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8(中学編)
某少年はハンバーガーショップでふと思う(side???)
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1年同じクラスだった設楽さんと、今年も同じくクラスでオレは正直、ラッキーだと思った。
なんでかって?
そりゃ綺麗な子がクラスにいたら嬉しいでしょ。別に好きって訳じゃないけどさ。
設楽さんは割とのんびりした人だと思う。でものんびりしつつも、考え方がちょっと大人みたいなとこもある。
授業で当てられた時に変な間違い方をして、オレがものすごく赤面していた時隣の席から「間違った方が記憶に残るんだって」と言ってくれた。「次は正解できるね!」とも。先生かよって思わず突っ込んでしまうと、設楽さんは「あは」と綺麗に微笑んだ。
細いし、背はそこまで高くないのに、プールの時男子がざわめいたんだけど、スタイルが相当いい。それだけでも今年同じクラスでラッキーだというものだ。
今年クラスが別になった大友さんは、制服着てる時から背が高い、スラっとしたスタイルの良さが分かるから、水着でも「あーやっぱモデルみたい」て皆思ったと思う。足の長さとか半端なくて、女子なんかマジで羨ましがってた。
で、設楽さんは同じくらい美人だけど、ファッションモデルというより、漫画雑誌のグラビアアイドルタイプだ。てか、なれると思う。服着てるときの清純そうな感じとのギャップがヤバイ、と個人的には思っている。
でも、それを表立って言う男子はいない。
体育は2クラス合同で隣のクラスと一緒なんだけど、去年のプールで結構ヒワイな言葉で設楽さんをからかった男子がいた。
正直男でも引く言葉だったから、これはまぁしょうがないとも思うんだけど、隣のクラスだった黒田と口論の末、更にドン引きのセリフを吐いちゃったソイツは「いっぺん頭冷やしとけクソ野郎」との言葉と共にプールに蹴り落とされていた。
当然黒田はめちゃくちゃ怒られていて、なんなら廊下で正座してたんだけど、オレがみたときは横に設楽さんも正座してた。「私のせいだから」ってことらしいけど、身体のことをからかったのはバカな男子のほうだし、やりすぎたのは黒田だし、設楽さんは関係ないと思う。
でもそのとき、あんまりにも仲睦まじげにクスクス笑いあったりしてるもんだから、オレはつい注目してしまっていた。
別のクラスの、設楽さんと黒田と同小だった女子たちが「ついにあそこくっついた?」とかって楽しそうに笑ってて、オレは「あー、そっか彼女あんな風に言われたら、そりゃプールに蹴り落とすよな」ってちょっと納得したのだった。
「あ、黒田と設楽」
中二の始業式の後、友達4人とファストフード店でダラダラしてたら、ふと1人が店のカウンターを見てそう言った。2人は制服のままだ。帰ってないのかな。
「仲良いよな」
「うらやましー」
「は!? お前彼女いるじゃんラブラブのくせに」
「うるせえ」
「赤くなんなよクッソ爆発しろ」
友達の会話を聞きつつ、オレはなんとなく2人を眺める。
カウンターの会計で一瞬もめて(どっちが払う、とかだと思う。結局個別に会計になったらしい)それから2人で受け取りカウンターの前で何か話している。楽しげに。
「でもさ」
友達が思い出したかのように言う。
「あいつら付き合ってないらしいよ」
「は!?」
オレは思わず変な声を出してしまった。
「アレで?」
「そーそー、アレで」
プール事件以降、なんとなく2人が目についていたオレは、あの2人の距離が相当に近いことを知っていた。
部活があるオレは見たことないんだけど、2人は一緒に下校してるらしいし。設楽さんは帰宅部で、黒田は毎日空手道場に通ってるらしい。空手部がないからな、ウチの学校。
「別のヤツが聞いたらさ、餌付け中って答えられたらしい」
「なんだそりゃ」
「空手で日本一になったら告るらしいよ、噂だと」
「え、なにそれ遠くない?」
友達はポテトを口に運びながら言う。
「や、黒田、小学校の時から強いよ、空手。多分最高ベスト4」
俺がそう答えると、友達は驚いてポテトを摘む手を止めた。
「マジか」
「え、じゃあ、設楽さんそれ待ってんの? 健気に?」
別の友達も驚いたように言う。
「そこまでは知らねーけど」
「うわそんなん他に持ってかれるんじゃね」
「な、美人だし」
ぼそぼそと会話をしていると、2人がトレイを持ってこちらに歩いてくるのが見えたので、なんとなく黙り込む。
気まずかったので、2人に向かって「よっ」と手を上げてみせた。
「あ、おつかれー」
設楽さんは普段通り笑う。
「よう、部活は?」
黒田も普段通りだ。
別に外で2人きりでいることを見られて恥ずかしがる様子もない。
「今日は部活ねーからダラダラしてんの。明日から部活。お前らは?」
そう答えると、黒田は「メシ食ってこいつ送ってから道場」と答えた。
「大会近いんだっけ」
別のヤツに聞かれて黒田は「まずは予選だけどな」と頷いた。
「今年は優勝する」
「頑張れよ」
俺たちがニヤニヤしながらそう言うと、不思議そうにしながら2人は少し離れた空いていた席に座った。
「まぁ県大会は行けるんじゃね」
「でも毎年同じヤツに負けてるんだろ、関東も全国も」
「えー、それキツイな」
あの黒田に毎回勝つってどんなヤツなんだろ。そう思いながら2人に目をやると、黒田が設楽の口にポテトを入れてやってるところだった。
(見ちゃいけないものを見た気がする)
なんだあれ。あーんしてじゃん。なにしてんの黒田。
(あれで付き合ってない、とかさぁ)
黒田は変な顔をしている。あれはアレだ、ニヤニヤしたいのを我慢してる顔だ。なんか腹立つなぁ。設楽さんも普通に食べてるし。2人には普段通りのことなのかもしれない。
(つか、あれが餌付けってことね)
設楽さん食べんの好きだからな。まずは胃袋から掴もうとしてるのかも。
(ま、とりあえず黒田の空手の大会。応援してやろうかな)
窓の外の桜は今が盛りって感じで、オレは桜を眺めてそんなことを考えながら、チョコシェイクをズズズと吸い込んだのだった。
なんでかって?
そりゃ綺麗な子がクラスにいたら嬉しいでしょ。別に好きって訳じゃないけどさ。
設楽さんは割とのんびりした人だと思う。でものんびりしつつも、考え方がちょっと大人みたいなとこもある。
授業で当てられた時に変な間違い方をして、オレがものすごく赤面していた時隣の席から「間違った方が記憶に残るんだって」と言ってくれた。「次は正解できるね!」とも。先生かよって思わず突っ込んでしまうと、設楽さんは「あは」と綺麗に微笑んだ。
細いし、背はそこまで高くないのに、プールの時男子がざわめいたんだけど、スタイルが相当いい。それだけでも今年同じクラスでラッキーだというものだ。
今年クラスが別になった大友さんは、制服着てる時から背が高い、スラっとしたスタイルの良さが分かるから、水着でも「あーやっぱモデルみたい」て皆思ったと思う。足の長さとか半端なくて、女子なんかマジで羨ましがってた。
で、設楽さんは同じくらい美人だけど、ファッションモデルというより、漫画雑誌のグラビアアイドルタイプだ。てか、なれると思う。服着てるときの清純そうな感じとのギャップがヤバイ、と個人的には思っている。
でも、それを表立って言う男子はいない。
体育は2クラス合同で隣のクラスと一緒なんだけど、去年のプールで結構ヒワイな言葉で設楽さんをからかった男子がいた。
正直男でも引く言葉だったから、これはまぁしょうがないとも思うんだけど、隣のクラスだった黒田と口論の末、更にドン引きのセリフを吐いちゃったソイツは「いっぺん頭冷やしとけクソ野郎」との言葉と共にプールに蹴り落とされていた。
当然黒田はめちゃくちゃ怒られていて、なんなら廊下で正座してたんだけど、オレがみたときは横に設楽さんも正座してた。「私のせいだから」ってことらしいけど、身体のことをからかったのはバカな男子のほうだし、やりすぎたのは黒田だし、設楽さんは関係ないと思う。
でもそのとき、あんまりにも仲睦まじげにクスクス笑いあったりしてるもんだから、オレはつい注目してしまっていた。
別のクラスの、設楽さんと黒田と同小だった女子たちが「ついにあそこくっついた?」とかって楽しそうに笑ってて、オレは「あー、そっか彼女あんな風に言われたら、そりゃプールに蹴り落とすよな」ってちょっと納得したのだった。
「あ、黒田と設楽」
中二の始業式の後、友達4人とファストフード店でダラダラしてたら、ふと1人が店のカウンターを見てそう言った。2人は制服のままだ。帰ってないのかな。
「仲良いよな」
「うらやましー」
「は!? お前彼女いるじゃんラブラブのくせに」
「うるせえ」
「赤くなんなよクッソ爆発しろ」
友達の会話を聞きつつ、オレはなんとなく2人を眺める。
カウンターの会計で一瞬もめて(どっちが払う、とかだと思う。結局個別に会計になったらしい)それから2人で受け取りカウンターの前で何か話している。楽しげに。
「でもさ」
友達が思い出したかのように言う。
「あいつら付き合ってないらしいよ」
「は!?」
オレは思わず変な声を出してしまった。
「アレで?」
「そーそー、アレで」
プール事件以降、なんとなく2人が目についていたオレは、あの2人の距離が相当に近いことを知っていた。
部活があるオレは見たことないんだけど、2人は一緒に下校してるらしいし。設楽さんは帰宅部で、黒田は毎日空手道場に通ってるらしい。空手部がないからな、ウチの学校。
「別のヤツが聞いたらさ、餌付け中って答えられたらしい」
「なんだそりゃ」
「空手で日本一になったら告るらしいよ、噂だと」
「え、なにそれ遠くない?」
友達はポテトを口に運びながら言う。
「や、黒田、小学校の時から強いよ、空手。多分最高ベスト4」
俺がそう答えると、友達は驚いてポテトを摘む手を止めた。
「マジか」
「え、じゃあ、設楽さんそれ待ってんの? 健気に?」
別の友達も驚いたように言う。
「そこまでは知らねーけど」
「うわそんなん他に持ってかれるんじゃね」
「な、美人だし」
ぼそぼそと会話をしていると、2人がトレイを持ってこちらに歩いてくるのが見えたので、なんとなく黙り込む。
気まずかったので、2人に向かって「よっ」と手を上げてみせた。
「あ、おつかれー」
設楽さんは普段通り笑う。
「よう、部活は?」
黒田も普段通りだ。
別に外で2人きりでいることを見られて恥ずかしがる様子もない。
「今日は部活ねーからダラダラしてんの。明日から部活。お前らは?」
そう答えると、黒田は「メシ食ってこいつ送ってから道場」と答えた。
「大会近いんだっけ」
別のヤツに聞かれて黒田は「まずは予選だけどな」と頷いた。
「今年は優勝する」
「頑張れよ」
俺たちがニヤニヤしながらそう言うと、不思議そうにしながら2人は少し離れた空いていた席に座った。
「まぁ県大会は行けるんじゃね」
「でも毎年同じヤツに負けてるんだろ、関東も全国も」
「えー、それキツイな」
あの黒田に毎回勝つってどんなヤツなんだろ。そう思いながら2人に目をやると、黒田が設楽の口にポテトを入れてやってるところだった。
(見ちゃいけないものを見た気がする)
なんだあれ。あーんしてじゃん。なにしてんの黒田。
(あれで付き合ってない、とかさぁ)
黒田は変な顔をしている。あれはアレだ、ニヤニヤしたいのを我慢してる顔だ。なんか腹立つなぁ。設楽さんも普通に食べてるし。2人には普段通りのことなのかもしれない。
(つか、あれが餌付けってことね)
設楽さん食べんの好きだからな。まずは胃袋から掴もうとしてるのかも。
(ま、とりあえず黒田の空手の大会。応援してやろうかな)
窓の外の桜は今が盛りって感じで、オレは桜を眺めてそんなことを考えながら、チョコシェイクをズズズと吸い込んだのだった。
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