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【高校編】分岐・鹿王院樹
三者三様【三人称視点】【side青花】【side華】
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【三人称視点】
ひそやかに、集まって話す数人の女の子。揃いの白い制服。ひとりの髪は、少しだけ茶色い。
「ねえ、設楽先輩と鹿王院先輩の話、聞いた?」
「結婚式延期の話?」
「聞いた聞いた」
そこで、少女たちはふと口を噤む。誰かが廊下を歩いていく気配がしたから。
通り過ぎて行ったのを確認して、再び少女たちは話し始めた。
「設楽先輩、赤ちゃんが」
「えっ!」
「まじ!?」
少女たちはそれぞれに反応する。
「大丈夫なの?」
「籍は予定通りですってー」
「ご婚約はされてたからねぇ」
「まぁねぇ」
「鹿王院先輩も就職決まってるんでしょ?」
「あ、やっぱりプロなんだ。チーム決められたの?」
「噂だけれど。練習にもよく視察に来られてるって」
「へぇ」
「そもそも学費なんかも自分で払ってたんだって」
「え、まじ? ここの学費?」
「いくらするんだろ」
「ねー。そもそも一緒に暮らしてたんでしょ? 設楽先輩とこもその辺は織り込み済みなんじゃない」
「お金持ちってわかんないねー」
「ねー」
「委員会どうすんのかな」
「一学期いっぱいで転校って聞いたけど。だから任期いっぱい」
「そっかぁ」
茶髪の女の子が、少しだけ寂しそうにする。
「……二学期の生徒会選挙、でてみようかな」
「え、いいじゃん」
「応援するよ?」
少女たちはふと時計を見上げる。
「あ、部活」
「ほんとだ」
「急がなきゃ」
それぞれに立ち上がり、カバンを掴んで教室を出る。
廊下には、春の日差しが満ちていた。
もうすぐ、桜が咲く。
※※※
【side青花】
偶然通りかかった廊下で、樹くんと設楽華の結婚が延期になるって聞いて、あたしは嬉しくて飛び跳ねるのを我慢するので精一杯だった。
(やっぱりね!)
樹くんの気持ちは、あたしに傾いてるんだ!
(だって、最近たくさん話するし!)
嬉しくて嬉しくて仕方ない!
軽い足取りでグラウンドへ向かう。サッカー部の練習グラウンド。
そこで樹くんの姿を見つけて、軽く手を振る。ちらりと視線が向けられて、あたしは彼の特別だってはっきり自覚した。
あたし、愛されてる!
空を見上げた。明るい水色の、春の空。
ふとあたしは桜のつぼみが膨らんでることに気がつく。
(そっか)
思わず微笑む。
もうすぐ桜が咲くんだ。
※※※
【side華】
つわりは全然治らないし、なんだかトイレも近くなってきたし、夜もなんだか眠れないし、精神的にも少しキツイ。
「妊娠中は多かれ少なかれ、精神的に不安定になりがちですよ」
病院の先生はそう言うけれど。
ふう、と私は春の霞がかった空を見上げる。
(それになぁ)
実のところ、ちょっと樹くんとケンカ中。ケンカっていうか、一方的に私が「きー!」ってなってるだけなんだけど……でも。
(樹くんも悪いよね!?)
うん。
知らないスマホ持ってたんだもん。
(新しいものじゃなかったけど)
あれはなんだったんだろ。問い詰めたら「華は心配するな」の一点張りでさ。……青花関係かなと思う。
(相談してくれたって!)
唇をとがらせて思う。うーん、拗ねてるだけ?
どうなんだろう。頭がごちゃごちゃして、うまくまとまらない。
ごちゃごちゃしたまま、ぼうっと空を眺め続ける。
すこし、暖かい風が吹いた。
もうすぐ、桜が咲く。
ひそやかに、集まって話す数人の女の子。揃いの白い制服。ひとりの髪は、少しだけ茶色い。
「ねえ、設楽先輩と鹿王院先輩の話、聞いた?」
「結婚式延期の話?」
「聞いた聞いた」
そこで、少女たちはふと口を噤む。誰かが廊下を歩いていく気配がしたから。
通り過ぎて行ったのを確認して、再び少女たちは話し始めた。
「設楽先輩、赤ちゃんが」
「えっ!」
「まじ!?」
少女たちはそれぞれに反応する。
「大丈夫なの?」
「籍は予定通りですってー」
「ご婚約はされてたからねぇ」
「まぁねぇ」
「鹿王院先輩も就職決まってるんでしょ?」
「あ、やっぱりプロなんだ。チーム決められたの?」
「噂だけれど。練習にもよく視察に来られてるって」
「へぇ」
「そもそも学費なんかも自分で払ってたんだって」
「え、まじ? ここの学費?」
「いくらするんだろ」
「ねー。そもそも一緒に暮らしてたんでしょ? 設楽先輩とこもその辺は織り込み済みなんじゃない」
「お金持ちってわかんないねー」
「ねー」
「委員会どうすんのかな」
「一学期いっぱいで転校って聞いたけど。だから任期いっぱい」
「そっかぁ」
茶髪の女の子が、少しだけ寂しそうにする。
「……二学期の生徒会選挙、でてみようかな」
「え、いいじゃん」
「応援するよ?」
少女たちはふと時計を見上げる。
「あ、部活」
「ほんとだ」
「急がなきゃ」
それぞれに立ち上がり、カバンを掴んで教室を出る。
廊下には、春の日差しが満ちていた。
もうすぐ、桜が咲く。
※※※
【side青花】
偶然通りかかった廊下で、樹くんと設楽華の結婚が延期になるって聞いて、あたしは嬉しくて飛び跳ねるのを我慢するので精一杯だった。
(やっぱりね!)
樹くんの気持ちは、あたしに傾いてるんだ!
(だって、最近たくさん話するし!)
嬉しくて嬉しくて仕方ない!
軽い足取りでグラウンドへ向かう。サッカー部の練習グラウンド。
そこで樹くんの姿を見つけて、軽く手を振る。ちらりと視線が向けられて、あたしは彼の特別だってはっきり自覚した。
あたし、愛されてる!
空を見上げた。明るい水色の、春の空。
ふとあたしは桜のつぼみが膨らんでることに気がつく。
(そっか)
思わず微笑む。
もうすぐ桜が咲くんだ。
※※※
【side華】
つわりは全然治らないし、なんだかトイレも近くなってきたし、夜もなんだか眠れないし、精神的にも少しキツイ。
「妊娠中は多かれ少なかれ、精神的に不安定になりがちですよ」
病院の先生はそう言うけれど。
ふう、と私は春の霞がかった空を見上げる。
(それになぁ)
実のところ、ちょっと樹くんとケンカ中。ケンカっていうか、一方的に私が「きー!」ってなってるだけなんだけど……でも。
(樹くんも悪いよね!?)
うん。
知らないスマホ持ってたんだもん。
(新しいものじゃなかったけど)
あれはなんだったんだろ。問い詰めたら「華は心配するな」の一点張りでさ。……青花関係かなと思う。
(相談してくれたって!)
唇をとがらせて思う。うーん、拗ねてるだけ?
どうなんだろう。頭がごちゃごちゃして、うまくまとまらない。
ごちゃごちゃしたまま、ぼうっと空を眺め続ける。
すこし、暖かい風が吹いた。
もうすぐ、桜が咲く。
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