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1巻
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プロローグ 再会
横浜の海は、まぁあんまり綺麗じゃない。綺麗じゃないけど、溢れんばかりの夏の日差しの下、入道雲はもくもく、空は気を失いそうなほどに真っ青! となると、そんな海もキラキラして見えてこなくもない。
(それに比べて、私というのは……)
赤煉瓦倉庫の近く、横浜港のフェンスに寄りかかり缶ビール片手に空と海をぼうっと眺めている私というのは、この爽やかな空間においてとても異質。でもいいじゃないですか。しょうがないじゃないですか。まさか今日、会社が潰れた上に、長年付き合った彼氏と別れるとは思いもしないじゃないですか。
ひどい。神様がいるのなら、ひどい。
と、そこまで考えて――私は深く考えるのを放棄した。深いのも暗いのも、苦手なんです。
ぐいー、とビールを飲み干して、鼻歌。晴れてるし、ビール美味しいし。観光客が不審な目を向けてくるけれど、別にいい。こんな日くらいは、許されていいはずだ。
――なんてことをぼうっと考えてると、ぽん、と頭を叩かれた。
「……ん?」
振り向くと、白い男の人がいた。
……いや、肌自体は日焼けしてる。服装が白。私は首を上に向けて、その人を確かめる。随分と背が高い。その整った顔面には、バッチリと見覚えがあった。
「……康ちゃん?」
「なにをしているんだ、凪子」
「なにしてるって」
私は彼の服装を眺めます。何年ぶりに会うかわからない幼馴染の服装。軍服、と呼んでしまいそうになる、その制服は。
「……あー、あー、そうだ。康ちゃん、海軍さんになったんだ」
それも、防衛……なんだっけ、大学校かなんかを出たエリートさんだ。将校さんだ。知らないけど。
「……海上自衛官」
冷静に訂正してくる落ち着いた声色に、私はふふふと笑った。相変わらずだなあ。
「所用があってこちらまできたら、明らかに不審な女性がいて――顔を見たら凪子だった」
「不審かなぁ」
「缶ビール片手に歴代歴史ドラマのオープニングを年代順に鼻歌で歌うのは、どう考えても不審だ」
「わかるのがすごいよ!」
ケタケタ笑って、記憶より少しがっちりした彼の背中を叩く。
「酔っ払ってるな」
「仕方がないではないですか」
私は事情を説明する。今日をもって無職になったこと。しかもさっき、恋人にふられたこと。
「どーしたもんかなぁ~」
空は眩しくて、青い。潮の香りが、鼻孔を満たす。
「とりあえず就職だなぁ」
恋人はいなくても生きていけるけど、仕事がないと食べていけませんからね。
康ちゃんは黙ってる。黙って、なにか考えて――こういうときの彼は、良くない。
私はつつつ、と目線を逸らす。昔から、そうなんだ。こういうときのこのヒトは、なんだかよくわからない提案をしてくる。
「ふーんふふーん。私そろそろ……」
「凪子」
康ちゃんは私の手首を掴む。む、強いぞ!
「結婚しよう」
「康ちゃん、相変わらず突拍子もないな⁉」
私は、半袖の白い制服を着ている康ちゃんを見上げる。真剣な眼差しで私を見ている彼は、割と強面系な男前で、頭良くて運動できてそりゃ女性におモテになるでしょうってアレなんですけど――産まれたときから幼馴染な私はようく知ってる。
この人、ちょっとアホなんです。
1 ダンゴムシのおもひで
康ちゃんこと、鮫川康平氏は小さい頃からボケーっとしていたのですが、私は彼に輪をかけてボケーっとしていましたので、私たちは幼い頃から周りに迷惑をかけて生きてきました。
今思えば、あんなに大量にダンゴムシを集めなくて良かった(お母さんの悲鳴がすごかった)。
今思えば、自転車チキンランなんかするんじゃなかった(骨折った)。
今思えば、なんで公園にお手手繋いで歩いて行って、二駅も離れた駅前の交番で保護されたんだろう(ふたりで蝶々を追いかけた、のだと思う)。
でも、康ちゃんは大きくなるにつれて、そんな部分を内側に隠してしまった。
中学あたりになると、もうみんなあのヒトがボケーっとしてたことなんか、完璧に忘れちゃって。そう、ボケーっと仲間は私を置いて、さっさと精悍な男の子になってしまったのでした。
「鮫川くんかっこいいよね」
「ねー!」
私は友達がそんな風に喋るのを「けっ、あんなの猫ですよ、猫被りですよ」と思いながら、康ちゃんが「きりっ」として姿勢良く歩くのをぼんやりと見ていたのです。
(でも、なんでだろう)
ふと思い出す。きりっと精悍モードな康ちゃんですが、私とふたりだと……すっごい、リラックスしていたのでした。でも高校を卒業して(高校までは同じ学校だった)そこから会わない間、康ちゃんは「きりっ」としたまま、生きてたんだろうか。
……いやまぁ、たまに帰省して顔合わせたらやっぱりへにゃって表情崩していたから、常にじゃないんだろうけれど……でもさ。ちから、ぬけよな~、とは思う。ずっと「きりっ」としてるの、疲れないのかな。
「……帰れ」
「なぜだ」
職を失った以上、とにかく節約! と実家に帰って数日。ピンポンと鳴ったインターフォンに、ガチャリと玄関を出てみれば……そこにいたのは「きりっ」とした康ちゃんだった。記憶より精悍さを増した眼差しに、一瞬怯む。
「……っ、それはなに」
「薔薇の花束」
「薔薇? なんのために」
「プロポーズだ」
気が抜けた。気というか、力が抜けた。
「……なんのために?」
「なんのため」
康ちゃんはさっさと「きりっ」モードを解除してリラックスモードで私を見ている。でもどこか、いつもと違う。ちょっと緊張……しているような?
「……結婚したいから」
「……ほえーん」
私はボケーっと康ちゃんを見上げる。
彼はなんだか悲しそうに私を見た。……そういう、捨てられた子犬みたいな顔やめてよ……
結婚、結婚かぁ……あんまり縁がなさそうかなと思っていた「それ」について、ぼうっと考えた。なるほど、我々ももうじき、三十路に足を突っ込む。なにやら真剣に私を見つめ続けるこの幼馴染に結婚願望があったって、おかしくはない。お兄さんのしゅーちゃんも、弟のりょーちゃんも、結婚したとか聞いているし。なるほどねえ。
「でも、なんで私?」
「凪子といると、素の俺でいられる。傍にいてくれ」
なるほど……?
つまり楽だから、ってことかな? たしかに、私となら楽なんだろうな。なにしろ、きりっとしなくていい。それは幼馴染ゆえ、恋愛感情もなくゆったり過ごせる、というところなのだろうけれど。
「凪子は俺じゃ嫌か」
「嫌とかじゃなくて」
「じゃあいいじゃないか」
「……いいのかな」
いいんだっけ?
「あらあらあらあら、康平くん! 久しぶりね」
背後から現れたのは、お母さん。不思議そうに康ちゃんの持ってる薔薇の花束を見ている。
「それなぁに?」
「凪子さんに」
きりっとモードになった康ちゃんはきりっとお母さんに言う。目つきが違うよ。
「プロポーズを」
「プ、プロポーズ⁉」
お母さんは飛び跳ねた。文字通り、飛び跳ねた。
「な、なぁんだ凪子っ。ずっと付き合ってたのって、康平くんだったのー」
頬を赤くして、お母さんはるんるんと言う。
「ちが」
「早く言ってよお!」
「ちが」
プロポーズショックで、いつにも増してボケーっとしてるので、うまく言い返せない。
大学からずうっと付き合ってた彼氏は、私が無職になると知るやいなや「オレに寄生すんのはやめてくれよな」「就職するまで連絡すんなよ」「女は楽でいいよな」と言って離れていきました。
……せちがらい。でもまぁ、そんなにショックでもなかったな……。もはや惰性だったもんな。
「お母さん」
違うんだよ、と言おうとして――お母さんが泣いちゃったから、ワタワタ戸惑う。
「凪子が幸せになるのね、ほんとに、ほんとに嬉しい……」
「お母さん」
今の「お母さん」は、私じゃなくて康ちゃん。
「凪子さんを、必ず幸せにします」
「よろしくね、康平くん……!」
「凪子、本当だぞ」
私に向かってそう言う康ちゃんは、ちょっときりっと、精悍モード。こういう顔されるとドキリとするからやめて欲しい! なんていうか、リラックスしてるときとの落差がすごい。
なんか、このヒト……こんな性格で、本当に自衛官なんてできてるのかなぁ。
(見ててあげなきゃ、いけない気がする……)
だって、なんか――想像してしまった。結婚したいからって幼馴染に薔薇の花束持って突撃するような人、多分……私が断ったら、変な女に引っかかりそう!
(気が付いたら、身包み剥がされて横浜港に……)
そ、それはいやだ。いくらなんでも、幼馴染の葬式にはまだ出たくないよ!
そうして、気が付けば――流されるように。
私の左手薬指には、銀色の指輪が光っていたのでした。
2 正直、自分でも病んでると思う(康平視点)
ずっと凪子が好きだった。
いつから? そんなの、気が付いたらだ。彼女の前では、素の自分でいられる。ころころ変わる表情も愛おしい。でも俺が告白する前に――凪子に彼氏ができた。中二のときだった。
(……別れたら告白しよう)
少し酷いとは思うけれど――そう思っていたのに。
ヒトの不幸を願った罰か、凪子は驚くほどに、恋人が途切れなかった。男を取っ替え引っ替えしていた、というわけではなくて長く続くのだ。凪子といるのは、心地がいいから――だと、思う。みんなそうなのだろうな、と仲睦まじげに歩く凪子とその恋人を、高校まで見続けた。
(……不毛だ)
凪子を忘れようと、誰かに告白されたら付き合った。けれど、長続きしない。割とすぐふられた。多分、伝わるなにかがあったんだろう。申し訳なかったと――そう思う。
凪子の隣にいたい。けれど、凪子の隣にはいつも別の男がいた。
(……不毛だ!)
自らを鍛え直さなければ。俺はなにを考えたのか(まあ、性に合っていたから結構だったが)防衛大学校に進み、その後江田島沖を泳いでいた。十五キロ遠泳。およそ八時間に及ぶそれを、泳ぎながら考える。
ああ凪子は、今頃なにをしているんだろう。
(……不毛だ)
眩しい夏の太陽も、苦くて潮辛い海の味も、厳しい訓練も、なにも――俺から凪子を消してはくれなかった。
任官してからも、海を見ては凪子を思い、空を見ては凪子を思う。ひどいときは魚雷を見ても凪子を思い出した。なぜだ。自分でもわからない。末期だ。
だから――たまたま凪子と再会して、凪子がフリーだと知って。
考える。
凪子はぼんやり、と俺を見上げていた。おっとりした凪子。可愛い。……いや可愛い、じゃなくて。
(これを逃せばチャンスはないぞ)
凪子のほっそりした手を掴む。不思議そうな凪子に――気が付いたら、プロポーズ、していた。
頭をフル回転させる。凪子は優しいから、多分……押したらいける。予想通り、凪子は最終的には頷いてくれた。押し付けた薔薇の花束を抱えてのんびりと微笑んで、「康ちゃん、私がいなきゃだめそうだから」と。
「その通りだ」
俺は答える。
「凪子がいないと生きていけない」
「ふうん」
凪子はとても不思議そうに首を傾げた。
「自覚あるんだ」
「ある」
なんだ、伝わってたのか。きみがいないと、俺は生きていけないってこと。
ほっとしながら、改めて口にする。
「結婚してください」
「うん、いいよー」
おっとりと凪子は言った。その日の夜は――眠れなかった。
その後は順調だった。両家の顔合わせ(と言っても実家は近所同士、単なる和気藹々とした食事会だった)、結納、式場の決定、新婚旅行の手配。その間に、凪子は自宅でできる仕事(データ整理らしい)を見つけてきて、その合間に結婚式の準備をしてくれて――
「婚約者が寂しがってくれない」
「……まぁそんなもんですよ」
部下は呆れたように言う。ここ最近、凪子の話しかしていないので、少し呆れているのだろうか。
二ヶ月にも及ぶ、外洋での派遣訓練。出発前に凪子に会ったけれど「船酔いにはここのツボがいいらしいよ」と手首をぎうぎう押されただけだった。
「俺が一体、なんの仕事をしていると思っているんだろう」
防大時代の乗艦実習では、散々吐いたけれど――三半規管が麻痺したのか、任官以降はそういうこともない。もっとも、酔う人は酔うので、丈夫な身体に産んでくれた両親に感謝するばかりだ。
「まぁ、式を楽しみにしてますよ」
その言葉に、思わず頬が緩む。そうだ、この訓練が終わりさえすれば――凪子と結婚する。式に、新婚旅行。
「……結婚したら、手を出していいだろうか」
「は?」
訝しげな部下に、言い訳のように口にした。
「大事すぎて、手も繋げてない」
「えええ……」
今度こそ引かれている。引かれているけれど仕方ない。
「嫌がられて結婚やめる、とか言い出されたら困る」
「はぁ、そうですか」
難儀な恋をされてますね、と部下は言う。
(難儀な恋か)
なんとなく――その「難儀」は続きそうな、そんな予感がして――できればそんな予感は外れればいい、とそう思った。
閑話 鮫川康平という人について(部下視点)
鮫川康平一尉は、もっと……こう、とっつきにくい人だと思っていた。
そもそも背が高くて強面なほうだし、険しい顔つきも、部下からすればちょっと近寄りがたい雰囲気がある。そのうえ異様なほどに優秀で、なんでも防大は主席卒業らしい。日常の訓練や業務でも、それは痛いほどわかっていた。おそらく三佐昇進は、鮫川一尉が一番乗りだろう、との信憑性のある噂も。
こちらがミスしたとき、鮫川一尉は決して激昂したり感情的になったりすることはない。たとえ小さなミスだとしても、どうしたって自分の、誰かの命に関わる。特に艦艇の上では。それに対するリカバリー、適切な指示。頭の回転が速すぎて、オレはあの人の頭には機械が詰まってるんじゃないか、と時々思う。
そんなこともあって、一尉のことは怖いけれど、尊敬する上司でもあった。
とはいえ、とっつきにくいのはとっつきにくい、と……
そんなイメージが変わったのは、一尉が婚約したと聞いてお祝いの言葉を贈ったときのことだった。
「……ありがとう」
本気で嬉しそうな顔をして、一尉は頬を緩めた。思わず目を瞠る。
(……この人、こんな顔をするのか)
驚いているオレを尻目に、鮫川一尉はいかに自分の婚約者が素晴らしいのかを滔々と語った。まるで数学の公理を解説するかのごとく、あたかも当然のことを説明するかのように、しかし熱のこもった口調で語る、鮫川一尉。
……なんだこれ。
「すまん、惚気てしまった」
「いえ」
ノロケ。ノロケだったのか。
この人、惚気るとかあるのか。
少し驚いたけれど――この人にも意外と人間らしい感情があるのだ、ということにオレはなんだか、随分と……なんというか、ほっこりしたのだった。
3 え、するの……です?
新婚旅行先のハワイのホテルで、私はボケーっと康ちゃんがお風呂から上がるのを待っていた。
「……先に寝てていいかな?」
ていうか、バスローブって初めて着たけど、このまま寝て良いのかな? 時差でいつも以上に頭がボケボケしている自覚はある。
成田からホノルルに着いて、荷物をホテルに置いたらそのままトロリーバスで観光。
康ちゃんは英語ペラッペラなので(一日中きりっとしてた)、私はボケーっと「海あおーい」とか言って過ごした。……ハワイまで来て「海青い」しか感想がないのもどうかと思うけれど。
(てか、案外寒そうだなあ)
なんとなく一年中、常に海で泳げそうなイメージだったし、実際に泳げるらしいけど、三月の今、日本で言うと海開き頃の水温らしい。いちおう水着は持ってきたけれども。
ガチャリと寝室に康ちゃんが入ってくる。なんかイマイチよくわからない表情をしていた。頭を拭いている。彼も白いバスローブ。
「どうしたの? 康ちゃん」
「ん、あ、いや……」
なんかモジャモジャ言いながら、康ちゃんは私の横に座った。沈むベッド。……これ、お高そうだよなー。
(……あ、疲れてるのかな)
一日中「きりっ」としてたもんね。まったく、旅行中くらいボケーっとしたらいいのにさ。
「ん」
私は手を伸ばす。康ちゃんはなぜかびくっとした。
「どうしたの?」
「え、あ、いや、その」
「タオル貸して。拭いてあげる」
返事は待たずに、タオルを取ってごしゃごしゃと短い髪を拭いてあげる。
「通訳おつかれさま~」
「……いや、全然」
「助かったよ。ありがとう」
顔を覗き込む。康ちゃんは、なぜか――また、捨てられた子犬みたいな顔をしてた。
「どしたのー?」
「凪子は……俺と結婚して、良かったのか」
「……?」
横浜の海は、まぁあんまり綺麗じゃない。綺麗じゃないけど、溢れんばかりの夏の日差しの下、入道雲はもくもく、空は気を失いそうなほどに真っ青! となると、そんな海もキラキラして見えてこなくもない。
(それに比べて、私というのは……)
赤煉瓦倉庫の近く、横浜港のフェンスに寄りかかり缶ビール片手に空と海をぼうっと眺めている私というのは、この爽やかな空間においてとても異質。でもいいじゃないですか。しょうがないじゃないですか。まさか今日、会社が潰れた上に、長年付き合った彼氏と別れるとは思いもしないじゃないですか。
ひどい。神様がいるのなら、ひどい。
と、そこまで考えて――私は深く考えるのを放棄した。深いのも暗いのも、苦手なんです。
ぐいー、とビールを飲み干して、鼻歌。晴れてるし、ビール美味しいし。観光客が不審な目を向けてくるけれど、別にいい。こんな日くらいは、許されていいはずだ。
――なんてことをぼうっと考えてると、ぽん、と頭を叩かれた。
「……ん?」
振り向くと、白い男の人がいた。
……いや、肌自体は日焼けしてる。服装が白。私は首を上に向けて、その人を確かめる。随分と背が高い。その整った顔面には、バッチリと見覚えがあった。
「……康ちゃん?」
「なにをしているんだ、凪子」
「なにしてるって」
私は彼の服装を眺めます。何年ぶりに会うかわからない幼馴染の服装。軍服、と呼んでしまいそうになる、その制服は。
「……あー、あー、そうだ。康ちゃん、海軍さんになったんだ」
それも、防衛……なんだっけ、大学校かなんかを出たエリートさんだ。将校さんだ。知らないけど。
「……海上自衛官」
冷静に訂正してくる落ち着いた声色に、私はふふふと笑った。相変わらずだなあ。
「所用があってこちらまできたら、明らかに不審な女性がいて――顔を見たら凪子だった」
「不審かなぁ」
「缶ビール片手に歴代歴史ドラマのオープニングを年代順に鼻歌で歌うのは、どう考えても不審だ」
「わかるのがすごいよ!」
ケタケタ笑って、記憶より少しがっちりした彼の背中を叩く。
「酔っ払ってるな」
「仕方がないではないですか」
私は事情を説明する。今日をもって無職になったこと。しかもさっき、恋人にふられたこと。
「どーしたもんかなぁ~」
空は眩しくて、青い。潮の香りが、鼻孔を満たす。
「とりあえず就職だなぁ」
恋人はいなくても生きていけるけど、仕事がないと食べていけませんからね。
康ちゃんは黙ってる。黙って、なにか考えて――こういうときの彼は、良くない。
私はつつつ、と目線を逸らす。昔から、そうなんだ。こういうときのこのヒトは、なんだかよくわからない提案をしてくる。
「ふーんふふーん。私そろそろ……」
「凪子」
康ちゃんは私の手首を掴む。む、強いぞ!
「結婚しよう」
「康ちゃん、相変わらず突拍子もないな⁉」
私は、半袖の白い制服を着ている康ちゃんを見上げる。真剣な眼差しで私を見ている彼は、割と強面系な男前で、頭良くて運動できてそりゃ女性におモテになるでしょうってアレなんですけど――産まれたときから幼馴染な私はようく知ってる。
この人、ちょっとアホなんです。
1 ダンゴムシのおもひで
康ちゃんこと、鮫川康平氏は小さい頃からボケーっとしていたのですが、私は彼に輪をかけてボケーっとしていましたので、私たちは幼い頃から周りに迷惑をかけて生きてきました。
今思えば、あんなに大量にダンゴムシを集めなくて良かった(お母さんの悲鳴がすごかった)。
今思えば、自転車チキンランなんかするんじゃなかった(骨折った)。
今思えば、なんで公園にお手手繋いで歩いて行って、二駅も離れた駅前の交番で保護されたんだろう(ふたりで蝶々を追いかけた、のだと思う)。
でも、康ちゃんは大きくなるにつれて、そんな部分を内側に隠してしまった。
中学あたりになると、もうみんなあのヒトがボケーっとしてたことなんか、完璧に忘れちゃって。そう、ボケーっと仲間は私を置いて、さっさと精悍な男の子になってしまったのでした。
「鮫川くんかっこいいよね」
「ねー!」
私は友達がそんな風に喋るのを「けっ、あんなの猫ですよ、猫被りですよ」と思いながら、康ちゃんが「きりっ」として姿勢良く歩くのをぼんやりと見ていたのです。
(でも、なんでだろう)
ふと思い出す。きりっと精悍モードな康ちゃんですが、私とふたりだと……すっごい、リラックスしていたのでした。でも高校を卒業して(高校までは同じ学校だった)そこから会わない間、康ちゃんは「きりっ」としたまま、生きてたんだろうか。
……いやまぁ、たまに帰省して顔合わせたらやっぱりへにゃって表情崩していたから、常にじゃないんだろうけれど……でもさ。ちから、ぬけよな~、とは思う。ずっと「きりっ」としてるの、疲れないのかな。
「……帰れ」
「なぜだ」
職を失った以上、とにかく節約! と実家に帰って数日。ピンポンと鳴ったインターフォンに、ガチャリと玄関を出てみれば……そこにいたのは「きりっ」とした康ちゃんだった。記憶より精悍さを増した眼差しに、一瞬怯む。
「……っ、それはなに」
「薔薇の花束」
「薔薇? なんのために」
「プロポーズだ」
気が抜けた。気というか、力が抜けた。
「……なんのために?」
「なんのため」
康ちゃんはさっさと「きりっ」モードを解除してリラックスモードで私を見ている。でもどこか、いつもと違う。ちょっと緊張……しているような?
「……結婚したいから」
「……ほえーん」
私はボケーっと康ちゃんを見上げる。
彼はなんだか悲しそうに私を見た。……そういう、捨てられた子犬みたいな顔やめてよ……
結婚、結婚かぁ……あんまり縁がなさそうかなと思っていた「それ」について、ぼうっと考えた。なるほど、我々ももうじき、三十路に足を突っ込む。なにやら真剣に私を見つめ続けるこの幼馴染に結婚願望があったって、おかしくはない。お兄さんのしゅーちゃんも、弟のりょーちゃんも、結婚したとか聞いているし。なるほどねえ。
「でも、なんで私?」
「凪子といると、素の俺でいられる。傍にいてくれ」
なるほど……?
つまり楽だから、ってことかな? たしかに、私となら楽なんだろうな。なにしろ、きりっとしなくていい。それは幼馴染ゆえ、恋愛感情もなくゆったり過ごせる、というところなのだろうけれど。
「凪子は俺じゃ嫌か」
「嫌とかじゃなくて」
「じゃあいいじゃないか」
「……いいのかな」
いいんだっけ?
「あらあらあらあら、康平くん! 久しぶりね」
背後から現れたのは、お母さん。不思議そうに康ちゃんの持ってる薔薇の花束を見ている。
「それなぁに?」
「凪子さんに」
きりっとモードになった康ちゃんはきりっとお母さんに言う。目つきが違うよ。
「プロポーズを」
「プ、プロポーズ⁉」
お母さんは飛び跳ねた。文字通り、飛び跳ねた。
「な、なぁんだ凪子っ。ずっと付き合ってたのって、康平くんだったのー」
頬を赤くして、お母さんはるんるんと言う。
「ちが」
「早く言ってよお!」
「ちが」
プロポーズショックで、いつにも増してボケーっとしてるので、うまく言い返せない。
大学からずうっと付き合ってた彼氏は、私が無職になると知るやいなや「オレに寄生すんのはやめてくれよな」「就職するまで連絡すんなよ」「女は楽でいいよな」と言って離れていきました。
……せちがらい。でもまぁ、そんなにショックでもなかったな……。もはや惰性だったもんな。
「お母さん」
違うんだよ、と言おうとして――お母さんが泣いちゃったから、ワタワタ戸惑う。
「凪子が幸せになるのね、ほんとに、ほんとに嬉しい……」
「お母さん」
今の「お母さん」は、私じゃなくて康ちゃん。
「凪子さんを、必ず幸せにします」
「よろしくね、康平くん……!」
「凪子、本当だぞ」
私に向かってそう言う康ちゃんは、ちょっときりっと、精悍モード。こういう顔されるとドキリとするからやめて欲しい! なんていうか、リラックスしてるときとの落差がすごい。
なんか、このヒト……こんな性格で、本当に自衛官なんてできてるのかなぁ。
(見ててあげなきゃ、いけない気がする……)
だって、なんか――想像してしまった。結婚したいからって幼馴染に薔薇の花束持って突撃するような人、多分……私が断ったら、変な女に引っかかりそう!
(気が付いたら、身包み剥がされて横浜港に……)
そ、それはいやだ。いくらなんでも、幼馴染の葬式にはまだ出たくないよ!
そうして、気が付けば――流されるように。
私の左手薬指には、銀色の指輪が光っていたのでした。
2 正直、自分でも病んでると思う(康平視点)
ずっと凪子が好きだった。
いつから? そんなの、気が付いたらだ。彼女の前では、素の自分でいられる。ころころ変わる表情も愛おしい。でも俺が告白する前に――凪子に彼氏ができた。中二のときだった。
(……別れたら告白しよう)
少し酷いとは思うけれど――そう思っていたのに。
ヒトの不幸を願った罰か、凪子は驚くほどに、恋人が途切れなかった。男を取っ替え引っ替えしていた、というわけではなくて長く続くのだ。凪子といるのは、心地がいいから――だと、思う。みんなそうなのだろうな、と仲睦まじげに歩く凪子とその恋人を、高校まで見続けた。
(……不毛だ)
凪子を忘れようと、誰かに告白されたら付き合った。けれど、長続きしない。割とすぐふられた。多分、伝わるなにかがあったんだろう。申し訳なかったと――そう思う。
凪子の隣にいたい。けれど、凪子の隣にはいつも別の男がいた。
(……不毛だ!)
自らを鍛え直さなければ。俺はなにを考えたのか(まあ、性に合っていたから結構だったが)防衛大学校に進み、その後江田島沖を泳いでいた。十五キロ遠泳。およそ八時間に及ぶそれを、泳ぎながら考える。
ああ凪子は、今頃なにをしているんだろう。
(……不毛だ)
眩しい夏の太陽も、苦くて潮辛い海の味も、厳しい訓練も、なにも――俺から凪子を消してはくれなかった。
任官してからも、海を見ては凪子を思い、空を見ては凪子を思う。ひどいときは魚雷を見ても凪子を思い出した。なぜだ。自分でもわからない。末期だ。
だから――たまたま凪子と再会して、凪子がフリーだと知って。
考える。
凪子はぼんやり、と俺を見上げていた。おっとりした凪子。可愛い。……いや可愛い、じゃなくて。
(これを逃せばチャンスはないぞ)
凪子のほっそりした手を掴む。不思議そうな凪子に――気が付いたら、プロポーズ、していた。
頭をフル回転させる。凪子は優しいから、多分……押したらいける。予想通り、凪子は最終的には頷いてくれた。押し付けた薔薇の花束を抱えてのんびりと微笑んで、「康ちゃん、私がいなきゃだめそうだから」と。
「その通りだ」
俺は答える。
「凪子がいないと生きていけない」
「ふうん」
凪子はとても不思議そうに首を傾げた。
「自覚あるんだ」
「ある」
なんだ、伝わってたのか。きみがいないと、俺は生きていけないってこと。
ほっとしながら、改めて口にする。
「結婚してください」
「うん、いいよー」
おっとりと凪子は言った。その日の夜は――眠れなかった。
その後は順調だった。両家の顔合わせ(と言っても実家は近所同士、単なる和気藹々とした食事会だった)、結納、式場の決定、新婚旅行の手配。その間に、凪子は自宅でできる仕事(データ整理らしい)を見つけてきて、その合間に結婚式の準備をしてくれて――
「婚約者が寂しがってくれない」
「……まぁそんなもんですよ」
部下は呆れたように言う。ここ最近、凪子の話しかしていないので、少し呆れているのだろうか。
二ヶ月にも及ぶ、外洋での派遣訓練。出発前に凪子に会ったけれど「船酔いにはここのツボがいいらしいよ」と手首をぎうぎう押されただけだった。
「俺が一体、なんの仕事をしていると思っているんだろう」
防大時代の乗艦実習では、散々吐いたけれど――三半規管が麻痺したのか、任官以降はそういうこともない。もっとも、酔う人は酔うので、丈夫な身体に産んでくれた両親に感謝するばかりだ。
「まぁ、式を楽しみにしてますよ」
その言葉に、思わず頬が緩む。そうだ、この訓練が終わりさえすれば――凪子と結婚する。式に、新婚旅行。
「……結婚したら、手を出していいだろうか」
「は?」
訝しげな部下に、言い訳のように口にした。
「大事すぎて、手も繋げてない」
「えええ……」
今度こそ引かれている。引かれているけれど仕方ない。
「嫌がられて結婚やめる、とか言い出されたら困る」
「はぁ、そうですか」
難儀な恋をされてますね、と部下は言う。
(難儀な恋か)
なんとなく――その「難儀」は続きそうな、そんな予感がして――できればそんな予感は外れればいい、とそう思った。
閑話 鮫川康平という人について(部下視点)
鮫川康平一尉は、もっと……こう、とっつきにくい人だと思っていた。
そもそも背が高くて強面なほうだし、険しい顔つきも、部下からすればちょっと近寄りがたい雰囲気がある。そのうえ異様なほどに優秀で、なんでも防大は主席卒業らしい。日常の訓練や業務でも、それは痛いほどわかっていた。おそらく三佐昇進は、鮫川一尉が一番乗りだろう、との信憑性のある噂も。
こちらがミスしたとき、鮫川一尉は決して激昂したり感情的になったりすることはない。たとえ小さなミスだとしても、どうしたって自分の、誰かの命に関わる。特に艦艇の上では。それに対するリカバリー、適切な指示。頭の回転が速すぎて、オレはあの人の頭には機械が詰まってるんじゃないか、と時々思う。
そんなこともあって、一尉のことは怖いけれど、尊敬する上司でもあった。
とはいえ、とっつきにくいのはとっつきにくい、と……
そんなイメージが変わったのは、一尉が婚約したと聞いてお祝いの言葉を贈ったときのことだった。
「……ありがとう」
本気で嬉しそうな顔をして、一尉は頬を緩めた。思わず目を瞠る。
(……この人、こんな顔をするのか)
驚いているオレを尻目に、鮫川一尉はいかに自分の婚約者が素晴らしいのかを滔々と語った。まるで数学の公理を解説するかのごとく、あたかも当然のことを説明するかのように、しかし熱のこもった口調で語る、鮫川一尉。
……なんだこれ。
「すまん、惚気てしまった」
「いえ」
ノロケ。ノロケだったのか。
この人、惚気るとかあるのか。
少し驚いたけれど――この人にも意外と人間らしい感情があるのだ、ということにオレはなんだか、随分と……なんというか、ほっこりしたのだった。
3 え、するの……です?
新婚旅行先のハワイのホテルで、私はボケーっと康ちゃんがお風呂から上がるのを待っていた。
「……先に寝てていいかな?」
ていうか、バスローブって初めて着たけど、このまま寝て良いのかな? 時差でいつも以上に頭がボケボケしている自覚はある。
成田からホノルルに着いて、荷物をホテルに置いたらそのままトロリーバスで観光。
康ちゃんは英語ペラッペラなので(一日中きりっとしてた)、私はボケーっと「海あおーい」とか言って過ごした。……ハワイまで来て「海青い」しか感想がないのもどうかと思うけれど。
(てか、案外寒そうだなあ)
なんとなく一年中、常に海で泳げそうなイメージだったし、実際に泳げるらしいけど、三月の今、日本で言うと海開き頃の水温らしい。いちおう水着は持ってきたけれども。
ガチャリと寝室に康ちゃんが入ってくる。なんかイマイチよくわからない表情をしていた。頭を拭いている。彼も白いバスローブ。
「どうしたの? 康ちゃん」
「ん、あ、いや……」
なんかモジャモジャ言いながら、康ちゃんは私の横に座った。沈むベッド。……これ、お高そうだよなー。
(……あ、疲れてるのかな)
一日中「きりっ」としてたもんね。まったく、旅行中くらいボケーっとしたらいいのにさ。
「ん」
私は手を伸ばす。康ちゃんはなぜかびくっとした。
「どうしたの?」
「え、あ、いや、その」
「タオル貸して。拭いてあげる」
返事は待たずに、タオルを取ってごしゃごしゃと短い髪を拭いてあげる。
「通訳おつかれさま~」
「……いや、全然」
「助かったよ。ありがとう」
顔を覗き込む。康ちゃんは、なぜか――また、捨てられた子犬みたいな顔をしてた。
「どしたのー?」
「凪子は……俺と結婚して、良かったのか」
「……?」
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