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2章 いざ王都。そして学園へ

閑話 2章その裏で(ディーン視点)

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ジオをガルボ先輩のところへ送り届けた後、クラリッサ殿に会う為に魔法省を訪れていた。

デイリア付近の森で、連日続いていたゴブリン討伐に続き、ねぐらとなっていた洞窟内の探索で、最近かなりのハードワークだった。王都から探索チームが派遣されて少し落ち着いたのもあり、ジオの王都入りに息抜きがてら同行することになったのだが、リンデバーム様が昔の冒険者時代の血が騒いだとかで探索チームに付いていってしまってる以上、早めの帰還が望ましい。そんなところに、クラリッサ殿から魔法省内にある転送陣の使用許可を取ってくださるとの申し出があったのだ。本当にクラリッサ殿には感謝してもしきれない。

「あ、ディーン!こっちよ!」

魔法省の入り口で待っていてくださったのか、クラリッサ殿がこちらに手を振っていた。その笑顔を少し眩しく感じながらも、会釈しながら走り寄った。

「クラリッサ殿。わざわざ申し訳ありません」

「い、いいのよ。ちょうど仕事も切りがいいところだったし。案内するわね?こっちよ」

仕事着の漆黒のローブに身を包んだクラリッサ殿は、魅力的なボディラインが強調されていて正直、目のやりどころに困る。

(くっ…まだ修行が足らんぞ私!こんな目で見てしまうとはっ)

煩悩を断ち切るように首を振る。すると、くるりとクラリッサ殿が振り返ってきた。

「ディーン?どうかした?」

「あ、いえ!なんでもありません!」

「…そう?あ、ガルボと会うのは久しぶりだったでしょう?まぁた、理由を付けて手合わせさせられなかった?」

「ははっさすが、ご明察です」

まったく、ガルボったら…と呆れたように言うクラリッサ殿の表情は穏やかだ。私がインターンで王城に通っていた時、ガルボ先輩とクラリッサ殿は同期として既に城で働かれていたので、私よりもお二人の方が付き合いは長いことになる。
これから、クラリッサ殿も仕事場から中々動けない日が続くのでジオに会いに行くのはまだ先になると残念そうだった。でも、ボトム家なら安心だろうと二人で笑い合う。そして、あっという間に転送陣の部屋に着いてしまい、少し名残惜しく思いながらもデイリアへと帰るのだった。


▪▪▪


そして帰還から数日後、王都の探索チームがモンスター討伐完了と、洞窟内の大まかな探索が終了したということで撤退した翌日。リンデバーム様が、同行中に少し気になる箇所があったと言うので、私と二人で洞窟内に来ていた。

「どうも気にかかってな。プロの方々にあまり口出しするのも躊躇われ言えなかったのだが…。すまんなディーン、私の我が儘に付き合わせて」

斜め後ろを歩くリンデバーム様は、そう謝りながらも見たことがないくらい目を輝かせながら、洞窟の奥を目指している。
探索チームが入ったことで、モンスターもいなくなり、壁には松明が焚かれ、かなり安全と言っていい。

「いえ。私が好きで付いてきておりますので」

にこりと微笑んだリンデバーム様は、少し奥まった壁の窪みの前で立ち止まった。元々、大きな岩があったのを取り外したような形で、大人2人が入れるくらいのスペースだ。特になんの変哲もないその窪みの上の方をしきりに叩いたり、覗きこんだりされている。

「ここが気になる場所なのですか?」

「うむ…。ここを通った時に何かが光ったような気がしたんだ…」

そう言いながら持たれていたピッケルで、おもむろに窪みの上を一掘りされるとピシリと壁に亀裂が入る。

「っ!?リンデバーム様っ!」

咄嗟にリンデバーム様を壁から引き剥がし、後ろへ倒れこむように庇うと、壁がガラガラと窪みへ崩れ落ちた。幸い、崩れた岩などはこちらまで飛んで来ず、窪み分の土砂がごっそり壁から窪みの中へ。
立ち込める砂ぼこりに二人で咳き込んだが、それも次第に収まっていく。そして、ふと崩れた壁に目を向けると回りの岩とは明らかに違う鉱石が輝いていた。

「こ、これはっ」

天井等の安全を確認し、その鉱石に手を伸ばしたリンデバーム様。私も原石はあまり見たことがなかったが、その輝きには見覚えがあった。

「「ミスリル鉱石…」」

その後、シュナイゼル家が多大な発展を遂げる、資源を発見した瞬間であった。

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