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【高校編】分岐・鹿王院樹
世界中の神様に
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「"お友達"はこんなことしないよね」
「フシダラな関係の友人関係も世の中にはあると聞いたが」
「からだ目当てっ!?」
「そんなわけがあるか」
私を見て樹くんは笑う。ほんとうに大事なものを見てる目でみてくれるから、私はとろんと安心して身体を委ねてしまう。
樹くんの部屋、そのソファで。
「……あまりそんなことをされると、正直理性のタガが」
「ここまで来たら外そう?」
「いや、……お友達、だからな」
樹くんは苦笑する。
「お友達だ。そう言い聞かせておかないと、歯止めが効きそうにない」
「じゅーぶん効いてないと思うけど?」
「きかせているほうだぞ、これで」
樹くんの顔が近くなる。優しく頬にキスをされた。なんか色々されちゃってる気もするけど……これで「歯止め効いてる」状態なら、効いてなかったらどんなことになっちゃうんだろう。
教えて欲しい、のにな。
(最初は私が"お友達"って言い出したのに)
自分から樹くんにキスをする。
(足りなくなっちゃった)
ぜんぜん、足りなくなっちゃった。
「……あと1年かぁ」
「そんなにないぞ」
「うん」
「そういえば、指輪が出来上がるそうだ」
「え、ほんと!」
オーダーしてた婚約指輪。
私が目を輝かせると、樹くんは嬉しそうにしてくれる。……変に遠慮しちゃうより、甘えて喜んでもらったほうがいいなって最近思うようになった。どうせさんざん迷惑かけてるんだし。情けないなぁ。
「ドレスも選ばなくてはなぁ」
「結局、式場どこにしようねぇ」
「修学旅行で」
樹くんは首を傾げた。
「鐘を鳴らした教会があっただろう」
「あ、うん」
修学旅行で行ったスロベニア、そこの湖にある島に建っていた教会だ。
「階段を登る話は聞いたか?」
「新郎がお姫様抱っこするやつでしょ」
覚えてる。私は頷いた。教会に向か階段 、ここは新郎が新婦をお姫様抱っこして全部登らなきゃらしい。100段ちかい、結構急な階段。
(ガイドさん、新郎は筋トレして、新婦はダイエットするとかいってたなぁ)
そんなことを思っていると、樹くんは微笑みながら私の手を取る。
「あそこはどうだろう」
「……キツイよ?」
華奢な女の子ならまだしも、私ですよ? 胸に余計な脂肪が、とか言われちゃう系の。……余計なこと思い出した。青花、夏休みに入ってからはあんまり接触ないけれど、なにしてるんだろ。特進クラスだから、夏休みも夏課外があってるはずなんだけど、学校で見かけない。
「絶対平気だ」
樹くんは笑って、私をひょいと抱き上げた。
「全然余裕だ」
「う、うそだっ、無理だよっ、腰痛めるよう」
「こんなに軽いのに!」
楽しそうに樹くんは私を抱き上げたまま、くるくると回る。部屋が広いからいいけれど……!
「す、ストップストップ! 酔っちゃう」
「む、すまん。はしゃいでしまった」
はしゃいでたんだ! 胸がキュンとなる。可愛いよう!
「じゃああそこに決めよう」
「他には見なくていいのか」
「いいの」
ふふ、と私は笑う。
「だって樹くん、前からあそこがいいって言ってたもの」
「なんとなく、だがな」
「結構そういうの、大事だよ」
「そうだな」
横抱きにされたまま、キスを落とされた。おでこに、鼻に、頬に、唇に。
「愛してる」
「……私も」
樹くんはほんの少し、眉を寄せて私をソファにまた座らせた。それから、のしかかるみたいに私に近寄る。
「? 樹くん」
「私も、ではなくて」
耳を噛まれた。
「きちんと言ってほしい」
「ひゃ、あ、耳、耳、そんなしちゃダメ」
耳朶に直接響く樹くんの声! は、反則! 反則だよ!
「華、悪い子だな」
「わ、悪いとかそんなんじゃなくないっ!?」
だ、だって照れるもん!
「好き、好きだよ」
私は必死でそう樹くんに伝える。
「足りない」
樹くんは言い放って、私の鎖骨をガブリと噛んだ。甘噛みだけれど、なんていか、ゾクゾクした弱い電流みたいなのが走る感じ。
「さ、鎖骨噛むのダメって樹くんがっ」
「華のはいいんだ」
「めちゃくちゃだよう!」
「言えないのか、華」
「い、言うからやめ、」
「言うまでやめない」
噛まれて、舐められて、吸われて。私は震える声でなんとか絞り出すみたいに言った。
「あ、あいして、ますっ」
「よくできました」
「ひゃう」
変な声が出ちゃって正直気恥ずかしい。でも最後にもっかい噛まれたからっ。
「ふ、俺の理性がどうにかなるのは近そうだなぁ」
「今でもいいのになぁ」
「もう母親になりたいのか?」
「……まだいいです」
勉強と育児を両立できる自信がないよ……。
結局、樹くんはその場で仕事で知り合ったとかいうウェディング会社のお偉いさんにお願いして、速攻で日を抑えてくれた。
「大安だのなんだの、考えなくていいから楽だな」
「まぁそもそも海外の、それもキリスト教式でそこ考え出したらキリないよね」
「キリスト教の神に誓うのに、ブッダが死んだ日は避けるのはなぜだろう」
「縁起担ぎたいんだよ」
私もなんとなく気にする。
「そういうものか? 戦後始まった風習だと聞いているが」
「あ、そうなんだ」
「というか、俺も臨済宗だなぁ」
いいんだろうか、と妙なカオをする樹くんに、私は笑った。
「じゃあやっぱり、世界中の神様に誓いに行く?」
「そうするか」
樹くんはやたらと真面目そうに頷いた。
(冗談だよね?)
にこりと微笑む。まさか本気ではないでしょー。そう思って。
……しかしながら冗談のはずだったこの言葉、まさか数年かけて実行されるなんて、この時の私は知らなかったのでした。
「フシダラな関係の友人関係も世の中にはあると聞いたが」
「からだ目当てっ!?」
「そんなわけがあるか」
私を見て樹くんは笑う。ほんとうに大事なものを見てる目でみてくれるから、私はとろんと安心して身体を委ねてしまう。
樹くんの部屋、そのソファで。
「……あまりそんなことをされると、正直理性のタガが」
「ここまで来たら外そう?」
「いや、……お友達、だからな」
樹くんは苦笑する。
「お友達だ。そう言い聞かせておかないと、歯止めが効きそうにない」
「じゅーぶん効いてないと思うけど?」
「きかせているほうだぞ、これで」
樹くんの顔が近くなる。優しく頬にキスをされた。なんか色々されちゃってる気もするけど……これで「歯止め効いてる」状態なら、効いてなかったらどんなことになっちゃうんだろう。
教えて欲しい、のにな。
(最初は私が"お友達"って言い出したのに)
自分から樹くんにキスをする。
(足りなくなっちゃった)
ぜんぜん、足りなくなっちゃった。
「……あと1年かぁ」
「そんなにないぞ」
「うん」
「そういえば、指輪が出来上がるそうだ」
「え、ほんと!」
オーダーしてた婚約指輪。
私が目を輝かせると、樹くんは嬉しそうにしてくれる。……変に遠慮しちゃうより、甘えて喜んでもらったほうがいいなって最近思うようになった。どうせさんざん迷惑かけてるんだし。情けないなぁ。
「ドレスも選ばなくてはなぁ」
「結局、式場どこにしようねぇ」
「修学旅行で」
樹くんは首を傾げた。
「鐘を鳴らした教会があっただろう」
「あ、うん」
修学旅行で行ったスロベニア、そこの湖にある島に建っていた教会だ。
「階段を登る話は聞いたか?」
「新郎がお姫様抱っこするやつでしょ」
覚えてる。私は頷いた。教会に向か階段 、ここは新郎が新婦をお姫様抱っこして全部登らなきゃらしい。100段ちかい、結構急な階段。
(ガイドさん、新郎は筋トレして、新婦はダイエットするとかいってたなぁ)
そんなことを思っていると、樹くんは微笑みながら私の手を取る。
「あそこはどうだろう」
「……キツイよ?」
華奢な女の子ならまだしも、私ですよ? 胸に余計な脂肪が、とか言われちゃう系の。……余計なこと思い出した。青花、夏休みに入ってからはあんまり接触ないけれど、なにしてるんだろ。特進クラスだから、夏休みも夏課外があってるはずなんだけど、学校で見かけない。
「絶対平気だ」
樹くんは笑って、私をひょいと抱き上げた。
「全然余裕だ」
「う、うそだっ、無理だよっ、腰痛めるよう」
「こんなに軽いのに!」
楽しそうに樹くんは私を抱き上げたまま、くるくると回る。部屋が広いからいいけれど……!
「す、ストップストップ! 酔っちゃう」
「む、すまん。はしゃいでしまった」
はしゃいでたんだ! 胸がキュンとなる。可愛いよう!
「じゃああそこに決めよう」
「他には見なくていいのか」
「いいの」
ふふ、と私は笑う。
「だって樹くん、前からあそこがいいって言ってたもの」
「なんとなく、だがな」
「結構そういうの、大事だよ」
「そうだな」
横抱きにされたまま、キスを落とされた。おでこに、鼻に、頬に、唇に。
「愛してる」
「……私も」
樹くんはほんの少し、眉を寄せて私をソファにまた座らせた。それから、のしかかるみたいに私に近寄る。
「? 樹くん」
「私も、ではなくて」
耳を噛まれた。
「きちんと言ってほしい」
「ひゃ、あ、耳、耳、そんなしちゃダメ」
耳朶に直接響く樹くんの声! は、反則! 反則だよ!
「華、悪い子だな」
「わ、悪いとかそんなんじゃなくないっ!?」
だ、だって照れるもん!
「好き、好きだよ」
私は必死でそう樹くんに伝える。
「足りない」
樹くんは言い放って、私の鎖骨をガブリと噛んだ。甘噛みだけれど、なんていか、ゾクゾクした弱い電流みたいなのが走る感じ。
「さ、鎖骨噛むのダメって樹くんがっ」
「華のはいいんだ」
「めちゃくちゃだよう!」
「言えないのか、華」
「い、言うからやめ、」
「言うまでやめない」
噛まれて、舐められて、吸われて。私は震える声でなんとか絞り出すみたいに言った。
「あ、あいして、ますっ」
「よくできました」
「ひゃう」
変な声が出ちゃって正直気恥ずかしい。でも最後にもっかい噛まれたからっ。
「ふ、俺の理性がどうにかなるのは近そうだなぁ」
「今でもいいのになぁ」
「もう母親になりたいのか?」
「……まだいいです」
勉強と育児を両立できる自信がないよ……。
結局、樹くんはその場で仕事で知り合ったとかいうウェディング会社のお偉いさんにお願いして、速攻で日を抑えてくれた。
「大安だのなんだの、考えなくていいから楽だな」
「まぁそもそも海外の、それもキリスト教式でそこ考え出したらキリないよね」
「キリスト教の神に誓うのに、ブッダが死んだ日は避けるのはなぜだろう」
「縁起担ぎたいんだよ」
私もなんとなく気にする。
「そういうものか? 戦後始まった風習だと聞いているが」
「あ、そうなんだ」
「というか、俺も臨済宗だなぁ」
いいんだろうか、と妙なカオをする樹くんに、私は笑った。
「じゃあやっぱり、世界中の神様に誓いに行く?」
「そうするか」
樹くんはやたらと真面目そうに頷いた。
(冗談だよね?)
にこりと微笑む。まさか本気ではないでしょー。そう思って。
……しかしながら冗談のはずだったこの言葉、まさか数年かけて実行されるなんて、この時の私は知らなかったのでした。
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