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分岐・黒田健
中学編エピローグ【続きは高校編へ】
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「わたし振られたの」
桜の花びら越しの日が眩しいそんな日、いつものカフェで、ひよりちゃんは私と千晶ちゃんに、あっけらかんと言い放った。
「え、真さんに!?」
私は千晶ちゃんと顔を見合わせた。い、いつのまに!?
「ほかに誰がいるの~」
ぷう、と頬を膨らませるひよりちゃん。
「本気で好きになりそうな人がいるから、女遊びやめるって」
千晶ちゃんが「ぎゃあ」って顔でわたしを見て、私はぶんぶんと首を振った。なにそれ知らない。きっと別の人! 絶対。
「でもま、わたしも受験だし」
いーの、忘れて受験に専念するの、とひよりちゃんはショートケーキをぱくりと食べながら言った。
「だねー」
答えながら、ちょっと気が重くなる。前世も合わせて2度目の高校受験。前世では胃を悪くしたんだっけな。
「ひよりちゃんは音楽科受けるのは決定なの?」
「うん、音大行ってピアノの先生になりたいからねぇ」
「受験ってどんなことするの?」
私が聞くと、ひよりちゃんはカバンから楽譜を取り出してくれた。
「ばーん」
「うっわ、難しそう」
「結局月光ソナタは先生に却下されちゃったー」
千晶ちゃんが意外そうな顔をした。
「え、"月光"を?」
「うん。今度はモーツァルト。多分これで受験する」
楽譜を覗き込むと、やっぱり難しそう……。なんだこれ、数学の記号みたいなのたくさんだ。
「ほんと凄いよ、こんなの弾けるんだもんひよりちゃん!」
「あは、ありがと! これ暗譜して弾かなきゃなの。あと面接と英語の試験だよ」
「英語もあるのかぁ」
「凄い子は留学とかもあるからね。あ、ごめん、わたしもう行かなきゃだ」
慌てて席を立つひよりちゃん。
「あ、部活か」
今日は日曜だけど、午後練だけあるらしい。午前中はピアノ、午後はテニスと相変わらずひよりちゃんは大忙しだ。
またね、と手を振るひよりちゃんに手を振り返しながら、ふと私はさっきの疑問を千晶ちゃんにぶつけた。
「ね、千晶ちゃん」
「ん?」
「さっきなんで不思議そうな顔してたの?」
「ああ」
千晶ちゃんは上品な猫のような目をくるりとさせて、少し難しい顔をした。
「あのね、ひよりちゃんが悪役するはずだった"ブルームーン"では"月光"が重要なファクターだったの。ひよりちゃんも思い入れがあって、ゲームでも、確か受験でも弾いたみたいな話が出てた、はず」
千晶ちゃんは「もしかしたら」と話をつなげた。
「もう、"ゲームのシナリオ"とは全然違う世界になってるのかもね、少なくともひよりちゃんにとって」
"ゲーム"とは違う世界。そんな風になっているのではないか、というのは私も感じていたけど……。
(それがハッキリ現れてきたかんじ?)
そんな風に考えながら、頷いた。
それからしばらくお喋りして、私はカフェを出た。目指すは駅前のお花屋さん。「お墓まいり」とは言わず、華やかな感じの花束にしてもらう。きっとあの子は菊よりバラとかのが好きそうな気がするし。
(何も知らないけれど)
知っているのは、ただひたすらに自らの正義を信奉していたということだけーー。
お店を出て、バスに乗る。しばらく揺られていると、一年ぶりの霊園が見えた。
バス停のベンチに、その子はちょこんと腰掛けていた。
「石宮さん」
「あ。し、設楽さん。やほ」
「久しぶりだね」
そう言うと、石宮さんは控えめに笑った。
「何時くらいまで大丈夫なの?」
「夕方までに帰れば大丈夫、だよ」
「……保護観察処分、って、聞いたけど」
「う、うん、そうなの。レポートみたいの書いたりしてる。生活のこととか」
あと、と石宮さんは小さく言った。
「る、瑠璃……、じゃない、わたし、が騙しちゃった女の子たちに、謝って回ってるの。行ける範囲は直接で、遠い人には手紙で……も、もちろんその内直接謝りたいとは思ってるんだけど」
石宮さんは軽く目を伏せた。
「わたしのせいで、辛い目にあわせちゃった」
桜の下、ずらりと続く御影石の間を、そう話しながら歩く。そうして見つけた、やっぱりまだ新しい「松影」の名前が彫られたお墓。
石宮さんは自分の持ってきた花束を供えて、静かに目を閉じた。
しばらくそうしていただろうか。ふ、と顔を上げて振り向く。
「つ、付き合ってくれてありがと。ちゃんと……謝れた」
「謝る?」
「か、勝手に……わたし、ルナちゃんの敵討、みたいに思って突っ走ったから。勝手に利用して、ごめんなさいって」
「あー」
「それと、……設楽さんたちのこと、悪い子だって思い込んで、自分のことしか見えてないくせに、周りをまきこんで」
石宮さんはふと真剣な目になる。
「ごめんなさい」
「え」
勢いよく頭を下げられて、私は戸惑った。
「鍋島さんのところにも、近々謝りにいくつもりなの。お兄さんがなかなか会わせてくれない、んだけど」
真さんセキュリティ。私は苦笑した。
「じゃ、ま、またね」
「え?」
「お邪魔はしませんよう。てっとにまた怒られる、からっ」
ぱっ、と体を翻して走り出す石宮さん。
石宮さんが駆けていく方向から、見慣れた少年が歩いてくる。黒田くんだ。花束を持っている。
「おう」
すれ違う石宮さんに軽く手を挙げた。
石宮さんはぺこりと頭を下げて、また小走りに駆けて行った。
「黒田くん、なんで?」
「いや、来てるかなって」
「言ってくれたら良かったのに」
黒田くんは少し笑って「まぁな」と肩をすくめた。
それからお花を供えて、軽く手を合わせていた。
(松影ルナさん)
私もお花を供える。何を祈ればいいのかまだ分からないけれど、それでもやっと、手を合わせることができた。
黒田くんと並んで、出口の方に歩き出す。
「設楽」
黒田くんが私の髪から、桜の花びらをつまみ上げた。それからついでみたいに、髪の毛をサラリとすくう。
「髪、伸びたな」
「ん? あー、そろそろ切らなきゃ」
「似合うけどな」
「……長い方が好き?」
私が言うと、黒田くんは笑った。
「設楽はどっちが好きなんだよ」
「短い方」
「じゃー俺もそっち」
「む、適当?」
「ちげぇよ」
黒田くんは私の手を握る。
「素の設楽が好きなだけ」
「素?」
「俺あんまゴイリョクねーからなぁ」
黒田くんは少し考えるようにして、それから「まぁいいや」と私の手を引いた。
「長かろうが短かろうが設楽は設楽ってこと」
「まぁその通りなんだけど」
バス停で、バスを並んで待つ。手は繋いだまま。あったかい手。
「ひよりちゃんは青百合受けるみたいだよ」
「あー、なんか母さんが言ってたな」
私はほんの少しだけ、不安になる。きっとシナリオ通りに、黒田くんは青百合へ行くのだろうし……私はきっと別の高校へ進むから。私の知らないところで、2人に何かある、とか思ってるわけじゃない。わけじゃないけど、なんとなく、ヤキモチ。
(あーやっぱ私ワガママ)
頭では分かってるのにね。
「何シブい顔してんだ」
「し、しぶい」
そんな顔してましたか?
「なぁ設楽」
「なに?」
「何か不安とか心配とかあったら言えよ、なんでもいーよ」
「なんで?」
「俺にとって一番嫌なのが、設楽がなんか1人で抱え込んだりすることだから」
私はぱちぱち、と瞬きをして黒田くんを見た。
「マジで。マジでいやだから」
「そ、そんなに力説しなくても」
私はぎゅう、と手を強く握られて少し赤面する。
(私、バカだな)
こんなに想われてるのに、なに勝手に想像してヤキモチ妬いてるんだろ。
「……あのね、進路分かれるのやだなって」
ちょっとごまかして、そう呟いた。
「設楽女子校だよな。都内の」
「第一志望はね~」
受かるかわかんないけど。
「……俺、横浜の男子校受けようと思ってて」
「ん!? えと、あれ!? 青百合は!?」
「青百合? あれ俺、先輩に青百合誘われてる話してたか?」
「え、う、うんっ」
されてなかったけど、勢いで頷いてしまった。
「いや、青百合も空手強ぇんたけどな。今通ってるとこのコーチの知り合いがそこの男子校で監督されてて」
黒田くんは一回言葉を切ってから、また続けた。
「そこの練習がな、厳しいらしいんだけど……、強くなれそうなんだよ」
黒田くんはまっすぐ私を見た。私の好きな目。芯のある瞳。
「うん」
私は頷きながら、ふと思う。これは随分、ゲームのシナリオから外れた展開だよな、って。
(もしかして、このまま、ゲームの強制力みたいなの、無視して行けちゃう?)
破滅エンド回避確定、だったり、します?
もちろん、2人とも無事に合格できたら、の話なんだけど。
(どうかな)
私は少し不安になる。周りみんなから見捨てられての、破滅エンド……。想像するだけで、ゾッとするけれど。
私は空を見上げる。霞のような桜色の向こうに、水色の空が広がっていて、私は思わず目を細めた。
横には大好きな黒田くんがいて、私の手を握ってくれている。
(大丈夫)
この先の未来が、ゲームの影響力があろうとなかろうと、きっと私は大丈夫。だって私は1人じゃないもの。
私は黒田くんを見上げた。黒田くんは私を見て、それからほんの少し、頬を緩めた。
桜の花びら越しの日が眩しいそんな日、いつものカフェで、ひよりちゃんは私と千晶ちゃんに、あっけらかんと言い放った。
「え、真さんに!?」
私は千晶ちゃんと顔を見合わせた。い、いつのまに!?
「ほかに誰がいるの~」
ぷう、と頬を膨らませるひよりちゃん。
「本気で好きになりそうな人がいるから、女遊びやめるって」
千晶ちゃんが「ぎゃあ」って顔でわたしを見て、私はぶんぶんと首を振った。なにそれ知らない。きっと別の人! 絶対。
「でもま、わたしも受験だし」
いーの、忘れて受験に専念するの、とひよりちゃんはショートケーキをぱくりと食べながら言った。
「だねー」
答えながら、ちょっと気が重くなる。前世も合わせて2度目の高校受験。前世では胃を悪くしたんだっけな。
「ひよりちゃんは音楽科受けるのは決定なの?」
「うん、音大行ってピアノの先生になりたいからねぇ」
「受験ってどんなことするの?」
私が聞くと、ひよりちゃんはカバンから楽譜を取り出してくれた。
「ばーん」
「うっわ、難しそう」
「結局月光ソナタは先生に却下されちゃったー」
千晶ちゃんが意外そうな顔をした。
「え、"月光"を?」
「うん。今度はモーツァルト。多分これで受験する」
楽譜を覗き込むと、やっぱり難しそう……。なんだこれ、数学の記号みたいなのたくさんだ。
「ほんと凄いよ、こんなの弾けるんだもんひよりちゃん!」
「あは、ありがと! これ暗譜して弾かなきゃなの。あと面接と英語の試験だよ」
「英語もあるのかぁ」
「凄い子は留学とかもあるからね。あ、ごめん、わたしもう行かなきゃだ」
慌てて席を立つひよりちゃん。
「あ、部活か」
今日は日曜だけど、午後練だけあるらしい。午前中はピアノ、午後はテニスと相変わらずひよりちゃんは大忙しだ。
またね、と手を振るひよりちゃんに手を振り返しながら、ふと私はさっきの疑問を千晶ちゃんにぶつけた。
「ね、千晶ちゃん」
「ん?」
「さっきなんで不思議そうな顔してたの?」
「ああ」
千晶ちゃんは上品な猫のような目をくるりとさせて、少し難しい顔をした。
「あのね、ひよりちゃんが悪役するはずだった"ブルームーン"では"月光"が重要なファクターだったの。ひよりちゃんも思い入れがあって、ゲームでも、確か受験でも弾いたみたいな話が出てた、はず」
千晶ちゃんは「もしかしたら」と話をつなげた。
「もう、"ゲームのシナリオ"とは全然違う世界になってるのかもね、少なくともひよりちゃんにとって」
"ゲーム"とは違う世界。そんな風になっているのではないか、というのは私も感じていたけど……。
(それがハッキリ現れてきたかんじ?)
そんな風に考えながら、頷いた。
それからしばらくお喋りして、私はカフェを出た。目指すは駅前のお花屋さん。「お墓まいり」とは言わず、華やかな感じの花束にしてもらう。きっとあの子は菊よりバラとかのが好きそうな気がするし。
(何も知らないけれど)
知っているのは、ただひたすらに自らの正義を信奉していたということだけーー。
お店を出て、バスに乗る。しばらく揺られていると、一年ぶりの霊園が見えた。
バス停のベンチに、その子はちょこんと腰掛けていた。
「石宮さん」
「あ。し、設楽さん。やほ」
「久しぶりだね」
そう言うと、石宮さんは控えめに笑った。
「何時くらいまで大丈夫なの?」
「夕方までに帰れば大丈夫、だよ」
「……保護観察処分、って、聞いたけど」
「う、うん、そうなの。レポートみたいの書いたりしてる。生活のこととか」
あと、と石宮さんは小さく言った。
「る、瑠璃……、じゃない、わたし、が騙しちゃった女の子たちに、謝って回ってるの。行ける範囲は直接で、遠い人には手紙で……も、もちろんその内直接謝りたいとは思ってるんだけど」
石宮さんは軽く目を伏せた。
「わたしのせいで、辛い目にあわせちゃった」
桜の下、ずらりと続く御影石の間を、そう話しながら歩く。そうして見つけた、やっぱりまだ新しい「松影」の名前が彫られたお墓。
石宮さんは自分の持ってきた花束を供えて、静かに目を閉じた。
しばらくそうしていただろうか。ふ、と顔を上げて振り向く。
「つ、付き合ってくれてありがと。ちゃんと……謝れた」
「謝る?」
「か、勝手に……わたし、ルナちゃんの敵討、みたいに思って突っ走ったから。勝手に利用して、ごめんなさいって」
「あー」
「それと、……設楽さんたちのこと、悪い子だって思い込んで、自分のことしか見えてないくせに、周りをまきこんで」
石宮さんはふと真剣な目になる。
「ごめんなさい」
「え」
勢いよく頭を下げられて、私は戸惑った。
「鍋島さんのところにも、近々謝りにいくつもりなの。お兄さんがなかなか会わせてくれない、んだけど」
真さんセキュリティ。私は苦笑した。
「じゃ、ま、またね」
「え?」
「お邪魔はしませんよう。てっとにまた怒られる、からっ」
ぱっ、と体を翻して走り出す石宮さん。
石宮さんが駆けていく方向から、見慣れた少年が歩いてくる。黒田くんだ。花束を持っている。
「おう」
すれ違う石宮さんに軽く手を挙げた。
石宮さんはぺこりと頭を下げて、また小走りに駆けて行った。
「黒田くん、なんで?」
「いや、来てるかなって」
「言ってくれたら良かったのに」
黒田くんは少し笑って「まぁな」と肩をすくめた。
それからお花を供えて、軽く手を合わせていた。
(松影ルナさん)
私もお花を供える。何を祈ればいいのかまだ分からないけれど、それでもやっと、手を合わせることができた。
黒田くんと並んで、出口の方に歩き出す。
「設楽」
黒田くんが私の髪から、桜の花びらをつまみ上げた。それからついでみたいに、髪の毛をサラリとすくう。
「髪、伸びたな」
「ん? あー、そろそろ切らなきゃ」
「似合うけどな」
「……長い方が好き?」
私が言うと、黒田くんは笑った。
「設楽はどっちが好きなんだよ」
「短い方」
「じゃー俺もそっち」
「む、適当?」
「ちげぇよ」
黒田くんは私の手を握る。
「素の設楽が好きなだけ」
「素?」
「俺あんまゴイリョクねーからなぁ」
黒田くんは少し考えるようにして、それから「まぁいいや」と私の手を引いた。
「長かろうが短かろうが設楽は設楽ってこと」
「まぁその通りなんだけど」
バス停で、バスを並んで待つ。手は繋いだまま。あったかい手。
「ひよりちゃんは青百合受けるみたいだよ」
「あー、なんか母さんが言ってたな」
私はほんの少しだけ、不安になる。きっとシナリオ通りに、黒田くんは青百合へ行くのだろうし……私はきっと別の高校へ進むから。私の知らないところで、2人に何かある、とか思ってるわけじゃない。わけじゃないけど、なんとなく、ヤキモチ。
(あーやっぱ私ワガママ)
頭では分かってるのにね。
「何シブい顔してんだ」
「し、しぶい」
そんな顔してましたか?
「なぁ設楽」
「なに?」
「何か不安とか心配とかあったら言えよ、なんでもいーよ」
「なんで?」
「俺にとって一番嫌なのが、設楽がなんか1人で抱え込んだりすることだから」
私はぱちぱち、と瞬きをして黒田くんを見た。
「マジで。マジでいやだから」
「そ、そんなに力説しなくても」
私はぎゅう、と手を強く握られて少し赤面する。
(私、バカだな)
こんなに想われてるのに、なに勝手に想像してヤキモチ妬いてるんだろ。
「……あのね、進路分かれるのやだなって」
ちょっとごまかして、そう呟いた。
「設楽女子校だよな。都内の」
「第一志望はね~」
受かるかわかんないけど。
「……俺、横浜の男子校受けようと思ってて」
「ん!? えと、あれ!? 青百合は!?」
「青百合? あれ俺、先輩に青百合誘われてる話してたか?」
「え、う、うんっ」
されてなかったけど、勢いで頷いてしまった。
「いや、青百合も空手強ぇんたけどな。今通ってるとこのコーチの知り合いがそこの男子校で監督されてて」
黒田くんは一回言葉を切ってから、また続けた。
「そこの練習がな、厳しいらしいんだけど……、強くなれそうなんだよ」
黒田くんはまっすぐ私を見た。私の好きな目。芯のある瞳。
「うん」
私は頷きながら、ふと思う。これは随分、ゲームのシナリオから外れた展開だよな、って。
(もしかして、このまま、ゲームの強制力みたいなの、無視して行けちゃう?)
破滅エンド回避確定、だったり、します?
もちろん、2人とも無事に合格できたら、の話なんだけど。
(どうかな)
私は少し不安になる。周りみんなから見捨てられての、破滅エンド……。想像するだけで、ゾッとするけれど。
私は空を見上げる。霞のような桜色の向こうに、水色の空が広がっていて、私は思わず目を細めた。
横には大好きな黒田くんがいて、私の手を握ってくれている。
(大丈夫)
この先の未来が、ゲームの影響力があろうとなかろうと、きっと私は大丈夫。だって私は1人じゃないもの。
私は黒田くんを見上げた。黒田くんは私を見て、それからほんの少し、頬を緩めた。
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