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番外編
【番外編SS】結婚式、どうしよう?(上)
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緊張。ド緊張。
仙台駅、改札出て見上げたステンドグラス……を視界にいれながら、でも私は緊張で変な息が出た。
「……大丈夫か、莉子」
「ううう大丈夫だよ」
飛行機で仙台空港まで来て、そこから電車で仙台駅まで。
今日は、恭介くんのお母さんにお会いする日。
(お父さんは、いまは東京なんだっけ)
お仕事の関係らしいけど。
恭介くんのお母さんには、小さい頃は何度も会っていたし、それこそ最近も何回か電話させてもらったけれど──でも、やっぱり緊張だ!
「口から心臓が出そう」
「母さん、喜んでたし。莉子のこと好きだから大丈夫だ」
「いや、好きって何好きって……ううお腹痛い」
私たちはバスに乗って、仙台の街をゆっくり進んでいく。
街並みを眺めながら、思う。
恭介くんは、ここで育ったんだなぁ。
大きなお寺の前で降りて、坂を少し登る。
綺麗な洋風の家の前で、恭介くんは立ち止まる。
お家の前まで花が咲いた鉢植えで飾られている。表札には「宗像」って恭介くんの苗字──あ、私もいま宗像か。
まだ、慣れない。
「ただいま」
恭介くんは何の衒いもなく(そりゃ実家だ!)玄関のドアを開けた。
ひええと固まってる私の前に、ぱたぱたと嬉しげな足音。
「わー莉子ちゃん久しぶり、綺麗になったねぇ」
「お、お久しぶりです」
相変わらず少女のようなひとだな、と私は思う。にこにこと微笑む、恭介くんのお母さん。
腕にはトイプードルが抱かれていた。
「犬飼ったの、母さん」
恭介くんが少し驚いていた。
お父さんがお仕事で東京行っちゃって、寂しいのかな?
お母さんはにこにこと頷く。
「可愛いでしょう? ティアラちゃんよ」
「ティアラ……」
恭介くんはなんだか妙な顔をしていた。
ティアラちゃんは人懐こく可愛い桃色の舌を出して全力で尻尾を振っている。
「さ、上がって上がって! ケーキ買ってあるの」
通されたリビングは、とっても綺麗に片付いていて。
飾られたお花、手作りっぽいお人形、カーテンは白とピンクのレース。
なんていうか……ガーリーなお部屋。
紅茶を淹れてくれて、ダイニングテーブルに向かい合って座る。私の横は恭介くん、なんか落ち着きなくきょろきょろしていた。
「……あの。母さん、なんか、グレードアップしてないか?」
「お父さんが東京行ってからね、お部屋色々しても怒るひといないから~」
うふふ、とお母さんは嬉しそう。
「そう」
諦めたように、恭介くんは言った。
「来週、電気もシャンデリアにするの」
「シャン……」
絶句するように恭介くんは呟いて、「元気そうで何よりだよ」と肩をすくめた。
「ところでお式はいつなのかしら」
お母さんは落ち着きなく、紅茶のカップをスプーンでかき回している。
……わくわくしているような?
「あ、式はしなくていいかなって」
私は答えた。
恭介くんはなんだか妙な顔をする。式くらいしよう、って言ってくれてるけれど。
(そしたら、恭介くんのお父さん、どうするんだろ)
きっと恭介くんは呼びたくない。
2人きり、でならいいかなぁ。でもそれなら写真だけで良くない? みたいなとこはある。
ウチの両親も、2人がそれでいいなら、って感じだったし。
ただ、──恭介くんのお母さんは呆然としていた。
かつん、とスプーンがティーカップに当たる。手が震えていた。
な、なになに!?
「あの……?」
「け、結婚式、よ?」
「はぁ」
「結婚式! しなくちゃ!」
お母さんは最早半泣き。
「人生で、いちばんお姫様になれる日なのよ!?」
「は、はぁ」
「真っ白なウェディングドレス! レース! ブーケ! ヴェール! 素敵な甘いもので構成された、お姫様の日!」
「なんだそれ」
「恭介は口を挟まないで──わたしがどれだけ、ここ数ヶ月莉子ちゃんのウェディングドレスを妄想してきたと思っているの!?」
「なんだそれ!?」
「砂糖菓子!!」
砂糖菓子の意味は分からないけれど、……ていうか数ヶ月前?
「恭介が莉子ちゃんと同棲してるってお父さんから聞いて、もうテンションが」
「……それで莉子の両親に電話したのか」
「そうよ? 幼馴染と再会恋愛結婚とか! なにそれ! 砂糖菓子!」
「さっきからのそれがイマイチ分からない」
「わからなくていいの」
そう言って、私の手を強く握る。
「しましょ? ね? 結婚式」
「は、はぁ……」
「別に呼ばなくていいのよお父さんは」
「母さん?」
お母さんはふふ、と笑う。
「仲悪いんだもの~」
「……式する、んならそういう訳にも」
「みたい!」
お母さんは断言して、口を尖らせた。
「莉子ちゃんのウェディング!」
「というか和装はダメなのか」
「和装でもいいけど、やっぱりドレスよ、ドレス~」
うふふとお母さんはうっとり、目を細めた。
「やっぱりプリンセスドレス。たっぷりのレースは欠かせないわ。うん、ティアラも豪華にね……ってティーちゃんのことじゃないの、うふふ」
トイプードルのティアラちゃんが全力で尻尾を振っていて、私はただ圧倒されて手を握られていた、のでした。
仙台駅、改札出て見上げたステンドグラス……を視界にいれながら、でも私は緊張で変な息が出た。
「……大丈夫か、莉子」
「ううう大丈夫だよ」
飛行機で仙台空港まで来て、そこから電車で仙台駅まで。
今日は、恭介くんのお母さんにお会いする日。
(お父さんは、いまは東京なんだっけ)
お仕事の関係らしいけど。
恭介くんのお母さんには、小さい頃は何度も会っていたし、それこそ最近も何回か電話させてもらったけれど──でも、やっぱり緊張だ!
「口から心臓が出そう」
「母さん、喜んでたし。莉子のこと好きだから大丈夫だ」
「いや、好きって何好きって……ううお腹痛い」
私たちはバスに乗って、仙台の街をゆっくり進んでいく。
街並みを眺めながら、思う。
恭介くんは、ここで育ったんだなぁ。
大きなお寺の前で降りて、坂を少し登る。
綺麗な洋風の家の前で、恭介くんは立ち止まる。
お家の前まで花が咲いた鉢植えで飾られている。表札には「宗像」って恭介くんの苗字──あ、私もいま宗像か。
まだ、慣れない。
「ただいま」
恭介くんは何の衒いもなく(そりゃ実家だ!)玄関のドアを開けた。
ひええと固まってる私の前に、ぱたぱたと嬉しげな足音。
「わー莉子ちゃん久しぶり、綺麗になったねぇ」
「お、お久しぶりです」
相変わらず少女のようなひとだな、と私は思う。にこにこと微笑む、恭介くんのお母さん。
腕にはトイプードルが抱かれていた。
「犬飼ったの、母さん」
恭介くんが少し驚いていた。
お父さんがお仕事で東京行っちゃって、寂しいのかな?
お母さんはにこにこと頷く。
「可愛いでしょう? ティアラちゃんよ」
「ティアラ……」
恭介くんはなんだか妙な顔をしていた。
ティアラちゃんは人懐こく可愛い桃色の舌を出して全力で尻尾を振っている。
「さ、上がって上がって! ケーキ買ってあるの」
通されたリビングは、とっても綺麗に片付いていて。
飾られたお花、手作りっぽいお人形、カーテンは白とピンクのレース。
なんていうか……ガーリーなお部屋。
紅茶を淹れてくれて、ダイニングテーブルに向かい合って座る。私の横は恭介くん、なんか落ち着きなくきょろきょろしていた。
「……あの。母さん、なんか、グレードアップしてないか?」
「お父さんが東京行ってからね、お部屋色々しても怒るひといないから~」
うふふ、とお母さんは嬉しそう。
「そう」
諦めたように、恭介くんは言った。
「来週、電気もシャンデリアにするの」
「シャン……」
絶句するように恭介くんは呟いて、「元気そうで何よりだよ」と肩をすくめた。
「ところでお式はいつなのかしら」
お母さんは落ち着きなく、紅茶のカップをスプーンでかき回している。
……わくわくしているような?
「あ、式はしなくていいかなって」
私は答えた。
恭介くんはなんだか妙な顔をする。式くらいしよう、って言ってくれてるけれど。
(そしたら、恭介くんのお父さん、どうするんだろ)
きっと恭介くんは呼びたくない。
2人きり、でならいいかなぁ。でもそれなら写真だけで良くない? みたいなとこはある。
ウチの両親も、2人がそれでいいなら、って感じだったし。
ただ、──恭介くんのお母さんは呆然としていた。
かつん、とスプーンがティーカップに当たる。手が震えていた。
な、なになに!?
「あの……?」
「け、結婚式、よ?」
「はぁ」
「結婚式! しなくちゃ!」
お母さんは最早半泣き。
「人生で、いちばんお姫様になれる日なのよ!?」
「は、はぁ」
「真っ白なウェディングドレス! レース! ブーケ! ヴェール! 素敵な甘いもので構成された、お姫様の日!」
「なんだそれ」
「恭介は口を挟まないで──わたしがどれだけ、ここ数ヶ月莉子ちゃんのウェディングドレスを妄想してきたと思っているの!?」
「なんだそれ!?」
「砂糖菓子!!」
砂糖菓子の意味は分からないけれど、……ていうか数ヶ月前?
「恭介が莉子ちゃんと同棲してるってお父さんから聞いて、もうテンションが」
「……それで莉子の両親に電話したのか」
「そうよ? 幼馴染と再会恋愛結婚とか! なにそれ! 砂糖菓子!」
「さっきからのそれがイマイチ分からない」
「わからなくていいの」
そう言って、私の手を強く握る。
「しましょ? ね? 結婚式」
「は、はぁ……」
「別に呼ばなくていいのよお父さんは」
「母さん?」
お母さんはふふ、と笑う。
「仲悪いんだもの~」
「……式する、んならそういう訳にも」
「みたい!」
お母さんは断言して、口を尖らせた。
「莉子ちゃんのウェディング!」
「というか和装はダメなのか」
「和装でもいいけど、やっぱりドレスよ、ドレス~」
うふふとお母さんはうっとり、目を細めた。
「やっぱりプリンセスドレス。たっぷりのレースは欠かせないわ。うん、ティアラも豪華にね……ってティーちゃんのことじゃないの、うふふ」
トイプードルのティアラちゃんが全力で尻尾を振っていて、私はただ圧倒されて手を握られていた、のでした。
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