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番外編
【番外編SS】恋は色づく?(上)
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京都は年に二回、えぐい混み方をする。
桜と紅葉。
それはまだ京都歴が浅い私たち夫婦(この言い方照れるな)も分かってて、でもせっかくの京都だしって、紅葉を観に出かけて。
「ほ、ほんとにえぐい」
「莉子、ほら」
混みっ混みの市バス、恭介くんは私を腕の中に閉じ込めてしまう。
「わぁ」
私の頬は真っ赤。だって人前(むしろ人中)だし!?
抵抗を試みようとする私に、恭介くんは笑う。
「混みすぎて誰も気にしてない」
「でも」
「莉子が」
ふ、と恭介くんはため息。耳元で、囁くように……。
「莉子が知らない人に触られてるのが嫌」
私はきょとん、と恭介くんを見つめる。別にチカンされてたとかじゃない。まぁ不可抗力的に触れ合って(?)いただけで……。
「恭介くん」
「なんだ」
「それはとってもヤキモチですね」
「悪いか」
ふん、と恭介くんは私の頭にキスをする。
「俺の嫁だぞ」
「ふふ」
恭介くんはとっても頭がいいはずなのに、時々すごいバカだなぁって思う。すごい好き。
「……なんかいま、バカにしただろ」
勘はいい。私は身体を揺らして笑う。
「こら。……覚えてろよ?」
耳の上のとこを甘噛みされて、思わず恭介くんの服を握った。「ひゃう」って声が漏れて。
「莉子」
窘める恭介くんの甘い声。いまの私
悪くないよね!? 絶対に悪くない!
バスはやがて大きな赤い鳥居を抜けていく。平安神宮のこの鳥居、恭介くんが言うには高さ24メートル、あるらしい。
バス停で降りて、手を繋いで歩く。
私の右手と恭介くんの左手。
私の左手には、つい最近の北海道旅行でもらった婚約指輪。
(結婚してるのにくれたなー)
嬉しくて、つけてるとついつい何回も見てしまう。きらきらと、京都の秋の優しい日差しで光る小さなダイヤ。
「ふっふ」
「前みないとコケるぞ」
呆れたような恭介くんの声に、大丈夫だよって返しながら前を向いて──目をぱちくり。
「あ」
「あ」
目が合った。
大川さんが、春日さんと平安神宮の前の砂利の広場に、二人で立っていた。
(え!? あれ?)
そ、そういう関係だったの!?
いつのまに!?
大川さんはいつもどおりな感じで「おう」って手を上げてくる。
(で、デート!? デートですか!?)
ってなんかホクホクしてる私に、春日さんが言う。
「散策仲間です」
「さ、散策?」
ええ、と頷く春日さんによると。
どうやらお互いの家が近くて、よく行くカフェで鉢合わせしていたらしい。
で、夏頃から二人でゴハン行くような仲に──え、それ付き合う前カウントダウン?
(あああ首をツッコミたい~!)
けど、我慢。我慢です。人の恋路に余計な首は突っ込んではいけない……!
むずむず顔の私に、大川さんが苦笑した──私が言える立場じゃないけど。大川さん、新しい恋してるといいな。
「紅葉ですか」
恭介くんが言うと、二人は頷いた。
二人は平安神宮散策が終わったところ、らしかった。
「せやけどえらい混み方です。年々ひどくなってる気がします」
春日さんが答える。なんでも、春日さんは生粋の京都っ子らしい。
「混む、で思い出したんですけど」
関西なまりの柔らかな言葉で、春日さんは私を見る。
「祇園祭」
「祇園祭?」
首を傾げた。
「すぐ出られました?」
「出られる?」
「帰ろうと思ったらすぐ帰れましたか」
「? はぁ」
質問の意図が分からず首を傾げる私に、春日さんはすこしだけ、笑った。
そのあと別れて、綺麗な日本庭園の紅葉を観て歩く。
「紅葉狩りだ」
「だなぁ」
去年もどっか行ったな、と恭介くんは言う。「セフレ」だと思ってた約一年、恭介くんは色々連れ出してくれたし甘やかしてくれてたし、……今思えば明らかに私のこと好きじゃん。
思い出し笑いしてる私を、恭介くんは不思議そうに見る。
目が合った。
優しい視線に、つい蕩けそうになって──私も笑いかえす。
「莉子」
腕を引かれて、すこし人の視線が遮られるようなスペースで、ちゅ、と触れるだけのキス。
「恭介くん」
「莉子はさぁ」
ほっぺたをムニムニされた。
「可愛いからあんま可愛い顔するな」
「?」
「エロくて押し倒しそうになるから」
「!?」
はれんち! と言ってる私の耳元に、恭介くんは口を寄せて。
「帰ったらいっぱいシてもいい?」
なんて、すこし子犬みたいな顔で言うから。言うからさー!
反射的に頷く。こういう顔ずるいよー。なんでも言うこと聞いちゃうよ。
恭介くんは満足げに私の唇にもっかいキス。今度は下唇、甘噛みして離れていった。
そういうの、ほんとズルイ。
神社を出て、そろそろ(ていうか、遅めの?)ランチしようかってお店を探してると、またもや大川・春日カップル(予定)とはちあう。
「ランチするところ探してて」
どっか知りませんか、と春日さんに聞いてみる。京都人だから詳しいかなって。
そしたらランチに誘われた。
「美味しいカレー屋さんがあるんです」
少し離れてるんですけど、と春日さんは平安神宮の横の道を北に向かって歩く。
大川さんはすぐ横を、のんびり歩く。
なんだか、……やっぱり、お似合いな気がしますよ?
桜と紅葉。
それはまだ京都歴が浅い私たち夫婦(この言い方照れるな)も分かってて、でもせっかくの京都だしって、紅葉を観に出かけて。
「ほ、ほんとにえぐい」
「莉子、ほら」
混みっ混みの市バス、恭介くんは私を腕の中に閉じ込めてしまう。
「わぁ」
私の頬は真っ赤。だって人前(むしろ人中)だし!?
抵抗を試みようとする私に、恭介くんは笑う。
「混みすぎて誰も気にしてない」
「でも」
「莉子が」
ふ、と恭介くんはため息。耳元で、囁くように……。
「莉子が知らない人に触られてるのが嫌」
私はきょとん、と恭介くんを見つめる。別にチカンされてたとかじゃない。まぁ不可抗力的に触れ合って(?)いただけで……。
「恭介くん」
「なんだ」
「それはとってもヤキモチですね」
「悪いか」
ふん、と恭介くんは私の頭にキスをする。
「俺の嫁だぞ」
「ふふ」
恭介くんはとっても頭がいいはずなのに、時々すごいバカだなぁって思う。すごい好き。
「……なんかいま、バカにしただろ」
勘はいい。私は身体を揺らして笑う。
「こら。……覚えてろよ?」
耳の上のとこを甘噛みされて、思わず恭介くんの服を握った。「ひゃう」って声が漏れて。
「莉子」
窘める恭介くんの甘い声。いまの私
悪くないよね!? 絶対に悪くない!
バスはやがて大きな赤い鳥居を抜けていく。平安神宮のこの鳥居、恭介くんが言うには高さ24メートル、あるらしい。
バス停で降りて、手を繋いで歩く。
私の右手と恭介くんの左手。
私の左手には、つい最近の北海道旅行でもらった婚約指輪。
(結婚してるのにくれたなー)
嬉しくて、つけてるとついつい何回も見てしまう。きらきらと、京都の秋の優しい日差しで光る小さなダイヤ。
「ふっふ」
「前みないとコケるぞ」
呆れたような恭介くんの声に、大丈夫だよって返しながら前を向いて──目をぱちくり。
「あ」
「あ」
目が合った。
大川さんが、春日さんと平安神宮の前の砂利の広場に、二人で立っていた。
(え!? あれ?)
そ、そういう関係だったの!?
いつのまに!?
大川さんはいつもどおりな感じで「おう」って手を上げてくる。
(で、デート!? デートですか!?)
ってなんかホクホクしてる私に、春日さんが言う。
「散策仲間です」
「さ、散策?」
ええ、と頷く春日さんによると。
どうやらお互いの家が近くて、よく行くカフェで鉢合わせしていたらしい。
で、夏頃から二人でゴハン行くような仲に──え、それ付き合う前カウントダウン?
(あああ首をツッコミたい~!)
けど、我慢。我慢です。人の恋路に余計な首は突っ込んではいけない……!
むずむず顔の私に、大川さんが苦笑した──私が言える立場じゃないけど。大川さん、新しい恋してるといいな。
「紅葉ですか」
恭介くんが言うと、二人は頷いた。
二人は平安神宮散策が終わったところ、らしかった。
「せやけどえらい混み方です。年々ひどくなってる気がします」
春日さんが答える。なんでも、春日さんは生粋の京都っ子らしい。
「混む、で思い出したんですけど」
関西なまりの柔らかな言葉で、春日さんは私を見る。
「祇園祭」
「祇園祭?」
首を傾げた。
「すぐ出られました?」
「出られる?」
「帰ろうと思ったらすぐ帰れましたか」
「? はぁ」
質問の意図が分からず首を傾げる私に、春日さんはすこしだけ、笑った。
そのあと別れて、綺麗な日本庭園の紅葉を観て歩く。
「紅葉狩りだ」
「だなぁ」
去年もどっか行ったな、と恭介くんは言う。「セフレ」だと思ってた約一年、恭介くんは色々連れ出してくれたし甘やかしてくれてたし、……今思えば明らかに私のこと好きじゃん。
思い出し笑いしてる私を、恭介くんは不思議そうに見る。
目が合った。
優しい視線に、つい蕩けそうになって──私も笑いかえす。
「莉子」
腕を引かれて、すこし人の視線が遮られるようなスペースで、ちゅ、と触れるだけのキス。
「恭介くん」
「莉子はさぁ」
ほっぺたをムニムニされた。
「可愛いからあんま可愛い顔するな」
「?」
「エロくて押し倒しそうになるから」
「!?」
はれんち! と言ってる私の耳元に、恭介くんは口を寄せて。
「帰ったらいっぱいシてもいい?」
なんて、すこし子犬みたいな顔で言うから。言うからさー!
反射的に頷く。こういう顔ずるいよー。なんでも言うこと聞いちゃうよ。
恭介くんは満足げに私の唇にもっかいキス。今度は下唇、甘噛みして離れていった。
そういうの、ほんとズルイ。
神社を出て、そろそろ(ていうか、遅めの?)ランチしようかってお店を探してると、またもや大川・春日カップル(予定)とはちあう。
「ランチするところ探してて」
どっか知りませんか、と春日さんに聞いてみる。京都人だから詳しいかなって。
そしたらランチに誘われた。
「美味しいカレー屋さんがあるんです」
少し離れてるんですけど、と春日さんは平安神宮の横の道を北に向かって歩く。
大川さんはすぐ横を、のんびり歩く。
なんだか、……やっぱり、お似合いな気がしますよ?
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