136 / 702
分岐・山ノ内瑛
そのひとのこと(side瑛父)下
しおりを挟む
2度目にその女性に会ったのは、冷たい霊安室でのことだった。
この凛とした瞳は、永遠に開かれることがない。あの子猫のような瞳の娘を残して、彼女は夫のところへ逝ってしまった。
その日は、3月の神戸に珍しく雪がちらついた日だった。
大陸からやってきた寒波が列島を覆い、全国的に冷え込んだ、そんな3月の初め。
最初の110番通報はこうだ。その早朝、まだ日も上らぬ四時過ぎに、上の部屋から騒ぎ声がして目が覚め、やがてドサリと音がしたのでアパートの庭を見ると、女の子が倒れていた、と。
女の子に意識はなく、すぐに救急隊が手配され搬送された。
事情を聞くため部屋を訪ねた警官が見つけたのは、事切れた女性の死体。庭で倒れていた女の子の母親だということだった。
すぐさま警官隊が投入され、周囲に検問がしかれ、捜査本部が置かれる。マスコミが駆けつけ、辺りが騒然となり、しかし犯人はどこへ逃げたのかようとして行方は知れなかった。
その日のうちに任意で取り調べを受けたのは、被害女性に以前から付きまとっていた、という40代の男。
「その時まだ物証が上がっとらんかったんですわ。せやから、知らぬ存ぜぬ不当取り調べの一点張りです。当番弁護士呼べ言うて」
その時の取り調べの担当だった定年間際の刑事は、後に俺にそう語った。
神戸地検、公判部、応接セットの向かいのソファ。別の用事でやってきたはずのその刑事は、なぜか長々とそんな話をしていた。
「せやけど、まぁご存知やろけど、爪から出たでしょ。皮膚片」
刑事は自分の人差し指を振ってそう言った。
「娘さん……、華ちゃんの爪から」
資料によると、意識不明で搬送された女の子は、命に別状はないと判断された後に念のために身体を調べられたらしい。それで見つかったのが、彼女の爪の間から見つかった、犯人の皮膚。引っ掻いたときに爪の間に残ったそれが、重要な物証となった。
「襲われて抵抗したときか、はたまた母親守ろうとしたのんか、分かりませんけど。本人の記憶もないし、薮ん中ですわ」
刑事はよっこらしょ、と腰を上げて俺を見た。
「検事、あとは任せましたわ、設楽の奥さんの仇、頼んます」
「……設楽さんのお知り合いですか」
「京都に出向しとるときに何度か……いい青年やった、あんな目しとる男滅多におらんでしょ、もう」
刑事は振り返らずそう言って、今度こそ部屋を出て行った。
(そうか)
それが言いたくて、わざわざここへ寄ったのか、と呟く。
近くを通った事務官が不思議そうにこちらを見るので「何もないで」と言って、俺はまたデスクへ戻って、記録を読み出した。
(瑛を命がけで守ってくれた恩人の奥さん)
そんな人が殺されて、どうしようもない世界やと思った。救いようがないし、俺がどんだけ正義感振りかざしても、やっぱりなんも変わらへんやんか、とも思った。
(せやけど)
俺が頑張っても世界は変わらんかもしれへん、せやけど、もしかしたら、変わることもあるんかもしれん。
瑛を見てるとそう思う。あいつが笑うと、なんか頑張ろう思えるんや。
「神戸ストーカー殺人」と銘打たれたこの事件は、最初こそ大きく報道されたが、しばらくして急に下火になった。いっそ、不自然なほどに。
おそらく彼女の生家が圧力をかけたのだろう、被害者にハイエナのようにたかるはずのマスコミは急に大人しくなり、報道がなくなれば世間から急速にこの事件に対する関心は失われていった。
俺がこの事件を担当し、裁判が始まった頃には世間は政治とカネの問題とやらに注目しており、検察が無期懲役を求刑したというニュースは、新聞のテレビ欄の裏側に小さく報じられたのみであった。
「はぁ、久しぶりの我が家ってかんじやわ」
「お疲れさま」
妻が笑ってお茶を出してくれた。
3ヶ月土日含めて休みナシで働いたので、一日中家にいる、というのは本当に久しぶりのことだった。
「来月の結婚式、いけるやんな?」
「うわ、もうそんなやったんか」
甥っ子の結婚式が来月に迫っている、ということで、やっと俺は今が6月やということを実感した。ヤバイな。
来年は姪っ子の結婚式もある。俺も年やな。
「そういや瑛は足大丈夫なんか、バスケ復帰したんやろ」
「ぜーんぜん大丈夫そう、むしろ前よりなんや元気やわ」
ふ、と思い出したように彼女は笑う。
「入院中にな、あの子、恋しちゃってん」
「はあ!? あ、分かった、相手看護師さんやろ? もしくは医者」
「んーん、女の子。ふつうに」
「うそやん」
あの女子嫌いの瑛が。
本気で驚いて、俺は目を見開いた。
「どんな子なんやろ」
「あたしも何回かしか」
「ただいまー!」
話は途中で遮られた。すっかりピンピンしている瑛がランドセルを背負ったままリビングに飛び込んでくる。
「おかーん、なんか食べるもんないー、っておとんおったんかい」
「おったらあかんのか」
「あかんくはないけど~」
瑛は嬉しいんだか嬉しくないんだかよう分からん顔で言って、それから勝手に開けたパンを頬張りながら「あ、今から俺公園行ってくるわ、バスケの約束してんねん」とまた家を飛び出していった。
「あーもー、ランドセルも片付けんと、ほんま」
「元気でええやないか。……あれ、なんの話やっけ」
「ん? あら、えーと。せや、結婚式や。あの子らの服どないしよ」
「せやなぁ」
そんな風に日々は過ぎていって、すっかり「瑛の好きな人」のことは忘れていた。
せやから、あのお花見の日、瑛から見せられた写真を見て、俺は心臓が止まるかと思った。
あの小さな女の子は、すっかり成長して、そしてなによりーー笑っていた。
(ああ)
この世界はほんまに救いようがない。クソみたいや。悪いヤツがいっぱいおって、俺はそいつらを次から次に刑務所にブチ込むために頑張っとるのに、何も変わらへん。また次から次に、平気でモノを盗み、ヒトを騙して、殺して、俺が刑務所にぶち込む。その繰り返し。
(せやけど、この子は笑っとる)
笑えるようになっとる。
(きっと瑛やな)
事情もなんもわからんのに、俺はハッキリ確信しとる。この子が笑えるようになったんは、きっと瑛がいたからやって。
光希の言葉に振り向いて笑う瑛。
全身全霊で、一生懸命に恋をしてますって笑顔。
(ほら、おったやないか)
俺はそう言いたくて仕方ない。
(お前自身をはっきり見てくれる女の子、おったやないか)
俺は神様は信じてへん。おったんなら俺が毎日見てるクソみたいな世界は一体なんなんやってなるから。
せやけどもしおるんやったら、神様、瑛とあの女の子から、もう大事なもん一個も奪わんといてやってください。
心からそう思う。彼らの未来が、この満開の桜のようにキラキラと輝いていることだけを祈っている。
この凛とした瞳は、永遠に開かれることがない。あの子猫のような瞳の娘を残して、彼女は夫のところへ逝ってしまった。
その日は、3月の神戸に珍しく雪がちらついた日だった。
大陸からやってきた寒波が列島を覆い、全国的に冷え込んだ、そんな3月の初め。
最初の110番通報はこうだ。その早朝、まだ日も上らぬ四時過ぎに、上の部屋から騒ぎ声がして目が覚め、やがてドサリと音がしたのでアパートの庭を見ると、女の子が倒れていた、と。
女の子に意識はなく、すぐに救急隊が手配され搬送された。
事情を聞くため部屋を訪ねた警官が見つけたのは、事切れた女性の死体。庭で倒れていた女の子の母親だということだった。
すぐさま警官隊が投入され、周囲に検問がしかれ、捜査本部が置かれる。マスコミが駆けつけ、辺りが騒然となり、しかし犯人はどこへ逃げたのかようとして行方は知れなかった。
その日のうちに任意で取り調べを受けたのは、被害女性に以前から付きまとっていた、という40代の男。
「その時まだ物証が上がっとらんかったんですわ。せやから、知らぬ存ぜぬ不当取り調べの一点張りです。当番弁護士呼べ言うて」
その時の取り調べの担当だった定年間際の刑事は、後に俺にそう語った。
神戸地検、公判部、応接セットの向かいのソファ。別の用事でやってきたはずのその刑事は、なぜか長々とそんな話をしていた。
「せやけど、まぁご存知やろけど、爪から出たでしょ。皮膚片」
刑事は自分の人差し指を振ってそう言った。
「娘さん……、華ちゃんの爪から」
資料によると、意識不明で搬送された女の子は、命に別状はないと判断された後に念のために身体を調べられたらしい。それで見つかったのが、彼女の爪の間から見つかった、犯人の皮膚。引っ掻いたときに爪の間に残ったそれが、重要な物証となった。
「襲われて抵抗したときか、はたまた母親守ろうとしたのんか、分かりませんけど。本人の記憶もないし、薮ん中ですわ」
刑事はよっこらしょ、と腰を上げて俺を見た。
「検事、あとは任せましたわ、設楽の奥さんの仇、頼んます」
「……設楽さんのお知り合いですか」
「京都に出向しとるときに何度か……いい青年やった、あんな目しとる男滅多におらんでしょ、もう」
刑事は振り返らずそう言って、今度こそ部屋を出て行った。
(そうか)
それが言いたくて、わざわざここへ寄ったのか、と呟く。
近くを通った事務官が不思議そうにこちらを見るので「何もないで」と言って、俺はまたデスクへ戻って、記録を読み出した。
(瑛を命がけで守ってくれた恩人の奥さん)
そんな人が殺されて、どうしようもない世界やと思った。救いようがないし、俺がどんだけ正義感振りかざしても、やっぱりなんも変わらへんやんか、とも思った。
(せやけど)
俺が頑張っても世界は変わらんかもしれへん、せやけど、もしかしたら、変わることもあるんかもしれん。
瑛を見てるとそう思う。あいつが笑うと、なんか頑張ろう思えるんや。
「神戸ストーカー殺人」と銘打たれたこの事件は、最初こそ大きく報道されたが、しばらくして急に下火になった。いっそ、不自然なほどに。
おそらく彼女の生家が圧力をかけたのだろう、被害者にハイエナのようにたかるはずのマスコミは急に大人しくなり、報道がなくなれば世間から急速にこの事件に対する関心は失われていった。
俺がこの事件を担当し、裁判が始まった頃には世間は政治とカネの問題とやらに注目しており、検察が無期懲役を求刑したというニュースは、新聞のテレビ欄の裏側に小さく報じられたのみであった。
「はぁ、久しぶりの我が家ってかんじやわ」
「お疲れさま」
妻が笑ってお茶を出してくれた。
3ヶ月土日含めて休みナシで働いたので、一日中家にいる、というのは本当に久しぶりのことだった。
「来月の結婚式、いけるやんな?」
「うわ、もうそんなやったんか」
甥っ子の結婚式が来月に迫っている、ということで、やっと俺は今が6月やということを実感した。ヤバイな。
来年は姪っ子の結婚式もある。俺も年やな。
「そういや瑛は足大丈夫なんか、バスケ復帰したんやろ」
「ぜーんぜん大丈夫そう、むしろ前よりなんや元気やわ」
ふ、と思い出したように彼女は笑う。
「入院中にな、あの子、恋しちゃってん」
「はあ!? あ、分かった、相手看護師さんやろ? もしくは医者」
「んーん、女の子。ふつうに」
「うそやん」
あの女子嫌いの瑛が。
本気で驚いて、俺は目を見開いた。
「どんな子なんやろ」
「あたしも何回かしか」
「ただいまー!」
話は途中で遮られた。すっかりピンピンしている瑛がランドセルを背負ったままリビングに飛び込んでくる。
「おかーん、なんか食べるもんないー、っておとんおったんかい」
「おったらあかんのか」
「あかんくはないけど~」
瑛は嬉しいんだか嬉しくないんだかよう分からん顔で言って、それから勝手に開けたパンを頬張りながら「あ、今から俺公園行ってくるわ、バスケの約束してんねん」とまた家を飛び出していった。
「あーもー、ランドセルも片付けんと、ほんま」
「元気でええやないか。……あれ、なんの話やっけ」
「ん? あら、えーと。せや、結婚式や。あの子らの服どないしよ」
「せやなぁ」
そんな風に日々は過ぎていって、すっかり「瑛の好きな人」のことは忘れていた。
せやから、あのお花見の日、瑛から見せられた写真を見て、俺は心臓が止まるかと思った。
あの小さな女の子は、すっかり成長して、そしてなによりーー笑っていた。
(ああ)
この世界はほんまに救いようがない。クソみたいや。悪いヤツがいっぱいおって、俺はそいつらを次から次に刑務所にブチ込むために頑張っとるのに、何も変わらへん。また次から次に、平気でモノを盗み、ヒトを騙して、殺して、俺が刑務所にぶち込む。その繰り返し。
(せやけど、この子は笑っとる)
笑えるようになっとる。
(きっと瑛やな)
事情もなんもわからんのに、俺はハッキリ確信しとる。この子が笑えるようになったんは、きっと瑛がいたからやって。
光希の言葉に振り向いて笑う瑛。
全身全霊で、一生懸命に恋をしてますって笑顔。
(ほら、おったやないか)
俺はそう言いたくて仕方ない。
(お前自身をはっきり見てくれる女の子、おったやないか)
俺は神様は信じてへん。おったんなら俺が毎日見てるクソみたいな世界は一体なんなんやってなるから。
せやけどもしおるんやったら、神様、瑛とあの女の子から、もう大事なもん一個も奪わんといてやってください。
心からそう思う。彼らの未来が、この満開の桜のようにキラキラと輝いていることだけを祈っている。
0
お気に入りに追加
3,084
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢なので舞台である学園に行きません!
神々廻
恋愛
ある日、前世でプレイしていた乙女ゲーに転生した事に気付いたアリサ・モニーク。この乙女ゲーは悪役令嬢にハッピーエンドはない。そして、ことあるイベント事に死んでしまう.......
だが、ここは乙女ゲーの世界だが自由に動ける!よし、学園に行かなければ婚約破棄はされても死にはしないのでは!?
全8話完結 完結保証!!
【完結】死がふたりを分かつとも
杜野秋人
恋愛
「捕らえよ!この女は地下牢へでも入れておけ!」
私の命を受けて会場警護の任に就いていた騎士たちが動き出し、またたく間に驚く女を取り押さえる。そうして引っ立てられ連れ出される姿を見ながら、私は心の中だけでそっと安堵の息を吐く。
ああ、やった。
とうとうやり遂げた。
これでもう、彼女を脅かす悪役はいない。
私は晴れて、彼女を輝かしい未来へ進ませることができるんだ。
自分が前世で大ヒットしてTVアニメ化もされた、乙女ゲームの世界に転生していると気づいたのは6歳の時。以来、前世での最推しだった悪役令嬢を救うことが人生の指針になった。
彼女は、悪役令嬢は私の婚約者となる。そして学園の卒業パーティーで断罪され、どのルートを辿っても悲惨な最期を迎えてしまう。
それを回避する方法はただひとつ。本来なら初回クリア後でなければ解放されない“悪役令嬢ルート”に進んで、“逆ざまあ”でクリアするしかない。
やれるかどうか何とも言えない。
だがやらなければ彼女に待っているのは“死”だ。
だから彼女は、メイン攻略対象者の私が、必ず救う⸺!
◆男性(王子)主人公の乙女ゲーもの。主人公は転生者です。
詳しく設定を作ってないので、固有名詞はありません。
◆全10話で完結予定。毎日1話ずつ投稿します。
1話あたり2000字〜3000字程度でサラッと読めます。
◆公開初日から恋愛ランキング入りしました!ありがとうございます!
◆この物語は小説家になろうでも同時投稿します。
悪役令嬢に転生したら手遅れだったけど悪くない
おこめ
恋愛
アイリーン・バルケスは断罪の場で記憶を取り戻した。
どうせならもっと早く思い出せたら良かったのに!
あれ、でも意外と悪くないかも!
断罪され婚約破棄された令嬢のその後の日常。
※うりぼう名義の「悪役令嬢婚約破棄諸々」に掲載していたものと同じものです。
悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない
陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」
デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。
そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。
いつの間にかパトロンが大量発生していた。
ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?
使えないと言われ続けた悪役令嬢のその後
有木珠乃
恋愛
アベリア・ハイドフェルド公爵令嬢は「使えない」悪役令嬢である。
乙女ゲームの悪役令嬢に転生したのに、最低限の義務である、王子の婚約者にすらなれなったほどの。
だから簡単に、ヒロインは王子の婚約者の座を得る。
それを見た父、ハイドフェルド公爵は怒り心頭でアベリアを修道院へ行くように命じる。
王子の婚約者にもなれず、断罪やざまぁもされていないのに、修道院!?
けれど、そこには……。
※この作品は小説家になろう、カクヨム、エブリスタにも投稿しています。
転生したら攻略対象者の母親(王妃)でした
黒木寿々
恋愛
我儘な公爵令嬢リザベル・フォリス、7歳。弟が産まれたことで前世の記憶を思い出したけど、この世界って前世でハマっていた乙女ゲームの世界!?私の未来って物凄く性悪な王妃様じゃん!
しかもゲーム本編が始まる時点ですでに亡くなってるし・・・。
ゲームの中ではことごとく酷いことをしていたみたいだけど、私はそんなことしない!
清く正しい心で、未来の息子(攻略対象者)を愛でまくるぞ!!!
*R15は保険です。小説家になろう様でも掲載しています。
魔性の悪役令嬢らしいですが、男性が苦手なのでご期待にそえません!
蒼乃ロゼ
恋愛
「リュミネーヴァ様は、いろんな殿方とご経験のある、魔性の女でいらっしゃいますから!」
「「……は?」」
どうやら原作では魔性の女だったらしい、リュミネーヴァ。
しかし彼女の中身は、前世でストーカーに命を絶たれ、乙女ゲーム『光が世界を満たすまで』通称ヒカミタの世界に転生してきた人物。
前世での最期の記憶から、男性が苦手。
初めは男性を目にするだけでも体が震えるありさま。
リュミネーヴァが具体的にどんな悪行をするのか分からず、ただ自分として、在るがままを生きてきた。
当然、物語が原作どおりにいくはずもなく。
おまけに実は、本編前にあたる時期からフラグを折っていて……?
攻略キャラを全力回避していたら、魔性違いで謎のキャラから溺愛モードが始まるお話。
ファンタジー要素も多めです。
※なろう様にも掲載中
※短編【転生先は『乙女ゲーでしょ』~】の元ネタです。どちらを先に読んでもお話は分かりますので、ご安心ください。
婚約破棄された侯爵令嬢は、元婚約者の側妃にされる前に悪役令嬢推しの美形従者に隣国へ連れ去られます
葵 遥菜
恋愛
アナベル・ハワード侯爵令嬢は婚約者のイーサン王太子殿下を心から慕い、彼の伴侶になるための勉強にできる限りの時間を費やしていた。二人の仲は順調で、結婚の日取りも決まっていた。
しかし、王立学園に入学したのち、イーサン王太子は真実の愛を見つけたようだった。
お相手はエリーナ・カートレット男爵令嬢。
二人は相思相愛のようなので、アナベルは将来王妃となったのち、彼女が側妃として召し上げられることになるだろうと覚悟した。
「悪役令嬢、アナベル・ハワード! あなたにイーサン様は渡さない――!」
アナベルはエリーナから「悪」だと断じられたことで、自分の存在が二人の邪魔であることを再認識し、エリーナが王妃になる道はないのかと探り始める――。
「エリーナ様を王妃に据えるにはどうしたらいいのかしらね、エリオット?」
「一つだけ方法がございます。それをお教えする代わりに、私と約束をしてください」
「どんな約束でも守るわ」
「もし……万が一、王太子殿下がアナベル様との『婚約を破棄する』とおっしゃったら、私と一緒に隣国ガルディニアへ逃げてください」
これは、悪役令嬢を溺愛する従者が合法的に推しを手に入れる物語である。
※タイトル通りのご都合主義なお話です。
※他サイトにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる