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【高校編】分岐・鹿王院樹
それはとても穏やかで、
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「しょうがないよね、嫁だもんね」
「嫁だもん、旦那といないとね」
班の人たちは、からかい半分心配半分、みたいな感じで私に手を振る。私もバスに乗り込んだ皆んなに手を振って、それからホテルに戻った。
まぁ2人きりってわけじゃなくて、夜には樹くんのお父さんが様子を見に来てくれる。
(ちょっと緊張~)
いい人なんだけど。うん、やっぱり緊張するよ。
樹くんの部屋に行くと、樹くんはパソコンとにらめっこしていた。ブルーライトカットの薄い眼鏡をかけてて、うん、カッコ良いです。ちょっとーーじゃないな、かなりキュンとした。
「華?」
「あ、えっと、な、何してるの?」
「ああ、この際だからたまってた仕事を片付けようと」
「んー、無理はしないでね」
「了解だ」
樹くんは、ぽん、と私の頭を撫でた。
私は樹くんが座るソファの横に陣取って本を開く。
(静かだなぁ)
カタカタ、というキーボードを叩く音だけが響く。メールしたり書類読んだり、なんだか忙しそう。
全然会話がないけれど、それが全く苦痛じゃない。
(どきどきするのに、落ち着く)
不思議なものだよなぁ、と思う。全然別物っていうか、真反対なものな気がするのに。
昼食はルームサービスで、私はシーフードリゾットを注文してみた。
「おいしいっ」
「獲れたてなんだろうなぁ」
樹くんはロブスターをもぐもぐと食べながら答えた。
「海近いもんね~」
というか、目の前だ。昨日樹くんも盛大に飛び込んでいた。
「あとで行ってみるか」
樹くんの言葉に目を丸くする。
「あ、安静にっ、安静にしててっ」
まだ分かんないのだ! きっと、ううん、いや絶対大丈夫なんだろうけれど。
樹くんは苦笑した。
「いや、わかってるわかってる」
そっと私の頬を撫でた。
「散歩程度だ」
「あー、それくらいなら」
多分、いいと思う。ジッとしてるのも、身体に悪そうだし。
「ではさっさとコレを片付けねばな」
「お手伝いできなくてごめんね?」
なんか、ちょっと申し訳なくなって首を傾げた。樹くんばっか大変だよなぁ。
樹くんは苦笑して、私を抱き寄せる。
「華がいてくれるだけで、俺は頑張れる」
「樹くん?」
「だから、ここにいてくれること自体が俺を助けているんだ」
樹くんは、少し身体を離した。それから両頬をその大きな手で包み込むようにして微笑む。
「いつもありがとう、華」
私はその触れられた頬に熱が集まるのを感じた。
(ぎゃーっ)
何これ何これこの優しいカオは反則ですよ……。思わず目線をそらすと、樹くんは楽しげに笑いながら、私の頭に唇を落とす。
「安静にって指示さえなければなぁ」
「な、何する気だったのっ」
「まぁ、色々。帰国してからだな」
樹くんはニヤリと笑う。
(うう……)
帰国が楽しみなような、怖いような……。
そんな少しの休憩の後、樹くんは作業に戻る。私もまた、本を読み始めた。
しばらく読んでると眠くなってきて、樹くんに寄りかかってしまう。
「あー、ごめん」
「いい、ほら」
樹くんは私を膝枕して、私の顔を覗き込む。
「眠そうだ」
「うん、眠い」
答えながらも、睡魔がヤバイ。
「寝ているといい」
「でもねー、樹くんの体調見てなきゃ」
「少しでも変だと思ったら起こすから」
樹くんは苦笑する。
「夜もずっと起きている気か?」
……確かに3日間、それはムリだろう。
(お医者様もまず大丈夫だって言ってたらしいし)
仁の通訳付きだったけれど。
「そうする……」
目を閉じる。夢と現実のあわいで、私はずっと私を撫でる、優しい手の温かさを感じていた。
ばっと目を開けた。
樹くんは本を読んでいた。私がさっきまで読んでいたやつ。お仕事は終わったのかな。
「何か飲むか?」
「あー、いただきます……」
ちょっと寝ぼけてる。うーん、何時だろ。20時くらいまで陽が沈まないせいで、窓からの景色じゃ何時くらいから見当がつかない……。
樹くんは「えーと?」って、顔をしてるであろう私を見て、ほんの少し吹き出して「夕方の6時過ぎだ」と教えてくれた。
「えーっ」
私は思わず声を上げる。
「そ、そんなに!?」
「ぐっすり眠っていたから、起こすのも忍びなくてな」
「え、あ、そうなんだ……ありがと」
寝ぼけつつも笑ってお礼を言うと、樹くんはローテーブルの上にあった、ミネラルウォーターのペットボトルを渡しながら微笑んだ。
「散歩にでも行こうか、華」
「海沿い? そうしよっか」
樹くんと手を繋いで、ホテルを出る。
アドリア海の波は穏やかで、ざざあ、という静かな潮騒があたりを包んでいた。
広がる空は、明るいのに少し夕方の色味を帯びていた。水彩画のような水色。
「静かだなぁ」
「そうだねぇ」
昼間の喧騒が嘘のようだ。
(なんかゆっくりだなー)
ふと思う。
樹くんって常に忙しいヒトなので、こんな風にゆっくりするのなんか、なかなかないのだ。一緒に暮らしているせいで、あんまり実感はないけれど。
「穏やかだなぁ」
「? 海?」
「いや、」
樹くんは私をみて笑う。
「なんとなく、今」
「そうだねぇ」
きっと似たようなことを考えてた、っていうのがとても嬉しい。
手は繋いだまま、もう片方の手で樹くんの腕にぎゅうとしがみつく。
「華?」
「えへへ、好きー」
ちょっと甘えて言うと、樹くんは「俺もだ」と微笑む。
「愛してる、華」
優しげに細められた瞳。鼓動が跳ねた。
改めて言われると照れてしまう。しかも、あんなカオで。
「うー、樹くんずるいよ……」
「華から言い出したのに」
樹くんはそっと私の頭を撫でる。
でも顔を見上げると少し難しいカオをしていたから樹くんもちょっと照れてて、思わず私は笑ってしまった。
(カッコいいくせに)
ドキドキしながら私は思う。
(時々可愛いの、ほんと反則だよ!)
「嫁だもん、旦那といないとね」
班の人たちは、からかい半分心配半分、みたいな感じで私に手を振る。私もバスに乗り込んだ皆んなに手を振って、それからホテルに戻った。
まぁ2人きりってわけじゃなくて、夜には樹くんのお父さんが様子を見に来てくれる。
(ちょっと緊張~)
いい人なんだけど。うん、やっぱり緊張するよ。
樹くんの部屋に行くと、樹くんはパソコンとにらめっこしていた。ブルーライトカットの薄い眼鏡をかけてて、うん、カッコ良いです。ちょっとーーじゃないな、かなりキュンとした。
「華?」
「あ、えっと、な、何してるの?」
「ああ、この際だからたまってた仕事を片付けようと」
「んー、無理はしないでね」
「了解だ」
樹くんは、ぽん、と私の頭を撫でた。
私は樹くんが座るソファの横に陣取って本を開く。
(静かだなぁ)
カタカタ、というキーボードを叩く音だけが響く。メールしたり書類読んだり、なんだか忙しそう。
全然会話がないけれど、それが全く苦痛じゃない。
(どきどきするのに、落ち着く)
不思議なものだよなぁ、と思う。全然別物っていうか、真反対なものな気がするのに。
昼食はルームサービスで、私はシーフードリゾットを注文してみた。
「おいしいっ」
「獲れたてなんだろうなぁ」
樹くんはロブスターをもぐもぐと食べながら答えた。
「海近いもんね~」
というか、目の前だ。昨日樹くんも盛大に飛び込んでいた。
「あとで行ってみるか」
樹くんの言葉に目を丸くする。
「あ、安静にっ、安静にしててっ」
まだ分かんないのだ! きっと、ううん、いや絶対大丈夫なんだろうけれど。
樹くんは苦笑した。
「いや、わかってるわかってる」
そっと私の頬を撫でた。
「散歩程度だ」
「あー、それくらいなら」
多分、いいと思う。ジッとしてるのも、身体に悪そうだし。
「ではさっさとコレを片付けねばな」
「お手伝いできなくてごめんね?」
なんか、ちょっと申し訳なくなって首を傾げた。樹くんばっか大変だよなぁ。
樹くんは苦笑して、私を抱き寄せる。
「華がいてくれるだけで、俺は頑張れる」
「樹くん?」
「だから、ここにいてくれること自体が俺を助けているんだ」
樹くんは、少し身体を離した。それから両頬をその大きな手で包み込むようにして微笑む。
「いつもありがとう、華」
私はその触れられた頬に熱が集まるのを感じた。
(ぎゃーっ)
何これ何これこの優しいカオは反則ですよ……。思わず目線をそらすと、樹くんは楽しげに笑いながら、私の頭に唇を落とす。
「安静にって指示さえなければなぁ」
「な、何する気だったのっ」
「まぁ、色々。帰国してからだな」
樹くんはニヤリと笑う。
(うう……)
帰国が楽しみなような、怖いような……。
そんな少しの休憩の後、樹くんは作業に戻る。私もまた、本を読み始めた。
しばらく読んでると眠くなってきて、樹くんに寄りかかってしまう。
「あー、ごめん」
「いい、ほら」
樹くんは私を膝枕して、私の顔を覗き込む。
「眠そうだ」
「うん、眠い」
答えながらも、睡魔がヤバイ。
「寝ているといい」
「でもねー、樹くんの体調見てなきゃ」
「少しでも変だと思ったら起こすから」
樹くんは苦笑する。
「夜もずっと起きている気か?」
……確かに3日間、それはムリだろう。
(お医者様もまず大丈夫だって言ってたらしいし)
仁の通訳付きだったけれど。
「そうする……」
目を閉じる。夢と現実のあわいで、私はずっと私を撫でる、優しい手の温かさを感じていた。
ばっと目を開けた。
樹くんは本を読んでいた。私がさっきまで読んでいたやつ。お仕事は終わったのかな。
「何か飲むか?」
「あー、いただきます……」
ちょっと寝ぼけてる。うーん、何時だろ。20時くらいまで陽が沈まないせいで、窓からの景色じゃ何時くらいから見当がつかない……。
樹くんは「えーと?」って、顔をしてるであろう私を見て、ほんの少し吹き出して「夕方の6時過ぎだ」と教えてくれた。
「えーっ」
私は思わず声を上げる。
「そ、そんなに!?」
「ぐっすり眠っていたから、起こすのも忍びなくてな」
「え、あ、そうなんだ……ありがと」
寝ぼけつつも笑ってお礼を言うと、樹くんはローテーブルの上にあった、ミネラルウォーターのペットボトルを渡しながら微笑んだ。
「散歩にでも行こうか、華」
「海沿い? そうしよっか」
樹くんと手を繋いで、ホテルを出る。
アドリア海の波は穏やかで、ざざあ、という静かな潮騒があたりを包んでいた。
広がる空は、明るいのに少し夕方の色味を帯びていた。水彩画のような水色。
「静かだなぁ」
「そうだねぇ」
昼間の喧騒が嘘のようだ。
(なんかゆっくりだなー)
ふと思う。
樹くんって常に忙しいヒトなので、こんな風にゆっくりするのなんか、なかなかないのだ。一緒に暮らしているせいで、あんまり実感はないけれど。
「穏やかだなぁ」
「? 海?」
「いや、」
樹くんは私をみて笑う。
「なんとなく、今」
「そうだねぇ」
きっと似たようなことを考えてた、っていうのがとても嬉しい。
手は繋いだまま、もう片方の手で樹くんの腕にぎゅうとしがみつく。
「華?」
「えへへ、好きー」
ちょっと甘えて言うと、樹くんは「俺もだ」と微笑む。
「愛してる、華」
優しげに細められた瞳。鼓動が跳ねた。
改めて言われると照れてしまう。しかも、あんなカオで。
「うー、樹くんずるいよ……」
「華から言い出したのに」
樹くんはそっと私の頭を撫でる。
でも顔を見上げると少し難しいカオをしていたから樹くんもちょっと照れてて、思わず私は笑ってしまった。
(カッコいいくせに)
ドキドキしながら私は思う。
(時々可愛いの、ほんと反則だよ!)
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