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【高校編】分岐・鍋島真
天体観測
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なぜだか唐突にウチに来た真さんにラチられて、なぜだか唐突にフレンチを奢ってくれた。うーむ何故。
「……」
「なんで黙って悶絶してるの?」
「口の中でゼリー寄せが」
脳から変な汁が出そう。美味しすぎて。
「雷鳥って食べられるんですね」
「日本の食べたら捕まるよ」
上品に真さんは笑いながら言う。天然記念物だからね……。しかし、フレンチ似合うなこの人。
なんだかおかしくて笑うと、真さんは不思議そうに私を見た。
ちょっと楽しそう。
でも真さんのマンションで、一緒にソファに座ってて、私はふうんと思う。
(何かあったかな)
私の髪を撫でる手が、いつも通りなようで、いつもより優しかった。
だから、私は少し甘えるように身体を寄せる。真さんは私をきゅうと抱きしめて、それから膝の上に乗せられた。
「甘えんぼさんですね」
私の言葉に、真さんはいかにも心外ですって顔で私を見る。
「甘えてなんかないよ」
「そうですか」
私が笑うと、真さんは私の唇に軽くキスをする。それは少しずつ、深くなっていって、私は息の仕方も忘れてしまう。
溺れてしまう。
その翌日、学校へ行くと同じクラスの大村さんが教室の窓から何かを見ていた。
「おはよ。なにしてるの?」
「あ、設楽さん。ほら見て」
いわれた通り窓から外を見ると、中庭を歩いて行く青花がいた。
「……え、どうしたの?」
青花は、何かに怯えていた。周りを男の子が囲むように歩いているけれど、明らかに時々周りを見渡して、青くなっている。
「わかんない。たまたま見かけて……怯えすぎじゃない?」
「うん」
返事をしながら、私は口ごもる。……真さん、マジで青花に何してるんだろう。
(真さんだって忙しいのに)
真さんを見ていると、理系というものはどうやらとても忙しいらしい、と前世バリバリ文系だった私は漠然と感じた。
(ま、そもそも勉強内容がまっったく分からないんですけどねぇ)
勉強、ていうか研究? なんだろうか。
物理ってなんですの、という私のフワフワした質問に、真さんは「身の回りの物事のこと」とサラリと答えてくれちゃってた。うーむ。
しかしそれでも青花はガッツがあった。なんていうか、その諦めない気持ちを他に活かしたらいいと思うよ。
「教科書がー」
「階段からー」
「体操服がー」
なんだか色々濡れ衣着せようとしてくれてるけど、うまいタイミングで不思議なくらい、私にはアリバイがあった。
「なんなんだろ」
「まぁ気にしないほうがいいよ設楽さん」
大村さんは目を細めた。私は大村さんを見る。
「?」
「なあに」
「あ、ううん」
首を振りながら思う。何か、大村さんに含みがあったような気がして。
そんな感じで季節はあっという間に梅雨を過ぎて、夏になって。
「……なんですかこの水着は」
「えっ」
真さんはきょとんと私を見て、ものすごーく優雅に笑った。
「着たいって言ってなかった?」
「言ってません……!」
真っ黒な、なんていうか、ほぼ何も隠してないような水着!!!
「いや言ってたよー」
「ぜえええったいに言ってません」
唇を尖らせると、真さんはケタケタ笑った。そのめちゃくちゃ楽しそうな笑顔を見ながら、私は思い出す。
(あー、去年の!)
あの時も海にラチられたんだ。
そして、いまも。
私は大きなオーシャンビューの窓から青い海を眺めた。
「……ハワイって初めてです」
「わーい華ちゃんのハジメテいただき~」
「その言い方はやめてください」
いや、初めてもあげたんだけど、まぁそれは別論として。
大きなベッドの上には、真さんがどこからか入手してきた、例の真っ黒な水着。
「……いいんですか?」
私は挑発的に、真さんを見た。
「真さんがお星様観察してる間に、私、これ着てビーチ行きますよ?」
真さんは目を細めた。
「それは許しがたいねぇ」
うーん、と首を捻る。それからぽん! と手を叩く。
「じゃあ僕がお山に登ってる間は、華ちゃんは軟禁しておこうねぇ」
「しないでください」
せっかくのハワイなのに! ……まぁ、真さんは遊びに来たわけじゃない。
ハワイにある何とか言う天体観測所でお勉強だか研究だか観察だかをするらしいのです。
標高4千メールを越える山の山頂にある凄い施設らしくて、何でも「学校のセンセーが推薦してくれたから」行けるらしい。
良かったですねぇ、と言うとものすごく嬉しげだったから、やっぱり凄く嬉しかったらしい。……ちょっと可愛いとか思ってしまうから末期だ。
とはいえ。
(付いてきちゃった~)
うふふ、と私は笑う。だってハワイ、前世も含めて行ったことなかったんだもの。
「心配だなぁ」
真さんは眉を潜める。
「明後日には千晶が着くから、それまでマジで監禁しておこうかな」
「観光地しか行きませんって」
「……」
それでも真さんはシブい顔をしてる。
「大丈夫です、私オトナだから」
中身はね、とこっそり思いながらそう言うと、真さんは私の鼻を思い切り摘んだ。
「大人はね華」
「ひゃい」
「オトナだから、なんて言わないよ」
「むっ」
鼻から手を離した真さんは、その指を私の頬に這わせた。
「まぁコドモではないよね」
そう言って笑う真さんに、私は今日の観光は諦めて力を抜いた。
「……」
「なんで黙って悶絶してるの?」
「口の中でゼリー寄せが」
脳から変な汁が出そう。美味しすぎて。
「雷鳥って食べられるんですね」
「日本の食べたら捕まるよ」
上品に真さんは笑いながら言う。天然記念物だからね……。しかし、フレンチ似合うなこの人。
なんだかおかしくて笑うと、真さんは不思議そうに私を見た。
ちょっと楽しそう。
でも真さんのマンションで、一緒にソファに座ってて、私はふうんと思う。
(何かあったかな)
私の髪を撫でる手が、いつも通りなようで、いつもより優しかった。
だから、私は少し甘えるように身体を寄せる。真さんは私をきゅうと抱きしめて、それから膝の上に乗せられた。
「甘えんぼさんですね」
私の言葉に、真さんはいかにも心外ですって顔で私を見る。
「甘えてなんかないよ」
「そうですか」
私が笑うと、真さんは私の唇に軽くキスをする。それは少しずつ、深くなっていって、私は息の仕方も忘れてしまう。
溺れてしまう。
その翌日、学校へ行くと同じクラスの大村さんが教室の窓から何かを見ていた。
「おはよ。なにしてるの?」
「あ、設楽さん。ほら見て」
いわれた通り窓から外を見ると、中庭を歩いて行く青花がいた。
「……え、どうしたの?」
青花は、何かに怯えていた。周りを男の子が囲むように歩いているけれど、明らかに時々周りを見渡して、青くなっている。
「わかんない。たまたま見かけて……怯えすぎじゃない?」
「うん」
返事をしながら、私は口ごもる。……真さん、マジで青花に何してるんだろう。
(真さんだって忙しいのに)
真さんを見ていると、理系というものはどうやらとても忙しいらしい、と前世バリバリ文系だった私は漠然と感じた。
(ま、そもそも勉強内容がまっったく分からないんですけどねぇ)
勉強、ていうか研究? なんだろうか。
物理ってなんですの、という私のフワフワした質問に、真さんは「身の回りの物事のこと」とサラリと答えてくれちゃってた。うーむ。
しかしそれでも青花はガッツがあった。なんていうか、その諦めない気持ちを他に活かしたらいいと思うよ。
「教科書がー」
「階段からー」
「体操服がー」
なんだか色々濡れ衣着せようとしてくれてるけど、うまいタイミングで不思議なくらい、私にはアリバイがあった。
「なんなんだろ」
「まぁ気にしないほうがいいよ設楽さん」
大村さんは目を細めた。私は大村さんを見る。
「?」
「なあに」
「あ、ううん」
首を振りながら思う。何か、大村さんに含みがあったような気がして。
そんな感じで季節はあっという間に梅雨を過ぎて、夏になって。
「……なんですかこの水着は」
「えっ」
真さんはきょとんと私を見て、ものすごーく優雅に笑った。
「着たいって言ってなかった?」
「言ってません……!」
真っ黒な、なんていうか、ほぼ何も隠してないような水着!!!
「いや言ってたよー」
「ぜえええったいに言ってません」
唇を尖らせると、真さんはケタケタ笑った。そのめちゃくちゃ楽しそうな笑顔を見ながら、私は思い出す。
(あー、去年の!)
あの時も海にラチられたんだ。
そして、いまも。
私は大きなオーシャンビューの窓から青い海を眺めた。
「……ハワイって初めてです」
「わーい華ちゃんのハジメテいただき~」
「その言い方はやめてください」
いや、初めてもあげたんだけど、まぁそれは別論として。
大きなベッドの上には、真さんがどこからか入手してきた、例の真っ黒な水着。
「……いいんですか?」
私は挑発的に、真さんを見た。
「真さんがお星様観察してる間に、私、これ着てビーチ行きますよ?」
真さんは目を細めた。
「それは許しがたいねぇ」
うーん、と首を捻る。それからぽん! と手を叩く。
「じゃあ僕がお山に登ってる間は、華ちゃんは軟禁しておこうねぇ」
「しないでください」
せっかくのハワイなのに! ……まぁ、真さんは遊びに来たわけじゃない。
ハワイにある何とか言う天体観測所でお勉強だか研究だか観察だかをするらしいのです。
標高4千メールを越える山の山頂にある凄い施設らしくて、何でも「学校のセンセーが推薦してくれたから」行けるらしい。
良かったですねぇ、と言うとものすごく嬉しげだったから、やっぱり凄く嬉しかったらしい。……ちょっと可愛いとか思ってしまうから末期だ。
とはいえ。
(付いてきちゃった~)
うふふ、と私は笑う。だってハワイ、前世も含めて行ったことなかったんだもの。
「心配だなぁ」
真さんは眉を潜める。
「明後日には千晶が着くから、それまでマジで監禁しておこうかな」
「観光地しか行きませんって」
「……」
それでも真さんはシブい顔をしてる。
「大丈夫です、私オトナだから」
中身はね、とこっそり思いながらそう言うと、真さんは私の鼻を思い切り摘んだ。
「大人はね華」
「ひゃい」
「オトナだから、なんて言わないよ」
「むっ」
鼻から手を離した真さんは、その指を私の頬に這わせた。
「まぁコドモではないよね」
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