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【高校編】分岐・黒田健
誕生日と青い石
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私は鏡を見ながら、シュリちゃんがくれたバレッタを髪に留めた。真紅のグログランリボンと、中央に金色のプレート。……っていうかこれ、お高いやつでは……。
(い、いいのかな)
ちらりとシュリちゃんを見ると、ふん! と鼻息荒く満足そうなカオで私を見ていた。
「さすがあたし」
そんな風に目を細めて言われたので、私はありがたく頂戴することにした。ちゃんとお返ししなくっちゃ!
「じゃ、これはおれから」
圭くんからは少し大きめのポーチ。
「ハナ、よく登校前バタバタしてるし、忘れ物したって引き返してくるから、必要なものまとめておくといいよ」
「……お気遣い感謝します」
年下に面倒みさせてます。うう。なんて思ってたら、お腹がぐうと鳴った。
「あ」
「ケーキ、切るか」
黒田くんが笑いながら言った。ちょっと赤面しつつ頷く。お腹空いちゃいましたよ!
「お、美味しい」
「……まぁまぁね」
私は感動して、シュリちゃんはシュリちゃん的最大級の褒め言葉を口にしてた。ほんとにこれ初めて作ったケーキ!?
圭くんはムッとした顔をして、けどもぐもぐと食べていた。そんなカオで食べなくても……。
「お、案外食えるな」
「食えるなってレベルじゃないよ~」
とっても美味しい!
「……そーか」
黒田くんはすっごい嬉しそうに私を見る。ほんの少しだけ、口元を緩ませて。
(うっ)
こんな顔されると、キツイ。好きすぎてキツイ。胸がきゅううとなってしまう……!
「ちょっと、何なのよその締まりのないカオは」
「や、やめてよう」
シュリちゃんに頬をものすごく突かれた。や、やめて……!
そんな感じで、和やかなんだかなんなんだか分からない感じで私の誕生日パーティー(何年振りだろ)はお開きになった。
「ここまででいーよ」
黒田くんは言う。玄関先、もう外は薄暗い。
「うん」
私はお腹いっぱい幸せいっぱいで頷いた。
「気をつけてね」
「ん」
黒田くんはそう返事をしながら、何か迷ってる顔をしてた。
「黒田くん?」
「あー、まぁ、いっか」
吹っ切れたように黒田くんはカバンから包みを取り出した。小さい箱。
「?」
「誕生日プレゼント」
「えっ!?」
私は受け取りながら変な声で返事してしまった。
「も、ももももうもらったよ!? ケーキっ」
「ケーキはケーキ」
ぶっきらぼうに黒田くんは言う。
「じゃあな」
「え、あ、ありがとっ」
中身を見る前に、さっさと出て行ってしまった。……珍しく照れてる?
(最近なんか、照れたりとか増えたかも)
素直に感情出してきてくれてる、かんじ、とか……。
それってなんか、ちょっと、嬉しい。私が甘えてばっかだったし。
(えへへ)
ちょっとニマニマしながら、部屋に戻って箱を開ける。
「……わ」
華奢なシルバーのブレスレット。3つだけ、空色の小さな石がついてて、正直可愛い!
すぐにつけてまじまじと眺める。
(……この趣味はひよりちゃんと秋月くんかな)
くすっと笑ってしまう。こんな言い方失礼かもだけど、黒田くんにこのブレスレットは選べないや。多分2人に相談してる。
(えー、いつからだろ)
相談して選んだ、ってことは前々から探してくれてたってことだよね。
(どーーしよ)
すっごい嬉しい。プレゼントが嬉しいのはもちろんだけれど、気持ちが嬉しくてはちきれそう!
ベッドの上で飛び跳ねたい気持ちをぐっと抑えて、スマホを手に取る。メールじゃ伝わんない、言葉で伝えたい。
『……もしもし』
「黒田くんっ」
意気込んだ私の声に、黒田くんが電話の向こうで笑ったのが分かった。多分、にやり、みたいな、楽しげな笑い方。
『あー、先に言っとくとそれ、ひよりと秋月に相談したわ』
「あは、そうかなって思った」
『バレてたか』
やっぱり楽しそうな声、……ていうか、安心したような声。
「? 一仕事終えた感があるね」
『ん、こういうの初めてだったから』
言われて考える。……確かに、そうかも。アクセサリーなんてもらうの、初めて。
『どんなんがいいか全っ然分かんねーし、迷いすぎてヤバかった』
「そ、そんなに」
なんだって嬉しいのに!
『まあなんだ、とにかく誕生日おめでとう、設楽』
「ありがとうっ」
お礼を言いながら、腕についたブレスレットを眺める。きらりと光るブレスレット。
「一生大事にする!」
『……就職したら、もっといーもんやるよ』
「これがいいの」
私は静かにそう言った。これがいい。黒田くんが超悩んで、友達にもいっぱい相談してプレゼントしてくれた、これがいいんだ。
お礼を何度も言いながら通話を切って、ふと思う。
(一生、か)
そんなもの、あるのかな。そんな風に考えてしまう。
(どきどき思うんだよね)
黒田くんと付き合ってどれくらいかな、って。
それは前世での記録よりどんどん長くなってて、でもーー私は、それが永遠だなんて思えてない、のかもしれない。
結婚しようって言ってくれてる。
とてもとても大事にされてるのも、信じられないくらい大好きでいてくれてるのも、全部全部分かってて、その上で、いつか、……いつか来るかもしれないお別れに、私は怯えている。
(今が幸せだからこそ)
痛いくらいに切なくて、だから、怖い。失うのが怖い。
私はブレスレットを何度も撫でた。これが永遠だったらいいのに、そう願いを込めながら。
(い、いいのかな)
ちらりとシュリちゃんを見ると、ふん! と鼻息荒く満足そうなカオで私を見ていた。
「さすがあたし」
そんな風に目を細めて言われたので、私はありがたく頂戴することにした。ちゃんとお返ししなくっちゃ!
「じゃ、これはおれから」
圭くんからは少し大きめのポーチ。
「ハナ、よく登校前バタバタしてるし、忘れ物したって引き返してくるから、必要なものまとめておくといいよ」
「……お気遣い感謝します」
年下に面倒みさせてます。うう。なんて思ってたら、お腹がぐうと鳴った。
「あ」
「ケーキ、切るか」
黒田くんが笑いながら言った。ちょっと赤面しつつ頷く。お腹空いちゃいましたよ!
「お、美味しい」
「……まぁまぁね」
私は感動して、シュリちゃんはシュリちゃん的最大級の褒め言葉を口にしてた。ほんとにこれ初めて作ったケーキ!?
圭くんはムッとした顔をして、けどもぐもぐと食べていた。そんなカオで食べなくても……。
「お、案外食えるな」
「食えるなってレベルじゃないよ~」
とっても美味しい!
「……そーか」
黒田くんはすっごい嬉しそうに私を見る。ほんの少しだけ、口元を緩ませて。
(うっ)
こんな顔されると、キツイ。好きすぎてキツイ。胸がきゅううとなってしまう……!
「ちょっと、何なのよその締まりのないカオは」
「や、やめてよう」
シュリちゃんに頬をものすごく突かれた。や、やめて……!
そんな感じで、和やかなんだかなんなんだか分からない感じで私の誕生日パーティー(何年振りだろ)はお開きになった。
「ここまででいーよ」
黒田くんは言う。玄関先、もう外は薄暗い。
「うん」
私はお腹いっぱい幸せいっぱいで頷いた。
「気をつけてね」
「ん」
黒田くんはそう返事をしながら、何か迷ってる顔をしてた。
「黒田くん?」
「あー、まぁ、いっか」
吹っ切れたように黒田くんはカバンから包みを取り出した。小さい箱。
「?」
「誕生日プレゼント」
「えっ!?」
私は受け取りながら変な声で返事してしまった。
「も、ももももうもらったよ!? ケーキっ」
「ケーキはケーキ」
ぶっきらぼうに黒田くんは言う。
「じゃあな」
「え、あ、ありがとっ」
中身を見る前に、さっさと出て行ってしまった。……珍しく照れてる?
(最近なんか、照れたりとか増えたかも)
素直に感情出してきてくれてる、かんじ、とか……。
それってなんか、ちょっと、嬉しい。私が甘えてばっかだったし。
(えへへ)
ちょっとニマニマしながら、部屋に戻って箱を開ける。
「……わ」
華奢なシルバーのブレスレット。3つだけ、空色の小さな石がついてて、正直可愛い!
すぐにつけてまじまじと眺める。
(……この趣味はひよりちゃんと秋月くんかな)
くすっと笑ってしまう。こんな言い方失礼かもだけど、黒田くんにこのブレスレットは選べないや。多分2人に相談してる。
(えー、いつからだろ)
相談して選んだ、ってことは前々から探してくれてたってことだよね。
(どーーしよ)
すっごい嬉しい。プレゼントが嬉しいのはもちろんだけれど、気持ちが嬉しくてはちきれそう!
ベッドの上で飛び跳ねたい気持ちをぐっと抑えて、スマホを手に取る。メールじゃ伝わんない、言葉で伝えたい。
『……もしもし』
「黒田くんっ」
意気込んだ私の声に、黒田くんが電話の向こうで笑ったのが分かった。多分、にやり、みたいな、楽しげな笑い方。
『あー、先に言っとくとそれ、ひよりと秋月に相談したわ』
「あは、そうかなって思った」
『バレてたか』
やっぱり楽しそうな声、……ていうか、安心したような声。
「? 一仕事終えた感があるね」
『ん、こういうの初めてだったから』
言われて考える。……確かに、そうかも。アクセサリーなんてもらうの、初めて。
『どんなんがいいか全っ然分かんねーし、迷いすぎてヤバかった』
「そ、そんなに」
なんだって嬉しいのに!
『まあなんだ、とにかく誕生日おめでとう、設楽』
「ありがとうっ」
お礼を言いながら、腕についたブレスレットを眺める。きらりと光るブレスレット。
「一生大事にする!」
『……就職したら、もっといーもんやるよ』
「これがいいの」
私は静かにそう言った。これがいい。黒田くんが超悩んで、友達にもいっぱい相談してプレゼントしてくれた、これがいいんだ。
お礼を何度も言いながら通話を切って、ふと思う。
(一生、か)
そんなもの、あるのかな。そんな風に考えてしまう。
(どきどき思うんだよね)
黒田くんと付き合ってどれくらいかな、って。
それは前世での記録よりどんどん長くなってて、でもーー私は、それが永遠だなんて思えてない、のかもしれない。
結婚しようって言ってくれてる。
とてもとても大事にされてるのも、信じられないくらい大好きでいてくれてるのも、全部全部分かってて、その上で、いつか、……いつか来るかもしれないお別れに、私は怯えている。
(今が幸せだからこそ)
痛いくらいに切なくて、だから、怖い。失うのが怖い。
私はブレスレットを何度も撫でた。これが永遠だったらいいのに、そう願いを込めながら。
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