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番外編
【番外編SS】ハロウィン!(修平視点)
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【時系列、戻ります。(修平視点)
結婚式が終わってすぐのハロウィン】
※※※
「と、トリックオアトリート?」
新婚ほやほや(と自分で言うくらいはいいだろう)の妻、美保がものすごく戸惑った顔で玄関先で出迎えてくれた。
俺の目線は彼女の頭部に釘付け。
見慣れない、まぁ見慣れていたらかなり変だと思うが──猫耳が付いていた。
「黒猫」
思わず、見たままの言葉が出る。
「あ、はい。黒猫なんです……」
なんだか生真面目に、美保はその着け耳に手をやった。その手にも、もふもふの黒猫の手袋。黒いパーカーに、オレンジのミニスカート。
「今日、会社のイベントで使って……いえこんなミニスカートは履きたくないと言ったんですけど、同僚に無理矢理に」
「……」
美保の勤め先は、どちらかというと固い職場のはずなのだが。
……いや、そんなのはどうでもいい。
(……これを人に見せたのか)
頭に着け耳、頬にはヒゲのペイント。
両手にモフモフとした手袋。
目の端が赤いのは、照れているのだろうか。可愛い。いや、この可愛い美保を他人が見たのか。
おそらくかなり強張っていた俺の顔を見て、美保は申し訳なさそうに眉を下げた。
「あ、あの。すみません、なんかふざけちゃって……。外しますね……」
「いやその必要はない」
外そうとした美保の両手をがしりと掴んだ。
「なぜ外す。とても似合う」
「に、似合いますか?」
とても、と重々しく俺は頷く。
単に、嫉妬をしていただけ、だと告げられたらどんなにいいか──と思うけれど。
「でもあの、修平さん、えっと、わぁっ」
俺は彼女を担ぎ上げる。
「しゅ、修平さん!? どうしました?」
「どうもこうも」
「ええっと、怒ってます?」
「怒るわけがない」
こんなに可愛い君を見て、劣情が沸き起こらないほど俺は聖人君子ではないのだけれど。
ベッドにとすり、と美保を下ろした。彼女の顔の横に腕をついて、見下ろす。
「トリックオアトリート、だったな?」
「え、ぁ、はい」
「菓子はない。済まない。なので悪戯することにする」
ジャケットを脱いで、ネクタイもさっさと外す。全く、邪魔だ。
「あの、修平さん?」
美保がおそるおそる、といった表情で俺を見つめ、言う。
「逆では?」
「そういう説もあるな」
「ぇ、あ、そうなんです、か……?」
美保が可愛らしく首をかしげる。
全く俺の妻は可愛い。
するりと薄手の、黒いストッキングを脱がせてしまう。
美保はほんの少し怯えた表情で俺を見上げていた。可愛い。キスを落とすと、その体温に安心したようにふ、と息を吐くのがまた可愛らしい。
「……イベント、とはなにをしたんだ?」
「えっと、単にお菓子を配るだけですよ?」
思い出したように、美保は頬を赤くする。
「でも酷いんです、八重──同僚なんですけれど、語尾に"にゃん"つけろって」
「……にゃん」
「はい。へ、変ですよね!? もう、いい大人にさせることじゃ」
「……やってみてくれ」
「へ!? なにをですか!?」
「……いやなんでも」
くっ、と俺は目線を外す。
そんなの可愛すぎるだろう。嫉妬でどうにかなりそうだ。会社中の男が美保に惚れたって仕方ない。
「しゅ、修平さん……?」
「気にしないでくれ」
「あの、その」
美保は少し迷ったように目線を動かして、それから思い切ったように口を開いた。
瞳はウルウルと潤んでいる。目の端が赤い。頬も赤い。
そんな、顔で──。
「と、トリックオアトリート、だ、にゃん……?」
がばりと抱きしめてしまったので、美保から「ひゃぁあ!」と悲鳴が上がった。
「しゅ、修平さん、どうしました!?」
返事ができない。多分、顔が赤い。見せられたものではない。
完全にごまかすように、美保の黒いパーカーをたくし上げて柔らかなふくらみに甘く噛み付いた。
「ゃあんっ!」
美保の甘い声に耳朶が蕩けそうになりつつ、なんだか俺は開いてはいけない扉を開いてしまったような──そんな気分になっていた、のだった。
結婚式が終わってすぐのハロウィン】
※※※
「と、トリックオアトリート?」
新婚ほやほや(と自分で言うくらいはいいだろう)の妻、美保がものすごく戸惑った顔で玄関先で出迎えてくれた。
俺の目線は彼女の頭部に釘付け。
見慣れない、まぁ見慣れていたらかなり変だと思うが──猫耳が付いていた。
「黒猫」
思わず、見たままの言葉が出る。
「あ、はい。黒猫なんです……」
なんだか生真面目に、美保はその着け耳に手をやった。その手にも、もふもふの黒猫の手袋。黒いパーカーに、オレンジのミニスカート。
「今日、会社のイベントで使って……いえこんなミニスカートは履きたくないと言ったんですけど、同僚に無理矢理に」
「……」
美保の勤め先は、どちらかというと固い職場のはずなのだが。
……いや、そんなのはどうでもいい。
(……これを人に見せたのか)
頭に着け耳、頬にはヒゲのペイント。
両手にモフモフとした手袋。
目の端が赤いのは、照れているのだろうか。可愛い。いや、この可愛い美保を他人が見たのか。
おそらくかなり強張っていた俺の顔を見て、美保は申し訳なさそうに眉を下げた。
「あ、あの。すみません、なんかふざけちゃって……。外しますね……」
「いやその必要はない」
外そうとした美保の両手をがしりと掴んだ。
「なぜ外す。とても似合う」
「に、似合いますか?」
とても、と重々しく俺は頷く。
単に、嫉妬をしていただけ、だと告げられたらどんなにいいか──と思うけれど。
「でもあの、修平さん、えっと、わぁっ」
俺は彼女を担ぎ上げる。
「しゅ、修平さん!? どうしました?」
「どうもこうも」
「ええっと、怒ってます?」
「怒るわけがない」
こんなに可愛い君を見て、劣情が沸き起こらないほど俺は聖人君子ではないのだけれど。
ベッドにとすり、と美保を下ろした。彼女の顔の横に腕をついて、見下ろす。
「トリックオアトリート、だったな?」
「え、ぁ、はい」
「菓子はない。済まない。なので悪戯することにする」
ジャケットを脱いで、ネクタイもさっさと外す。全く、邪魔だ。
「あの、修平さん?」
美保がおそるおそる、といった表情で俺を見つめ、言う。
「逆では?」
「そういう説もあるな」
「ぇ、あ、そうなんです、か……?」
美保が可愛らしく首をかしげる。
全く俺の妻は可愛い。
するりと薄手の、黒いストッキングを脱がせてしまう。
美保はほんの少し怯えた表情で俺を見上げていた。可愛い。キスを落とすと、その体温に安心したようにふ、と息を吐くのがまた可愛らしい。
「……イベント、とはなにをしたんだ?」
「えっと、単にお菓子を配るだけですよ?」
思い出したように、美保は頬を赤くする。
「でも酷いんです、八重──同僚なんですけれど、語尾に"にゃん"つけろって」
「……にゃん」
「はい。へ、変ですよね!? もう、いい大人にさせることじゃ」
「……やってみてくれ」
「へ!? なにをですか!?」
「……いやなんでも」
くっ、と俺は目線を外す。
そんなの可愛すぎるだろう。嫉妬でどうにかなりそうだ。会社中の男が美保に惚れたって仕方ない。
「しゅ、修平さん……?」
「気にしないでくれ」
「あの、その」
美保は少し迷ったように目線を動かして、それから思い切ったように口を開いた。
瞳はウルウルと潤んでいる。目の端が赤い。頬も赤い。
そんな、顔で──。
「と、トリックオアトリート、だ、にゃん……?」
がばりと抱きしめてしまったので、美保から「ひゃぁあ!」と悲鳴が上がった。
「しゅ、修平さん、どうしました!?」
返事ができない。多分、顔が赤い。見せられたものではない。
完全にごまかすように、美保の黒いパーカーをたくし上げて柔らかなふくらみに甘く噛み付いた。
「ゃあんっ!」
美保の甘い声に耳朶が蕩けそうになりつつ、なんだか俺は開いてはいけない扉を開いてしまったような──そんな気分になっていた、のだった。
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