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分岐・鍋島真
カフェテリアにて(side千晶)
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「ちょっと待って華ちゃん今なんて言ったの?」
「え、だから真さんに理科教えてもらってて、今」
きょとんとして言う華ちゃんは驚くほどにいつも通りだ。
華ちゃんお気に入りのカフェ。窓の外はカンカン照りで、コンクリートが溶けそうなほど。
「で、でも華ちゃん、あのヒトこのあいだ華ちゃんに失礼なことを」
怖かったよね? と聞くと華ちゃんは苦笑いした。プロポーズ事件。ほんと失礼なことを……あのファッキンクソ兄貴。
「あれはやだったけど、謝ってくれたし」
「いやでも」
「ムカつくのはムカつくし嫌いだけど」
「あ、嫌いなのね」
ちょっと安心した。
「でも分かりやすいんだよ……」
最近成績が伸び悩んでた華ちゃんは、お兄様の誘惑(?)に乗ってしまったらしい。
(何を企んでるんだろう)
あのヒトがたんなる親切心で家庭教師(無償)を引き受けるハズがない。
「ひよりちゃんも誘おうかな」
「や、やめて」
わたしは思わず身を乗り出した。
「あれ以上惚れさせてどうするの」
「でもなぁ、友達の好きな人に教えてもらうなんて」
「いやいいから。黙ってたらいいから」
わたしは必死で言った。これ以上ややこしくしないで……! ほんとにお兄様は暴走すると手に負えないのだ。
「じゃあ千晶ちゃんも一緒に教わろう? 2人きりは気まずいよ」
ひよりちゃんに、と言う華ちゃん。
「ま、まぁ確かに……」
2人きりにしてしまうより、いい。気がついたら華ちゃんが手篭めにされちゃってるなんてことがあったら、目も当てられない……!
その時噂をすれば影、というかここで待ち合わせをしていたひよりちゃんがカフェの扉を開けて入ってきた。
暑かったせいか、頬が上気していて赤い。テニス部の彼女は、日焼けをしていてそこもまた健康的で可愛らしい。
「あ、ふたりとも、聞いてー!」
入ってくるなり、ひよりちゃんは華ちゃんの横に座りながら言った。
「ふられましたー!」
「「エッ!?」」
わたしたちは同時に変な声を出した。
「だ、誰に!?」
「真さんに決まってるじゃんっ」
ひよりちゃんは口を尖らせた。
「夏休みだよ!? イベントたくさんだもんっ。誘ったのー」
「え、どうやって?」
「たまたま駅前で会ったんだよ~。八月の花火大会、誘ったの。普通に断られた」
「じゅ、受験生だもん」
華ちゃんがフォローに入る。フォローしなくていい! あんな男のことは即刻忘れさせるに限る!
「ちがうの。ふつうに、好きな子誘いたいからごめんねって」
「え」
わたしはびっくりして固まった。好きな子誘いたい? 好きな子? そんな人いるのあのヒトに?
(……単なる断り文句かな)
わたしはうなずく。うん、そんな殊勝なヒトではない。
「ま、いいんだー! 好きな人探すんだっ!」
「失恋に効くのは新しい恋だけだっていうもんね」
華ちゃんは実感がこもった様子で頷いた。
「華ちゃんたちは好きな人とかいないの!?」
「わたしたち?」
華ちゃんと目が合う。
「わたしは今いないかなー……」
ふう、とため息をついた。
「恋、したいけど」
「え、したいの?」
華ちゃんが驚いたように言う。
「え、なに、失礼な」
「ううん、だって」
言いたいことは分かる。前世のオトナだった記憶があるのに、同じ年頃の男の子に恋なんかできるの? って感じだろう。
(でもわたし)
"千晶"としての記憶もあるから、それに関しては抵抗はない。
「華ちゃんはー? タケルとかどう?」
「く、黒田くん」
華ちゃんはほんの少し赤くなる。
わたしは体育祭のことを思い出す。黒田くんを追う華ちゃん!
「や、うん、違うと思う」
「そうなの?」
「ごめん、こんなの勘違いだったらすっごい恥ずかしいんだけど、……黒田くん、私のこと好きだったりする、のかな」
「あっやっと気付いた?」
「う、あ、やっぱり」
華ちゃんは赤くなる。
「それでかな、なんか緊張しちゃって」
多分それでドキドキしたりしてた、と華ちゃんは言う。
「え、それタケルのことアリってこと?」
「や、それは」
言い淀む華ちゃんにわたしは焦る。個人的には、華ちゃんには樹くんと普通に幸せになってもらいたいのだ!
「わ、わかんない~」
華ちゃんはテーブルに伏せた。
「あんまり人に好意示されたことないから……」
受け取り方が分からない、という華ちゃんは、やっぱり普通の14歳の女の子だと思う。ナカミにいくら大人の記憶があったって、身体も、それを操る脳だって、14歳のそれなのだ。
「まぁ断るなら断っちゃってー」
気軽な感じで、ひよりちゃんはケタケタ笑う。
「告白もされてないのにムリだよ」
華ちゃんは気まずそうに言った。
「ちなみに他に気になるヒトとかって」
「いないよ」
きっぱり、と華ちゃんは言った。
「世界一可愛い弟とか、甥っ子とかみたいに可愛い人ならいるけど」
「甥っ子なんて。気が早いね」
ひよりちゃんは笑うけど、わたしは「それって樹くん?」と聞きたい……。え、華ちゃん、樹くんのこと甥っ子的存在だと思ってるの?
(い、樹くん頑張って)
おそらくこの酷暑の中、今日もサッカーに励んでいるあの男の子を思い出す。
「まぁそんな感じでさ! 振られたわけ! 報われない恋をしてたわけ!」
ひよりちゃんは口を尖らせた。
「なのに、先生ったらひどいの、わたしはそんな恋絶対してないなんて言うの」
「先生?」
華ちゃんが聞き返す。
「あ、ごめんピアノの先生」
ひよりちゃんは楽譜を取り出した。
「難しそう」
覗き込んだ華ちゃんがそう言って目を丸くした楽譜を、わたしは見たことがある。中学入学まで、ピアノを習っていたから。
ベートーヴェンのピアノソナタ第14番、嬰ハ短調 、作品27-2 。
通称、月光ソナタ。
「なるほどね」
「なにがなるほど?」
不思議そうな顔をする華ちゃんに、わたしは説明した。
「これってね、ベートーヴェンが恋した人のために作ったって言われてるの。身分違いの、叶わぬ恋の」
「へえ」
華ちゃんはあまり興味がないのか、並んだ音符や指示記号を眺めては「数学みたい」だの「これ10本で足りる? 指?」だのひよりちゃんに聞いていた。
「弾くのはね、弾けるんだよー、なんとなくは。いやミスはあるけど。でも楽譜どおりに鍵盤押してるだけだって」
ふう、とひよりちゃんは溜め息をついた。
「これね、うまく弾けたら青百合の推薦もらえるかもで」
「青百合の推薦?」
「そそそ。わたし、音楽科希望なの。音大行きたいから」
「そうだったんだ」
「別にピアニストになりたいとかじゃなくて、ピアノか音楽の先生になりたいなぁって感じなんだけど」
ひよりちゃんはテーブルの上を鍵盤に見立てて、ピアノを弾くような仕草をした。
「だめだねー、弾けないんだっ」
「てか、先生レベルになると分かるんだね、感情こもってるとかこもってないとか」
「あは、わたしにも分かんなーい」
ケタケタ、と笑い合うふたり。
その様子はどこまでも健康的な2人の女の子で、わたしは少し目を細めた。
どうか、この平穏がずっと続きますように。
「え、だから真さんに理科教えてもらってて、今」
きょとんとして言う華ちゃんは驚くほどにいつも通りだ。
華ちゃんお気に入りのカフェ。窓の外はカンカン照りで、コンクリートが溶けそうなほど。
「で、でも華ちゃん、あのヒトこのあいだ華ちゃんに失礼なことを」
怖かったよね? と聞くと華ちゃんは苦笑いした。プロポーズ事件。ほんと失礼なことを……あのファッキンクソ兄貴。
「あれはやだったけど、謝ってくれたし」
「いやでも」
「ムカつくのはムカつくし嫌いだけど」
「あ、嫌いなのね」
ちょっと安心した。
「でも分かりやすいんだよ……」
最近成績が伸び悩んでた華ちゃんは、お兄様の誘惑(?)に乗ってしまったらしい。
(何を企んでるんだろう)
あのヒトがたんなる親切心で家庭教師(無償)を引き受けるハズがない。
「ひよりちゃんも誘おうかな」
「や、やめて」
わたしは思わず身を乗り出した。
「あれ以上惚れさせてどうするの」
「でもなぁ、友達の好きな人に教えてもらうなんて」
「いやいいから。黙ってたらいいから」
わたしは必死で言った。これ以上ややこしくしないで……! ほんとにお兄様は暴走すると手に負えないのだ。
「じゃあ千晶ちゃんも一緒に教わろう? 2人きりは気まずいよ」
ひよりちゃんに、と言う華ちゃん。
「ま、まぁ確かに……」
2人きりにしてしまうより、いい。気がついたら華ちゃんが手篭めにされちゃってるなんてことがあったら、目も当てられない……!
その時噂をすれば影、というかここで待ち合わせをしていたひよりちゃんがカフェの扉を開けて入ってきた。
暑かったせいか、頬が上気していて赤い。テニス部の彼女は、日焼けをしていてそこもまた健康的で可愛らしい。
「あ、ふたりとも、聞いてー!」
入ってくるなり、ひよりちゃんは華ちゃんの横に座りながら言った。
「ふられましたー!」
「「エッ!?」」
わたしたちは同時に変な声を出した。
「だ、誰に!?」
「真さんに決まってるじゃんっ」
ひよりちゃんは口を尖らせた。
「夏休みだよ!? イベントたくさんだもんっ。誘ったのー」
「え、どうやって?」
「たまたま駅前で会ったんだよ~。八月の花火大会、誘ったの。普通に断られた」
「じゅ、受験生だもん」
華ちゃんがフォローに入る。フォローしなくていい! あんな男のことは即刻忘れさせるに限る!
「ちがうの。ふつうに、好きな子誘いたいからごめんねって」
「え」
わたしはびっくりして固まった。好きな子誘いたい? 好きな子? そんな人いるのあのヒトに?
(……単なる断り文句かな)
わたしはうなずく。うん、そんな殊勝なヒトではない。
「ま、いいんだー! 好きな人探すんだっ!」
「失恋に効くのは新しい恋だけだっていうもんね」
華ちゃんは実感がこもった様子で頷いた。
「華ちゃんたちは好きな人とかいないの!?」
「わたしたち?」
華ちゃんと目が合う。
「わたしは今いないかなー……」
ふう、とため息をついた。
「恋、したいけど」
「え、したいの?」
華ちゃんが驚いたように言う。
「え、なに、失礼な」
「ううん、だって」
言いたいことは分かる。前世のオトナだった記憶があるのに、同じ年頃の男の子に恋なんかできるの? って感じだろう。
(でもわたし)
"千晶"としての記憶もあるから、それに関しては抵抗はない。
「華ちゃんはー? タケルとかどう?」
「く、黒田くん」
華ちゃんはほんの少し赤くなる。
わたしは体育祭のことを思い出す。黒田くんを追う華ちゃん!
「や、うん、違うと思う」
「そうなの?」
「ごめん、こんなの勘違いだったらすっごい恥ずかしいんだけど、……黒田くん、私のこと好きだったりする、のかな」
「あっやっと気付いた?」
「う、あ、やっぱり」
華ちゃんは赤くなる。
「それでかな、なんか緊張しちゃって」
多分それでドキドキしたりしてた、と華ちゃんは言う。
「え、それタケルのことアリってこと?」
「や、それは」
言い淀む華ちゃんにわたしは焦る。個人的には、華ちゃんには樹くんと普通に幸せになってもらいたいのだ!
「わ、わかんない~」
華ちゃんはテーブルに伏せた。
「あんまり人に好意示されたことないから……」
受け取り方が分からない、という華ちゃんは、やっぱり普通の14歳の女の子だと思う。ナカミにいくら大人の記憶があったって、身体も、それを操る脳だって、14歳のそれなのだ。
「まぁ断るなら断っちゃってー」
気軽な感じで、ひよりちゃんはケタケタ笑う。
「告白もされてないのにムリだよ」
華ちゃんは気まずそうに言った。
「ちなみに他に気になるヒトとかって」
「いないよ」
きっぱり、と華ちゃんは言った。
「世界一可愛い弟とか、甥っ子とかみたいに可愛い人ならいるけど」
「甥っ子なんて。気が早いね」
ひよりちゃんは笑うけど、わたしは「それって樹くん?」と聞きたい……。え、華ちゃん、樹くんのこと甥っ子的存在だと思ってるの?
(い、樹くん頑張って)
おそらくこの酷暑の中、今日もサッカーに励んでいるあの男の子を思い出す。
「まぁそんな感じでさ! 振られたわけ! 報われない恋をしてたわけ!」
ひよりちゃんは口を尖らせた。
「なのに、先生ったらひどいの、わたしはそんな恋絶対してないなんて言うの」
「先生?」
華ちゃんが聞き返す。
「あ、ごめんピアノの先生」
ひよりちゃんは楽譜を取り出した。
「難しそう」
覗き込んだ華ちゃんがそう言って目を丸くした楽譜を、わたしは見たことがある。中学入学まで、ピアノを習っていたから。
ベートーヴェンのピアノソナタ第14番、嬰ハ短調 、作品27-2 。
通称、月光ソナタ。
「なるほどね」
「なにがなるほど?」
不思議そうな顔をする華ちゃんに、わたしは説明した。
「これってね、ベートーヴェンが恋した人のために作ったって言われてるの。身分違いの、叶わぬ恋の」
「へえ」
華ちゃんはあまり興味がないのか、並んだ音符や指示記号を眺めては「数学みたい」だの「これ10本で足りる? 指?」だのひよりちゃんに聞いていた。
「弾くのはね、弾けるんだよー、なんとなくは。いやミスはあるけど。でも楽譜どおりに鍵盤押してるだけだって」
ふう、とひよりちゃんは溜め息をついた。
「これね、うまく弾けたら青百合の推薦もらえるかもで」
「青百合の推薦?」
「そそそ。わたし、音楽科希望なの。音大行きたいから」
「そうだったんだ」
「別にピアニストになりたいとかじゃなくて、ピアノか音楽の先生になりたいなぁって感じなんだけど」
ひよりちゃんはテーブルの上を鍵盤に見立てて、ピアノを弾くような仕草をした。
「だめだねー、弾けないんだっ」
「てか、先生レベルになると分かるんだね、感情こもってるとかこもってないとか」
「あは、わたしにも分かんなーい」
ケタケタ、と笑い合うふたり。
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