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番外編
【番外編SS】北海道旅行(恭介視点)
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来年の春、に京都で式を挙げることにとりあえず決まって──いま、莉子とウニの天ぷらを食べている。
「……っ美味し。美味し。ウニをなぜ天ぷらにしようと思ったのかなぁ凄すぎない? 天才?」
「北海道すごいな」
なんとなく決めた北海道旅行が、実質的に新婚旅行になって。
秋が本州以上に深まってる北海道は函館、旅館併設の料亭で、俺たちはプリン体を大量摂取していた。
「美味しい……全部が美味しい。太る」
「いいんじゃないか」
「恭介くんはヒトゴトだよね!」
莉子はぷうと唇を尖らせた。可愛い。唇は天ぷらの油でてかてかしてて、なんかそれも可愛い。
から、キス。
座卓に身を乗り出して、触れただけですぐに離れた。
「っ、う、わ!?」
莉子は慌てたようにキョロキョロ。
「大丈夫だ、個室なんだから」
「いやでもさぁ、なんで急にちゅう?」
「キスしたかったから」
「ふうん?」
莉子は照れた様子で海鮮茶碗蒸しを食べていた。
莉子が「死んでも行く」と主張してやってきたここのランチ、死ぬほど旨い。莉子は食べ物に対する嗅覚が割といいんだよな、なんて思っていたら莉子も身を乗り出してくる。
「んー!」
「キス?」
「そ!」
「失礼しまーす」
莉子がキスしよう、ってしている時に、中居さんが入ってきて莉子は茹で蛸みたいに真っ赤。
俺は笑う……のを堪えてお腹が痛い。
中居さんは見て見ぬ振り、でも頬が緩んでて。
退出したあと、莉子は「ぎゃあ」と頭を抱えた。
「タイミング~!」
「どんまい」
「なんでヒトゴト!?」
莉子が照れながらまた、海鮮茶碗蒸しを口に運んだ。
「ところでさ、莉子」
「? うん」
「莉子が作ってくれた予定表な」
ぴらり、とさっき渡された予定表を示す。
「うん」
「食べ物ばっかじゃないか」
「……食べたいものを優先したら、あんまり観光の時間が」
なんだかモジモジと言われてしまって──つい吹き出す。
「いいよ、食べ歩きで」
「いい?」
莉子は照れて笑う。
「けどさ、一箇所だけ増やしていいか」
「? うん、なんで?」
「行ってみたいところがあって」
「どこ?」
「教会」
莉子は不思議そうに頷いた。
京都での式、神前式に決まったから。(披露宴はドレスだけれど──どんなドレスかは未定)
ちょっと、教会って。
少し憧れがあったり──秘密だけれど。
食べ終わったあと、有名な坂を通って(函館は坂の町だ)訪れた観光地にもなってる教会を、2人並んでぽかんと眺める。
「わー、風見鶏」
莉子は弾んだ声でそう言って、教会へスマホを向けていた。
「撮ろ」
莉子に腕を引かれて、スマホのインカメラで写真を撮る──緊張で変な顔になった。
(……いや、もう緊張する必要はないんだ)
結婚しちゃってるし。
断られようなんかないんだし。
カバンに突っ込んでる「あれ」について考える。
……サイズは間違えてない、はずだけれど。
手を繋いで、中に入る。
手に汗。莉子は不審に思っていたり、しないだろうか?
しんとした、静寂。
磨き上げられた古い木製の床は、黒に近くて──十字架は荘厳に。
幸いにして、すれ違うように先にいた観光客が出て行く。
「莉子」
あ、声が少し裏返った。
莉子は不思議そうに俺を見上げる。
すう、と深呼吸して。
多分いまから、人生で一番……俺らしくないことをする。
手を離して、床に片膝立ち。
びっくりして俺を見てる莉子に、緊張しながら指輪の箱を取り出す。
(すこしは、)
心拍数がすごい。
少しはカッコつけられてるだろうか。(外国の映画みたいに……無理か)
「え、き、恭介くん?」
「結婚してください」
指輪を莉子の薬指につけながら……えっとこれ、どのタイミングで立ち上がればいいんだ!?
落ち着いてるようにみせかけながら、立ち上がって莉子の手を改めて、取る。
「病めるときも健やかなるときも、俺といて」
他に何か言っていたっけ?
緊張で色々、飛んだ。
「……」
「絶対大切にするから」
改めて、誓って。
莉子は無言。
おそるおそる、口を開く。
「莉子?」
名前を呼んで。
「恭介くん」
呼び返された。
莉子の顔はもう涙でぐしゃぐしゃで。
返事なんか必要ないくらいに。
抱きしめる。ぎゅうぎゅうと、それでも足りない。
「愛してる」
「うん」
俺を見上げる莉子の唇に、そうっとキスをする。
涙の味がして、少し、しょっぱかった。
「……っ美味し。美味し。ウニをなぜ天ぷらにしようと思ったのかなぁ凄すぎない? 天才?」
「北海道すごいな」
なんとなく決めた北海道旅行が、実質的に新婚旅行になって。
秋が本州以上に深まってる北海道は函館、旅館併設の料亭で、俺たちはプリン体を大量摂取していた。
「美味しい……全部が美味しい。太る」
「いいんじゃないか」
「恭介くんはヒトゴトだよね!」
莉子はぷうと唇を尖らせた。可愛い。唇は天ぷらの油でてかてかしてて、なんかそれも可愛い。
から、キス。
座卓に身を乗り出して、触れただけですぐに離れた。
「っ、う、わ!?」
莉子は慌てたようにキョロキョロ。
「大丈夫だ、個室なんだから」
「いやでもさぁ、なんで急にちゅう?」
「キスしたかったから」
「ふうん?」
莉子は照れた様子で海鮮茶碗蒸しを食べていた。
莉子が「死んでも行く」と主張してやってきたここのランチ、死ぬほど旨い。莉子は食べ物に対する嗅覚が割といいんだよな、なんて思っていたら莉子も身を乗り出してくる。
「んー!」
「キス?」
「そ!」
「失礼しまーす」
莉子がキスしよう、ってしている時に、中居さんが入ってきて莉子は茹で蛸みたいに真っ赤。
俺は笑う……のを堪えてお腹が痛い。
中居さんは見て見ぬ振り、でも頬が緩んでて。
退出したあと、莉子は「ぎゃあ」と頭を抱えた。
「タイミング~!」
「どんまい」
「なんでヒトゴト!?」
莉子が照れながらまた、海鮮茶碗蒸しを口に運んだ。
「ところでさ、莉子」
「? うん」
「莉子が作ってくれた予定表な」
ぴらり、とさっき渡された予定表を示す。
「うん」
「食べ物ばっかじゃないか」
「……食べたいものを優先したら、あんまり観光の時間が」
なんだかモジモジと言われてしまって──つい吹き出す。
「いいよ、食べ歩きで」
「いい?」
莉子は照れて笑う。
「けどさ、一箇所だけ増やしていいか」
「? うん、なんで?」
「行ってみたいところがあって」
「どこ?」
「教会」
莉子は不思議そうに頷いた。
京都での式、神前式に決まったから。(披露宴はドレスだけれど──どんなドレスかは未定)
ちょっと、教会って。
少し憧れがあったり──秘密だけれど。
食べ終わったあと、有名な坂を通って(函館は坂の町だ)訪れた観光地にもなってる教会を、2人並んでぽかんと眺める。
「わー、風見鶏」
莉子は弾んだ声でそう言って、教会へスマホを向けていた。
「撮ろ」
莉子に腕を引かれて、スマホのインカメラで写真を撮る──緊張で変な顔になった。
(……いや、もう緊張する必要はないんだ)
結婚しちゃってるし。
断られようなんかないんだし。
カバンに突っ込んでる「あれ」について考える。
……サイズは間違えてない、はずだけれど。
手を繋いで、中に入る。
手に汗。莉子は不審に思っていたり、しないだろうか?
しんとした、静寂。
磨き上げられた古い木製の床は、黒に近くて──十字架は荘厳に。
幸いにして、すれ違うように先にいた観光客が出て行く。
「莉子」
あ、声が少し裏返った。
莉子は不思議そうに俺を見上げる。
すう、と深呼吸して。
多分いまから、人生で一番……俺らしくないことをする。
手を離して、床に片膝立ち。
びっくりして俺を見てる莉子に、緊張しながら指輪の箱を取り出す。
(すこしは、)
心拍数がすごい。
少しはカッコつけられてるだろうか。(外国の映画みたいに……無理か)
「え、き、恭介くん?」
「結婚してください」
指輪を莉子の薬指につけながら……えっとこれ、どのタイミングで立ち上がればいいんだ!?
落ち着いてるようにみせかけながら、立ち上がって莉子の手を改めて、取る。
「病めるときも健やかなるときも、俺といて」
他に何か言っていたっけ?
緊張で色々、飛んだ。
「……」
「絶対大切にするから」
改めて、誓って。
莉子は無言。
おそるおそる、口を開く。
「莉子?」
名前を呼んで。
「恭介くん」
呼び返された。
莉子の顔はもう涙でぐしゃぐしゃで。
返事なんか必要ないくらいに。
抱きしめる。ぎゅうぎゅうと、それでも足りない。
「愛してる」
「うん」
俺を見上げる莉子の唇に、そうっとキスをする。
涙の味がして、少し、しょっぱかった。
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