416 / 702
【高校編】分岐・山ノ内瑛
変装クリスマス
しおりを挟む
お外デートがしたいです。
言い出したのは、私の方だった。
「んー、でももし見られたら色々噂立つで?」
「うん」
それは分かってるんだけどね。
(私が色々言われるのは慣れてるけど)
うーん、と考える。
アキラくん巻き込むのは、何かなぁ。
そう思ってたら、デコピンされた。
「わ」
「俺は全く気にせえへんし、むしろ噂になるとか嬉しすぎるねんけど?」
「あは」
そうは言っても、なんだかね。
そんなわけで、学校がお休みのクリスマス当日。
プチ変装して、デートすることになりました。
「変?」
「いや、可愛い」
真剣な顔でそう言ってくれるのは、待ち合わせの都内の駅で合流した、アキラくんで。
(横浜だと学校の人に遭遇する確率上がりそうで、東京まで出てきてみたんだけど)
首をかしげる。
すっごい人出だなぁ、もう。
「クリスマスだからかなぁ」
「さー。東京やからなぁ」
いちおう、暦の上では平日なんだけれどな。
アキラくんは眼鏡に帽子。
私は茶髪のウイッグでロングヘアーになってみました。ゆるゆるパーマ。
正面から顔を見られたらバレるけれど、さっと通り過ぎたくらいじゃ気付かれないと思う。
……ていうか!
「アキラくん」
「なん?」
「めがね、似合うねっ」
私はお子様スマホでぱしゃばしゃとアキラくんを撮影する。うー、好きすぎて。
「ほんま? 賢こそーに見える?」
「見える見える」
「ふっふ」
アキラくんは笑って、私のこともスマホで撮り始める。
「華も可愛い。なんつうか、アレや。おねーさんって感じや」
「そかな?」
首を傾げた私の手を、アキラくんはするりと繋いだ。
ペアリングをつけてる左手で、私の右手をきゅうと握ってくれる。もちろん私も、左手にはペアリング。
(わー)
少し感動してしまう。
なんていうか、ほんとにデートっぽい!
……や、デートなんですけど。ね。
「ほな、いこかー。何したいんやっけ?」
「あのねあのね」
私は笑う。
「水族館!」
私とアキラくんが向かったのは、なんていうかデートの定番なんだと思う、都内の水族館です。ビルの上にある、珍しい(と思う)水族館。
「初めて来たわ」
「ここ面白いんだよー」
この水族館は、「前世の記憶」と同じだった。細部は違うのかもしれないけれど、まぁどちらにせよあまり覚えていないし。
「ペンギンが飛んでるみたいで」
「ふうん?」
少しだけ、手に力が入る。
「?」
「あんなー、めちゃくちゃかっこ悪いこと言うで俺」
「? うん」
「……誰と、来たん?」
ビルのエレベーターを降りて、水族館へ向かう廊下。
少し薄暗いそこで、アキラくんは少しだけ、不安そうだった。
「えっ、あ、あのね、普通にお母さんだよ」
前世の、だけど。
「あー」
アキラくんは困り顔。
「ほんまごめん。最近、なんか、アレなんや、なんつうかな」
繋いだ手で、指を動かして、私の手のひらを指で撫でる。
「やきもちとか凄いんや」
「あのさ」
私は首を傾げた。
「もしかして、何かすっごい不安にさせてる? だとしたら」
「や、ちゃうねん。ごめん」
気を取り直したように、アキラくんは手を繋ぎ直す。
「いこ」
「でも」
「デートやん」
アキラくんは、にかっと笑った。
「楽しまなあかんで?」
そこからは、いつも通りのアキラくんと、めちゃくちゃ楽しいデートだった。
「水族館、神戸のぶりだよね」
「な。あそこ、改装するらしいわ」
新しくなったらまた行こうな、とアキラくんは笑ってくれる。私も頷いた。
屋上にある、屋外の水槽でペリカンが泳ぐ。
(飛んでいかないものかなぁ)
逃げられそうな気もする……。
って話をアキラくんにしたらなんだか笑われてしまった。
「どっちのほうが幸せなんやろな、とか思わへん?」
水族館を出て、人混みを歩きながらアキラくんは言う。
「? どっち?」
「んー。人に飼われて、三食困らんで。病気になっても医者に診てもらえて、でも水槽から出られへん一生か、自由に野生で生きていくんか」
「水族館」
私は即答した。
「野生とか、無理。ご飯食べらんないとか考えられない」
私の答えに、アキラくんは思い切り吹き出す。
「な、なんで笑うの」
「華らしいわ」
ケタケタと肩を揺らしているアキラくんが、ふ、と真剣な顔になった。
真剣な、っていうか、怖い顔。
「え、アキラくん?」
「こっち」
アキラくんは近くのカフェに、私を引きずりこむ。
「どうしたの?」
カウンターで注文しながら、私は首を傾げた。
「……桜澤おる」
はめ殺しの大きなガラス越しに、アキラくんは眉をひそめて通りを見つめていた。
「げ!?」
思わず変な声出た……。げ、だよー。
(なんでいるの……)
よりにもよって、わざわざ遠出したとこで、それもクリスマスに遭遇しなくたって、さー。
「ま、しばらくここでやり過ごしてしまお。ほんで駅も移動しよか」
「そだね」
もうすこしこの辺でしたいことあったけど、仕方ない。
「どこ行こう?」
「せやなぁ」
注文したドリンク2つを手に、アキラくんと空いてる席に座る。窓が見える席で、アキラくんはちらりと通りに目をやっていた。
「ほんま、なんでおるんやろ……つか移動せえへんな」
腹立つわー、とあったかなブラックコーヒーを飲みながら言うアキラくんの視線の先を、ちらちらと私も探す。
(あ、いた)
暖かそうなダッフルコートに身を包んだ青花は、なんていうか、清純そうですごく可愛い。
「なにしてるんやろ」
「さぁ」
人を待ってるふうだけれど、と私は首を傾げた。
言い出したのは、私の方だった。
「んー、でももし見られたら色々噂立つで?」
「うん」
それは分かってるんだけどね。
(私が色々言われるのは慣れてるけど)
うーん、と考える。
アキラくん巻き込むのは、何かなぁ。
そう思ってたら、デコピンされた。
「わ」
「俺は全く気にせえへんし、むしろ噂になるとか嬉しすぎるねんけど?」
「あは」
そうは言っても、なんだかね。
そんなわけで、学校がお休みのクリスマス当日。
プチ変装して、デートすることになりました。
「変?」
「いや、可愛い」
真剣な顔でそう言ってくれるのは、待ち合わせの都内の駅で合流した、アキラくんで。
(横浜だと学校の人に遭遇する確率上がりそうで、東京まで出てきてみたんだけど)
首をかしげる。
すっごい人出だなぁ、もう。
「クリスマスだからかなぁ」
「さー。東京やからなぁ」
いちおう、暦の上では平日なんだけれどな。
アキラくんは眼鏡に帽子。
私は茶髪のウイッグでロングヘアーになってみました。ゆるゆるパーマ。
正面から顔を見られたらバレるけれど、さっと通り過ぎたくらいじゃ気付かれないと思う。
……ていうか!
「アキラくん」
「なん?」
「めがね、似合うねっ」
私はお子様スマホでぱしゃばしゃとアキラくんを撮影する。うー、好きすぎて。
「ほんま? 賢こそーに見える?」
「見える見える」
「ふっふ」
アキラくんは笑って、私のこともスマホで撮り始める。
「華も可愛い。なんつうか、アレや。おねーさんって感じや」
「そかな?」
首を傾げた私の手を、アキラくんはするりと繋いだ。
ペアリングをつけてる左手で、私の右手をきゅうと握ってくれる。もちろん私も、左手にはペアリング。
(わー)
少し感動してしまう。
なんていうか、ほんとにデートっぽい!
……や、デートなんですけど。ね。
「ほな、いこかー。何したいんやっけ?」
「あのねあのね」
私は笑う。
「水族館!」
私とアキラくんが向かったのは、なんていうかデートの定番なんだと思う、都内の水族館です。ビルの上にある、珍しい(と思う)水族館。
「初めて来たわ」
「ここ面白いんだよー」
この水族館は、「前世の記憶」と同じだった。細部は違うのかもしれないけれど、まぁどちらにせよあまり覚えていないし。
「ペンギンが飛んでるみたいで」
「ふうん?」
少しだけ、手に力が入る。
「?」
「あんなー、めちゃくちゃかっこ悪いこと言うで俺」
「? うん」
「……誰と、来たん?」
ビルのエレベーターを降りて、水族館へ向かう廊下。
少し薄暗いそこで、アキラくんは少しだけ、不安そうだった。
「えっ、あ、あのね、普通にお母さんだよ」
前世の、だけど。
「あー」
アキラくんは困り顔。
「ほんまごめん。最近、なんか、アレなんや、なんつうかな」
繋いだ手で、指を動かして、私の手のひらを指で撫でる。
「やきもちとか凄いんや」
「あのさ」
私は首を傾げた。
「もしかして、何かすっごい不安にさせてる? だとしたら」
「や、ちゃうねん。ごめん」
気を取り直したように、アキラくんは手を繋ぎ直す。
「いこ」
「でも」
「デートやん」
アキラくんは、にかっと笑った。
「楽しまなあかんで?」
そこからは、いつも通りのアキラくんと、めちゃくちゃ楽しいデートだった。
「水族館、神戸のぶりだよね」
「な。あそこ、改装するらしいわ」
新しくなったらまた行こうな、とアキラくんは笑ってくれる。私も頷いた。
屋上にある、屋外の水槽でペリカンが泳ぐ。
(飛んでいかないものかなぁ)
逃げられそうな気もする……。
って話をアキラくんにしたらなんだか笑われてしまった。
「どっちのほうが幸せなんやろな、とか思わへん?」
水族館を出て、人混みを歩きながらアキラくんは言う。
「? どっち?」
「んー。人に飼われて、三食困らんで。病気になっても医者に診てもらえて、でも水槽から出られへん一生か、自由に野生で生きていくんか」
「水族館」
私は即答した。
「野生とか、無理。ご飯食べらんないとか考えられない」
私の答えに、アキラくんは思い切り吹き出す。
「な、なんで笑うの」
「華らしいわ」
ケタケタと肩を揺らしているアキラくんが、ふ、と真剣な顔になった。
真剣な、っていうか、怖い顔。
「え、アキラくん?」
「こっち」
アキラくんは近くのカフェに、私を引きずりこむ。
「どうしたの?」
カウンターで注文しながら、私は首を傾げた。
「……桜澤おる」
はめ殺しの大きなガラス越しに、アキラくんは眉をひそめて通りを見つめていた。
「げ!?」
思わず変な声出た……。げ、だよー。
(なんでいるの……)
よりにもよって、わざわざ遠出したとこで、それもクリスマスに遭遇しなくたって、さー。
「ま、しばらくここでやり過ごしてしまお。ほんで駅も移動しよか」
「そだね」
もうすこしこの辺でしたいことあったけど、仕方ない。
「どこ行こう?」
「せやなぁ」
注文したドリンク2つを手に、アキラくんと空いてる席に座る。窓が見える席で、アキラくんはちらりと通りに目をやっていた。
「ほんま、なんでおるんやろ……つか移動せえへんな」
腹立つわー、とあったかなブラックコーヒーを飲みながら言うアキラくんの視線の先を、ちらちらと私も探す。
(あ、いた)
暖かそうなダッフルコートに身を包んだ青花は、なんていうか、清純そうですごく可愛い。
「なにしてるんやろ」
「さぁ」
人を待ってるふうだけれど、と私は首を傾げた。
0
お気に入りに追加
3,084
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢なので舞台である学園に行きません!
神々廻
恋愛
ある日、前世でプレイしていた乙女ゲーに転生した事に気付いたアリサ・モニーク。この乙女ゲーは悪役令嬢にハッピーエンドはない。そして、ことあるイベント事に死んでしまう.......
だが、ここは乙女ゲーの世界だが自由に動ける!よし、学園に行かなければ婚約破棄はされても死にはしないのでは!?
全8話完結 完結保証!!
【完結】死がふたりを分かつとも
杜野秋人
恋愛
「捕らえよ!この女は地下牢へでも入れておけ!」
私の命を受けて会場警護の任に就いていた騎士たちが動き出し、またたく間に驚く女を取り押さえる。そうして引っ立てられ連れ出される姿を見ながら、私は心の中だけでそっと安堵の息を吐く。
ああ、やった。
とうとうやり遂げた。
これでもう、彼女を脅かす悪役はいない。
私は晴れて、彼女を輝かしい未来へ進ませることができるんだ。
自分が前世で大ヒットしてTVアニメ化もされた、乙女ゲームの世界に転生していると気づいたのは6歳の時。以来、前世での最推しだった悪役令嬢を救うことが人生の指針になった。
彼女は、悪役令嬢は私の婚約者となる。そして学園の卒業パーティーで断罪され、どのルートを辿っても悲惨な最期を迎えてしまう。
それを回避する方法はただひとつ。本来なら初回クリア後でなければ解放されない“悪役令嬢ルート”に進んで、“逆ざまあ”でクリアするしかない。
やれるかどうか何とも言えない。
だがやらなければ彼女に待っているのは“死”だ。
だから彼女は、メイン攻略対象者の私が、必ず救う⸺!
◆男性(王子)主人公の乙女ゲーもの。主人公は転生者です。
詳しく設定を作ってないので、固有名詞はありません。
◆全10話で完結予定。毎日1話ずつ投稿します。
1話あたり2000字〜3000字程度でサラッと読めます。
◆公開初日から恋愛ランキング入りしました!ありがとうございます!
◆この物語は小説家になろうでも同時投稿します。
使えないと言われ続けた悪役令嬢のその後
有木珠乃
恋愛
アベリア・ハイドフェルド公爵令嬢は「使えない」悪役令嬢である。
乙女ゲームの悪役令嬢に転生したのに、最低限の義務である、王子の婚約者にすらなれなったほどの。
だから簡単に、ヒロインは王子の婚約者の座を得る。
それを見た父、ハイドフェルド公爵は怒り心頭でアベリアを修道院へ行くように命じる。
王子の婚約者にもなれず、断罪やざまぁもされていないのに、修道院!?
けれど、そこには……。
※この作品は小説家になろう、カクヨム、エブリスタにも投稿しています。
悪役令嬢に転生したら手遅れだったけど悪くない
おこめ
恋愛
アイリーン・バルケスは断罪の場で記憶を取り戻した。
どうせならもっと早く思い出せたら良かったのに!
あれ、でも意外と悪くないかも!
断罪され婚約破棄された令嬢のその後の日常。
※うりぼう名義の「悪役令嬢婚約破棄諸々」に掲載していたものと同じものです。
未来の記憶を手に入れて~婚約破棄された瞬間に未来を知った私は、受け入れて逃げ出したのだが~
キョウキョウ
恋愛
リムピンゼル公爵家の令嬢であるコルネリアはある日突然、ヘルベルト王子から婚約を破棄すると告げられた。
その瞬間にコルネリアは、処刑されてしまった数々の未来を見る。
絶対に死にたくないと思った彼女は、婚約破棄を快く受け入れた。
今後は彼らに目をつけられないよう、田舎に引きこもって地味に暮らすことを決意する。
それなのに、王子の周りに居た人達が次々と私に求婚してきた!?
※カクヨムにも掲載中の作品です。
魔性の悪役令嬢らしいですが、男性が苦手なのでご期待にそえません!
蒼乃ロゼ
恋愛
「リュミネーヴァ様は、いろんな殿方とご経験のある、魔性の女でいらっしゃいますから!」
「「……は?」」
どうやら原作では魔性の女だったらしい、リュミネーヴァ。
しかし彼女の中身は、前世でストーカーに命を絶たれ、乙女ゲーム『光が世界を満たすまで』通称ヒカミタの世界に転生してきた人物。
前世での最期の記憶から、男性が苦手。
初めは男性を目にするだけでも体が震えるありさま。
リュミネーヴァが具体的にどんな悪行をするのか分からず、ただ自分として、在るがままを生きてきた。
当然、物語が原作どおりにいくはずもなく。
おまけに実は、本編前にあたる時期からフラグを折っていて……?
攻略キャラを全力回避していたら、魔性違いで謎のキャラから溺愛モードが始まるお話。
ファンタジー要素も多めです。
※なろう様にも掲載中
※短編【転生先は『乙女ゲーでしょ』~】の元ネタです。どちらを先に読んでもお話は分かりますので、ご安心ください。
悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない
陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」
デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。
そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。
いつの間にかパトロンが大量発生していた。
ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?
シナリオ通り追放されて早死にしましたが幸せでした
黒姫
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました。神様によると、婚約者の王太子に断罪されて極北の修道院に幽閉され、30歳を前にして死んでしまう設定は変えられないそうです。さて、それでも幸せになるにはどうしたら良いでしょうか?(2/16 完結。カテゴリーを恋愛に変更しました。)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる