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プロローグ・悪逆女帝
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どうしたらいいのだろう。
禁城本殿前の、その広場に。
私は目の前、長い長い階段の下、平伏す3人を緩慢に見下ろす。
私がいるのは高みにある、楼上。
彼らがいるのは冷たい地面、灰色の石の上。
「嫦娥様、どうかお情けを」
中央の女が叫ぶように言う。なんとか届くその声に、私は眉をひそめる。
かつて、私が「お義母様」と呼んだひと。
優しかったお父様亡き後、私を虐め、いびり尽くしたそのひとが。
「わたくしたちは愚かでした、けれど違うのです、わたくしたちは貴女様のことを思えばこそ、あのように厳しく」
「そうですよ、嫦娥。あなたが立派に、そのように人の上に立てているのも、総てお母様のご教育の賜物」
右端の女が言う。私よりみっつ年上のそのひとは、かつてお義姉様と呼んだひと。
ああ、と思う。
大河の水も凍るような大雪の日に、高熱に苦しむ私を馬小屋に放り込んだのは、あれは教育であったのか。
鞭で打つのも。
赤く灼けつきそうな火箸をさしむけて遊ぶのも。
意味もなく食事を抜くのも?
教育だったというのか?
私は天を仰ぐ。
雲ひとつない青空を見遣る。
(どうすればいい?)
私は何を思えば良いのだろう。
(前世の記憶通りに処刑してしまえばいい)
そう思う自分もいる。
そして、私はそれができる身分を手に入れている。すべて「あの漫画」の通り、という訳ではいにせよ。
だから例え、自らの手で彼女たちの首をはねたとしても、誰も咎めはせぬだろうーー。
私の記憶は、あの厩舎へ舞い戻る。
全ての始まりの、あの時。
凍てつくような、あの雪の日へ。
禁城本殿前の、その広場に。
私は目の前、長い長い階段の下、平伏す3人を緩慢に見下ろす。
私がいるのは高みにある、楼上。
彼らがいるのは冷たい地面、灰色の石の上。
「嫦娥様、どうかお情けを」
中央の女が叫ぶように言う。なんとか届くその声に、私は眉をひそめる。
かつて、私が「お義母様」と呼んだひと。
優しかったお父様亡き後、私を虐め、いびり尽くしたそのひとが。
「わたくしたちは愚かでした、けれど違うのです、わたくしたちは貴女様のことを思えばこそ、あのように厳しく」
「そうですよ、嫦娥。あなたが立派に、そのように人の上に立てているのも、総てお母様のご教育の賜物」
右端の女が言う。私よりみっつ年上のそのひとは、かつてお義姉様と呼んだひと。
ああ、と思う。
大河の水も凍るような大雪の日に、高熱に苦しむ私を馬小屋に放り込んだのは、あれは教育であったのか。
鞭で打つのも。
赤く灼けつきそうな火箸をさしむけて遊ぶのも。
意味もなく食事を抜くのも?
教育だったというのか?
私は天を仰ぐ。
雲ひとつない青空を見遣る。
(どうすればいい?)
私は何を思えば良いのだろう。
(前世の記憶通りに処刑してしまえばいい)
そう思う自分もいる。
そして、私はそれができる身分を手に入れている。すべて「あの漫画」の通り、という訳ではいにせよ。
だから例え、自らの手で彼女たちの首をはねたとしても、誰も咎めはせぬだろうーー。
私の記憶は、あの厩舎へ舞い戻る。
全ての始まりの、あの時。
凍てつくような、あの雪の日へ。
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