カタブツ検事のセフレになったと思ったら、溺愛されておりまして

にしのムラサキ

文字の大きさ
上 下
23 / 34
番外編

【番外編SS】恋は色づく?(上)

しおりを挟む
 京都は年に二回、えぐい混み方をする。
 桜と紅葉。
 それはまだ京都歴が浅い私たち夫婦(この言い方照れるな)も分かってて、でもせっかくの京都だしって、紅葉を観に出かけて。

「ほ、ほんとにえぐい」
「莉子、ほら」

 混みっ混みの市バス、恭介くんは私を腕の中に閉じ込めてしまう。

「わぁ」

 私の頬は真っ赤。だって人前(むしろ人中)だし!?
 抵抗を試みようとする私に、恭介くんは笑う。

「混みすぎて誰も気にしてない」
「でも」
「莉子が」

 ふ、と恭介くんはため息。耳元で、囁くように……。

「莉子が知らない人に触られてるのが嫌」

 私はきょとん、と恭介くんを見つめる。別にチカンされてたとかじゃない。まぁ不可抗力的に触れ合って(?)いただけで……。

「恭介くん」
「なんだ」
「それはとってもヤキモチですね」
「悪いか」

 ふん、と恭介くんは私の頭にキスをする。

「俺の嫁だぞ」
「ふふ」

 恭介くんはとっても頭がいいはずなのに、時々すごいバカだなぁって思う。すごい好き。

「……なんかいま、バカにしただろ」

 勘はいい。私は身体を揺らして笑う。

「こら。……覚えてろよ?」

 耳の上のとこを甘噛みされて、思わず恭介くんの服を握った。「ひゃう」って声が漏れて。

「莉子」

 窘める恭介くんの甘い声。いまの私
悪くないよね!? 絶対に悪くない!
 バスはやがて大きな赤い鳥居を抜けていく。平安神宮のこの鳥居、恭介くんが言うには高さ24メートル、あるらしい。
 バス停で降りて、手を繋いで歩く。
 私の右手と恭介くんの左手。
 私の左手には、つい最近の北海道旅行でもらった婚約指輪。

(結婚してるのにくれたなー)

 嬉しくて、つけてるとついつい何回も見てしまう。きらきらと、京都の秋の優しい日差しで光る小さなダイヤ。

「ふっふ」
「前みないとコケるぞ」

 呆れたような恭介くんの声に、大丈夫だよって返しながら前を向いて──目をぱちくり。

「あ」
「あ」

 目が合った。
 大川さんが、春日さんと平安神宮の前の砂利の広場に、二人で立っていた。

(え!? あれ?)

 そ、そういう関係だったの!?
 いつのまに!?
 大川さんはいつもどおりな感じで「おう」って手を上げてくる。

(で、デート!? デートですか!?)

 ってなんかホクホクしてる私に、春日さんが言う。

「散策仲間です」
「さ、散策?」

 ええ、と頷く春日さんによると。
 どうやらお互いの家が近くて、よく行くカフェで鉢合わせしていたらしい。
 で、夏頃から二人でゴハン行くような仲に──え、それ付き合う前カウントダウン?

(あああ首をツッコミたい~!)

 けど、我慢。我慢です。人の恋路に余計な首は突っ込んではいけない……!
 むずむず顔の私に、大川さんが苦笑した──私が言える立場じゃないけど。大川さん、新しい恋してるといいな。

「紅葉ですか」

 恭介くんが言うと、二人は頷いた。
 二人は平安神宮散策が終わったところ、らしかった。

「せやけどえらい混み方です。年々ひどくなってる気がします」

 春日さんが答える。なんでも、春日さんは生粋の京都っ子らしい。

「混む、で思い出したんですけど」

 関西なまりの柔らかな言葉で、春日さんは私を見る。

「祇園祭」
「祇園祭?」

 首を傾げた。

「すぐ出られました?」
「出られる?」
「帰ろうと思ったらすぐ帰れましたか」
「? はぁ」

 質問の意図が分からず首を傾げる私に、春日さんはすこしだけ、笑った。
 そのあと別れて、綺麗な日本庭園の紅葉を観て歩く。

「紅葉狩りだ」
「だなぁ」

 去年もどっか行ったな、と恭介くんは言う。「セフレ」だと思ってた約一年、恭介くんは色々連れ出してくれたし甘やかしてくれてたし、……今思えば明らかに私のこと好きじゃん。
 思い出し笑いしてる私を、恭介くんは不思議そうに見る。
 目が合った。
 優しい視線に、つい蕩けそうになって──私も笑いかえす。

「莉子」

 腕を引かれて、すこし人の視線が遮られるようなスペースで、ちゅ、と触れるだけのキス。

「恭介くん」
「莉子はさぁ」

 ほっぺたをムニムニされた。

「可愛いからあんま可愛い顔するな」
「?」
「エロくて押し倒しそうになるから」
「!?」

 はれんち! と言ってる私の耳元に、恭介くんは口を寄せて。

「帰ったらいっぱいシてもいい?」

 なんて、すこし子犬みたいな顔で言うから。言うからさー!
 反射的に頷く。こういう顔ずるいよー。なんでも言うこと聞いちゃうよ。
 恭介くんは満足げに私の唇にもっかいキス。今度は下唇、甘噛みして離れていった。
 そういうの、ほんとズルイ。

 神社を出て、そろそろ(ていうか、遅めの?)ランチしようかってお店を探してると、またもや大川・春日カップル(予定)とはちあう。

「ランチするところ探してて」

 どっか知りませんか、と春日さんに聞いてみる。京都人だから詳しいかなって。
 そしたらランチに誘われた。

「美味しいカレー屋さんがあるんです」

 少し離れてるんですけど、と春日さんは平安神宮の横の道を北に向かって歩く。
 大川さんはすぐ横を、のんびり歩く。
 なんだか、……やっぱり、お似合いな気がしますよ?
しおりを挟む
感想 191

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

軽い気持ちで超絶美少年(ヤンデレ)に告白したら

夕立悠理
恋愛
容姿平凡、頭脳平凡、なリノアにはひとつだけ、普通とちがうところがある。  それは極度の面食いということ。  そんなリノアは冷徹と名高い公爵子息(イケメン)に嫁ぐことに。 「初夜放置? ぜーんぜん、問題ないわ! だって旦那さまってば顔がいいもの!!!」  朝食をたまに一緒にとるだけで、満足だ。寝室別でも、他の女の香水の香りがしてもぜーんぜん平気。……なーんて、思っていたら、旦那さまの様子がおかしい? 「他の誰でもない君が! 僕がいいっていったんだ。……そうでしょ?」  あれ、旦那さまってば、どうして手錠をお持ちなのでしょうか?  それをわたしにつける??  じょ、冗談ですよね──!?!?

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。

石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。 自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。 そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。 好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にエタニティの小説・漫画・アニメを1話以上レンタルしている と、エタニティのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。