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1巻
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ちなみに祖父母叔父叔母みーんな「すごい」人、だったりする。みそっかす、なのは私だけ。しかも驚くべきことに、彼ら彼女らは顔面も整ってらっしゃるのです。同じ遺伝子のはずなのになぁ。少しバランスや配置が変わるだけで、こうも平凡な顔立ちになりますか!? っていうくらいに、私はとても普通。とてもとても、普通。
「……普通であることは、嫌いではないんです」
家族は優しい。というか、親戚全体で(甥っ子姪っ子が生まれる前は)一番年下、末っ子の私を可愛がってくれている。いまも。
「友達もできました。仕事も希望の職につけました。なのに」
どうしても比べてしまう。きらきらしい宝石と、嫌になるくらいに平凡な私とを。
「俺は」
修平さんはとても難しい顔をしてる。難しいっていうか、不思議そうな顔を。
「君を、平凡だと思ったことはないのだが」
心底不可解です、って顔をしてる修平さんに、私は言う。
「け、けど! お姉ちゃん、美人でしょ?」
そんなことを聞いちゃうのは、なんでだろ。……もうお姉ちゃん結婚してるから仕方ないけど、もし独身だったらお姉ちゃんと結婚したかったんじゃないかな? 長官の娘、っていう同じ条件なら、美人で頭が良いほうを選びたいに決まってる。
「……そうだったか? 美保に似てるから、うん、綺麗な人なんだろう」
「えっと、そんなに似てないと思うのですが」
パーツは似てるとは言われる。配置ですよ問題は配置。
「目が似てるなとは、思った。顔合わせと、結婚式でお会いしたな」
「え? はい」
「……顔合わせか。懐かしいな」
「三ヶ月前ですが」
割と最近なんじゃないかなあ。
「あのとき美保は、葡萄色の振袖だった」
「あ、はい」
「見合いのときの振袖も似合っていたが、うん、あんな色も似合うのだなぁと感心した」
なんか話がずれてる?
「そうでしたか? なんか、あんまり似合ってなかったような」
私には少し、上品すぎる色使いだったような気もしていた。
「そんなことはない。ほら」
修平さんが見せてきたのはスマホの画面。ていうかロック画面。え、壁紙にしてます? 私の振袖? ……というか、二人の写真。なんだか変な顔で笑ってる葡萄色の振袖な私と、仏頂面でかっちりスーツな修平さんと。
「……初めて二人で撮った写真ですね?」
修平さんはなんでか視線をそらして頷いた。
「ていうか、写真あんまないですよね」
二人で撮ったのなんて、このときと、つい最近の結婚式くらいじゃないかな。
「……その」
その声に、修平さんを見上げる。
「これからは、たくさん、撮ろう」
「え? はい」
「うん」
なんだか満足気に、でも生真面目に修平さんは頷いて私を抱きしめる。きゅう、と――私はもがいてその腕から逃れた。
「美保?」
「撮りましょうか、修平さん」
私は自分のスマホをかざす。インカメラを起動して。
「記念日ですから」
「記念日?」
「同居記念日?」
私が笑うと、修平さんはやっぱり生真面目に無愛想に、インカメラを見つめて頷いてくれた。
「じゃー、ハイチーズでいきますよ」
せえの、そう言って私はぱしゃりと画面をタップする。
同居記念日の二人の写真は、笑顔の私と無愛想な修平さん。でも、彼のその唇がほんの少し緩んでることに私は気付いていて、それがなんだかとても嬉しかったり、した。
スマホの写真を眺める。今までの彼女さん……とかとは、こういうのあんまりなかったのかな……なんて、考えて。――違和感。ううん、違和感、っていうか。これは。このもやもやした感情は。
……やきもち?
自分に、びっくり。修平さんのこと、いい人だとは思っていたけれど、でも、ごりごりの恋愛感情みたいなのは、なかった……よ、ね? そもそも「恋愛はもういいや」っていうところが、どうしてもあって……
くいー、とビールを飲み干す。ちょっと酔ってるから、かな? そうだそうだ、うん。このドキドキとかも、お酒のせいだよー。
一気にあおってしまったせいか、疲れのせいか……じんわりと、酔いが回っていく。
「美保。俺の前だからいいが」
「ひゃい」
「あまり飲みすぎるなよ」
そういえば、初めて会ったときもお酒がめちゃくちゃ入ってたんだった……
「よ、酔ってません」
「ほう」
修平さんは、私の熱い頬に触れる。鋭い目つき、が少し緩んだような。大きな手が、ヒンヤリしてて気持ちいい。思わず擦り寄る。
「……本当に」
優しい瞳でそう言われて……思う。……この人のこと、なーんにも知らないなぁ。結婚できればいいやって、なんとなくお見合いして、なぜかとんとん拍子でここまできて。
さっきのもやもやが、頭にいっぱいになっていく……
「お、お手洗い。行ってきます」
修平さんの膝から立ち上がって、リビングを出て――トイレの前、玄関前の廊下で立ち尽くす。
頭が、ぐらぐらした。
修平さんは……優しい、人だと思う。「よだか」と自分を重ねてる、なんて詮ない話を、一生懸命に耳を傾けて聞いてくれた。
「……『これからは、たくさん撮ろう』か」
そう言ってくれた、あの優しい瞳を思い出す。
(あんなふうに、ほかの人にも接していたのかな)
想像が止まらない。だってあんなにかっこいいひと、今までだって大事にしてきた女性が何人もいたって、おかしくない。だから、あれは……私にだけ、特別に向けられた表情でも、声でもないんだ。
それどころか――その人たちは「修平さんの意志」で大事にされていたけれど……私が大事にされてるのは、単に私が「長官の娘」、だからであって……
心臓が冷たく、変な鼓動を刻んだ。そんなの嫌だ、ってはっきりと自覚する。私は、私の感情がよくわからない。なんでこんなに、辛いの……?
私は「よだか」なのに。ちゃんと身の程を、知ってるはずなのに――
ああ、ダメだ。少し、酔いを醒ましたほうがいいかも。
外の廊下に出よう、とサンダルを履いてドアノブに手をかけたところで、名前を呼ばれた。
「美保? どこに」
心配して追ってきてくれたのだろう――修平さんが、ぎょっとしたのがわかった。私、泣いてたから。ああもう、なんで? 自分で自分がわからない。
「どうした」
慌てて駆け寄ってきてくれる。
ホロホロと溢れる涙。……なんで私、泣いてるの? 酔ってるから? 泣き上戸だっけ、私? そんなはず、ないんだけれど。
「どこか痛いのか」
その言い方に、ふっと笑ってしまう。そんな、子供扱いみたいな。私を覗き込む顔が、明らかに焦燥を浮かべてて、私はなんだか満たされてしまう。こんな顔するんだ? 私が酔って、少し泣いちゃったくらいで。私にもあったんだ、こんな感情……
……うん、さすがに認めよう。私、どうやら、この人のこと好きになってしまったみたい。
……違う、かな。好きだったのかな。気がついてなかっただけで。――だから、結婚、したのかな。私。
「美保」
優しく、大切に発音するみたいに、修平さんが私を呼ぶ。誤解しちゃいそうな、その声。私はあなたの、出世の道具でしかないはずなのにね。
「どうした」
「少し、酔ってるみたいです」
きゅう、と修平さんに抱きつく。びくりと修平さんの身体が揺れた。
悲しいような、面白いような。抱きついたくらいで……そんなに驚かなくたって。エッチまでしたのに。――結婚までしたのに。それとも、抱いたのは気まぐれ? エッチできれば誰でもよかった?
そんなこと、ないか。生真面目そうな人だもん。結婚したからには、私としかしない、んだろう。
性欲発散目的、でもいいや。私は修平さんの耳を優しく、甘く、噛んだ。
「っ、美保」
「ねぇ」
腕を首に回して、その整ったかんばせを覗き込む。
「やぁらしい、気分なんです……私」
玄関なんかでだらしなく発情してる私――と、それに当てられたっぽい修平さんは、そう広くはない玄関でじっと見つめあう。そうっと、あったかな首に吸い付いて、舌を這わせた。
……あ、おっきくなってる。
抱きついた身体に、服越しに主張してくる、それ。
「美保」
少しだけの焦燥を含んだ声が、耳朶を震わせる。こんな声は、初めて、聞いた。うしろ向きに抱きしめられて、熱い、大きな手が服にするりと入ってくる。はう、と息を吐く。
「熱い」
耳元でそう囁かれて、背中がびくりとする。服の中でお腹と腰にやわやわと触れていた手が、そっと上がり、私の胸のふくらみに触れる。ひゅっと息を呑むけれど、それに構うことなく、ブラジャー越しにやわやわと触れられ続けた。
もっと、って――そう思って、ほとんど無意識に腰が動く。恥ずかしい、でも、もっと。
「ちゃ、んと触って?」
軽く振り向いたその口に、噛み付くようなキスをされた。蹂躙される口腔、淫らにつう、と口の端から垂れる唾液。やがて唇を離した修平さんは、そっと私の耳元で囁く。
「どこを?」
「……っ」
その間にも、修平さんはブラ越しにゆっくりと胸を刺激するだけ。触れて欲しい先端は、ぴんと勃って痛いくらいだった。
「……ち」
「ち?」
い、言えないよ!
「くび……?」
ふ、と笑う声。
「今日はそれでいい」
「きょ、う? ぁ、はぁう、っ」
ブラに入り込む手と、掴まれる先端。その快楽に、お腹の奥までが疼く。思わず上がる声に、修平さんは嗜めるように、でも楽しんでる声色で言う。
「そんな声を上げて。外に聞こえるぞ?」
私はハッとする。ここ、玄関先……!
「や、やだあっ」
「……聞かせるのはもったいないな」
そう言って、胸から離した手で私の頭を持って横を向かせ、少し乱暴に口を塞ぐ。私の腰を固定していたその手が、スカートをたくし上げて、そのまま下着のクロッチ部分を横にずらす。すっかり濡れてるソコが外気にふれて、冷たくて。それがなんだか――はしたないほど、気持ち良かった。
「んうっ」
声を上げたいけれど、塞がれて、舌で柔らかな頬の内側、粘膜を舐めあげられていて、頭がくらくらする。その蕩けはじめたソコに、ずぶりと無骨な指が、ゆっくりと入っていく。
「んっんっんっ」
深くなるほどに、上がる声。けれど、唇は離してもらえない。こくりと喉を動かす。私のものか、修平さんのものか――入り混じった唾液が喉を伝った。指が増やされて、私の「いいところ」を的確に刺激してくる。
「ん、んあ、っ、んんんっ」
同時に親指で敏感な芽をぐりぐりと押されて、あっけなく、本当にあっけなく私は達してしまう。
やっと離れた唇から、私は何度も荒い呼吸を繰り返す。くたりとした私を支えながら、修平さんは私の耳たぶを噛んだ。
「ひとりで気持ち良くなって」
「……ごめん、なさ」
「謝ることじゃない。俺が」
そうしたんだ――耳元で、そう告げる低い声に、イったばかりの私の子宮が疼く。
欲しいって。欲しくて仕方ない、って。
「美保」
そう名前を呼んで、そして優しいキスをおでこに落とされた。
「キツかったら言え」
そう言って、私を玄関のドアに押し付ける。カチャカチャ、というベルトを外す音。ごくりと唾を呑む。チョーダイと、ナカが期待でうねうねと蕩ける。腰を持ち上げられて、入り口にそれを添えられた。硬くて、熱くて、大きな、それ。
――なのに。それは入り口をヌルヌルと刺激するだけで、入ってきてくれない。
「しゅ、へー、さん?」
顔だけ傾けて、その顔を見る。真剣なその顔は、じっと私を見て、それから「今日は」と口を開いた。
「加減しない」
「ひゃ、やああんっ」
一気に貫かれる。奥にぎゅうっと当たる、欲しかったモノ。
「あっ……んんっ」
自分のナカがうねって、そしてきゅうきゅうと締まるのがわかった。欲しかった、すごく欲しかった。涙がほろり、とこぼれた。
「美保」
心配そうな声。
「ちが、あのっ、あんっ、きもち、よくてっ」
ゆっくりとした抽送を繰り返す修平さんに、私はなんとかそう言う。
「気持ち良くて?」
「そ、おっ、気持ち、良くて……泣いてるの、っ、ひゃあんっ」
ぱしん、と強く打ち付けられる腰。
「あまり煽るな」
「あ、煽って、なんかぁっ、やっ、はぁっ、やっ、ふぁ、っ、あっ」
激しめに抽送されはじめた快楽に、私は壊れたみたいに上擦った声を上げ続ける。その口を、修平さんは大きな手で塞いだ。
「もったいない」
「ん、んふうっ、なに、が……?」
手の隙間から、そう問い返す。
「美保の声が廊下に漏れるのが」
「あっ、あっ、ヤダっ」
そうだった、ここ、玄関で。廊下にそんな声響かせてたら、恥ずかしくてもう歩けないよ!
「……いや、聞かせるのも良いのかもしれないな」
そう言って、修平さんは挿入の角度をぐいっと変えた。
「っ!? っ、あ、……!」
目の前で白い星がちかちかする。頭の中で、脳みそが溶けちゃったみたいにぐらぐらして、魚みたいに口をパクパクすることしかできない。
「美保」
優しい声で、修平さんは私の頭を撫でた。
「ココが、悦いのか」
「っ、く、ふはっ、はっ、あっ」
エッチなんて、初めてなんかじゃない。修平さんとも二回目だし、小野くんと付き合ってた時点でそもそも別に処女じゃなかったし。多いわけじゃないけれど、人並みに経験してる、つもりだった。なのに、なにこれ、なにこれ、私、知らないよこんなの! ぽろりと涙がこぼれた。
修平さんがソコに抽送し始める。すっごい、奥に当たってて……! 私は喘ぎながら、イヤイヤと首を振った。
「や、あんっ、ダメ、そこ、やあっ、壊れちゃ、ああっ」
ソコに当たるたびに、目の前で星がスパークする。修平さんが腰を動かすたびに、イヤらしい水音が、そのぐじゅぐじゅという、自分から出てると信じられないその音が玄関にこだました。
「ああっ、あっ、あっ、あっ」
私はほとんど泣いていた、と思う。修平さんに突かれるたびに、脳が溶けていく。肉襞が蕩けて、蕩けながらきゅうきゅう締まって、修平さんが激しくなって、玄関のドアが軋む。
「や、やあっ、修平さんっ、ヤダっ、エッチしてるって、あんっ、バレちゃうよおっ」
これ、廊下に誰かいたら流石にわかるんじゃないかな。絶対声、漏れてるよ! ドアも変な音してる……!
「わからせるのもいい」
「や、ぁんっ、なに言って、ッ」
私はドアに上半身を預けたまま、顔をなんとか修平さんに向ける。
「おね、が……ベッド、いこ」
「美保が」
修平さんの目は、ぎらぎらしていた。思わず息を呑んで、そして私のナカがきゅうんと締まる。
「美保が、イったら」
「ひゃあん!?」
ぱしん! と更に激しく打ち付けられた腰。私の片腕を修平さんは掴んで、引き寄せるように強くスイングしてくる。
「ひゃ、あ、あ、アッ、やぁっ」
目を閉じたいのに、閉じられない。ぱっちりと見開いたまま、私は涙を流して――そして修平さんのが「ソコ」に強く当たったと同時に、頭の中がどろりと溶けた。
「あっ、あっ、あっ、あぁぁぁ……ッ」
ナカが自分でも引くくらいに締まって、身体ががくがく震える。信じられないくらいに「イって」るのが、わかった。
「あ、あ、あ」
もう言葉にならない。びくびくと痙攣しながら、私は自分から何かがとろりと溢れて、それが足をつたい、床を汚したのを知覚した。
なに、これ……? どろりとした思考で考える。何が出ちゃったの? ふわふわ考えていると、うしろからぎゅうっと修平さんに抱きしめられる。
「上手にイけたな」
「……は、ぁっ」
耳に当たったその息さえ気持ちいい。私、どうなっちゃってるんだろう……。赤くなってびくりと反応する私から、修平さんは自分を引き抜く。
「あ」
栓を失って、私のナカに満ちていた何かがごぽりとまた、溢れる。こんなに濡れちゃうだなんて、こんなになっちゃうだなんて。私は寂しくて修平さんを仰ぎ見る。
「や、だ……抜かないで」
もっとして、欲しいのに。
修平さんは私のこめかみにキスしたあと、すうっと私を横抱きに持ち上げた。
「布団に行こう」
お姫様だっこで、ベッドに運ばれる。ぽすりと優しく横たえられて、私は恐る恐る修平さんを見た。修平さんは「邪魔」って感じで自分の着てた残りの服をさっさと脱ぎ捨てて、私のも脱がしてしまう。
「ひゃ、う」
「寒いか?」
私は首を振る。全然寒くない。むしろ――暑い。
視線は気がつけば、修平さんの屹立してるソレを見てしまっていた。いつの間にか買っていたらしい、ベッドサイドの棚から出されたコンドームを修平さんが付けようとしてる、それ。
「どうした?」
「や、その」
私は照れ臭くて笑う。
「そんな大っきいの、入ってたんだなあって」
「入ってた?」
修平さんはほんの少し、口の端を上げた。
「また入るんだ」
ぐい、と膝裏を押され太ももをあげられる。その内側にキスをひとつ。そのあと、蕩け切ったソコに、また入ってくる熱くて硬い、ソレ。
「……っ、あ、ああんっ」
それだけで、私は簡単に達してしまう。……本当に、私の身体どうなっちゃってるんだろう!?
激しく、強く、修平さんはイってる私をそれでも突く。
「や、あっ、修平、さんっ、ダメ、イってる、イってるのぉっ、イってるから、やめ、あ、ヤダ、はぁ、お願、っ、壊れちゃう、……っ」
イってるところを滅茶苦茶に突かれて、私は訳がわからなくなってしまう。イヤイヤと子供みたいに首を振って、涙が流れて、シーツを握りしめて、自分のナカがぐちゃぐちゃになってるのをただ、されるがままに。
「美保」
ひどいことを、激しいことをしてるのに、声だけはすごく優しかった。目線を向けると、きゅっと眉根を寄せて、そんな目で修平さんは私を見る。まるで、切ない、みたいな……そんな目で。
勘違い、しそうになる。そんな目で見られると。そんな風に、名前を呼ばれると。
大きな身体で、修平さんは私を抱きしめた。武骨な手が、腰と後頭部にまわる。
「あっ、あっ、あ」
ぎゅうぎゅう抱きしめられて。その身体に押しつぶされるみたいに突かれていると、苦しくて、狂おしくて、気持ちいい。
(死んじゃってもいいや……)
頭がクラクラして、そんなことまで思ってしまう。こんなに気持ちいいなら、死んでもいい。
「美保、口、開けて」
もう何も考えられず、言われるがままに口を開けた。そこに捻じ込まれる舌、歯列をなぞって歯茎を舐めあげて、私の舌に絡みつく。
「んう、ふ、は」
「美保」
口から離したその私の唾液でぬらぬらした唇で、修平さんは少し苦しそうに言う。
「イ、くぞ」
「……っ、あ、はい……っ」
修平さんは上半身を起こして、私の腰を掴み直す。角度が変わって、それだけで軽くイってしまう私を、修平さんは少し満足そうに見ていた。やがて抽送は激しさを増す。私は身体を揺さぶられながら、ただ甲高い声で、甘い声で、啼くしかない。
「ああっ、はぁあんっ、アッアッあ、ッ、アッ」
だらしなく、声を上げるしか――やがて、私のナカもきゅうっと締まって、それと同時に修平さんが強く強く腰を打ち付けて、私を抱きしめた。薄い被膜越しでもわかる。……たくさん、出てる。
「……ッ」
修平さんの、快楽に耐えるような、そんな声。その声があまりに愛おしすぎて、ひどく胸が痛んだ。
感じてくれてる? 気持ちいい? 私のナカ、好き? ……そんなフシダラな質問が頭をぐるぐるまわる。
やがて、私から身体を離した修平さん。
「や、だ」
視線を向ける修平さんに、私は両手を差し向ける。
「ぎゅうってしてて、まだ、ギュって」
ふわふわと舌足らずに言う私を、修平さんは本当にギュっと抱きしめてくれた。鍛えられた腕、厚い胸板と、綺麗な鎖骨。その首元に擦り寄る。修平さんは、優しく私の頭を撫でた。
「……美保」
「はい」
「なんで泣いていた?」
私は目を白黒させる。そ、そんなの、そんなの……!
「き、気持ち良かったから、ですけど……?」
「そうではなくて」
さらりと私の髪を梳く、骨張った指先。
「さっき」
「え? あ、あー」
すっかり忘れてた。
「あの、……その」
思わず赤面。
「うん?」
不思議そうな修平さんと目があって、思わず私は背を向けた。
今さら、今さらなんだけど! カオ、直視できないよ! 好きだって、わかってしまった。わかってしまったら、なんか、なんか……っ! 一人で百面相してる私を背後から抱きしめ直して、修平さんは私の耳元で小さく言う。
その低めの、イイ声で。
「……普通であることは、嫌いではないんです」
家族は優しい。というか、親戚全体で(甥っ子姪っ子が生まれる前は)一番年下、末っ子の私を可愛がってくれている。いまも。
「友達もできました。仕事も希望の職につけました。なのに」
どうしても比べてしまう。きらきらしい宝石と、嫌になるくらいに平凡な私とを。
「俺は」
修平さんはとても難しい顔をしてる。難しいっていうか、不思議そうな顔を。
「君を、平凡だと思ったことはないのだが」
心底不可解です、って顔をしてる修平さんに、私は言う。
「け、けど! お姉ちゃん、美人でしょ?」
そんなことを聞いちゃうのは、なんでだろ。……もうお姉ちゃん結婚してるから仕方ないけど、もし独身だったらお姉ちゃんと結婚したかったんじゃないかな? 長官の娘、っていう同じ条件なら、美人で頭が良いほうを選びたいに決まってる。
「……そうだったか? 美保に似てるから、うん、綺麗な人なんだろう」
「えっと、そんなに似てないと思うのですが」
パーツは似てるとは言われる。配置ですよ問題は配置。
「目が似てるなとは、思った。顔合わせと、結婚式でお会いしたな」
「え? はい」
「……顔合わせか。懐かしいな」
「三ヶ月前ですが」
割と最近なんじゃないかなあ。
「あのとき美保は、葡萄色の振袖だった」
「あ、はい」
「見合いのときの振袖も似合っていたが、うん、あんな色も似合うのだなぁと感心した」
なんか話がずれてる?
「そうでしたか? なんか、あんまり似合ってなかったような」
私には少し、上品すぎる色使いだったような気もしていた。
「そんなことはない。ほら」
修平さんが見せてきたのはスマホの画面。ていうかロック画面。え、壁紙にしてます? 私の振袖? ……というか、二人の写真。なんだか変な顔で笑ってる葡萄色の振袖な私と、仏頂面でかっちりスーツな修平さんと。
「……初めて二人で撮った写真ですね?」
修平さんはなんでか視線をそらして頷いた。
「ていうか、写真あんまないですよね」
二人で撮ったのなんて、このときと、つい最近の結婚式くらいじゃないかな。
「……その」
その声に、修平さんを見上げる。
「これからは、たくさん、撮ろう」
「え? はい」
「うん」
なんだか満足気に、でも生真面目に修平さんは頷いて私を抱きしめる。きゅう、と――私はもがいてその腕から逃れた。
「美保?」
「撮りましょうか、修平さん」
私は自分のスマホをかざす。インカメラを起動して。
「記念日ですから」
「記念日?」
「同居記念日?」
私が笑うと、修平さんはやっぱり生真面目に無愛想に、インカメラを見つめて頷いてくれた。
「じゃー、ハイチーズでいきますよ」
せえの、そう言って私はぱしゃりと画面をタップする。
同居記念日の二人の写真は、笑顔の私と無愛想な修平さん。でも、彼のその唇がほんの少し緩んでることに私は気付いていて、それがなんだかとても嬉しかったり、した。
スマホの写真を眺める。今までの彼女さん……とかとは、こういうのあんまりなかったのかな……なんて、考えて。――違和感。ううん、違和感、っていうか。これは。このもやもやした感情は。
……やきもち?
自分に、びっくり。修平さんのこと、いい人だとは思っていたけれど、でも、ごりごりの恋愛感情みたいなのは、なかった……よ、ね? そもそも「恋愛はもういいや」っていうところが、どうしてもあって……
くいー、とビールを飲み干す。ちょっと酔ってるから、かな? そうだそうだ、うん。このドキドキとかも、お酒のせいだよー。
一気にあおってしまったせいか、疲れのせいか……じんわりと、酔いが回っていく。
「美保。俺の前だからいいが」
「ひゃい」
「あまり飲みすぎるなよ」
そういえば、初めて会ったときもお酒がめちゃくちゃ入ってたんだった……
「よ、酔ってません」
「ほう」
修平さんは、私の熱い頬に触れる。鋭い目つき、が少し緩んだような。大きな手が、ヒンヤリしてて気持ちいい。思わず擦り寄る。
「……本当に」
優しい瞳でそう言われて……思う。……この人のこと、なーんにも知らないなぁ。結婚できればいいやって、なんとなくお見合いして、なぜかとんとん拍子でここまできて。
さっきのもやもやが、頭にいっぱいになっていく……
「お、お手洗い。行ってきます」
修平さんの膝から立ち上がって、リビングを出て――トイレの前、玄関前の廊下で立ち尽くす。
頭が、ぐらぐらした。
修平さんは……優しい、人だと思う。「よだか」と自分を重ねてる、なんて詮ない話を、一生懸命に耳を傾けて聞いてくれた。
「……『これからは、たくさん撮ろう』か」
そう言ってくれた、あの優しい瞳を思い出す。
(あんなふうに、ほかの人にも接していたのかな)
想像が止まらない。だってあんなにかっこいいひと、今までだって大事にしてきた女性が何人もいたって、おかしくない。だから、あれは……私にだけ、特別に向けられた表情でも、声でもないんだ。
それどころか――その人たちは「修平さんの意志」で大事にされていたけれど……私が大事にされてるのは、単に私が「長官の娘」、だからであって……
心臓が冷たく、変な鼓動を刻んだ。そんなの嫌だ、ってはっきりと自覚する。私は、私の感情がよくわからない。なんでこんなに、辛いの……?
私は「よだか」なのに。ちゃんと身の程を、知ってるはずなのに――
ああ、ダメだ。少し、酔いを醒ましたほうがいいかも。
外の廊下に出よう、とサンダルを履いてドアノブに手をかけたところで、名前を呼ばれた。
「美保? どこに」
心配して追ってきてくれたのだろう――修平さんが、ぎょっとしたのがわかった。私、泣いてたから。ああもう、なんで? 自分で自分がわからない。
「どうした」
慌てて駆け寄ってきてくれる。
ホロホロと溢れる涙。……なんで私、泣いてるの? 酔ってるから? 泣き上戸だっけ、私? そんなはず、ないんだけれど。
「どこか痛いのか」
その言い方に、ふっと笑ってしまう。そんな、子供扱いみたいな。私を覗き込む顔が、明らかに焦燥を浮かべてて、私はなんだか満たされてしまう。こんな顔するんだ? 私が酔って、少し泣いちゃったくらいで。私にもあったんだ、こんな感情……
……うん、さすがに認めよう。私、どうやら、この人のこと好きになってしまったみたい。
……違う、かな。好きだったのかな。気がついてなかっただけで。――だから、結婚、したのかな。私。
「美保」
優しく、大切に発音するみたいに、修平さんが私を呼ぶ。誤解しちゃいそうな、その声。私はあなたの、出世の道具でしかないはずなのにね。
「どうした」
「少し、酔ってるみたいです」
きゅう、と修平さんに抱きつく。びくりと修平さんの身体が揺れた。
悲しいような、面白いような。抱きついたくらいで……そんなに驚かなくたって。エッチまでしたのに。――結婚までしたのに。それとも、抱いたのは気まぐれ? エッチできれば誰でもよかった?
そんなこと、ないか。生真面目そうな人だもん。結婚したからには、私としかしない、んだろう。
性欲発散目的、でもいいや。私は修平さんの耳を優しく、甘く、噛んだ。
「っ、美保」
「ねぇ」
腕を首に回して、その整ったかんばせを覗き込む。
「やぁらしい、気分なんです……私」
玄関なんかでだらしなく発情してる私――と、それに当てられたっぽい修平さんは、そう広くはない玄関でじっと見つめあう。そうっと、あったかな首に吸い付いて、舌を這わせた。
……あ、おっきくなってる。
抱きついた身体に、服越しに主張してくる、それ。
「美保」
少しだけの焦燥を含んだ声が、耳朶を震わせる。こんな声は、初めて、聞いた。うしろ向きに抱きしめられて、熱い、大きな手が服にするりと入ってくる。はう、と息を吐く。
「熱い」
耳元でそう囁かれて、背中がびくりとする。服の中でお腹と腰にやわやわと触れていた手が、そっと上がり、私の胸のふくらみに触れる。ひゅっと息を呑むけれど、それに構うことなく、ブラジャー越しにやわやわと触れられ続けた。
もっと、って――そう思って、ほとんど無意識に腰が動く。恥ずかしい、でも、もっと。
「ちゃ、んと触って?」
軽く振り向いたその口に、噛み付くようなキスをされた。蹂躙される口腔、淫らにつう、と口の端から垂れる唾液。やがて唇を離した修平さんは、そっと私の耳元で囁く。
「どこを?」
「……っ」
その間にも、修平さんはブラ越しにゆっくりと胸を刺激するだけ。触れて欲しい先端は、ぴんと勃って痛いくらいだった。
「……ち」
「ち?」
い、言えないよ!
「くび……?」
ふ、と笑う声。
「今日はそれでいい」
「きょ、う? ぁ、はぁう、っ」
ブラに入り込む手と、掴まれる先端。その快楽に、お腹の奥までが疼く。思わず上がる声に、修平さんは嗜めるように、でも楽しんでる声色で言う。
「そんな声を上げて。外に聞こえるぞ?」
私はハッとする。ここ、玄関先……!
「や、やだあっ」
「……聞かせるのはもったいないな」
そう言って、胸から離した手で私の頭を持って横を向かせ、少し乱暴に口を塞ぐ。私の腰を固定していたその手が、スカートをたくし上げて、そのまま下着のクロッチ部分を横にずらす。すっかり濡れてるソコが外気にふれて、冷たくて。それがなんだか――はしたないほど、気持ち良かった。
「んうっ」
声を上げたいけれど、塞がれて、舌で柔らかな頬の内側、粘膜を舐めあげられていて、頭がくらくらする。その蕩けはじめたソコに、ずぶりと無骨な指が、ゆっくりと入っていく。
「んっんっんっ」
深くなるほどに、上がる声。けれど、唇は離してもらえない。こくりと喉を動かす。私のものか、修平さんのものか――入り混じった唾液が喉を伝った。指が増やされて、私の「いいところ」を的確に刺激してくる。
「ん、んあ、っ、んんんっ」
同時に親指で敏感な芽をぐりぐりと押されて、あっけなく、本当にあっけなく私は達してしまう。
やっと離れた唇から、私は何度も荒い呼吸を繰り返す。くたりとした私を支えながら、修平さんは私の耳たぶを噛んだ。
「ひとりで気持ち良くなって」
「……ごめん、なさ」
「謝ることじゃない。俺が」
そうしたんだ――耳元で、そう告げる低い声に、イったばかりの私の子宮が疼く。
欲しいって。欲しくて仕方ない、って。
「美保」
そう名前を呼んで、そして優しいキスをおでこに落とされた。
「キツかったら言え」
そう言って、私を玄関のドアに押し付ける。カチャカチャ、というベルトを外す音。ごくりと唾を呑む。チョーダイと、ナカが期待でうねうねと蕩ける。腰を持ち上げられて、入り口にそれを添えられた。硬くて、熱くて、大きな、それ。
――なのに。それは入り口をヌルヌルと刺激するだけで、入ってきてくれない。
「しゅ、へー、さん?」
顔だけ傾けて、その顔を見る。真剣なその顔は、じっと私を見て、それから「今日は」と口を開いた。
「加減しない」
「ひゃ、やああんっ」
一気に貫かれる。奥にぎゅうっと当たる、欲しかったモノ。
「あっ……んんっ」
自分のナカがうねって、そしてきゅうきゅうと締まるのがわかった。欲しかった、すごく欲しかった。涙がほろり、とこぼれた。
「美保」
心配そうな声。
「ちが、あのっ、あんっ、きもち、よくてっ」
ゆっくりとした抽送を繰り返す修平さんに、私はなんとかそう言う。
「気持ち良くて?」
「そ、おっ、気持ち、良くて……泣いてるの、っ、ひゃあんっ」
ぱしん、と強く打ち付けられる腰。
「あまり煽るな」
「あ、煽って、なんかぁっ、やっ、はぁっ、やっ、ふぁ、っ、あっ」
激しめに抽送されはじめた快楽に、私は壊れたみたいに上擦った声を上げ続ける。その口を、修平さんは大きな手で塞いだ。
「もったいない」
「ん、んふうっ、なに、が……?」
手の隙間から、そう問い返す。
「美保の声が廊下に漏れるのが」
「あっ、あっ、ヤダっ」
そうだった、ここ、玄関で。廊下にそんな声響かせてたら、恥ずかしくてもう歩けないよ!
「……いや、聞かせるのも良いのかもしれないな」
そう言って、修平さんは挿入の角度をぐいっと変えた。
「っ!? っ、あ、……!」
目の前で白い星がちかちかする。頭の中で、脳みそが溶けちゃったみたいにぐらぐらして、魚みたいに口をパクパクすることしかできない。
「美保」
優しい声で、修平さんは私の頭を撫でた。
「ココが、悦いのか」
「っ、く、ふはっ、はっ、あっ」
エッチなんて、初めてなんかじゃない。修平さんとも二回目だし、小野くんと付き合ってた時点でそもそも別に処女じゃなかったし。多いわけじゃないけれど、人並みに経験してる、つもりだった。なのに、なにこれ、なにこれ、私、知らないよこんなの! ぽろりと涙がこぼれた。
修平さんがソコに抽送し始める。すっごい、奥に当たってて……! 私は喘ぎながら、イヤイヤと首を振った。
「や、あんっ、ダメ、そこ、やあっ、壊れちゃ、ああっ」
ソコに当たるたびに、目の前で星がスパークする。修平さんが腰を動かすたびに、イヤらしい水音が、そのぐじゅぐじゅという、自分から出てると信じられないその音が玄関にこだました。
「ああっ、あっ、あっ、あっ」
私はほとんど泣いていた、と思う。修平さんに突かれるたびに、脳が溶けていく。肉襞が蕩けて、蕩けながらきゅうきゅう締まって、修平さんが激しくなって、玄関のドアが軋む。
「や、やあっ、修平さんっ、ヤダっ、エッチしてるって、あんっ、バレちゃうよおっ」
これ、廊下に誰かいたら流石にわかるんじゃないかな。絶対声、漏れてるよ! ドアも変な音してる……!
「わからせるのもいい」
「や、ぁんっ、なに言って、ッ」
私はドアに上半身を預けたまま、顔をなんとか修平さんに向ける。
「おね、が……ベッド、いこ」
「美保が」
修平さんの目は、ぎらぎらしていた。思わず息を呑んで、そして私のナカがきゅうんと締まる。
「美保が、イったら」
「ひゃあん!?」
ぱしん! と更に激しく打ち付けられた腰。私の片腕を修平さんは掴んで、引き寄せるように強くスイングしてくる。
「ひゃ、あ、あ、アッ、やぁっ」
目を閉じたいのに、閉じられない。ぱっちりと見開いたまま、私は涙を流して――そして修平さんのが「ソコ」に強く当たったと同時に、頭の中がどろりと溶けた。
「あっ、あっ、あっ、あぁぁぁ……ッ」
ナカが自分でも引くくらいに締まって、身体ががくがく震える。信じられないくらいに「イって」るのが、わかった。
「あ、あ、あ」
もう言葉にならない。びくびくと痙攣しながら、私は自分から何かがとろりと溢れて、それが足をつたい、床を汚したのを知覚した。
なに、これ……? どろりとした思考で考える。何が出ちゃったの? ふわふわ考えていると、うしろからぎゅうっと修平さんに抱きしめられる。
「上手にイけたな」
「……は、ぁっ」
耳に当たったその息さえ気持ちいい。私、どうなっちゃってるんだろう……。赤くなってびくりと反応する私から、修平さんは自分を引き抜く。
「あ」
栓を失って、私のナカに満ちていた何かがごぽりとまた、溢れる。こんなに濡れちゃうだなんて、こんなになっちゃうだなんて。私は寂しくて修平さんを仰ぎ見る。
「や、だ……抜かないで」
もっとして、欲しいのに。
修平さんは私のこめかみにキスしたあと、すうっと私を横抱きに持ち上げた。
「布団に行こう」
お姫様だっこで、ベッドに運ばれる。ぽすりと優しく横たえられて、私は恐る恐る修平さんを見た。修平さんは「邪魔」って感じで自分の着てた残りの服をさっさと脱ぎ捨てて、私のも脱がしてしまう。
「ひゃ、う」
「寒いか?」
私は首を振る。全然寒くない。むしろ――暑い。
視線は気がつけば、修平さんの屹立してるソレを見てしまっていた。いつの間にか買っていたらしい、ベッドサイドの棚から出されたコンドームを修平さんが付けようとしてる、それ。
「どうした?」
「や、その」
私は照れ臭くて笑う。
「そんな大っきいの、入ってたんだなあって」
「入ってた?」
修平さんはほんの少し、口の端を上げた。
「また入るんだ」
ぐい、と膝裏を押され太ももをあげられる。その内側にキスをひとつ。そのあと、蕩け切ったソコに、また入ってくる熱くて硬い、ソレ。
「……っ、あ、ああんっ」
それだけで、私は簡単に達してしまう。……本当に、私の身体どうなっちゃってるんだろう!?
激しく、強く、修平さんはイってる私をそれでも突く。
「や、あっ、修平、さんっ、ダメ、イってる、イってるのぉっ、イってるから、やめ、あ、ヤダ、はぁ、お願、っ、壊れちゃう、……っ」
イってるところを滅茶苦茶に突かれて、私は訳がわからなくなってしまう。イヤイヤと子供みたいに首を振って、涙が流れて、シーツを握りしめて、自分のナカがぐちゃぐちゃになってるのをただ、されるがままに。
「美保」
ひどいことを、激しいことをしてるのに、声だけはすごく優しかった。目線を向けると、きゅっと眉根を寄せて、そんな目で修平さんは私を見る。まるで、切ない、みたいな……そんな目で。
勘違い、しそうになる。そんな目で見られると。そんな風に、名前を呼ばれると。
大きな身体で、修平さんは私を抱きしめた。武骨な手が、腰と後頭部にまわる。
「あっ、あっ、あ」
ぎゅうぎゅう抱きしめられて。その身体に押しつぶされるみたいに突かれていると、苦しくて、狂おしくて、気持ちいい。
(死んじゃってもいいや……)
頭がクラクラして、そんなことまで思ってしまう。こんなに気持ちいいなら、死んでもいい。
「美保、口、開けて」
もう何も考えられず、言われるがままに口を開けた。そこに捻じ込まれる舌、歯列をなぞって歯茎を舐めあげて、私の舌に絡みつく。
「んう、ふ、は」
「美保」
口から離したその私の唾液でぬらぬらした唇で、修平さんは少し苦しそうに言う。
「イ、くぞ」
「……っ、あ、はい……っ」
修平さんは上半身を起こして、私の腰を掴み直す。角度が変わって、それだけで軽くイってしまう私を、修平さんは少し満足そうに見ていた。やがて抽送は激しさを増す。私は身体を揺さぶられながら、ただ甲高い声で、甘い声で、啼くしかない。
「ああっ、はぁあんっ、アッアッあ、ッ、アッ」
だらしなく、声を上げるしか――やがて、私のナカもきゅうっと締まって、それと同時に修平さんが強く強く腰を打ち付けて、私を抱きしめた。薄い被膜越しでもわかる。……たくさん、出てる。
「……ッ」
修平さんの、快楽に耐えるような、そんな声。その声があまりに愛おしすぎて、ひどく胸が痛んだ。
感じてくれてる? 気持ちいい? 私のナカ、好き? ……そんなフシダラな質問が頭をぐるぐるまわる。
やがて、私から身体を離した修平さん。
「や、だ」
視線を向ける修平さんに、私は両手を差し向ける。
「ぎゅうってしてて、まだ、ギュって」
ふわふわと舌足らずに言う私を、修平さんは本当にギュっと抱きしめてくれた。鍛えられた腕、厚い胸板と、綺麗な鎖骨。その首元に擦り寄る。修平さんは、優しく私の頭を撫でた。
「……美保」
「はい」
「なんで泣いていた?」
私は目を白黒させる。そ、そんなの、そんなの……!
「き、気持ち良かったから、ですけど……?」
「そうではなくて」
さらりと私の髪を梳く、骨張った指先。
「さっき」
「え? あ、あー」
すっかり忘れてた。
「あの、……その」
思わず赤面。
「うん?」
不思議そうな修平さんと目があって、思わず私は背を向けた。
今さら、今さらなんだけど! カオ、直視できないよ! 好きだって、わかってしまった。わかってしまったら、なんか、なんか……っ! 一人で百面相してる私を背後から抱きしめ直して、修平さんは私の耳元で小さく言う。
その低めの、イイ声で。
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