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番外編
【番外編】披露宴(上)
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まぁ恐ろしいほどフリッフリのドレスでした。分かってたけど。知ってたけど、でも!
「や、やっぱり……似合……ってない気がしてきました!」
このドレス、なんだかんだ言って気に入ってるけど。
でも似合う似合わないはまた別の話!
というか、照れる! 単純に照れる! こんな可愛いドレス、今更ながらに照れてきた! こんなフリフリで人前に出るの!?
「大丈夫ですよ」
衣装担当のスタッフさんが、にっこりと綺麗に笑う。
「いえ、だって、ねぇ?」
鏡に映る私。
キレイにメイクしてもらって、髪も綺麗にしてもらって、……自分で言うのもなんだけど、別人みたい。
式は和装で、披露宴はドレス(恭介くんのお母さんの圧倒的希望)で、な私たちの結婚式。
神社での神前式のあと、ホテルに移動しての披露宴──は、いいんだけれど。
ご飯もお酒も気合いをいれて計画した。少しでも来てくれた人に、楽しんでもらいたくて。
「お似合いです」
キッパリ! と言い切るスタッフさんに、申し訳ないけど曖昧な笑顔を浮かべてしまう。
白無垢も自信なかったけれど、恭介くんが「可愛い」「綺麗」を連呼してくれたおかげで、なんとなく式の間は他の人に見られても自信……というか、背筋を伸ばしていられた。
けど、ドレス!
今更ながらに、ド緊張!
恭介くんは「思い出し照れ」するくらいに似合う似合うと連呼してくれるこのドレスだけれど。
私も照れてるけれど、恭介くんの「照れ」とは違う照れです。
「どうぞ、こちらに」
スタッフさんに導かれて、プリンセスタイプのドレスを内側からさりげなく蹴りながら歩く。裾がふわっと重たいそれは、蹴らなきゃ歩けない。
廊下に出ると、タキシードの恭介くんが待っていて、とても嬉しそうに私を見て笑う。
「……言ったろ、綺麗だって」
恭介くんが優しく目尻を下げた。
「似合う。世界一」
そんな甘い台詞に、頬が熱くなるけれど──落ち着いて。落ち着くんだ莉子。
恭介くんは──自分で言うのもなんだけど──私にベタ惚れだ。
もうこれでもか! と愛されてる自信がある。……去年までなら、信じられないことだったんだけれど……。
「つまり、客観的評価は期待できないってこと!」
白無垢に対する評価もそうなんだけれどね!
披露宴会場へ向かって、スタッフさんに続いてのしのしと(こんな重いドレスで華麗になんか歩けない!)赤い絨毯が敷かれた廊下を歩いていると、恭介くんは喉を鳴らすように笑う。
「笑いをこらえないでくださーい」
ていうか、もしかして分かってるんじゃ!? 自分でもかなり私のこと、贔屓目で見てるって!?
「いやぁ……でもいいじゃん。俺にとって綺麗なら」
「良くない」
「莉子」
たどり着いた披露宴会場の扉の前。ぴっちり閉まった分厚い扉の向こうからは、音楽と歓談の声が聞こえてきている。
恭介くんは私の手を取った。
「俺にとって、莉子は毎日世界一綺麗で可愛いけど、今日の莉子は普通に世界一綺麗で可愛い」
タキシードになった恭介くんは、髪をちょっとオールバック気味にして、がっつりオデコ出てるのにイケメンで、っていうかやっぱりイケメン無双してて──そんな恭介くんに、甘ったるすぎる台詞吐かれると頭が砂糖塗れになったみたいに何も言えなくなる。
「うー……」
「真っ赤。バカ莉子、なに自信失くしてんの可愛い」
恭介くんは嬉しげに繋いだ手をにぎにぎする。超上機嫌だ。緊張してるって言ってたのになぁー。場慣れするのが早いよ。
「というかだけどな、いいだろ。別に、俺と莉子がお互いしか見えてなくても」
「……どうだろうそれ」
「今日くらいは」
恭介くんは、私の頬にそっと触れる。
「来てくれた人たちに見せつけて、こいつらお互いしかないんだなぁって呆れるくらいに思ってもらって、そうしたら」
恭介くんは柔らかな口調で続ける。
「もう俺が莉子幸せにするしかないなって納得してもらえるじゃん」
「……それ大事?」
「大事」
恭介くんは言い切って、私はどこか呆然と恭介くんを見上げる。
そうして、なんとか呟いた。
「恭介くん……私のこと好きすぎない?」
「今更気がついたのか?」
言っただろ、と恭介くんは続けた。
「溺愛してるって」
「……ちょっと黙ろうか」
スタッフさんたちの生温い視線に気がついた私の言葉に、恭介くんは肩を揺らして笑う。そうして、きゅ、と掌を強く握ってくれた。
(私だって)
繋いだ手を、強く握り返す。
(私だって、恭介くん幸せにするもん)
そういう気持ちをもって見つめ返せば、恭介くんは柔らかに目を細めた。
……なんか、上手く乗せられた気がしないでもないけれど!
恭介くんは私の手を離して、私はリハーサル通りに恭介くんの腕に手を添えた。
とりあえずは、背筋を伸ばす。
『新郎新婦、入場です』
両開きの扉の向こうから、マイク越しに司会のひとの声が聞こえる。
準備中……結婚式って、なんのためにするのかなって思ったりもした。
けど多分──恭介くんがいう通りなのかもしれない。幸せになるのを見てもらう、というよりは……お互いを幸せにします、っていうケジメを、改まってお知らせする場所。
うん、腹をくくろう。
私は小さく深呼吸しながら、扉が開くのを見つめた。
「や、やっぱり……似合……ってない気がしてきました!」
このドレス、なんだかんだ言って気に入ってるけど。
でも似合う似合わないはまた別の話!
というか、照れる! 単純に照れる! こんな可愛いドレス、今更ながらに照れてきた! こんなフリフリで人前に出るの!?
「大丈夫ですよ」
衣装担当のスタッフさんが、にっこりと綺麗に笑う。
「いえ、だって、ねぇ?」
鏡に映る私。
キレイにメイクしてもらって、髪も綺麗にしてもらって、……自分で言うのもなんだけど、別人みたい。
式は和装で、披露宴はドレス(恭介くんのお母さんの圧倒的希望)で、な私たちの結婚式。
神社での神前式のあと、ホテルに移動しての披露宴──は、いいんだけれど。
ご飯もお酒も気合いをいれて計画した。少しでも来てくれた人に、楽しんでもらいたくて。
「お似合いです」
キッパリ! と言い切るスタッフさんに、申し訳ないけど曖昧な笑顔を浮かべてしまう。
白無垢も自信なかったけれど、恭介くんが「可愛い」「綺麗」を連呼してくれたおかげで、なんとなく式の間は他の人に見られても自信……というか、背筋を伸ばしていられた。
けど、ドレス!
今更ながらに、ド緊張!
恭介くんは「思い出し照れ」するくらいに似合う似合うと連呼してくれるこのドレスだけれど。
私も照れてるけれど、恭介くんの「照れ」とは違う照れです。
「どうぞ、こちらに」
スタッフさんに導かれて、プリンセスタイプのドレスを内側からさりげなく蹴りながら歩く。裾がふわっと重たいそれは、蹴らなきゃ歩けない。
廊下に出ると、タキシードの恭介くんが待っていて、とても嬉しそうに私を見て笑う。
「……言ったろ、綺麗だって」
恭介くんが優しく目尻を下げた。
「似合う。世界一」
そんな甘い台詞に、頬が熱くなるけれど──落ち着いて。落ち着くんだ莉子。
恭介くんは──自分で言うのもなんだけど──私にベタ惚れだ。
もうこれでもか! と愛されてる自信がある。……去年までなら、信じられないことだったんだけれど……。
「つまり、客観的評価は期待できないってこと!」
白無垢に対する評価もそうなんだけれどね!
披露宴会場へ向かって、スタッフさんに続いてのしのしと(こんな重いドレスで華麗になんか歩けない!)赤い絨毯が敷かれた廊下を歩いていると、恭介くんは喉を鳴らすように笑う。
「笑いをこらえないでくださーい」
ていうか、もしかして分かってるんじゃ!? 自分でもかなり私のこと、贔屓目で見てるって!?
「いやぁ……でもいいじゃん。俺にとって綺麗なら」
「良くない」
「莉子」
たどり着いた披露宴会場の扉の前。ぴっちり閉まった分厚い扉の向こうからは、音楽と歓談の声が聞こえてきている。
恭介くんは私の手を取った。
「俺にとって、莉子は毎日世界一綺麗で可愛いけど、今日の莉子は普通に世界一綺麗で可愛い」
タキシードになった恭介くんは、髪をちょっとオールバック気味にして、がっつりオデコ出てるのにイケメンで、っていうかやっぱりイケメン無双してて──そんな恭介くんに、甘ったるすぎる台詞吐かれると頭が砂糖塗れになったみたいに何も言えなくなる。
「うー……」
「真っ赤。バカ莉子、なに自信失くしてんの可愛い」
恭介くんは嬉しげに繋いだ手をにぎにぎする。超上機嫌だ。緊張してるって言ってたのになぁー。場慣れするのが早いよ。
「というかだけどな、いいだろ。別に、俺と莉子がお互いしか見えてなくても」
「……どうだろうそれ」
「今日くらいは」
恭介くんは、私の頬にそっと触れる。
「来てくれた人たちに見せつけて、こいつらお互いしかないんだなぁって呆れるくらいに思ってもらって、そうしたら」
恭介くんは柔らかな口調で続ける。
「もう俺が莉子幸せにするしかないなって納得してもらえるじゃん」
「……それ大事?」
「大事」
恭介くんは言い切って、私はどこか呆然と恭介くんを見上げる。
そうして、なんとか呟いた。
「恭介くん……私のこと好きすぎない?」
「今更気がついたのか?」
言っただろ、と恭介くんは続けた。
「溺愛してるって」
「……ちょっと黙ろうか」
スタッフさんたちの生温い視線に気がついた私の言葉に、恭介くんは肩を揺らして笑う。そうして、きゅ、と掌を強く握ってくれた。
(私だって)
繋いだ手を、強く握り返す。
(私だって、恭介くん幸せにするもん)
そういう気持ちをもって見つめ返せば、恭介くんは柔らかに目を細めた。
……なんか、上手く乗せられた気がしないでもないけれど!
恭介くんは私の手を離して、私はリハーサル通りに恭介くんの腕に手を添えた。
とりあえずは、背筋を伸ばす。
『新郎新婦、入場です』
両開きの扉の向こうから、マイク越しに司会のひとの声が聞こえる。
準備中……結婚式って、なんのためにするのかなって思ったりもした。
けど多分──恭介くんがいう通りなのかもしれない。幸せになるのを見てもらう、というよりは……お互いを幸せにします、っていうケジメを、改まってお知らせする場所。
うん、腹をくくろう。
私は小さく深呼吸しながら、扉が開くのを見つめた。
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