工霊子衛星と、その霊子衛星から得られた情報を集積しておく航宙基地が存在する。
それらの存在を知るのは現在でも流川家の手の者しかいない秘中の秘だが、その情報収集能力は圧倒的だ。久三男の手にかかれば、あらゆる機密情報が丸裸にされる。他愛ない一般人の個人情報から国家の機密情報まで、その全てが久三男の意のままに集められるのだ。
空の上に無数に公転している人工霊子衛星も、久三男が無数に持つ情報収集手段の一つでしかない。
はてさて、その人工霊子衛星によってロボット兵団の存在は、任務請負機関本部が察知するよりも格段に速く知ることができたが、どうやって、どのような経緯で現れたのかは謎だ。久三男が突然現れたと言うのなら、それは本当に何の脈絡もなく突然だったのだろう。謎は深まるばかりである。
「久三男様は上位機種の存在を疑っておりましたが……」
弥平もまた、状況とデータを脳内で照らし合わせて思考する。
久三男が提唱したのは、ロボット兵団を無条件で指揮下に入れられる上位機種が武市のどこかにおり、現在進軍中のロボット兵団は、その上位機種によって全権を掌握されている。という説である。
久三男によると、上位機種からの命令は絶対服従というプログラムが下位機種全てに備わっているのならば、その上位機種はあたかも一軍の司令官のように振る舞うことが可能であり、上位機種に下位機種を召喚する能力が備わっていれば、下位機種をどこからか呼びだすことも可能なのではないかと唱えている。
荒唐無稽な話だが、現状を鑑みてもその説が濃厚のように思えた。ロボット兵団の動きは整然としており、住民から攻撃を受けても、それら全てを無視して支部方面へと行軍している。
もしも司令官がいないのならば、このロボット兵団はもっと無秩序であるはずだ。家屋の破壊を率先して行い、住民にも無慈悲な攻撃を行なっていてもおかしくはない。今でこそ街中を大量の鉄の塊が埋め尽くしている程度だが、無秩序であればこの辺りの街は圧倒的物量を前に壊滅していただろう。
怒り狂う住民を無視して支部方面に進んでいるあたり、何者かがロボット兵団を支部へ向けてリモートコントロールしていると見て間違いない。
「となると、問題は遠隔操作をしている存在ですか」
数千を超えるロボット兵団を一挙にして召喚し、更には無駄なく操る存在。それは一体何者なのか。そもそも人間で可能なのか。
久三男だったなら可能かもしれない。しかしながら、この世界には久三男以上の技術者は存在しない。まず、数千ものロボットを召喚する行為自体、正気ではないのだ。
人間というよりも、人智を超えた何者かの所業と考えるのが妥当だが、それでは何の情報もないのと同じである。
「久三男様に頼んで、ロボット兵団から指揮系統を探っていただくか」
ロボット兵団は何者かの指示で動いている。ならばロボット兵団を束ねている指揮系統が存在するはずで、それを末端から逆探知していけば、大元に辿り着けるはずである。
単純な話だが、当然実行するとなれば簡単なことではないし、相手からの妨害は確実だろう。敵は流川の目を欺き、一般人に紛れ込めるほどの潜伏能力を持っている。人力で探し出すのは現実的ではないのだ。
後の事は久三男に任せよう。自分ができる事は、ロボット兵団の行軍状況を逐一報告すること。それをきっちり果たすのが流川分家派当主、流川弥平の役目―――。
両目を覆う黒いバイザー、拡張視覚野をしまう。同じ場所ばかり見ていても仕方がない。また別の地点から兵団の調査をしようと移動の準備をし始めた、そのとき。視界の端に白い何かが一瞬、光ったような気がした。
普通なら気にするまでもないような、ほんの僅かな発光。諜報活動の本分だからか、些細な変化を無視できなくなっているのだろう。思わず持ち物を片付けていた手が止まる。
街中を明るく照らす、ただの蛍光灯の明滅だろうか。下は郊外とはいえ住宅地帯。公道を明るく照らす蛍光灯があってもなんら不思議ではない。流石に気にしすぎか―――。
「……ん?」
右手から発する唐突な違和感。本来ならそこにあるべきものがなく、本来なら巡るべきものが巡らず。肩から冷たいような熱いような何かが夥しく滴っている。五感が、身体を底冷えさせた。
「ぐ、あ、ああああああああああ!!」
ついさっきまで塞がれて抑えられていたものが、一気に噴き出したかのように押し寄せてくる。
何が起こったのか。それを思考するよりも、右半身から迸る痛覚の濁流が全てを押し流してしまう。焦点が合わない。視界がぼやけて、思考が散り散りになる。戦時に必要なあらゆる認識、対応能力が落ちていた。
まずい、このままでは―――。
肩にかけていた魔導鞄から、左手で一本の瓶を取り出す。その瓶は澄んだ青色。サファイアを彷彿とさせる綺麗な液体を一気に飲み干した。
「まさか……右腕を一瞬で……!?」
飲み干したのは体力回復薬・甲型。部位欠損すら再生する、この世界で流川家のみ製造可能な回復系薬剤である。
痛みが和らいでいく中、思考と視野が鮮明になっていくのを悟り、何が起こったのか、改めて考えてみる。あまりにも現実に起こったことが目紛しく変化したため認識が追いついてないが、簡単に述べるなら右腕がなんらかの手段で一瞬のうちに切断された。
あまりに一瞬で、なおかつ綺麗に切断されたため、痛みが脳に届くよりも速かったのだ。
幸い事態が一瞬だったためか、痛みと出血で昏倒する前に回復薬を飲めたのが功を奏した。そうでなければ、思考が散り散りになったまま戦闘不能になっていたかもしれない。
急いで周囲の戦況を把握するべく探知系の魔法を惜しみなく使い、索敵を厳とする。反応はすぐだった。
弥平から見て十時の方向。十七、八歳ぐらいの女性が、切断された弥平の右腕を片手に、こちらを見下してくる。
薄い暗緑色の前髪で右眼が隠れているが、血のように真っ赤に輝く瞳が冷たく射抜いてくる。その瞳に生気が感じられず、更に体の奥底から湧き出る寒気を、より強く感じさせた。
失われた右腕を再生しても、危機的状況にあることに変わりはない。どこからともなく現れたその女性こそ、右腕を切断せしめた存在なのだと直感が訴えかけてきていた。
苦虫を噛み潰したような表情を浮かべながらも、素早く両手にナイフを装備する。
いつまでも不利な状況に呑まれている場合ではない。ざわつく心を理性で押し殺し、今ここでできることは何かと考えたが、思い浮かぶのは撤退の二文字のみであった。
撤退したい理由は、大まかに二つ。
そもそも霊学迷彩・甲型を装備することで周囲からは完全不可視状態になっているにもかかわらず、的確にこちらの存在を認識できていることだ。
看破される原因としては``魔法探知``と``部分無効``を併用された場合ぐらいだが、その組み合わせをピンポイントでチョイスしてくるのならば、相手の魔法戦闘能力は計り知れないものということになる。
人間の魔導師が存在しているかどうかも分からない敵に、大量の霊力を浪費する魔法を維持し続けるのは、すぐに霊力が枯渇してしまうため悪手だ。特に``部分無効``という術者が指定した任意の事象を無効化する魔法は、霊力消費はともかく魔法自体が超高難度の魔法であり、使用できる者など流川を含めても数えるほどしかいない。
実際にどんな魔法を使っているかは分からないが、``部分無効``をも使用できるとなると、魔法戦における技量は弥平を軽く凌いでいると言っていい。
もう一つは拡張視覚野というアイテムで探知能力を拡張していたというのに、攻撃を察知できなかった点だ。
肉が焼ける音もなく、痛みすら感じさせず、状況認識能力を超過して右腕は見事に切断された。認識能力を易々と超過できる攻撃を平然と行えるとなると、その実力は未知数となる。想像を遥かに超えると言っても差し支えない。
これらを鑑みれば、無理して戦うなど論外。むしろ今起こったことを久三男か澄男たちに伝えるため、全力で逃げに徹するのが最善なのだ。
ミキティウスかヴァズが初手で揃っていれば、もう少し工夫できるかもしれないが。
「いえ、それでも私は撤退せねばならないでしょうがね……」
ミキティウスとヴァズ。身体能力だけ比較しても、両者の方が上だ。弥平だって身体能力は流川の名に恥じず、鍛練の果てに人類の枠組みから外れつつあるが、右腕を切断されたことを微塵も感じさせぬほどの超速攻撃など、一撃でも受ければ死は免れない。
撤退するのなら転移で本家邸まで逃げるのが望ましいが、相手に隙がない。一寸の動きすら見逃さないという濃密な視線が、懐から転移の技能球を出すことを許してくれないのだ。
睨み合いが続く。女性が視線を外した。彼女が見つめるその先は、切断された弥平の右腕。
この状況下で目線をそらすなど、自ら隙を作っているようなもの。この隙に逃げるかと反射的に懐を手でまさぐるが、次の瞬間に鼓膜を揺らしたそれが、思わず技能球を取ろうとした手を止めてしまう。
【非常に高品質な遺伝情報を検知。生体融合を開始します】
酷く無機質な声音。機械で再現された女性アナウンスのような声が、あたかも目の前に立つ女性を``生物ではない``と思わせてくれる。
「ま、まさか……!?」
思わず大きく目を見開いた。確信に足る証拠があるわけではない。だが正気を感じさせない冷たい声が無理矢理にでも確信させる。目の前に映る光景が、確信を更に深まらせたのだ。
「私の腕を……吸収している……!?」
切断された右腕は一瞬で液状化し、地面に滴ることなく彼女の手の中に吸い込まれていった。
自身にかけていた探知系魔法が鳴動する。彼女の体内霊力が一気に跳ね上がったことが、魔法によって本能に刻まれたのだ。
他人の右腕をその身に宿し、その瞬間に体内霊力が上昇した。それはつまり、他人の肉体をエネルギーに変換し、己の血肉として融合させたということ。
言っていることは支離滅裂だ。そんなことが、ただの人間にできるはずもない。いや数多の魔法を操る魔導師であったとしても、できる者はいないだろう。
ならば、目の前に立つこの女こそが―――。
「弥平様!」
「間に合いましたね!」
弥平を守るように現れた、黄緑と白が織り混ざった装甲で身を包む大男と、青白いロン毛を靡かせる小学生くらい男の子。
前者はヴァズ、後者はミキティウス。澄男と久三男から派遣された支援要員が到着したのだ。無感情とはいえ冷たい殺意がむけられていただけあって、思わず胸を撫で下ろす。
「私は一度、本家邸へ撤退します。あの者の相手をお願いします」
「了解シマシタ。戦闘ニ関スルデータモ、順次送信イタシマス」
カオティック・ヴァズの両腕が変形し、巨大なミニガンへと形を変えた。顔の上半分を覆う黒いバイザーが、虹色に波打つ。
「ミキティウス殿、援護ヲ頼ム」
「任せろ、勝負パンツは被った。これで負けはしないさ」
何故か女物の下着を頭から被るミキティウス。なんで一々下着を被るのか、何故女物なのかを問い質したいが、そんな余裕はない。
女性の瞳が一瞬、ミキティウスとヴァズを交互に見た。常人ならば見逃してしまうほど刹那の所作だったが、諜報活動を専門とする本分がある以上、見逃す道理などない。
おそらくだが彼女は、この一瞬のうちに二人の大雑把な力量を測ったのだ。その証拠に、真っ赤な瞳から発する冷徹な殺意は、弥平からヴァズたちに移っている。
「気をつけてください。相手は敵の力を我が物にする能力を持っています」
「霊力吸収ノヨウナモノデショウカ?」
「いえ、おそらく生体融合の類かと。ただ、霊的エネルギーに変換する術も持っているやも」
「ナラバ、私デモ危険カ」
油断なく睨み合う中でも、敵の分析は怠らない。
自分の右腕が吸収され、敵の体内霊力が増したことを考慮するなら、他人の血肉を糧として、自律的な強化改修が可能な機体だと推測できる。
現在の人類文明で、人を介さず自分の意志だけでメンテナンスを行うロボットなど聞いたことがない。それこそ実例といえば、久三男が開発したカオティック・ヴァズぐらいなものだ。
流川家以外で、人類の枠組みを超えるロボット工学技術を使える者が他にいると思えない。思えないのだが、ならばあの機体はどこから湧いて出て、誰に造られたというのだろうか。
「とにかく、情報を持ち帰らねば……!」
転移の技能球を手に取る。
情報の交換は本来、霊子通信だけでも十分に可能ではあるが、一緒にいてもヴァズやミキティウスの足枷になるだけだ。真正面から戦って負ける確率の方が高い以上、行動を共にする理由はない。
「では、任せましたよッ」
戦闘が始まるであろう、ほんの数刻前。弥平は早々に技能球に込められた転移魔法``顕現``で、その場から姿を消したのだった。
残されたカオティック・ヴァズとミキティウスの二名は、正体不明の女型アンドロイドと向き合っていた。
ミキティウスは油断なく女型アンドロイドの隙を窺っていたが、カオティック・ヴァズは冷酷な殺意を向けてくる同族から、ただならぬ気配を感じていた。
「潜在能力ガ測定不能ダト……!? 馬鹿ナ!! 我ラガ主、流川久三男様ノ身技ノ如キ……!?」
ありえない、それがヴァズの本音だった。
カオティック・ヴァズにとって、流川久三男は唯一無二の主。この世界に存在する全人類が文明を総出で結集しても、その技術の片鱗すら再現させることを許さない創造の王。
盲目であったわけではないが、敵う者などいないと確信して疑いもしなかった。
力はミキティウスやヴァズには及ばない。全能度で述べるなら未だ千に満たず、弥平や御玲より高い程度。二人からすれば敵ではない存在だが、弥平の話では、敵は相手の血肉を我が物とし、自力で強化改修を可能とする能力を持っている。
それすなわち技術者を必要とせず、自分一人である程度のメンテナンスが可能であるということを意味する。
人類文明の先に立つカオティック・ヴァズですら、久三男のメンテナンスを必要としているというのに、目の前の女型アンドロイドはメンテナンスのための技術者を必要としないのだ。
同じアンドロイドとして、敵ながら羨ましい。そう思ってしまう自分がいた。
「私トシタコトガ……愚カナ」
不安定になった擬似霊力炉心に意識を向け、霊力循環を安定させる。
相手に羨望の眼差しを向けるなど、創造主に対する背信に他ならない。確かに相手の潜在性能は高いのかもしれないが、だからといって久三男の技術力が劣ることなどありえないのだ。
久三男ならば、その全ての先をいく。今は足らずとも、目の前の女型アンドロイドをサンプルとして持ち帰れば、必ずや久三男を更なる高みへと誘えるだろう。
全ては創造主、久三男のため。久三男の栄華が翳ることなど、決してありえないことなのだ。
「カオティック・ヴァズRev.Ⅱ、参ル!!」
中央処理装置が弾き出した不敬な演算結果を振り払い、敵性因子の調査に思考領域を割り振る。
久三男からはロボット兵団を操る者がおり、久三男と並行して偵察している弥平を守るように言われている。
だが実際に相対して粗方把握したように、相手はアンドロイドだ。弥平も相手が人間ではないことに気付いているはずで、となれば推測が誤りである可能性は極めて低くなったと見積もれる。
確信ではない。しかしながら、おそらく女性型アンドロイドこそが、ロボット兵団を操る黒幕なのだ。
ならば捕獲、不可能ならば破壊して、サンプルを持ち帰らねばならない。
全能度は七百を超えてこそいるが、幸いにもまだ三桁台。ヴァズ一人で十分戦える相手である上にミキティウスもいる状況で、負けることなどないはずだ。
「私ガ陽動ヲ」
「承った」
短い会話で意思疎通を迅速に済ませると、ミニガンに変形させた両腕を女性型アンドロイドに向け、破竹の勢いで一斉射する。
Rev.Ⅱへのアップグレードにより、ミニガンの性能は格段に上がっている。射撃速度、威力、継続射撃能力、残弾数などなど。全ての性能が以前の比ではない。全能度八百程度の相手なら、一発でも当たれば粉微塵にできる威力がある。
陽動にしては過剰な威力だが、これで破壊できれば御の字。陽動と言ったが、全能度の差で言うなら攻撃に遜色ない威力だ。
しかし油断は禁物。陽動という名の攻撃で破壊できない場合を考慮していないはずはなく、そのためのミキティウスである。
ミキティウスの姿が掻き消える。残像が空間に焼きつくほどの高速移動。焼きついたその場所に黒焦げとなったコンクリートと電撃が迸る。
固有能力``雷撃化``によって、ミキティウスは雷そのものに形態変化が可能である。雷撃に変化したミキティウスの移動速度は光速に迫り、人間の数千倍以上もの動体視力を有するヴァズをもってして、その移動を見切ることはできない。
ヴァズの視界からは、彼が消えたように見えた。だが実際は消えたのではなく、一瞬にして移動し、ミニガンから放たれた魔力弾を掻い潜って、女性型アンドロイドの機体を貫通したのである。
どのようなアンドロイドであっても、その本質は機械だ。感電対策が施されていたとしても、電気系統に依存している現実からは逃れようがなく、また耐電性能にも必ず限界がある。
ミキティウスの雷撃は強力だ。彼の膨大な体内霊力が電気エネルギーに変換されることで、大半の電気系統は確実に破壊されてしまう。
落雷程度ではビクともしないヴァズでさえ、彼の雷撃には耐えられないのだ。ならばこの世に存在する機械で彼の雷撃に耐えられるものなど存在し得ない。
「グッ……!」
「ヴァズ!?」
無力化に成功した、できなくても弱体化はさせた。そう確信した次の瞬間だった。
視界に砂嵐が発生する。演算が滞り、身体の重心がズレた。思わずミニガンで身体を支える。中央処理装置の機能が低下し、思考回路が止まったせいか、何が起こったか判然としなかったが、ミキティウスの声音で全てを悟る。
「俺の雷撃を、ヴァズに跳ね返しただと!?」
視界のノイズが消えていく中で、女性型アンドロイドに目を向ける。
彼女は立ったままだった。よろけてもいなければ、地面に手すらつけていない。直立不動で無感情に、ヴァズへ人差し指を向けているだけだ。
雷そのものとなっているミキティウスが彼女の身体を通り抜けた際、ミキティウスから霊力を吸収。本来ダメージになる攻撃分を、ビーム状にしてヴァズに放ったのだろう。
ミキティウスもヴァズも、この戦い方には歯噛みするしかない。
「クソッ」
手が止まっていた事に気づき、すかさず反撃するが遅い。ミキティウスの上段回し蹴りが頭部を交差する際、女性型アンドロイドの姿が一瞬にして消える。
「転移……ダト!?」
背後から気配。裏拳で振り払おうとするが、その前に腕を掴まれた。
「グォ!? バ、バカナ……ドウイウコトダ……!?」
転移を想定していなかったのが、致命的だったかもしれない。
身体全体から力が抜け、演算能力が更に下がる。脳内でアラームが鳴った。その内容は、駆動に必要なエネルギーが不足していることを意味するダイアログだった。
思考能力が低下する中でも、まだ生きている演算領域を必死で解放するが、原因は明瞭であった。体全体の霊力循環が、彼女が掴んだ部位を中心に一気に流れ込み、必要な箇所に霊力が回らなくなってしまったのだ。
また霊力吸収。それも疑似霊力炉心の出力を上回り、霊力循環を狂わせるほどの吸収量。
ヴァズの表情が歪む。しばらく膠着していたが、このままでは動力が足らずシャットダウンしてしまうと判断して右腕を肩から先まで自切。そのままミキティウスのいる所まで距離をとった。
「……転移ノミナラズ、コレホド強力ナ霊力吸収能力ヲ有シテイルトハ……」
「それにお前の右腕も盗られた。結構苦しいぞ……」
ミキティウスとて任務請負証で、相手の身体能力の分析を怠らない。だが既に、その数値からは計り知れない何かを感じ始めていた。
「アイツ、手の内を隠してやがった……? いや、違うな」
「左様。隠匿シテイタナラバ、弥平様ノ生存率ハ極メテ低カッタハズ」
唐突に使ってきた空間転移と霊力吸収。
ヴァズとミキティウスが弥平の所に来たときには、既に屋上に鮮血が流れていた。
執事服の右腕側の袖だけ肩から先がなくなっていたことから、二人とも右腕が何らかの手段で切断されたことは察していた。もしも彼女が手の内を隠していたなら、右腕のみを切断する必要はないはずなのだ。
殺意に満ちたアンドロイドに慈悲などない。ターミネートモードならば、敵性対象を確実に抹殺するための最適行動をとるのが道理であり、それ以外の行動をとること自体が整合的ではない。
なればこそ弥平の索敵能力を振り切って背後に転移し脳か心臓を破壊。ヴァズとミキティウスが来る前に弥平の遺体を回収し、安全な場所で強化改修のための生体融合を行えば、こちらに情報を漏らすこともなく確実に己を強化できたはずだ。
しかし、実際そうしなかった。
ならば``しなかった``のではなく、あの時点では``できなかった``と考えるのが自然なのだ。
「でも待てよ。転移なんて誰も……あっ」
「ソウイウコトダ。弥平様ニ転移撤退ヲ進言シタノガ仇トナッタナ」
だがあの場合は進言するしかなかった。口には出さずとも、そう思案する。
弥平は密偵である。余程やむおえない場合を除いて、表立っての戦闘行為は行わない。
確実に勝てるのなら戦って捕虜にするだろうが、勝算が疑わしい場合や勝率が明らかに低い場合は撤退を選び、少しでも多くの戦闘経験を味方に送り届けるのが彼の本分である。
「戦略的ニハ妥当ナ判断。シカシ、アノ機体は``学習``シテイル。戦術的ニハ誤リダッタナ……」
とはいえ、今言っても後の祭り。問題は如何にして戦術を組み直すかだ。
女性型アンドロイドは、間違いなく自律学習能力を持っている。それも技能球に封入されている魔法をその場で使ってみせただけで、その本質を瞬時に理解できるほどの高い学習能力を。
ヴァズでさえ目の前で行使された魔法を、瞬時に理解して使うことはできない。予習していれば別だが、即興は不可能である。読込と分析が間に合わないからだ。
それに今のヴァズは久三男との協力で、ようやく人の感情を理解し、感じることができるようになってきた段階。まだまだ理解能力は低い方だという自覚はある。
「奴ニ魔法戦、霊力ヲ用イタ攻撃ハ悪手ダ。学習サレル前ニ近接戦デ戦闘不能ニ追イ込ム」
「それしかないな。ちんたらやってると俺らの戦闘技術も対策される」
まだ希望はある。幸いこの場には敏捷性能が高いメンツが集まっている。ミキティウスは言わずもがな、ヴァズも霊力噴射による高速移動が可能だ。
「私ガ奴ノ注意ヲ引ク。ミキティウス殿ハ転移シテキタ瞬間ヲ狙ッテホシイ」
「``雷撃化``で不意打ちか。承った」
「後、モウヒトツ」
構えたまま、目線だけヴァズへ投げる。ヴァズは左腕だけとなったミニガンの照準を合わせた。
「切リ札ハ極力使ウナ。貴方ノ固有能力ハ、ヒトツダケデハナイハズダ」
その言葉に、ミキティウスは破顔する。顔に被っていたパンツが口角で少し歪むが、何故か生地が屈託なく輝いていた。ような気がした。
「おけ、んじゃいきますか!」
ミキティウスはその身を雷に。ヴァズは残った左腕で陽動に。各々役割を理解し、ヴァズの右腕を分解、吸収した女性型アンドロイドへ向け、行動を開始する。
弥平がいる場所は、中威区北部郊外。その中で高層マンションが最も多い住宅地帯である。
彼が地面に降りないのは、屋上の方が一度に様々なものを見渡すことができるという密偵ならではの効率化による癖だが、今回は事情が少し違った。
高層ビルをかいくぐり、舗装された道路を埋め尽くす大量のロボット軍団。もはや地上に人間が歩ける場所はない。一体どこからこれほどの兵力を導入できたのかは謎だが、物理的に地上からの索敵は不可能なのは、考えるまでもないことだった。
現在、流川弥平の姿は誰にも見えない。街中を夥しく埋め尽くすテスカトリポールのみならず、突然現れた謎の軍勢に抵抗しようと己の武力を振りかざす武市民にさえも。
その秘密は彼が着ている装備の一つ、霊学迷彩・甲型にある。
霊学迷彩とは、自身の体内霊力を大気中の霊力と同一化させる魔法陣を組み込んだ迷彩装備であり、性能の低い順から丙型、乙型、甲型の三種類がある。
巷で一般人でも手に入るのは丙型まで。大型企業や組織の暗部、国家規模で使用されるのが乙型。そして人類の技術力の関係上、現時点で流川家しか使えないとされているのが甲型である。
霊学迷彩は迷彩に組み込む魔法陣の質によって性能が変化する。丙型は``魔法``の下位互換たる``魔術``によって不可視化が実現されており、それは乙型も同様だ。
乙型と丙型の違いは、丙型の霊学迷彩にある弱点を``魔術``で実現できる範囲内で改良したか否かにあるが、甲型の不可視効果は、それらとは一線を画する性能を持っている。
丙乙型に組み込まれているのは、装備した者を不可視化させるのに必要な``魔術``だが、甲型は``魔法``が組み込まれている。
``魔術``と``魔法``は名前こそ似ているが性能が全く異なるもので、その中でも``魔術``とは、体内霊力量が低い者でも扱えるよう、消費霊力と魔法陣を描くために必要な情報量を極限まで削った即席魔法である。
消費霊力と情報量が抑えられているのだから、当然効能は弱い。熟練者のみが扱える``魔法``などとは、比べるべくもないものなのだ。
「あの軍勢が、全てロボットだとは……」
住民たちの抵抗によって街中の至る所で火花が散る。高層ビルの屋上から偵察していた弥平は、大地を埋め尽くしながら歩く鉄の塊たちを見下し、思わず本音を漏らした。
流川本家派当主―――流川澄男の影として諜報活動を行っていたのだが、事態の経緯は久三男や御玲からの報告で、粗方把握し終えている。
武市外縁部に突如として現れた謎のロボット兵団。誰にも悟られることもなく、あの久三男をして「何の前触れもなく突然現れた」と言わしめた事実は、弥平に衝撃を与えた。
人類大陸ヒューマノリア上空には無数の人工霊子衛星と、その霊子衛星から得られた情報を集積しておく航宙基地が存在する。
それらの存在を知るのは現在でも流川家の手の者しかいない秘中の秘だが、その情報収集能力は圧倒的だ。久三男の手にかかれば、あらゆる機密情報が丸裸にされる。他愛ない一般人の個人情報から国家の機密情報まで、その全てが久三男の意のままに集められるのだ。
空の上に無数に公転している人工霊子衛星も、久三男が無数に持つ情報収集手段の一つでしかない。
はてさて、その人工霊子衛星によってロボット兵団の存在は、任務請負機関本部が察知するよりも格段に速く知ることができたが、どうやって、どのような経緯で現れたのかは謎だ。久三男が突然現れたと言うのなら、それは本当に何の脈絡もなく突然だったのだろう。謎は深まるばかりである。
「久三男様は上位機種の存在を疑っておりましたが……」
弥平もまた、状況とデータを脳内で照らし合わせて思考する。
久三男が提唱したのは、ロボット兵団を無条件で指揮下に入れられる上位機種が武市のどこかにおり、現在進軍中のロボット兵団は、その上位機種によって全権を掌握されている。という説である。
久三男によると、上位機種からの命令は絶対服従というプログラムが下位機種全てに備わっているのならば、その上位機種はあたかも一軍の司令官のように振る舞うことが可能であり、上位機種に下位機種を召喚する能力が備わっていれば、下位機種をどこからか呼びだすことも可能なのではないかと唱えている。
荒唐無稽な話だが、現状を鑑みてもその説が濃厚のように思えた。ロボット兵団の動きは整然としており、住民から攻撃を受けても、それら全てを無視して支部方面へと行軍している。
もしも司令官がいないのならば、このロボット兵団はもっと無秩序であるはずだ。家屋の破壊を率先して行い、住民にも無慈悲な攻撃を行なっていてもおかしくはない。今でこそ街中を大量の鉄の塊が埋め尽くしている程度だが、無秩序であればこの辺りの街は圧倒的物量を前に壊滅していただろう。
怒り狂う住民を無視して支部方面に進んでいるあたり、何者かがロボット兵団を支部へ向けてリモートコントロールしていると見て間違いない。
「となると、問題は遠隔操作をしている存在ですか」
数千を超えるロボット兵団を一挙にして召喚し、更には無駄なく操る存在。それは一体何者なのか。そもそも人間で可能なのか。
久三男だったなら可能かもしれない。しかしながら、この世界には久三男以上の技術者は存在しない。まず、数千ものロボットを召喚する行為自体、正気ではないのだ。
人間というよりも、人智を超えた何者かの所業と考えるのが妥当だが、それでは何の情報もないのと同じである。
「久三男様に頼んで、ロボット兵団から指揮系統を探っていただくか」
ロボット兵団は何者かの指示で動いている。ならばロボット兵団を束ねている指揮系統が存在するはずで、それを末端から逆探知していけば、大元に辿り着けるはずである。
単純な話だが、当然実行するとなれば簡単なことではないし、相手からの妨害は確実だろう。敵は流川の目を欺き、一般人に紛れ込めるほどの潜伏能力を持っている。人力で探し出すのは現実的ではないのだ。
後の事は久三男に任せよう。自分ができる事は、ロボット兵団の行軍状況を逐一報告すること。それをきっちり果たすのが流川分家派当主、流川弥平の役目―――。
両目を覆う黒いバイザー、拡張視覚野をしまう。同じ場所ばかり見ていても仕方がない。また別の地点から兵団の調査をしようと移動の準備をし始めた、そのとき。視界の端に白い何かが一瞬、光ったような気がした。
普通なら気にするまでもないような、ほんの僅かな発光。諜報活動の本分だからか、些細な変化を無視できなくなっているのだろう。思わず持ち物を片付けていた手が止まる。
街中を明るく照らす、ただの蛍光灯の明滅だろうか。下は郊外とはいえ住宅地帯。公道を明るく照らす蛍光灯があってもなんら不思議ではない。流石に気にしすぎか―――。
「……ん?」
右手から発する唐突な違和感。本来ならそこにあるべきものがなく、本来なら巡るべきものが巡らず。肩から冷たいような熱いような何かが夥しく滴っている。五感が、身体を底冷えさせた。
「ぐ、あ、ああああああああああ!!」
ついさっきまで塞がれて抑えられていたものが、一気に噴き出したかのように押し寄せてくる。
何が起こったのか。それを思考するよりも、右半身から迸る痛覚の濁流が全てを押し流してしまう。焦点が合わない。視界がぼやけて、思考が散り散りになる。戦時に必要なあらゆる認識、対応能力が落ちていた。
まずい、このままでは―――。
肩にかけていた魔導鞄から、左手で一本の瓶を取り出す。その瓶は澄んだ青色。サファイアを彷彿とさせる綺麗な液体を一気に飲み干した。
「まさか……右腕を一瞬で……!?」
飲み干したのは体力回復薬・甲型。部位欠損すら再生する、この世界で流川家のみ製造可能な回復系薬剤である。
痛みが和らいでいく中、思考と視野が鮮明になっていくのを悟り、何が起こったのか、改めて考えてみる。あまりにも現実に起こったことが目紛しく変化したため認識が追いついてないが、簡単に述べるなら右腕がなんらかの手段で一瞬のうちに切断された。
あまりに一瞬で、なおかつ綺麗に切断されたため、痛みが脳に届くよりも速かったのだ。
幸い事態が一瞬だったためか、痛みと出血で昏倒する前に回復薬を飲めたのが功を奏した。そうでなければ、思考が散り散りになったまま戦闘不能になっていたかもしれない。
急いで周囲の戦況を把握するべく探知系の魔法を惜しみなく使い、索敵を厳とする。反応はすぐだった。
弥平から見て十時の方向。十七、八歳ぐらいの女性が、切断された弥平の右腕を片手に、こちらを見下してくる。
薄い暗緑色の前髪で右眼が隠れているが、血のように真っ赤に輝く瞳が冷たく射抜いてくる。その瞳に生気が感じられず、更に体の奥底から湧き出る寒気を、より強く感じさせた。
失われた右腕を再生しても、危機的状況にあることに変わりはない。どこからともなく現れたその女性こそ、右腕を切断せしめた存在なのだと直感が訴えかけてきていた。
苦虫を噛み潰したような表情を浮かべながらも、素早く両手にナイフを装備する。
いつまでも不利な状況に呑まれている場合ではない。ざわつく心を理性で押し殺し、今ここでできることは何かと考えたが、思い浮かぶのは撤退の二文字のみであった。
撤退したい理由は、大まかに二つ。
そもそも霊学迷彩・甲型を装備することで周囲からは完全不可視状態になっているにもかかわらず、的確にこちらの存在を認識できていることだ。
看破される原因としては``魔法探知``と``部分無効``を併用された場合ぐらいだが、その組み合わせをピンポイントでチョイスしてくるのならば、相手の魔法戦闘能力は計り知れないものということになる。
人間の魔導師が存在しているかどうかも分からない敵に、大量の霊力を浪費する魔法を維持し続けるのは、すぐに霊力が枯渇してしまうため悪手だ。特に``部分無効``という術者が指定した任意の事象を無効化する魔法は、霊力消費はともかく魔法自体が超高難度の魔法であり、使用できる者など流川を含めても数えるほどしかいない。
実際にどんな魔法を使っているかは分からないが、``部分無効``をも使用できるとなると、魔法戦における技量は弥平を軽く凌いでいると言っていい。
もう一つは拡張視覚野というアイテムで探知能力を拡張していたというのに、攻撃を察知できなかった点だ。
肉が焼ける音もなく、痛みすら感じさせず、状況認識能力を超過して右腕は見事に切断された。認識能力を易々と超過できる攻撃を平然と行えるとなると、その実力は未知数となる。想像を遥かに超えると言っても差し支えない。
これらを鑑みれば、無理して戦うなど論外。むしろ今起こったことを久三男か澄男たちに伝えるため、全力で逃げに徹するのが最善なのだ。
ミキティウスかヴァズが初手で揃っていれば、もう少し工夫できるかもしれないが。
「いえ、それでも私は撤退せねばならないでしょうがね……」
ミキティウスとヴァズ。身体能力だけ比較しても、両者の方が上だ。弥平だって身体能力は流川の名に恥じず、鍛練の果てに人類の枠組みから外れつつあるが、右腕を切断されたことを微塵も感じさせぬほどの超速攻撃など、一撃でも受ければ死は免れない。
撤退するのなら転移で本家邸まで逃げるのが望ましいが、相手に隙がない。一寸の動きすら見逃さないという濃密な視線が、懐から転移の技能球を出すことを許してくれないのだ。
睨み合いが続く。女性が視線を外した。彼女が見つめるその先は、切断された弥平の右腕。
この状況下で目線をそらすなど、自ら隙を作っているようなもの。この隙に逃げるかと反射的に懐を手でまさぐるが、次の瞬間に鼓膜を揺らしたそれが、思わず技能球を取ろうとした手を止めてしまう。
【非常に高品質な遺伝情報を検知。生体融合を開始します】
酷く無機質な声音。機械で再現された女性アナウンスのような声が、あたかも目の前に立つ女性を``生物ではない``と思わせてくれる。
「ま、まさか……!?」
思わず大きく目を見開いた。確信に足る証拠があるわけではない。だが正気を感じさせない冷たい声が無理矢理にでも確信させる。目の前に映る光景が、確信を更に深まらせたのだ。
「私の腕を……吸収している……!?」
切断された右腕は一瞬で液状化し、地面に滴ることなく彼女の手の中に吸い込まれていった。
自身にかけていた探知系魔法が鳴動する。彼女の体内霊力が一気に跳ね上がったことが、魔法によって本能に刻まれたのだ。
他人の右腕をその身に宿し、その瞬間に体内霊力が上昇した。それはつまり、他人の肉体をエネルギーに変換し、己の血肉として融合させたということ。
言っていることは支離滅裂だ。そんなことが、ただの人間にできるはずもない。いや数多の魔法を操る魔導師であったとしても、できる者はいないだろう。
ならば、目の前に立つこの女こそが―――。
「弥平様!」
「間に合いましたね!」
弥平を守るように現れた、黄緑と白が織り混ざった装甲で身を包む大男と、青白いロン毛を靡かせる小学生くらい男の子。
前者はヴァズ、後者はミキティウス。澄男と久三男から派遣された支援要員が到着したのだ。無感情とはいえ冷たい殺意がむけられていただけあって、思わず胸を撫で下ろす。
「私は一度、本家邸へ撤退します。あの者の相手をお願いします」
「了解シマシタ。戦闘ニ関スルデータモ、順次送信イタシマス」
カオティック・ヴァズの両腕が変形し、巨大なミニガンへと形を変えた。顔の上半分を覆う黒いバイザーが、虹色に波打つ。
「ミキティウス殿、援護ヲ頼ム」
「任せろ、勝負パンツは被った。これで負けはしないさ」
何故か女物の下着を頭から被るミキティウス。なんで一々下着を被るのか、何故女物なのかを問い質したいが、そんな余裕はない。
女性の瞳が一瞬、ミキティウスとヴァズを交互に見た。常人ならば見逃してしまうほど刹那の所作だったが、諜報活動を専門とする本分がある以上、見逃す道理などない。
おそらくだが彼女は、この一瞬のうちに二人の大雑把な力量を測ったのだ。その証拠に、真っ赤な瞳から発する冷徹な殺意は、弥平からヴァズたちに移っている。
「気をつけてください。相手は敵の力を我が物にする能力を持っています」
「霊力吸収ノヨウナモノデショウカ?」
「いえ、おそらく生体融合の類かと。ただ、霊的エネルギーに変換する術も持っているやも」
「ナラバ、私デモ危険カ」
油断なく睨み合う中でも、敵の分析は怠らない。
自分の右腕が吸収され、敵の体内霊力が増したことを考慮するなら、他人の血肉を糧として、自律的な強化改修が可能な機体だと推測できる。
現在の人類文明で、人を介さず自分の意志だけでメンテナンスを行うロボットなど聞いたことがない。それこそ実例といえば、久三男が開発したカオティック・ヴァズぐらいなものだ。
流川家以外で、人類の枠組みを超えるロボット工学技術を使える者が他にいると思えない。思えないのだが、ならばあの機体はどこから湧いて出て、誰に造られたというのだろうか。
「とにかく、情報を持ち帰らねば……!」
転移の技能球を手に取る。
情報の交換は本来、霊子通信だけでも十分に可能ではあるが、一緒にいてもヴァズやミキティウスの足枷になるだけだ。真正面から戦って負ける確率の方が高い以上、行動を共にする理由はない。
「では、任せましたよッ」
戦闘が始まるであろう、ほんの数刻前。弥平は早々に技能球に込められた転移魔法``顕現``で、その場から姿を消したのだった。
残されたカオティック・ヴァズとミキティウスの二名は、正体不明の女型アンドロイドと向き合っていた。
ミキティウスは油断なく女型アンドロイドの隙を窺っていたが、カオティック・ヴァズは冷酷な殺意を向けてくる同族から、ただならぬ気配を感じていた。
「潜在能力ガ測定不能ダト……!? 馬鹿ナ!! 我ラガ主、流川久三男様ノ身技ノ如キ……!?」
ありえない、それがヴァズの本音だった。
カオティック・ヴァズにとって、流川久三男は唯一無二の主。この世界に存在する全人類が文明を総出で結集しても、その技術の片鱗すら再現させることを許さない創造の王。
盲目であったわけではないが、敵う者などいないと確信して疑いもしなかった。
力はミキティウスやヴァズには及ばない。全能度で述べるなら未だ千に満たず、弥平や御玲より高い程度。二人からすれば敵ではない存在だが、弥平の話では、敵は相手の血肉を我が物とし、自力で強化改修を可能とする能力を持っている。
それすなわち技術者を必要とせず、自分一人である程度のメンテナンスが可能であるということを意味する。
人類文明の先に立つカオティック・ヴァズですら、久三男のメンテナンスを必要としているというのに、目の前の女型アンドロイドはメンテナンスのための技術者を必要としないのだ。
同じアンドロイドとして、敵ながら羨ましい。そう思ってしまう自分がいた。
「私トシタコトガ……愚カナ」
不安定になった擬似霊力炉心に意識を向け、霊力循環を安定させる。
相手に羨望の眼差しを向けるなど、創造主に対する背信に他ならない。確かに相手の潜在性能は高いのかもしれないが、だからといって久三男の技術力が劣ることなどありえないのだ。
久三男ならば、その全ての先をいく。今は足らずとも、目の前の女型アンドロイドをサンプルとして持ち帰れば、必ずや久三男を更なる高みへと誘えるだろう。
全ては創造主、久三男のため。久三男の栄華が翳ることなど、決してありえないことなのだ。
「カオティック・ヴァズRev.Ⅱ、参ル!!」
中央処理装置が弾き出した不敬な演算結果を振り払い、敵性因子の調査に思考領域を割り振る。
久三男からはロボット兵団を操る者がおり、久三男と並行して偵察している弥平を守るように言われている。
だが実際に相対して粗方把握したように、相手はアンドロイドだ。弥平も相手が人間ではないことに気付いているはずで、となれば推測が誤りである可能性は極めて低くなったと見積もれる。
確信ではない。しかしながら、おそらく女性型アンドロイドこそが、ロボット兵団を操る黒幕なのだ。
ならば捕獲、不可能ならば破壊して、サンプルを持ち帰らねばならない。
全能度は七百を超えてこそいるが、幸いにもまだ三桁台。ヴァズ一人で十分戦える相手である上にミキティウスもいる状況で、負けることなどないはずだ。
「私ガ陽動ヲ」
「承った」
短い会話で意思疎通を迅速に済ませると、ミニガンに変形させた両腕を女性型アンドロイドに向け、破竹の勢いで一斉射する。
Rev.Ⅱへのアップグレードにより、ミニガンの性能は格段に上がっている。射撃速度、威力、継続射撃能力、残弾数などなど。全ての性能が以前の比ではない。全能度八百程度の相手なら、一発でも当たれば粉微塵にできる威力がある。
陽動にしては過剰な威力だが、これで破壊できれば御の字。陽動と言ったが、全能度の差で言うなら攻撃に遜色ない威力だ。
しかし油断は禁物。陽動という名の攻撃で破壊できない場合を考慮していないはずはなく、そのためのミキティウスである。
ミキティウスの姿が掻き消える。残像が空間に焼きつくほどの高速移動。焼きついたその場所に黒焦げとなったコンクリートと電撃が迸る。
固有能力``雷撃化``によって、ミキティウスは雷そのものに形態変化が可能である。雷撃に変化したミキティウスの移動速度は光速に迫り、人間の数千倍以上もの動体視力を有するヴァズをもってして、その移動を見切ることはできない。
ヴァズの視界からは、彼が消えたように見えた。だが実際は消えたのではなく、一瞬にして移動し、ミニガンから放たれた魔力弾を掻い潜って、女性型アンドロイドの機体を貫通したのである。
どのようなアンドロイドであっても、その本質は機械だ。感電対策が施されていたとしても、電気系統に依存している現実からは逃れようがなく、また耐電性能にも必ず限界がある。
ミキティウスの雷撃は強力だ。彼の膨大な体内霊力が電気エネルギーに変換されることで、大半の電気系統は確実に破壊されてしまう。
落雷程度ではビクともしないヴァズでさえ、彼の雷撃には耐えられないのだ。ならばこの世に存在する機械で彼の雷撃に耐えられるものなど存在し得ない。
「グッ……!」
「ヴァズ!?」
無力化に成功した、できなくても弱体化はさせた。そう確信した次の瞬間だった。
視界に砂嵐が発生する。演算が滞り、身体の重心がズレた。思わずミニガンで身体を支える。中央処理装置の機能が低下し、思考回路が止まったせいか、何が起こったか判然としなかったが、ミキティウスの声音で全てを悟る。
「俺の雷撃を、ヴァズに跳ね返しただと!?」
視界のノイズが消えていく中で、女性型アンドロイドに目を向ける。
彼女は立ったままだった。よろけてもいなければ、地面に手すらつけていない。直立不動で無感情に、ヴァズへ人差し指を向けているだけだ。
雷そのものとなっているミキティウスが彼女の身体を通り抜けた際、ミキティウスから霊力を吸収。本来ダメージになる攻撃分を、ビーム状にしてヴァズに放ったのだろう。
ミキティウスもヴァズも、この戦い方には歯噛みするしかない。
「クソッ」
手が止まっていた事に気づき、すかさず反撃するが遅い。ミキティウスの上段回し蹴りが頭部を交差する際、女性型アンドロイドの姿が一瞬にして消える。
「転移……ダト!?」
背後から気配。裏拳で振り払おうとするが、その前に腕を掴まれた。
「グォ!? バ、バカナ……ドウイウコトダ……!?」
転移を想定していなかったのが、致命的だったかもしれない。
身体全体から力が抜け、演算能力が更に下がる。脳内でアラームが鳴った。その内容は、駆動に必要なエネルギーが不足していることを意味するダイアログだった。
思考能力が低下する中でも、まだ生きている演算領域を必死で解放するが、原因は明瞭であった。体全体の霊力循環が、彼女が掴んだ部位を中心に一気に流れ込み、必要な箇所に霊力が回らなくなってしまったのだ。
また霊力吸収。それも疑似霊力炉心の出力を上回り、霊力循環を狂わせるほどの吸収量。
ヴァズの表情が歪む。しばらく膠着していたが、このままでは動力が足らずシャットダウンしてしまうと判断して右腕を肩から先まで自切。そのままミキティウスのいる所まで距離をとった。
「……転移ノミナラズ、コレホド強力ナ霊力吸収能力ヲ有シテイルトハ……」
「それにお前の右腕も盗られた。結構苦しいぞ……」
ミキティウスとて任務請負証で、相手の身体能力の分析を怠らない。だが既に、その数値からは計り知れない何かを感じ始めていた。
「アイツ、手の内を隠してやがった……? いや、違うな」
「左様。隠匿シテイタナラバ、弥平様ノ生存率ハ極メテ低カッタハズ」
唐突に使ってきた空間転移と霊力吸収。
ヴァズとミキティウスが弥平の所に来たときには、既に屋上に鮮血が流れていた。
執事服の右腕側の袖だけ肩から先がなくなっていたことから、二人とも右腕が何らかの手段で切断されたことは察していた。もしも彼女が手の内を隠していたなら、右腕のみを切断する必要はないはずなのだ。
殺意に満ちたアンドロイドに慈悲などない。ターミネートモードならば、敵性対象を確実に抹殺するための最適行動をとるのが道理であり、それ以外の行動をとること自体が整合的ではない。
なればこそ弥平の索敵能力を振り切って背後に転移し脳か心臓を破壊。ヴァズとミキティウスが来る前に弥平の遺体を回収し、安全な場所で強化改修のための生体融合を行えば、こちらに情報を漏らすこともなく確実に己を強化できたはずだ。
しかし、実際そうしなかった。
ならば``しなかった``のではなく、あの時点では``できなかった``と考えるのが自然なのだ。
「でも待てよ。転移なんて誰も……あっ」
「ソウイウコトダ。弥平様ニ転移撤退ヲ進言シタノガ仇トナッタナ」
だがあの場合は進言するしかなかった。口には出さずとも、そう思案する。
弥平は密偵である。余程やむおえない場合を除いて、表立っての戦闘行為は行わない。
確実に勝てるのなら戦って捕虜にするだろうが、勝算が疑わしい場合や勝率が明らかに低い場合は撤退を選び、少しでも多くの戦闘経験を味方に送り届けるのが彼の本分である。
「戦略的ニハ妥当ナ判断。シカシ、アノ機体は``学習``シテイル。戦術的ニハ誤リダッタナ……」
とはいえ、今言っても後の祭り。問題は如何にして戦術を組み直すかだ。
女性型アンドロイドは、間違いなく自律学習能力を持っている。それも技能球に封入されている魔法をその場で使ってみせただけで、その本質を瞬時に理解できるほどの高い学習能力を。
ヴァズでさえ目の前で行使された魔法を、瞬時に理解して使うことはできない。予習していれば別だが、即興は不可能である。読込と分析が間に合わないからだ。
それに今のヴァズは久三男との協力で、ようやく人の感情を理解し、感じることができるようになってきた段階。まだまだ理解能力は低い方だという自覚はある。
「奴ニ魔法戦、霊力ヲ用イタ攻撃ハ悪手ダ。学習サレル前ニ近接戦デ戦闘不能ニ追イ込ム」
「それしかないな。ちんたらやってると俺らの戦闘技術も対策される」
まだ希望はある。幸いこの場には敏捷性能が高いメンツが集まっている。ミキティウスは言わずもがな、ヴァズも霊力噴射による高速移動が可能だ。
「私ガ奴ノ注意ヲ引ク。ミキティウス殿ハ転移シテキタ瞬間ヲ狙ッテホシイ」
「``雷撃化``で不意打ちか。承った」
「後、モウヒトツ」
構えたまま、目線だけヴァズへ投げる。ヴァズは左腕だけとなったミニガンの照準を合わせた。
「切リ札ハ極力使ウナ。貴方ノ固有能力ハ、ヒトツダケデハナイハズダ」
その言葉に、ミキティウスは破顔する。顔に被っていたパンツが口角で少し歪むが、何故か生地が屈託なく輝いていた。ような気がした。
「おけ、んじゃいきますか!」
ミキティウスはその身を雷に。ヴァズは残った左腕で陽動に。各々役割を理解し、ヴァズの右腕を分解、吸収した女性型アンドロイドへ向け、行動を開始する。
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追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
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