8 / 12
各キャラパート
ペリドットルート
しおりを挟む
キャラに似合わず腹黒だな、と気付いたのはいつ頃だったろうか。
なんやかんやあって最終的にじゃんけんで勝敗が決まることになった後、項垂れる4人を押し退けこちらへやってきたのはペリドットだった。
「さ!リディア行こ~?」
コテンとわざとらしく首をかしげ上目遣いのペリドットは、私の袖を摘まんでくる。
(これ女の子がやるやつじゃん。16の男子はギリアウトでしょ)
他所では可愛い小悪魔系ショタとして、女性にチヤホヤされているらしいペリドット。しかし、私にとっては16歳にもなって何やってんだコイツは、としか思えない。
今はまだギリギリ大丈夫だとしても、5年後10年後はどうするつもりなのだろうと心配になることもある。
仮にも共に魔王を討伐した仲間だったのだ。そんな彼が将来痛い子として扱われるのは正直恥ずかしい。
(ん~。でも深く関わりたくもないしなぁー)
どうしたものかと悩んでいると鼻先をチョンとつつかれる。
「リディア~。なーに悩んでるの?僕をぎゅってしたら悩みなんて吹き飛んじゃうよ?ほらどーぞ?」
きゃるるーんという効果音が聞こえてきそうなぶりっ子声に、両手を広げて抱っこをせがむ子供のような仕草をするペリドット。
しかし、私は気付いている。彼の視線が私の胸に釘付けなのを。そして、気持ちちょっと屈んでいるのを。
このまま抱き付かれると、彼の顔は胸にダイブしてくるだろう。
キャラはショタでも、5人の中で一番計算高くてマセている。
意外と一番注意すべき対象者が彼なのだ。
「結構です。てか、特に行きたい所もないしついてこなくていいから」
「えー、なら今僕が通ってるとこに連れてってあげるよ!すっごく楽しい所だからリディアも絶対気に入るよ!」
いくら冷たくあしらってもベタベタまとわりついてくるペリドットに、気付くとあるお店の中に連れてこられていた。
「……ってぇ、ここどう見てもキャバクラじゃんっ!!!」
ギラつく店内。スリットがかなり際どい薄めのドレス。髪もメイクも盛り盛りの女性たち。
そんな女性たちに囲まれてニッコニコのペリドットの手は、両サイドの女性の腰にしっかりとまわっている。なんなら撫で回してないか?あれ。
「やーん。ペリドットくーん。今日も来てくれて嬉し~♡」
「いやん、ソコはくすぐったいってばぁ~」
「オネーさんたち、今日もいーにおいで好きー!ほら、リディアもおいでよ!」
たしかに、15歳以上は飲酒も認められている。こういった所に来るのも禁止されているわけでもない。
が、しかし。馴染み過ぎている。ペリドットが。
そして場違い感が半端ない。私が。
何故か着替えさせられてるし。メイクだけは丁重にお断りしたけど、ペラペラのドレスはスースーして心許ない事この上ない。
「よーし!今日はリディアの歓迎の意味も込めてドンペリ頼んじゃうよ~」
「「きゃーー!ペリちゃんサイコー!!」」
どんどん盛り上がっていく場の雰囲気。それに反して私の心はどんどんと冷えきっていく。
そして、プツンと。切れた。
【─我は願う。時の番人にして均衡を司る者よ。目前に立ちはだかる障害を打ち崩すべく、暫しの沈黙を与えよ!!】
足元に現れた魔法陣から、精霊=クロノスを召喚する。
魔王攻略の為、1000年も眠り続けていた精霊の丘の頂点。時を操る最高クラスの精霊神であるクロノスと契約するのに、仲間と血の滲む試練を受けた記憶が走馬灯のように甦る。
まさか、その仲間の1人に使うことになろうとは。
【時間停止】
あの魔王ですら数秒の間、動きを封じることの出来る魔法だ。ペリドットを含む一部の空間が静寂に包まれた。
騒がしくて聞こえていなかった、お店の音楽が耳に届くようになる。
ごっそりとMPを持っていかれた疲労感のまま、お店を立ち去る。
注意すべき対象者から、一番の危険人物というペリドットへの認識を新たにした私は、いろんな意味で感じる疲労感と共に帰路に着くのであった。
なんやかんやあって最終的にじゃんけんで勝敗が決まることになった後、項垂れる4人を押し退けこちらへやってきたのはペリドットだった。
「さ!リディア行こ~?」
コテンとわざとらしく首をかしげ上目遣いのペリドットは、私の袖を摘まんでくる。
(これ女の子がやるやつじゃん。16の男子はギリアウトでしょ)
他所では可愛い小悪魔系ショタとして、女性にチヤホヤされているらしいペリドット。しかし、私にとっては16歳にもなって何やってんだコイツは、としか思えない。
今はまだギリギリ大丈夫だとしても、5年後10年後はどうするつもりなのだろうと心配になることもある。
仮にも共に魔王を討伐した仲間だったのだ。そんな彼が将来痛い子として扱われるのは正直恥ずかしい。
(ん~。でも深く関わりたくもないしなぁー)
どうしたものかと悩んでいると鼻先をチョンとつつかれる。
「リディア~。なーに悩んでるの?僕をぎゅってしたら悩みなんて吹き飛んじゃうよ?ほらどーぞ?」
きゃるるーんという効果音が聞こえてきそうなぶりっ子声に、両手を広げて抱っこをせがむ子供のような仕草をするペリドット。
しかし、私は気付いている。彼の視線が私の胸に釘付けなのを。そして、気持ちちょっと屈んでいるのを。
このまま抱き付かれると、彼の顔は胸にダイブしてくるだろう。
キャラはショタでも、5人の中で一番計算高くてマセている。
意外と一番注意すべき対象者が彼なのだ。
「結構です。てか、特に行きたい所もないしついてこなくていいから」
「えー、なら今僕が通ってるとこに連れてってあげるよ!すっごく楽しい所だからリディアも絶対気に入るよ!」
いくら冷たくあしらってもベタベタまとわりついてくるペリドットに、気付くとあるお店の中に連れてこられていた。
「……ってぇ、ここどう見てもキャバクラじゃんっ!!!」
ギラつく店内。スリットがかなり際どい薄めのドレス。髪もメイクも盛り盛りの女性たち。
そんな女性たちに囲まれてニッコニコのペリドットの手は、両サイドの女性の腰にしっかりとまわっている。なんなら撫で回してないか?あれ。
「やーん。ペリドットくーん。今日も来てくれて嬉し~♡」
「いやん、ソコはくすぐったいってばぁ~」
「オネーさんたち、今日もいーにおいで好きー!ほら、リディアもおいでよ!」
たしかに、15歳以上は飲酒も認められている。こういった所に来るのも禁止されているわけでもない。
が、しかし。馴染み過ぎている。ペリドットが。
そして場違い感が半端ない。私が。
何故か着替えさせられてるし。メイクだけは丁重にお断りしたけど、ペラペラのドレスはスースーして心許ない事この上ない。
「よーし!今日はリディアの歓迎の意味も込めてドンペリ頼んじゃうよ~」
「「きゃーー!ペリちゃんサイコー!!」」
どんどん盛り上がっていく場の雰囲気。それに反して私の心はどんどんと冷えきっていく。
そして、プツンと。切れた。
【─我は願う。時の番人にして均衡を司る者よ。目前に立ちはだかる障害を打ち崩すべく、暫しの沈黙を与えよ!!】
足元に現れた魔法陣から、精霊=クロノスを召喚する。
魔王攻略の為、1000年も眠り続けていた精霊の丘の頂点。時を操る最高クラスの精霊神であるクロノスと契約するのに、仲間と血の滲む試練を受けた記憶が走馬灯のように甦る。
まさか、その仲間の1人に使うことになろうとは。
【時間停止】
あの魔王ですら数秒の間、動きを封じることの出来る魔法だ。ペリドットを含む一部の空間が静寂に包まれた。
騒がしくて聞こえていなかった、お店の音楽が耳に届くようになる。
ごっそりとMPを持っていかれた疲労感のまま、お店を立ち去る。
注意すべき対象者から、一番の危険人物というペリドットへの認識を新たにした私は、いろんな意味で感じる疲労感と共に帰路に着くのであった。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
悪役令嬢にざまぁされた王子のその後
柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。
その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。
そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。
マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。
人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。
攻略対象の王子様は放置されました
白生荼汰
恋愛
……前回と違う。
お茶会で公爵令嬢の不在に、前回と前世を思い出した王子様。
今回の公爵令嬢は、どうも婚約を避けたい様子だ。
小説家になろうにも投稿してます。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方
ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。
注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。
【電子書籍化進行中】声を失った令嬢は、次期公爵の義理のお兄さまに恋をしました
八重
恋愛
※発売日少し前を目安に作品を引き下げます
修道院で生まれ育ったローゼマリーは、14歳の時火事に巻き込まれる。
その火事の唯一の生き残りとなった彼女は、領主であるヴィルフェルト公爵に拾われ、彼の養子になる。
彼には息子が一人おり、名をラルス・ヴィルフェルトといった。
ラルスは容姿端麗で文武両道の次期公爵として申し分なく、社交界でも評価されていた。
一方、怠惰なシスターが文字を教えなかったため、ローゼマリーは読み書きができなかった。
必死になんとか義理の父や兄に身振り手振りで伝えようとも、なかなか伝わらない。
なぜなら、彼女は火事で声を失ってしまっていたからだ──
そして次第に優しく文字を教えてくれたり、面倒を見てくれるラルスに恋をしてしまって……。
これは、義理の家族の役に立ちたくて頑張りながら、言えない「好き」を内に秘める、そんな物語。
※小説家になろうが先行公開です
絞首刑まっしぐらの『醜い悪役令嬢』が『美しい聖女』と呼ばれるようになるまでの24時間
夕景あき
ファンタジー
ガリガリに痩せて肌も髪もボロボロの『醜い悪役令嬢』と呼ばれたオリビアは、ある日婚約者であるトムス王子と義妹のアイラの会話を聞いてしまう。義妹はオリビアが放火犯だとトムス王子に訴え、トムス王子はそれを信じオリビアを明日の卒業パーティーで断罪して婚約破棄するという。
卒業パーティーまで、残り時間は24時間!!
果たしてオリビアは放火犯の冤罪で断罪され絞首刑となる運命から、逃れることが出来るのか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる