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【高校編】分岐・黒田健
掲示板
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クリスマスまで、あと数日。
(プレゼント、なんにしようかな)
気がついたら黒田くんと暮らしてたーーって、迷惑じゃないかな迷惑だよねごめんなさいと思いつつ、……どうしようもなかった。
(怖くて)
特に、夜になると、怖くて、怖くて……黒田くんにしがみついてると、何とか眠れる。
(せめてものお礼)
黒田くんだけにじゃなくて、おとうさんとおかあさんにも。なにやら食費はいただいてるから気にしないで、とは言ってもらえるものの。
そんなことを考えながら学校へ行くと、明らかにみんなの目がそわそわしてる。
「?」
目が合うと、逸らされる。
「んん?」
靴箱に靴をいれて、廊下を歩いてーーちらちら、と皆私を見ていた。
「あれー?」
「華ちゃん」
千晶ちゃんの声に振り向く。
「あ、千晶ちゃん。おはよ」
「おはよ、って……大丈夫?」
「大丈夫? なにが?」
私の答えに、千晶ちゃんは少し驚いた顔をして、それから私の手を引く。
「なるほど、知らなかったのね」
「なにが? なんかあったの?」
「あのね、……これ」
校内の、掲示板。
そこに貼られていたのは……私と黒田くんの写真だ。
(近所のスーパー?)
黒田くん家の近くの。
一緒に買い物してるところが撮られてる。それが何枚か、と。帰り道、手を繋いでいる写真、と。
「……わー」
その下には「設楽華はビッチ」「婚約者がいるにも関わらず」とか、そんな文字が印刷されたA4サイズの紙。
「わー、じゃないよ華ちゃん。大丈夫?」
「ん?」
千晶ちゃんを見て首を傾げた。
ど、どうなんだろう……。
周りはざわつきながら私を見ている。
(別に、悪いことはしてないんだけどなぁ)
浮気もなにもしてませんしですし、ビッチもなにも、黒田くん以外とそのようなことはしたいとも思わないし。
(……そろそろ身体委ねてくれてもいいと思うんですけどねうへへへ)
……しまった脳内で何か暴れてた。うん、とりあえず落ち着いて。
でも、対外的にどうなんだろう。
これって、樹くんに迷惑になったりするのかなぁ。
(……どうしてこう、私は)
周りに迷惑かけまくっちゃうんだろう。
ふ、と横に大きな影が立つ。
「? あ、樹くん」
樹くんは苦笑いしていた。
「黒田が撮られてることに気がつかんとは」
「?」
「手練れの可能性があるな」
「て、手練れ……?」
「あるいはプロか」
「プロ?」
「どちらにせよ、尾行にも盗撮にも慣れているということだ」
「はぁ……」
私は写真を見つめる。
(……てっきり、青花かと)
私に嫌がらせする人間が、ほかに思い浮かばない。
知らないところで恨まれてたら別だけれど、特に何かした記憶、ないんだけどなぁ……何かしちゃったかなぁ。
「どちらにせよ解散だ」
樹くんは掲示板から写真と紙をさっさと毟り取った。
「解散」
くるり、と振り返ってそう告げる。
興味津々に私たちを見つめていた生徒たちは、クモの子を散らすように去って行く。
「さすが生徒会長」
千晶ちゃんが感心したように言った。
「褒めてもなにも出んぞ」
苦笑して、樹くんは歩き出す。
歩きながら、眉根をきゅっと寄せて、その写真を眺めている。何かを探しているような、そんな視線で。
委員会の会議(視線が痛かった)をして帰宅(黒田くんの家)すると、今日はだれもいなかった。
お父さんはいつも不規則だし、お母さんは今日は日勤だとは思うけれど……残業とかも結構あるみたいだ。
(大変だなぁ)
産婦人科で助産師さんをしてるらしい。
いまこの瞬間も、赤ちゃん産まれてるのかな。なんだか、すごいなぁ。
さて。
「ご飯作ろうっと」
なんだか慣れてきたそんな作業。エプロン(私用に、ってお母さんが買ってくれた)をつけてキッチンに立つ。
冷蔵庫を開ける。昨日買ったひき肉がありますねぇ。
「麻婆茄子か麻婆豆腐か」
ううん、と悩む。ナスもお豆腐もあるのですよ。
結局なやんで、麻婆茄子にしてお豆腐はお味噌汁、ってしてると黒田くんが帰宅した。
「おかえり~」
「設楽」
少し、怖い顔。
どうしたの? って首を傾げると、ぎゅうぎゅう抱きしめられた。ひんやりしてる詰襟学生服。
(コートとか着ないんだから元気だよねぇ)
……って、そんなのは置いておいて。
「ど、どうしたの?」
力強い腕からぷは、と顔を上げて黒田くんを見つめる。
「悪い。気がつかなかった」
「えーと、なにが?」
「俺も浮かれてた」
「???」
「あの人はなにしてたんだ」
「あの人?」
混乱してる私に、黒田くんは申し訳なさそうに言う。
「写真、撮られてたんだろ」
「……あ、あー。樹くんに聞いたの?」
黒田くんは頷いたあと、私を抱きしめ直して吐き出すように言う。
「学校行かせたくねー」
「お、大げさじゃない?」
「んなことねーよ……」
はあ、とため息。
「マジで済まん」
「黒田くんのせいじゃないような気が……」
ていうか、ちがうよね?
私はそう思いながらも、ぎゅうぎゅうされるのが心地良くて、しばらく抱きしめてもらっていたのでした。
(プレゼント、なんにしようかな)
気がついたら黒田くんと暮らしてたーーって、迷惑じゃないかな迷惑だよねごめんなさいと思いつつ、……どうしようもなかった。
(怖くて)
特に、夜になると、怖くて、怖くて……黒田くんにしがみついてると、何とか眠れる。
(せめてものお礼)
黒田くんだけにじゃなくて、おとうさんとおかあさんにも。なにやら食費はいただいてるから気にしないで、とは言ってもらえるものの。
そんなことを考えながら学校へ行くと、明らかにみんなの目がそわそわしてる。
「?」
目が合うと、逸らされる。
「んん?」
靴箱に靴をいれて、廊下を歩いてーーちらちら、と皆私を見ていた。
「あれー?」
「華ちゃん」
千晶ちゃんの声に振り向く。
「あ、千晶ちゃん。おはよ」
「おはよ、って……大丈夫?」
「大丈夫? なにが?」
私の答えに、千晶ちゃんは少し驚いた顔をして、それから私の手を引く。
「なるほど、知らなかったのね」
「なにが? なんかあったの?」
「あのね、……これ」
校内の、掲示板。
そこに貼られていたのは……私と黒田くんの写真だ。
(近所のスーパー?)
黒田くん家の近くの。
一緒に買い物してるところが撮られてる。それが何枚か、と。帰り道、手を繋いでいる写真、と。
「……わー」
その下には「設楽華はビッチ」「婚約者がいるにも関わらず」とか、そんな文字が印刷されたA4サイズの紙。
「わー、じゃないよ華ちゃん。大丈夫?」
「ん?」
千晶ちゃんを見て首を傾げた。
ど、どうなんだろう……。
周りはざわつきながら私を見ている。
(別に、悪いことはしてないんだけどなぁ)
浮気もなにもしてませんしですし、ビッチもなにも、黒田くん以外とそのようなことはしたいとも思わないし。
(……そろそろ身体委ねてくれてもいいと思うんですけどねうへへへ)
……しまった脳内で何か暴れてた。うん、とりあえず落ち着いて。
でも、対外的にどうなんだろう。
これって、樹くんに迷惑になったりするのかなぁ。
(……どうしてこう、私は)
周りに迷惑かけまくっちゃうんだろう。
ふ、と横に大きな影が立つ。
「? あ、樹くん」
樹くんは苦笑いしていた。
「黒田が撮られてることに気がつかんとは」
「?」
「手練れの可能性があるな」
「て、手練れ……?」
「あるいはプロか」
「プロ?」
「どちらにせよ、尾行にも盗撮にも慣れているということだ」
「はぁ……」
私は写真を見つめる。
(……てっきり、青花かと)
私に嫌がらせする人間が、ほかに思い浮かばない。
知らないところで恨まれてたら別だけれど、特に何かした記憶、ないんだけどなぁ……何かしちゃったかなぁ。
「どちらにせよ解散だ」
樹くんは掲示板から写真と紙をさっさと毟り取った。
「解散」
くるり、と振り返ってそう告げる。
興味津々に私たちを見つめていた生徒たちは、クモの子を散らすように去って行く。
「さすが生徒会長」
千晶ちゃんが感心したように言った。
「褒めてもなにも出んぞ」
苦笑して、樹くんは歩き出す。
歩きながら、眉根をきゅっと寄せて、その写真を眺めている。何かを探しているような、そんな視線で。
委員会の会議(視線が痛かった)をして帰宅(黒田くんの家)すると、今日はだれもいなかった。
お父さんはいつも不規則だし、お母さんは今日は日勤だとは思うけれど……残業とかも結構あるみたいだ。
(大変だなぁ)
産婦人科で助産師さんをしてるらしい。
いまこの瞬間も、赤ちゃん産まれてるのかな。なんだか、すごいなぁ。
さて。
「ご飯作ろうっと」
なんだか慣れてきたそんな作業。エプロン(私用に、ってお母さんが買ってくれた)をつけてキッチンに立つ。
冷蔵庫を開ける。昨日買ったひき肉がありますねぇ。
「麻婆茄子か麻婆豆腐か」
ううん、と悩む。ナスもお豆腐もあるのですよ。
結局なやんで、麻婆茄子にしてお豆腐はお味噌汁、ってしてると黒田くんが帰宅した。
「おかえり~」
「設楽」
少し、怖い顔。
どうしたの? って首を傾げると、ぎゅうぎゅう抱きしめられた。ひんやりしてる詰襟学生服。
(コートとか着ないんだから元気だよねぇ)
……って、そんなのは置いておいて。
「ど、どうしたの?」
力強い腕からぷは、と顔を上げて黒田くんを見つめる。
「悪い。気がつかなかった」
「えーと、なにが?」
「俺も浮かれてた」
「???」
「あの人はなにしてたんだ」
「あの人?」
混乱してる私に、黒田くんは申し訳なさそうに言う。
「写真、撮られてたんだろ」
「……あ、あー。樹くんに聞いたの?」
黒田くんは頷いたあと、私を抱きしめ直して吐き出すように言う。
「学校行かせたくねー」
「お、大げさじゃない?」
「んなことねーよ……」
はあ、とため息。
「マジで済まん」
「黒田くんのせいじゃないような気が……」
ていうか、ちがうよね?
私はそう思いながらも、ぎゅうぎゅうされるのが心地良くて、しばらく抱きしめてもらっていたのでした。
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