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番外編
【番外編SS】「お母さん」の休日(上)(修平/美保視点)
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(修平視点)
「あ、れ?」
ばたん、とリビングの扉が開いて、風呂に入っていたはずの美保がバスタオルを巻いて立っていた。髪からはぽたぽた、と水滴。
「美保? どうした」
ソファに座る、俺の腕の中では生後半年になった美雨がすぴすぴと眠っている。
美保は不思議そうに言った。
「あれ? 美雨、いま泣いてませんでしたか」
「泣いてないぞ」
「……あは」
聞こえた気がして、と美保は苦笑してタオルを巻き直しながら(しなくていいんだけれど、俺的には)脱衣所れ戻っていく。
ぱたむ、と閉まるドアを見ながら、俺はふむと考えた。
(……さすがに疲れているのだろうか)
美雨は相変わらず眠っているけれど──最近、夜泣きをするようになってきた。
「修平さんは仕事があるから」
そう言って、美保は全部自分でやろうとしている。その上に、美雨は最近「ママじゃなきゃダメ期」のような、気がしてる。
(自我の芽生え)
ぷにぷにすべすべの頬をつつく。ヒヨコのような唇がなんとも可愛らしい。
自我の芽生えは、いいのだけれど──美保に負担がかかりすぎている。
「よし、美雨」
小さく、そのぷにぷにを突きながら聞いてみる。
「ママに少し休んでもらっても、いいだろうか」
美雨は知らぬ顔ですぴすぴと眠っていた。
美保に都内のホテル一泊二日の話をすると、目をなんども瞬きさせながら、俺に言う。
「修平さん、それは」
「うん」
「ひと晩眠っていい、ってことなんでしょうか」
「寝てくれ」
美保は、喜びと不安がない混じった不思議な顔で俺を見つめる。
「でも、美雨が……修平さんもお仕事」
「ひと晩の睡眠不足でどうにかなるほどヤワじゃないし……美雨もママがいないなら諦めて寝るかもしれない」
「ですかねぇ」
美雨は、美保の膝の上でお座りしながら、オモチャをペロペロしていた。
※※※
(美保視点)
どうにも修平さんに心配かけている、らしい。
(一泊二日、かぁ)
たまにはゆっくりするのはどうだろう、と提案されて──最初に思いついた「やりたいこと」は「寝る」だった。
美雨が生まれてこっち、4時間以上まとまって眠ったことないかも。
美雨は、どうやらそれでも「まとまって眠る」ほうみたいなんだけれど……。他のお母さんたち、よく死んでないな!? いや大袈裟じゃなくて……。
(3時間おきのミルクが終わったと思ったら、夜泣きなんだものなぁ)
可愛いんだけど、可愛いだけじゃない。でも可愛い。赤ちゃん、複雑すぎる。
泣いてるんじゃないか、今泣くんじゃないか、って勝手にひとり追い込まれて、常に神経が尖ってる気もしてる。
修平さんは多分、……じゃないな。かなり、なんていうか、ちゃんと「当事者意識」あるパパなんだと思う。
それでもどうしたって仕事しているぶん、時間はないし。そもそもが大変なお仕事なのに、負担かけたくないし。
寝不足なせいなのか何なのか、そんな思考がぐるぐるってなっちゃって……。
そんな時に提案された「一泊2日」の自由時間、だった。
「……何したらいいのかな」
土曜日。
お昼寝してる美雨を修平さんにお願いして、とりあえずお買い物(スーパーじゃない)に来てみる。
ひとりで歩くことに、なんだか違和感。ベビーカー押してるか、抱っこ紐に美雨いれてるか、だもん。
(赤ちゃん連れだと難しいことしてみよ!)
カフェにも行こう。
まずは、服とか見たりしてみて……。
(あ、ワンピース。可愛い)
冬物ワンピ。可愛くて、手に取ってみるけど。
(だめだ、おっぱいあげにくい)
美雨はおっぱいとミルクと両方飲んでるけど、なぜか外出先ではミルク拒否が多い。
なぜなの……。
そんなことを考えながらデパートうろうろしてたら、気がついたら赤ちゃん用ワンピース見てたし何なら買っちゃってた。
(だ、だって可愛いんだもん!)
パステルピンクと、キラキラした水色のフリルがついたワンピース。
絶対似合う。
(修平さんのスマホ、また容量いっぱいになっちゃうな)
クラウド保存してるのに、本体から写真も動画も削除したくないらしくて(分かる)すぐスマホがいっぱいになる。
こんな服買ったよ、ってメッセージを送る。すぐに既読にはならない。
(……泣いてる、とか)
美雨、大丈夫かな?
こんなに私と離れるの、産まれてはじめてだよあの子!
なんだか胸がぎゅっと痛い。
でも、妙な開放感……うん、寝ちゃおう!
早めにチェックインして、お昼寝して、起きたらホテルのカフェでコーヒー飲むんだ!
夕食は19時から元同僚の八重と、ホテルのディナーの予定。
時間はまだ14時。たっぷりあるし……。
「って」
着信の嵐で起きた。
「や、八重ごめん! 寝てた!」
私はホテルのフッカフカのベッドの上、叫んだ。
『わ、大丈夫大丈夫、心配になっただけだから』
「本当にごめんね~!」
こんなに寝ると思わなかった!
時計は19時半。すごい待たせちゃったよ!
「あ、れ?」
ばたん、とリビングの扉が開いて、風呂に入っていたはずの美保がバスタオルを巻いて立っていた。髪からはぽたぽた、と水滴。
「美保? どうした」
ソファに座る、俺の腕の中では生後半年になった美雨がすぴすぴと眠っている。
美保は不思議そうに言った。
「あれ? 美雨、いま泣いてませんでしたか」
「泣いてないぞ」
「……あは」
聞こえた気がして、と美保は苦笑してタオルを巻き直しながら(しなくていいんだけれど、俺的には)脱衣所れ戻っていく。
ぱたむ、と閉まるドアを見ながら、俺はふむと考えた。
(……さすがに疲れているのだろうか)
美雨は相変わらず眠っているけれど──最近、夜泣きをするようになってきた。
「修平さんは仕事があるから」
そう言って、美保は全部自分でやろうとしている。その上に、美雨は最近「ママじゃなきゃダメ期」のような、気がしてる。
(自我の芽生え)
ぷにぷにすべすべの頬をつつく。ヒヨコのような唇がなんとも可愛らしい。
自我の芽生えは、いいのだけれど──美保に負担がかかりすぎている。
「よし、美雨」
小さく、そのぷにぷにを突きながら聞いてみる。
「ママに少し休んでもらっても、いいだろうか」
美雨は知らぬ顔ですぴすぴと眠っていた。
美保に都内のホテル一泊二日の話をすると、目をなんども瞬きさせながら、俺に言う。
「修平さん、それは」
「うん」
「ひと晩眠っていい、ってことなんでしょうか」
「寝てくれ」
美保は、喜びと不安がない混じった不思議な顔で俺を見つめる。
「でも、美雨が……修平さんもお仕事」
「ひと晩の睡眠不足でどうにかなるほどヤワじゃないし……美雨もママがいないなら諦めて寝るかもしれない」
「ですかねぇ」
美雨は、美保の膝の上でお座りしながら、オモチャをペロペロしていた。
※※※
(美保視点)
どうにも修平さんに心配かけている、らしい。
(一泊二日、かぁ)
たまにはゆっくりするのはどうだろう、と提案されて──最初に思いついた「やりたいこと」は「寝る」だった。
美雨が生まれてこっち、4時間以上まとまって眠ったことないかも。
美雨は、どうやらそれでも「まとまって眠る」ほうみたいなんだけれど……。他のお母さんたち、よく死んでないな!? いや大袈裟じゃなくて……。
(3時間おきのミルクが終わったと思ったら、夜泣きなんだものなぁ)
可愛いんだけど、可愛いだけじゃない。でも可愛い。赤ちゃん、複雑すぎる。
泣いてるんじゃないか、今泣くんじゃないか、って勝手にひとり追い込まれて、常に神経が尖ってる気もしてる。
修平さんは多分、……じゃないな。かなり、なんていうか、ちゃんと「当事者意識」あるパパなんだと思う。
それでもどうしたって仕事しているぶん、時間はないし。そもそもが大変なお仕事なのに、負担かけたくないし。
寝不足なせいなのか何なのか、そんな思考がぐるぐるってなっちゃって……。
そんな時に提案された「一泊2日」の自由時間、だった。
「……何したらいいのかな」
土曜日。
お昼寝してる美雨を修平さんにお願いして、とりあえずお買い物(スーパーじゃない)に来てみる。
ひとりで歩くことに、なんだか違和感。ベビーカー押してるか、抱っこ紐に美雨いれてるか、だもん。
(赤ちゃん連れだと難しいことしてみよ!)
カフェにも行こう。
まずは、服とか見たりしてみて……。
(あ、ワンピース。可愛い)
冬物ワンピ。可愛くて、手に取ってみるけど。
(だめだ、おっぱいあげにくい)
美雨はおっぱいとミルクと両方飲んでるけど、なぜか外出先ではミルク拒否が多い。
なぜなの……。
そんなことを考えながらデパートうろうろしてたら、気がついたら赤ちゃん用ワンピース見てたし何なら買っちゃってた。
(だ、だって可愛いんだもん!)
パステルピンクと、キラキラした水色のフリルがついたワンピース。
絶対似合う。
(修平さんのスマホ、また容量いっぱいになっちゃうな)
クラウド保存してるのに、本体から写真も動画も削除したくないらしくて(分かる)すぐスマホがいっぱいになる。
こんな服買ったよ、ってメッセージを送る。すぐに既読にはならない。
(……泣いてる、とか)
美雨、大丈夫かな?
こんなに私と離れるの、産まれてはじめてだよあの子!
なんだか胸がぎゅっと痛い。
でも、妙な開放感……うん、寝ちゃおう!
早めにチェックインして、お昼寝して、起きたらホテルのカフェでコーヒー飲むんだ!
夕食は19時から元同僚の八重と、ホテルのディナーの予定。
時間はまだ14時。たっぷりあるし……。
「って」
着信の嵐で起きた。
「や、八重ごめん! 寝てた!」
私はホテルのフッカフカのベッドの上、叫んだ。
『わ、大丈夫大丈夫、心配になっただけだから』
「本当にごめんね~!」
こんなに寝ると思わなかった!
時計は19時半。すごい待たせちゃったよ!
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