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【高校編】分岐・山ノ内瑛
【番外編】夏の日(下)sideアキラ
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「あんなぁ、華」
きゅ、とその細い腰を抱きしめて、大好きな華の見えてる範囲、全部にキスをする。
オデコ、頬、首、手の甲、指、服から出ててキスできるとこはぜーんぶ。
「なぁに?」
華は頬を赤くしながら、小さく答えた。
「これな……昔、言うてんけど。もっかい、言っとくな?」
「……っ、ごめん」
「ちゃうねん」
華が「自分の記憶がないこと」を責めようとするから、俺はできるだけ落ち着いた声を出して華に言う。
「ちゃうねんで? 華。これは俺が再確認いうか、華とずっとおりたくて華のこと大事で大好きで愛してるから、ちゃんと言葉にしたくてするだけ」
「アキラくん」
「せやからな、多分華の記憶があってもこういう話、またしてたと思うから」
「……ん」
「好きやで、華」
その形のいい耳を、そっと噛んだ。華がびくりと震えて、あーもう、小西サンのくれたアレすら使わず、華の全部全部全部俺のモンにしたい衝動が本能的に湧いてくるけど無視。
せやろ?
だって俺は華が大事。
俺の人生よりよほど大事で、せやから華を幸せにせなあかん。
その時に、……たとえばコドモできたとして、俺が夢とか諦めなあかんくなったら華は自分を責めると思う。
(華のせいやないのにな)
そう思うけれど、華はそういう人間で、多分……今は華自身も忘れとる……初めて会ったとき、あの小学生のときの「あの名前」の「華」(一体誰なんやろ、ま、誰でも華やねんけど)もそういう人間で。
記憶があろうとなかろうと、華はそういうヒトやから、俺はちゃんとせなあかん。
「俺な、責任はちゃんと取りたいねん」
「……うん」
「きっちりしたい。コドモできるよーなことは、結婚してから。俺が華とコドモ養えるようになってから」
「……私も働くよ?」
「そーいう問題ちゃうねん」
可愛い額にキスをして、また抱きしめて。
「俺な、やりたいことたくさんあんねん」
「……私、邪魔?」
「そうやなくて」
記憶がない華は自信がないから、少し不安になりがち。
しゃあないし、全然負担でもない。
「その、やりたいこと達成したりしたときにな、華に横におってて欲しいねん。なおかつ笑ってて欲しいねん」
「うん」
「もし俺が華にコドモできた言うて夢諦めたらな、華、多分責任感じてしまうやろ。華のせいやないのに」
「……、かも」
「そんなんイヤやねん。華にはいっつも幸せで笑ってて欲しいんや」
俺のなんかよぉ分からん説明でも、なんとなく気持ちは伝わったみたいで華は頷く。
「ごめん、ね?」
「ええねん」
華を抱きしめたまま、その日はそうやって眠る。拷問に近かったけど耐えた俺はすごい。
翌朝約束通り、件の水族館へ向かう。
「はぇー、すごい。ペンギン飛んでるみたいー」
前回、高校んときは華が「ここはペンギン飛んでるみたいなんだよ」と教えてくれたここで、初めてみたいに華ははしゃぐ。
「せやなぁ」
手を握ったまま、俺はペンギン水槽を眺める。ほんの少し寂しいような気がして、打ち消した。
またイチから色々楽しめるんや。それでええやんか。
じ、と華が俺を見て、何度か首を傾げた。それから不思議そうに「アキラくんって、目、悪かったっけ?」と呟く。
「? いや?」
「んー、……メガネ、してたよね? 写真でもしてたし。……うん。してた」
華は確信的に頷く。
「それでさ、……あ。そうだ、やきもち。妬いてくれた」
華は嬉しそうに、照れ臭そうに、むず痒そうに言った。
「そーだそーだ。アキラくんは案外やきもち焼きさんだなぁって、私、思ってたんだった」
涙が出そうになる。
華が、記憶のピースを取り戻すたびに。
喜びとはちがう、でも、確かな感情で。
「今もヤキモチ妬きやで?」
「私の方が大変なんだよー」
華はへにゃりと笑う。
「アキラくんすごい人だし、私いつイラナイって言われるか」
「言うわけあらへんやろ」
片手で抱き寄せて、こめかみにキスを落とす。
近くにいた人たちがチラチラ見てるけど、構わへん。
「華。あんまバカなこというと」
びくりと華は俺を見上げた。
「俺が華しか見えてへんって、証明したるぞ? いま、ここで」
「……」
華はきょとんとしたあと、ぐるりと周りを見渡して、それから頬を赤くした。
平日やってのに、人だらけの水族館。観光地やからなぁ。
「……大丈夫、分かってるから」
「ほんまにぃ? よっしゃ証明したろ」
「う、うわわ、いいって! うん! 知ってる! 私、アキラくんに愛されてるって!」
華が俺の腕から逃げ出そうとするから、俺はケタケタ笑いながら華とじゃれる。
華は急に大人しくなって、俺の耳に口を寄せた。
「ねえ」
「ん?」
「あとで、なら、」
華は少し、上目遣い。
「証明して、欲しいな?」
「……」
その場で押し倒さなかった俺を、誰か褒めて欲しい。
透明のアクリル越しに、ペンギンと目があった気がした。がんばれよ、なんで、言われてるような気分になって、俺は苦笑いしながら華を抱きしめた。
きゅ、とその細い腰を抱きしめて、大好きな華の見えてる範囲、全部にキスをする。
オデコ、頬、首、手の甲、指、服から出ててキスできるとこはぜーんぶ。
「なぁに?」
華は頬を赤くしながら、小さく答えた。
「これな……昔、言うてんけど。もっかい、言っとくな?」
「……っ、ごめん」
「ちゃうねん」
華が「自分の記憶がないこと」を責めようとするから、俺はできるだけ落ち着いた声を出して華に言う。
「ちゃうねんで? 華。これは俺が再確認いうか、華とずっとおりたくて華のこと大事で大好きで愛してるから、ちゃんと言葉にしたくてするだけ」
「アキラくん」
「せやからな、多分華の記憶があってもこういう話、またしてたと思うから」
「……ん」
「好きやで、華」
その形のいい耳を、そっと噛んだ。華がびくりと震えて、あーもう、小西サンのくれたアレすら使わず、華の全部全部全部俺のモンにしたい衝動が本能的に湧いてくるけど無視。
せやろ?
だって俺は華が大事。
俺の人生よりよほど大事で、せやから華を幸せにせなあかん。
その時に、……たとえばコドモできたとして、俺が夢とか諦めなあかんくなったら華は自分を責めると思う。
(華のせいやないのにな)
そう思うけれど、華はそういう人間で、多分……今は華自身も忘れとる……初めて会ったとき、あの小学生のときの「あの名前」の「華」(一体誰なんやろ、ま、誰でも華やねんけど)もそういう人間で。
記憶があろうとなかろうと、華はそういうヒトやから、俺はちゃんとせなあかん。
「俺な、責任はちゃんと取りたいねん」
「……うん」
「きっちりしたい。コドモできるよーなことは、結婚してから。俺が華とコドモ養えるようになってから」
「……私も働くよ?」
「そーいう問題ちゃうねん」
可愛い額にキスをして、また抱きしめて。
「俺な、やりたいことたくさんあんねん」
「……私、邪魔?」
「そうやなくて」
記憶がない華は自信がないから、少し不安になりがち。
しゃあないし、全然負担でもない。
「その、やりたいこと達成したりしたときにな、華に横におってて欲しいねん。なおかつ笑ってて欲しいねん」
「うん」
「もし俺が華にコドモできた言うて夢諦めたらな、華、多分責任感じてしまうやろ。華のせいやないのに」
「……、かも」
「そんなんイヤやねん。華にはいっつも幸せで笑ってて欲しいんや」
俺のなんかよぉ分からん説明でも、なんとなく気持ちは伝わったみたいで華は頷く。
「ごめん、ね?」
「ええねん」
華を抱きしめたまま、その日はそうやって眠る。拷問に近かったけど耐えた俺はすごい。
翌朝約束通り、件の水族館へ向かう。
「はぇー、すごい。ペンギン飛んでるみたいー」
前回、高校んときは華が「ここはペンギン飛んでるみたいなんだよ」と教えてくれたここで、初めてみたいに華ははしゃぐ。
「せやなぁ」
手を握ったまま、俺はペンギン水槽を眺める。ほんの少し寂しいような気がして、打ち消した。
またイチから色々楽しめるんや。それでええやんか。
じ、と華が俺を見て、何度か首を傾げた。それから不思議そうに「アキラくんって、目、悪かったっけ?」と呟く。
「? いや?」
「んー、……メガネ、してたよね? 写真でもしてたし。……うん。してた」
華は確信的に頷く。
「それでさ、……あ。そうだ、やきもち。妬いてくれた」
華は嬉しそうに、照れ臭そうに、むず痒そうに言った。
「そーだそーだ。アキラくんは案外やきもち焼きさんだなぁって、私、思ってたんだった」
涙が出そうになる。
華が、記憶のピースを取り戻すたびに。
喜びとはちがう、でも、確かな感情で。
「今もヤキモチ妬きやで?」
「私の方が大変なんだよー」
華はへにゃりと笑う。
「アキラくんすごい人だし、私いつイラナイって言われるか」
「言うわけあらへんやろ」
片手で抱き寄せて、こめかみにキスを落とす。
近くにいた人たちがチラチラ見てるけど、構わへん。
「華。あんまバカなこというと」
びくりと華は俺を見上げた。
「俺が華しか見えてへんって、証明したるぞ? いま、ここで」
「……」
華はきょとんとしたあと、ぐるりと周りを見渡して、それから頬を赤くした。
平日やってのに、人だらけの水族館。観光地やからなぁ。
「……大丈夫、分かってるから」
「ほんまにぃ? よっしゃ証明したろ」
「う、うわわ、いいって! うん! 知ってる! 私、アキラくんに愛されてるって!」
華が俺の腕から逃げ出そうとするから、俺はケタケタ笑いながら華とじゃれる。
華は急に大人しくなって、俺の耳に口を寄せた。
「ねえ」
「ん?」
「あとで、なら、」
華は少し、上目遣い。
「証明して、欲しいな?」
「……」
その場で押し倒さなかった俺を、誰か褒めて欲しい。
透明のアクリル越しに、ペンギンと目があった気がした。がんばれよ、なんで、言われてるような気分になって、俺は苦笑いしながら華を抱きしめた。
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