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優しい手のひら

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 理人くんの舌が、理性をどろっどろに溶かして行ってしまう。

「ん、っ、んぁ、ぁ」

 クチの中をぐちゃぐちゃにかき回される。羞恥心が快感に負けて、身体の芯から蕩けていきそう。

(食べられてる、みたい……)

 舌と舌が絡む。理人くんは私の後頭部を大きな手のひらで支えながら、私の舌なんか簡単に誘い出してしまう。

(あ、……)

 唐突に、気がついてしまった。
 ちゅー、上手になってるなぁって。
 もちろん、私は理人くん以外と、こんなことしたコト、ない。だから、比較なんてできないのだけれど。
 前回のキスは、それこそこの間……というには昔すぎる、あの夏祭りのはじめてのキス。

(そりゃ、そうだよね)

 理人くん、かっこいい。
 かっこいいんだもん、仕方ない。
 解ってるのに、むくむくと溢れ出す嫉妬心。目尻が熱くなる。

「茉白?」

 潤んだ目を、理人くんが見つめる。

「その、……あの……」

 理人くんが、さあっと顔を青くする。

「嫌、だったか? 怖かった?」
「ちが、」

 ぶんぶんと首を振る。

「無理するな、茉白」
「無理、してないもの」

 きゅっと抱きつく。
 ああ、もう……さっさと、理人くんのものにしてほしい。
 そうしたら、この醜い嫉妬心も、すこしはマシになるかもしれない。
 きゅ、と唇を結んで、理人くんの手を引く。
 慌てたように靴を脱いで、理人くんは私についてきた。
 そう広くない、ワンルームの隅には小さなベッド。

「ん!」

 理人くんを座らせて、私は横に座ってまた、ぎゅっとだきついた。

「茉白」
「あの、……ちゃんと、みてね? 理人くんのために選んだの」

 ぱっと身体を離して、ワンピースのファスナーを下ろす。
 立ち上がり、ぱさり、と脱ぎ捨てて──あ、だめ。恥ずかしい。
 捨て去りきれない、羞恥心……!

(理人くん好みの、えっちな女の人になろうと思ってるのに!)

 なのにやっぱり恥ずかしくて、手で身体を隠すような格好になってしまう。
 理人くんのために選んだ、「とってもえっちな下着」──。
 顔を背けてる私に、理人くんの視線がぶつかる。

「……あの?」

 黙ってる理人くんに、私は不安になって声をかける。や、やっぱり似合ってない!?
 理人くんはゆっくり立ち上がって、私を抱きしめる。
 それから耳元で、熱い声で──言った。

「あのな、茉白」
「ひゃ、ひゃいっ」
「可愛すぎる」
「……っ、え、ひゃぁっ」

 そのまま、耳朶みみたぶを甘噛みされた。

(や、っ、な、なにこれっ!?)

 甘い痛みが、全身をぴりぴりさせて、思わずびくりと身体がはねる。

「茉白」

 切ない声で、呼ばれた。

「……最後までは、しないから……茉白に、触れたい」
「え」

 思わず見上げた。
 して、くれないの……?

「そんな顔、しないでくれ」
「でも、だって、私、理人くんのものになりたい」
「……茉白はもう俺のだよ。もう絶対離さない」

 けど、と理人くんは続けた。

「……コンドームないだろ」
「そんなの」
「だめ。大事にしたいって言っただろ? ……あれはさすがに、使えないし」

 あれ? どれのことだろ、と首を傾げると理人くんは小さく笑う。

「茉白は気にしないで」

 そのまま耳を舌で、舐められて──。

(え、え、え!?)

 混乱のなか、ぴちゃぴちゃってなんか、や、やらしい音がして、そりゃ耳を舐められてるんだからそうなんだけど、え、え、なにこれ!?

(み、耳って舐められるものなの!?)

 くちゅ、って理人くんが耳の穴に舌を挿し入れる。

「ゃあんっ!」

 背中が反るのを、理人くんが押さえつけるように抱きとめる。

「ぁ、あっ、あ、だめっ、理人くんっ、耳なんて、耳、なんてっ」

 耳なんてダメだよう!
 耳の穴なんか、舐めるとこじゃないよう!
 ビクビクしてきて、……や、やだ……。

(ぬ、濡れてるっ)

 自分から、淫らな液体が蕩け出ているのが分かる。
 それが、男性を受け入れるためのものだ、って知識くらいはあって──。

(え、耳で?)

 私の、あまりない性的知識だと、そういうのって──その、お、おっぱいだとか、そういうところ触られてそうなるものなんじゃないの?
 私の場合は、「おくち」もあるのだけれど……。
 混乱してると、ふ、とすこしだけ理人くんが身体を離し、私の顔を覗き込む。

「茉白」
「な、なぁに?」
「ちょっと確かめたいことがあるから──ごめんな?」

 そのまま抱き上げられて、優しくベッドに横たえられた。
 見つめあって、ちゅ、と鼻先にキス。
 それから、理人くんは私の首筋をつぅ、と指先でつたう。

「ぁ、っ、やだ……!」

 森吉さんにそうされたときより、ずっと感じてしまって思わず高い声が漏れた。
 その甘えるような声に、私は恥ずかしくて顔を覆う。……理人くん好みの、破廉恥でふしだらでえっちな女の人になるには、まだまだ修行が足りないみたいです……!
 その手は、つうと降りて、森吉さんのように私の鎖骨を掴む。

「……ぁ、っ!」

 森吉さんと違うのは……同時に、舌を這わされたことで。

「ぁ、っ、ぁあっ、やあっ、理人く、理人くんっ、だめっ」

 そのまま、鎖骨を甘噛み。
 甘い快感が、身体中を犯していく。

「ぁ、や、っ、理人くんっ、だめっ、おかしく、おかしくなっちゃう……!」

 私から溢れた水分は、もうトロトロのぐちゃぐちゃで、布面積が少ない下着を、ぴったり肌に付着させる。

「おかしくなった茉白、見せて」
「ゃ、やぁんっ」

 理人くんは身体をずらして、なぜだか、なぜだか──私の足を掴む。そうして、足の指を丹念に摘んだり、舐めたり(!)して。

「だ、めっ、きたな、い……!」

 足の裏をべろりと舐められて、私はあられもない声で啼いてしまう。

「ゃ、あ……っ!」

 そうして理人くんは、私の膝裏をぐい、と持ち上げて……じっと足の付け根を見つめる。

「濡れてる、な」
「や、やだっ」

 慌てて隠そうとするけれど、簡単に手は遮られて……「感じた?」と、そう聞かれた。

「え?」
「どこが一番……気持ちよかった?」
「ええっ、えっと、その……」

 そんなフシダラな質問……っ!
 けれど、私は気合をいれなおす。
 えっちな女性になるための、第一歩、かもだ!

「ぜ、全部」

 私は勇気を出して答える。
 その答えに、理人くんはどこか、納得したような顔をして──それから私の膝小僧に、小さくキスをした。
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