329 / 702
【高校編】分岐・鍋島真
軟禁
しおりを挟む
は、と目が覚めた。
「……寝てた」
私は軽く眉を寄せて起き上がる。寝てた寝てた。せっかくのハワイなのに。
窓の外は青い空!
ベランダまで行けばうみも見えるだろう。紺碧の海。ちょっとテンションが上がる。
(時差ぼけもあるのかな~)
軽く首をストレッチ。
真さんの姿はもうない。山に行っちゃったんだろう。
(……遊びに来たわけじゃないからなぁ)
うーん、と背伸びをした。まぁ寂しくないと言えば嘘になるけれど、私は私で楽しく夏を満喫しちゃうのだ。
(青花もいないし~)
そう思って、私は「あれ」と気がつく。なんやかんや、あの子のことは結構ストレスになっていたっぽい。
「……よーし、忘れるぞ」
きょろ、と無駄に広い部屋(直前に決めたのにどうしてこんな部屋とれたんだろ、オンシーズンなのに)を見渡すと、さっきまで置いてあった例の黒い水着はもうなかった。
「着るなってことね」
私は苦笑する。まぁどうせ着ないからいいけれど!
ひとりでビーチに行く気もないし、と私は脱ぎ捨てられたロングワンピをいそいそと着る。
まだ日も高いし、せっかくだから観光、観光!
姿見に自分を映す。
「……やられた」
まぁ至る所がキスマークだらけ!
日本だと「付けないで」って私が怒るからだろうか、ここぞとばかりに……。
(でも、なんでだろう)
それが嬉しかったりするのだ。
薬指の指輪も、身体中のキスマークも。
あの人に所有されている、っていう事実が狂おしいくらいに、嬉しくて、誇らしい。
「とはいえこれは恥ずかしい」
むう、と鏡に映る自分を見つめる。とりあえずストールを巻いて、まぁこれで良しとしよう。
るんるん、と部屋のドアを開けると、ホテルの絨毯が敷き詰められた廊下に、屈強な黒人の男の人がいた。
2メートルくらいあるんじゃないかな……。暑いのにスーツに身を包み、サングラス、スーツ越しでも分かるムキムキ筋肉な肉体。
「……!?」
思わず固まった私に、彼は微笑んだ。
そして聞き取りやすいようにという配慮だろうか、ゆっくりとした英語で「お部屋にお戻りください、奥様」とこちらに手のひらを向ける。
丁寧に、だけど、有無を言わせない口調で。
「……はは、いえーす、おーけーおーけー」
バリバリのジャパニーズイングリッシュ的発音でそう返しながら部屋に戻る。ぱたりと閉まる扉。
私はスマホを取り出して真さんに電話をかけるけれど、つながらない。くっ、仕方ない、あの人はほんとにオベンキョに来てるんだから……!
でも……!
私は広いベランダへ続くガラスの折れ扉を開いて、思い切り叫んだ。
「ほんとに軟禁するなんてー!!!」
心配性にもほどがあるよっ!
私はふかふか柔らかなベッドに思い切りダイブする。
「……こうなりゃ豪遊してやる」
部屋の中でだけどっ!
私はルームサービスのメニュー表を手に取った。知らないぞ支払いいくらになっても!
翌々日、千晶ちゃんがやってきて開口一番に「なんで監禁されてるの華ちゃん?」と首を傾げた。
「……お兄さんに聞いて~」
私は広いベランダでちゅー、とグァバジュースを飲みながら言う。
目の前のガラステーブルにはフルーツの盛り合わせとお肉のグレイビーソース。盛り付けにたっぷりのポテトと色とりどりのお花。
「あっは、まぁ我が兄にしてはファインプレーね。華ちゃんひとりにしたら何するかわかんないし」
「しないよ! 大人だよ!」
「海外慣れてないでしょ? ダメだよいくら観光地でも、華ちゃんはひとりじゃダメ」
「むー」
兄妹揃って心配性だ。
「じゃあ私、最初から千晶ちゃんとふたりでこっちきたらよくなかった?」
「飛行機にひとりで乗りたくなかったんじゃない?」
「えー」
なんですかそれは。別に高所恐怖症ってわけでもないだろうに。
「じゃ、とりあえず観光いこうか」
私は頷く。どうやら千晶ちゃんとなら外にでていいっぽいです。
私たちがいるのはハワイはハワイ島。私が想像してた「ハワイ」はオアフ島みたいで、でもハワイ島にも色んな観光地がある。有名な火山もある!
「近くまで行くクルーズ船がでてるのよ」
千晶ちゃんがパンフレット片手にそうほほえむ。ホテルのカウンターで予約できるみたい。
「夜の方が綺麗みたいだね」
「じゃあ今日はそれにしよう!」
お夕食付きだ。
「イルカとかの見学クルーズもあるみたいだよ」
「イルカ!?」
テンションが上がる。イルカ! 野生の! それは見てみたい。
「見れるかな」
「見れるといいね」
千晶ちゃんも楽しげに笑う。
「ねぇ」
「ん?」
「……あの人ついて来るの?」
「……みたいだね」
ふたりで振り返ると、例の黒人のお兄さんはにこっ! と白い歯を見せて微笑んだ。
背後に彼がいるので、あたりの観光客も遠巻きに私たちを見ている。
「目立ってない?」
「ま、まぁ安全だよね」
安全だろうけれども!
「一体どこの誰なの?」
「ジェームスさんって言うらしいよ」
「聞いたんだ……」
千晶ちゃんは肩をすくめる。
「お兄様が知り合いの人から紹介された護衛の方みたいだよ」
「……私多分いるのになぁ、護衛さん」
目立つようにはいないみたいだけれど、敦子さん多分、まだ私に護衛つけっぱだと思うんだよなぁ。
「あ、まだいるの?」
「わかんないけど~」
「まぁ多分ナンパ避けだから彼」
私はちらり、とジェームスさんを見上げた。まぁ確かに、この3人組に声をかける勇気がある人はそうそういないだろうなぁ、と空を見上げた。
「……寝てた」
私は軽く眉を寄せて起き上がる。寝てた寝てた。せっかくのハワイなのに。
窓の外は青い空!
ベランダまで行けばうみも見えるだろう。紺碧の海。ちょっとテンションが上がる。
(時差ぼけもあるのかな~)
軽く首をストレッチ。
真さんの姿はもうない。山に行っちゃったんだろう。
(……遊びに来たわけじゃないからなぁ)
うーん、と背伸びをした。まぁ寂しくないと言えば嘘になるけれど、私は私で楽しく夏を満喫しちゃうのだ。
(青花もいないし~)
そう思って、私は「あれ」と気がつく。なんやかんや、あの子のことは結構ストレスになっていたっぽい。
「……よーし、忘れるぞ」
きょろ、と無駄に広い部屋(直前に決めたのにどうしてこんな部屋とれたんだろ、オンシーズンなのに)を見渡すと、さっきまで置いてあった例の黒い水着はもうなかった。
「着るなってことね」
私は苦笑する。まぁどうせ着ないからいいけれど!
ひとりでビーチに行く気もないし、と私は脱ぎ捨てられたロングワンピをいそいそと着る。
まだ日も高いし、せっかくだから観光、観光!
姿見に自分を映す。
「……やられた」
まぁ至る所がキスマークだらけ!
日本だと「付けないで」って私が怒るからだろうか、ここぞとばかりに……。
(でも、なんでだろう)
それが嬉しかったりするのだ。
薬指の指輪も、身体中のキスマークも。
あの人に所有されている、っていう事実が狂おしいくらいに、嬉しくて、誇らしい。
「とはいえこれは恥ずかしい」
むう、と鏡に映る自分を見つめる。とりあえずストールを巻いて、まぁこれで良しとしよう。
るんるん、と部屋のドアを開けると、ホテルの絨毯が敷き詰められた廊下に、屈強な黒人の男の人がいた。
2メートルくらいあるんじゃないかな……。暑いのにスーツに身を包み、サングラス、スーツ越しでも分かるムキムキ筋肉な肉体。
「……!?」
思わず固まった私に、彼は微笑んだ。
そして聞き取りやすいようにという配慮だろうか、ゆっくりとした英語で「お部屋にお戻りください、奥様」とこちらに手のひらを向ける。
丁寧に、だけど、有無を言わせない口調で。
「……はは、いえーす、おーけーおーけー」
バリバリのジャパニーズイングリッシュ的発音でそう返しながら部屋に戻る。ぱたりと閉まる扉。
私はスマホを取り出して真さんに電話をかけるけれど、つながらない。くっ、仕方ない、あの人はほんとにオベンキョに来てるんだから……!
でも……!
私は広いベランダへ続くガラスの折れ扉を開いて、思い切り叫んだ。
「ほんとに軟禁するなんてー!!!」
心配性にもほどがあるよっ!
私はふかふか柔らかなベッドに思い切りダイブする。
「……こうなりゃ豪遊してやる」
部屋の中でだけどっ!
私はルームサービスのメニュー表を手に取った。知らないぞ支払いいくらになっても!
翌々日、千晶ちゃんがやってきて開口一番に「なんで監禁されてるの華ちゃん?」と首を傾げた。
「……お兄さんに聞いて~」
私は広いベランダでちゅー、とグァバジュースを飲みながら言う。
目の前のガラステーブルにはフルーツの盛り合わせとお肉のグレイビーソース。盛り付けにたっぷりのポテトと色とりどりのお花。
「あっは、まぁ我が兄にしてはファインプレーね。華ちゃんひとりにしたら何するかわかんないし」
「しないよ! 大人だよ!」
「海外慣れてないでしょ? ダメだよいくら観光地でも、華ちゃんはひとりじゃダメ」
「むー」
兄妹揃って心配性だ。
「じゃあ私、最初から千晶ちゃんとふたりでこっちきたらよくなかった?」
「飛行機にひとりで乗りたくなかったんじゃない?」
「えー」
なんですかそれは。別に高所恐怖症ってわけでもないだろうに。
「じゃ、とりあえず観光いこうか」
私は頷く。どうやら千晶ちゃんとなら外にでていいっぽいです。
私たちがいるのはハワイはハワイ島。私が想像してた「ハワイ」はオアフ島みたいで、でもハワイ島にも色んな観光地がある。有名な火山もある!
「近くまで行くクルーズ船がでてるのよ」
千晶ちゃんがパンフレット片手にそうほほえむ。ホテルのカウンターで予約できるみたい。
「夜の方が綺麗みたいだね」
「じゃあ今日はそれにしよう!」
お夕食付きだ。
「イルカとかの見学クルーズもあるみたいだよ」
「イルカ!?」
テンションが上がる。イルカ! 野生の! それは見てみたい。
「見れるかな」
「見れるといいね」
千晶ちゃんも楽しげに笑う。
「ねぇ」
「ん?」
「……あの人ついて来るの?」
「……みたいだね」
ふたりで振り返ると、例の黒人のお兄さんはにこっ! と白い歯を見せて微笑んだ。
背後に彼がいるので、あたりの観光客も遠巻きに私たちを見ている。
「目立ってない?」
「ま、まぁ安全だよね」
安全だろうけれども!
「一体どこの誰なの?」
「ジェームスさんって言うらしいよ」
「聞いたんだ……」
千晶ちゃんは肩をすくめる。
「お兄様が知り合いの人から紹介された護衛の方みたいだよ」
「……私多分いるのになぁ、護衛さん」
目立つようにはいないみたいだけれど、敦子さん多分、まだ私に護衛つけっぱだと思うんだよなぁ。
「あ、まだいるの?」
「わかんないけど~」
「まぁ多分ナンパ避けだから彼」
私はちらり、とジェームスさんを見上げた。まぁ確かに、この3人組に声をかける勇気がある人はそうそういないだろうなぁ、と空を見上げた。
0
お気に入りに追加
3,085
あなたにおすすめの小説
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢
岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか?
「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」
「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」
マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。
婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです
英国紳士の熱い抱擁に、今にも腰が砕けそうです
坂合奏
恋愛
「I love much more than you think(君が思っているよりは、愛しているよ)」
祖母の策略によって、冷徹上司であるイギリス人のジャン・ブラウンと婚約することになってしまった、二十八歳の清水萌衣。
こんな男と結婚してしまったら、この先人生お先真っ暗だと思いきや、意外にもジャンは恋人に甘々の男で……。
あまりの熱い抱擁に、今にも腰が砕けそうです。
※物語の都合で軽い性描写が2~3ページほどあります。
【コミカライズ決定】地味令嬢は冤罪で処刑されて逆行転生したので、華麗な悪女を目指します!~目隠れ美形の天才王子に溺愛されまして~
胡蝶乃夢
恋愛
婚約者である王太子の望む通り『理想の淑女』として尽くしてきたにも関わらず、婚約破棄された挙句に冤罪で処刑されてしまった公爵令嬢ガーネット。
時間が遡り目覚めたガーネットは、二度と自分を犠牲にして尽くしたりしないと怒り、今度は自分勝手に生きる『華麗な悪女』になると決意する。
王太子の弟であるルベリウス王子にガーネットは留学をやめて傍にいて欲しいと願う。
処刑された時、留学中でいなかった彼がガーネットの傍にいることで運命は大きく変わっていく。
これは、不憫な地味令嬢が華麗な悪女へと変貌して周囲を魅了し、幼馴染の天才王子にも溺愛され、ざまぁして幸せになる物語です。
「殿下、人違いです」どうぞヒロインのところへ行って下さい
みおな
恋愛
私が転生したのは、乙女ゲームを元にした人気のライトノベルの世界でした。
しかも、定番の悪役令嬢。
いえ、別にざまあされるヒロインにはなりたくないですし、婚約者のいる相手にすり寄るビッチなヒロインにもなりたくないです。
ですから婚約者の王子様。
私はいつでも婚約破棄を受け入れますので、どうぞヒロインのところに行って下さい。
気配消し令嬢の失敗
かな
恋愛
ユリアは公爵家の次女として生まれ、獣人国に攫われた長女エーリアの代わりに第1王子の婚約者候補の筆頭にされてしまう。王妃なんて面倒臭いと思ったユリアは、自分自身に認識阻害と気配消しの魔法を掛け、居るかいないかわからないと言われるほどの地味な令嬢を装った。
15才になり学園に入学すると、編入してきた男爵令嬢が第1王子と有力貴族令息を複数侍らかせることとなり、ユリア以外の婚約者候補と男爵令嬢の揉める事が日常茶飯事に。ユリアは遠くからボーッとそれを眺めながら〘 いつになったら婚約者候補から外してくれるのかな? 〙と思っていた。そんなユリアが失敗する話。
※王子は曾祖母コンです。
※ユリアは悪役令嬢ではありません。
※タグを少し修正しました。
初めての投稿なのでゆる〜く読んでください。ご都合主義はご愛嬌ということで見逃してください( *・ω・)*_ _))ペコリン
【完結】番である私の旦那様
桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族!
黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。
バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。
オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。
気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。
でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!)
大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです!
神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。
前半は転移する前の私生活から始まります。
【完結】悪役令嬢は婚約者を差し上げたい
三谷朱花
恋愛
アリス・デッセ侯爵令嬢と婚約者であるハース・マーヴィン侯爵令息の出会いは最悪だった。
そして、学園の食堂で、アリスは、「ハース様を解放して欲しい」というメルル・アーディン侯爵令嬢の言葉に、頷こうとした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる