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【高校編】分岐・山ノ内瑛
やきもちと進路
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「華」
待ってた声に嬉しくて振り向くと、その瞬間に唇を塞がれた。
「んむっ?」
いや、なんていうか、我ながら色気のない声だけれども……!
色気の有無は関係ないのか、アキラくんの舌はするりと私の口腔へ入ってくる。
「ん」
思わず上がる変な声に赤面しつつ、アキラくんの制服を強く握る。
後頭部を支えられて、角度を変えられながら、アキラくんの舌は丁寧に丁寧に、私の口腔を侵して行く。
力が抜けそうになる私を支えながら、ずるずると私たちは床に座り込む。
それでもアキラくんは私から唇を離さない。
舌を噛まれて、その甘い痛みに身体が跳ねる。アキラくんが楽しげに笑う。
「気持ちい?」
「……うん」
とろんとした頭で、なんとかそう答えた。
(どーしちゃったんだろ)
急に、こんな。
そんなご気分?
アキラくんの唇が、首元に寄せられる。それから、耳へ。
甘噛みされて、漏れ出そうになる声を我慢してると、耳元でささやくように言われる。
「部活のやつらがなー」
「? うん」
「こっそり噂しててん」
「なにを?」
「設楽先輩と鹿王院先輩はお似合いやし、許婚云々なくても、結婚するんちゃう? って」
「え」
思わず顔を上げて、アキラくんの視線とぶつかる。
「生徒会室で、よう2人でいるとか」
「そ、それは」
違うよ、って声はキスに塞がれる。
「知ってる。せやけど、やきもち」
苦笑いしながら、アキラくんは私の頬にそっとキスを落とす。
「ごめんな。意地悪してもた」
「……ううん」
私の言葉に、アキラくんはにやりと笑った。
「せやんな、気持ちよさそーやったもんな」
「も、もう」
つん、と頤をそらすと「ごめんごめん」とこめかみにキス。
「可愛いんやもん」
しゃーないやんけ、とアキラくんは笑った。
椅子に座り直して、私は今日の出来事を話す。
「飛び級!?」
「そう」
「ほえーん」
そんなんあるんや、とアキラくんは面白そうに言った。
「さすがやなー、勉強頑張ってたもんな」
「うん……で、どうしようかなって」
「? 受けたらええやん」
ええ話なんやろ? とアキラくんは首をかしげる。
「でも、遠距離とかなったら、……嫌」
しんじゃう、と私が言うとアキラくんは笑った。
「心配せえへんでも、そんな遠距離とかならへんよ。俺、いま話もろうてんの都内の大学やわ」
「え、あ、そうなの?」
アメリカは? と聞くとアキラくんはかたをすくめる。
「実はな、あってん。話」
「うっ、そ」
私は思わず立ち上がりかけた。それって、それって、すごいんじゃないの!?
「せやけど断った」
「な、なんで!?」
もしかして私のせい!? と半ばパニックになる私の鼻を、アキラくんは摘む。
「華のせいちゃうで? 俺な、勉強したいことできてん」
「勉強?」
私は首をかしげるーーそれで、最近勉強頑張ってたのか!
「何の勉強したいの?」
私の言葉に、アキラくんは苦笑して、それから少し真剣な顔になる。
「ええか、華。俺は別に親父に憧れてとか、親父の背中を見てとか、そんな理由じゃないねんで?」
「……え、法律?」
アキラくんのお父さんは検事さんだ。
(わー!)
小さく拍手。バスケ選手って夢と、検事さんって夢と。両立って絶対大変なんだろうけど……!
「どうなるか分からへんで? 優先はバスケやし、俺」
「うん。両方応援する」
「ちなみに」
アキラくんは首を傾げた。
「華はなんの勉強すんの、大学で」
「えーと。枠があるのが、生物系みたい」
さらっとしか言われてないけど、バイオの研究、みたいな話だった。
「生物応用学科」
「難しそーやな」
「そうかな」
楽しそうだよ、と私は答えた。法律のあのややこしい条文(何言ってるか分からない)より、いいと思うんだけれどなぁ。
「食品関係の資格も取れるらしくて」
「へえ」
「わりと、興味あり、かも」
うん、と私はうなずく。
「この話、受けてみる」
「おう、いけいけ。失敗しても死にはせえへん」
「だね」
顔を見合わせて笑う。
「あ、少し先やけど」
「うん」
「またクリスマス、うち来ぃひん?」
「行く!」
勢い良く答えて、アキラくんはそれで笑って。
クリスマスも、大学も、その先も、楽しいことでいっぱいだと、この時の私はそう信じていた。
疑いもしていなかった。
待ってた声に嬉しくて振り向くと、その瞬間に唇を塞がれた。
「んむっ?」
いや、なんていうか、我ながら色気のない声だけれども……!
色気の有無は関係ないのか、アキラくんの舌はするりと私の口腔へ入ってくる。
「ん」
思わず上がる変な声に赤面しつつ、アキラくんの制服を強く握る。
後頭部を支えられて、角度を変えられながら、アキラくんの舌は丁寧に丁寧に、私の口腔を侵して行く。
力が抜けそうになる私を支えながら、ずるずると私たちは床に座り込む。
それでもアキラくんは私から唇を離さない。
舌を噛まれて、その甘い痛みに身体が跳ねる。アキラくんが楽しげに笑う。
「気持ちい?」
「……うん」
とろんとした頭で、なんとかそう答えた。
(どーしちゃったんだろ)
急に、こんな。
そんなご気分?
アキラくんの唇が、首元に寄せられる。それから、耳へ。
甘噛みされて、漏れ出そうになる声を我慢してると、耳元でささやくように言われる。
「部活のやつらがなー」
「? うん」
「こっそり噂しててん」
「なにを?」
「設楽先輩と鹿王院先輩はお似合いやし、許婚云々なくても、結婚するんちゃう? って」
「え」
思わず顔を上げて、アキラくんの視線とぶつかる。
「生徒会室で、よう2人でいるとか」
「そ、それは」
違うよ、って声はキスに塞がれる。
「知ってる。せやけど、やきもち」
苦笑いしながら、アキラくんは私の頬にそっとキスを落とす。
「ごめんな。意地悪してもた」
「……ううん」
私の言葉に、アキラくんはにやりと笑った。
「せやんな、気持ちよさそーやったもんな」
「も、もう」
つん、と頤をそらすと「ごめんごめん」とこめかみにキス。
「可愛いんやもん」
しゃーないやんけ、とアキラくんは笑った。
椅子に座り直して、私は今日の出来事を話す。
「飛び級!?」
「そう」
「ほえーん」
そんなんあるんや、とアキラくんは面白そうに言った。
「さすがやなー、勉強頑張ってたもんな」
「うん……で、どうしようかなって」
「? 受けたらええやん」
ええ話なんやろ? とアキラくんは首をかしげる。
「でも、遠距離とかなったら、……嫌」
しんじゃう、と私が言うとアキラくんは笑った。
「心配せえへんでも、そんな遠距離とかならへんよ。俺、いま話もろうてんの都内の大学やわ」
「え、あ、そうなの?」
アメリカは? と聞くとアキラくんはかたをすくめる。
「実はな、あってん。話」
「うっ、そ」
私は思わず立ち上がりかけた。それって、それって、すごいんじゃないの!?
「せやけど断った」
「な、なんで!?」
もしかして私のせい!? と半ばパニックになる私の鼻を、アキラくんは摘む。
「華のせいちゃうで? 俺な、勉強したいことできてん」
「勉強?」
私は首をかしげるーーそれで、最近勉強頑張ってたのか!
「何の勉強したいの?」
私の言葉に、アキラくんは苦笑して、それから少し真剣な顔になる。
「ええか、華。俺は別に親父に憧れてとか、親父の背中を見てとか、そんな理由じゃないねんで?」
「……え、法律?」
アキラくんのお父さんは検事さんだ。
(わー!)
小さく拍手。バスケ選手って夢と、検事さんって夢と。両立って絶対大変なんだろうけど……!
「どうなるか分からへんで? 優先はバスケやし、俺」
「うん。両方応援する」
「ちなみに」
アキラくんは首を傾げた。
「華はなんの勉強すんの、大学で」
「えーと。枠があるのが、生物系みたい」
さらっとしか言われてないけど、バイオの研究、みたいな話だった。
「生物応用学科」
「難しそーやな」
「そうかな」
楽しそうだよ、と私は答えた。法律のあのややこしい条文(何言ってるか分からない)より、いいと思うんだけれどなぁ。
「食品関係の資格も取れるらしくて」
「へえ」
「わりと、興味あり、かも」
うん、と私はうなずく。
「この話、受けてみる」
「おう、いけいけ。失敗しても死にはせえへん」
「だね」
顔を見合わせて笑う。
「あ、少し先やけど」
「うん」
「またクリスマス、うち来ぃひん?」
「行く!」
勢い良く答えて、アキラくんはそれで笑って。
クリスマスも、大学も、その先も、楽しいことでいっぱいだと、この時の私はそう信じていた。
疑いもしていなかった。
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