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第二章
第二十五話
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シャオユウの名を叫んだ少女は、木綿の合羽を羽織り、焚火の火光に照らされ、僅かに顔が見えるのみであった。しかし、それでも色白の頬を流れる玉のような涙が見え、先に会ったチェンシーの放つ年増の成熟さとは違う、玲瓏に引き締まった処女の肌目細やかさを放っていた。
悄然と立ち去りかける少女の背中に向かってクラウスが呼び掛けた。少女はゆっくりと振り返り、何、と言った。クラウスは、恐る恐る彼女に誰何した。
「・・・あたしはただ、シャオユウを捜しているだけ。あなた達には関係無い」
「あいつと知り合いなのか? 」
「あなた達・・・その恰好・・・まさかあなたは・・・」
と、少女は懐から小さな琅玕を出し、クラウスに翳した。すると、俄にそれは光り出し、眩い閃光を放ち、辺りは昼のように明るくなった。
少女は驚いてクラウスを見、先の非礼を詫びながら琅玕をしまい、合羽の頭巾を脱いだ。火光に照らし出されたその容貌は、色艶の良い漆黒髪を短く切り、遠山のような蘭瞼を持ち、細い紅唇が白い肌の中で艶やかに映っている。歳頃は恐らく十三か四。しかし、何処か稚さを残すその眸は、深い哀寂をありありと示している。
少女は臙脂が塗られているわけでもないのに、淡紅に輝く唇を開いて、
「あたしはマオって言うの。その琅玕はあの人、シャオユウがあたしにくれた大切なもの。あたしが一番求めているものに繋がる人が近くにいると輝くって、あの方に言われたけど、まさかあなたが・・・。あなた達の目的は解らないけど、手伝ってあげるから、あたしのお願いも聞いてくれる? 」
「構わないけど、誰に言われたんだ? 」
「・・・そこのウーメイ山の神様、バエフー様だよ」
クラウス達は互いに顔を見合わせて、この不可思議な少女の正体を測りかねていた。憂愁晴れるべくもない少女は、火光に白皙を朧気に照らしながら寂然と語り出した。
――約三百年前、まだこの村落が霊峰への参拝者を迎える宿場の一つとして人が住んでいた頃、マオは村長の一人娘として、決して豊かではなかったが、両親の愛を一身に受けて育っていた。
そのマオは普段から、近所の童子達の頭目を気取り、近くの洞窟や林を探検したり、狼や小猪を愛用の鉄鞭で仕留めてその肉を振る舞ったりと姐御肌を振り撒いていた。大人達は彼女の行動を強く顰蹙し、もっと女の子らしくしなさい、と何度も強意見を繰り返したこと数知れなかったが、その度に彼女は、
「男とか女とかどうでも良いじゃない。あたしはあたしが出来る事、したい事があるんだから」
と、大人達の視野の狭さを笑い、いよいよ以てその姐御肌に磨きと冴えを加えていき、最近では両親も放任してある。
そんなマオがある日、盗み食いの調達をするために村の食糧貯蔵庫に入った際、何かが慌てて奥に入っていくのを見た。(お腹を空かせた獣でも迷い込んだのかな)と彼女は思い、大人を呼ぶでもなく、鉄鞭片手に薄暗い貯蔵庫の奥に入っていった。
ガタッと小さな音がした方へ、彼女はゆっくりと進んだ。小さな換気用の格子窓から入ってくる陽光以外に光はない。板敷きの床に格子の影が黒い線を描いている。初夏の昼下がりなので、貯蔵庫の中は少し蒸し暑い。
ふとマオは、蹲っている小さな人影を見つけた。(よし・・・)と彼女は息を殺して、柄手に力を込め、いつでも来たれの備え怠らず、そっとそれの後ろに立った。
「・・・君、誰? 」
「あっ」
人影は愕然と声を上げ、脱兎の勢いで逃げ出した――が、脚が縺れたのか、そのまま前のめりに倒れた。人影の正体は少年であった。ひどく窶れて疲労困憊の様相を示している。
マオは慌てて少年に駆け寄って抱き起こした。少年は消え入りそうな息で、高熱を発している。蒼白い顔で動くこともままならない様子なので、マオは蒼惶と大人達を呼び、彼を自宅に運び込んだ。参拝者以外、殆ど外部から人間の来ない静かな村は謎の少年によって一時騒然となった。
三日三晩苦しんだ後、少年はようやく眼を覚ました。彼は村長の四合院、東廂房の一室で牀に寝かされていた。周囲の壁には竹林とそこに遊ぶ鳥が描かれ、塗り骨の窓からは院子の中庭、初夏の善美を飾り付けたような竹林と築山泉水がある。廻る龍を象った円い正門からは彼方に居並ぶ民家の甍が見える。
そこへ木戸を開ける音がした。少年は驚き、慌てて牀に横たわったが、入って来た人は彼に優しく、
「眼が覚めたんだね。大丈夫だよ。あたしは君に何か酷い事なんてしないから」
「・・・」
少年はゆっくりと眼を開けた。自分を覗き込んで、にっこりと紅唇から白い歯を見せるマオを見て、彼は勃然と真っ赤になった。
少年は慌てて彼女を避けるように起き上がり、動悸めく胸中を隠すような早口で、
「き、君は誰? 此処はどこ? 」
「あたしはマオって言うんだ。此処はあたしの家。君、凄く疲れて風邪までひいていたみたいだったから、運んだんだよ。どうしてあんな所にいたの? 」
「実は・・・盗賊の一味から逃げ出したんだけど、五日の間、何も食べていなかったところに、この村を見つけたらつい・・・」
「そうなんだ・・・君、何処か行く宛てはあるの? そうだっ。無いんだったら家に住みなよ。うん、それが良い」
牀に手を置いて身を乗り出しながら、一人で話を進めてしまうマオに、少年は呆気に取られた様子。ちょっと待ってよ、と手を伸ばした時、彼女の手に触れた。
尋常ならば、すぐに手を退かしていたであろうが、少年は彼女の手の温もりに、全身の血の滾りを感じ、しばしの間、赫っとした面を伏していた。
マオはどう受け取ったか、恐らく何も解っていない様子で、少年の手を確と握り、
「良いって事だねっ。あたし、弟が出来ちゃったっ。これからよろしくねっ。そう言えば君、名前は? 」
当事者の一方がついて行けない程の急速で進んだ話である。少年は茫然と、否、握られた手の疼きに陶酔しながらも、何とか声を絞り出すように答えて曰く、
「シャオユウ」
それからシャオユウは、マオの家に迎え入れられ、養子の待遇を受けた。男児のいない村長夫婦は彼を本当の息子の如く扱い、村の者達やマオの仲間も新参者である彼を迎え入れ、最初は怯え切っていた彼も、次第に言葉くらいは交わすようになっていった。
昼はマオに引き摺られるように野山に入り、夜は彼女から文字を習うなどしている。ふとある夜、涼みの中庭でマオは、シャオユウの両親や故郷について尋ねた。
その質問は彼の心の傷を抉るものであったらしく、彼は静かに頬を涙に濡らした。慌ててマオは謝ったが、彼もまたいつまでも隠しておくわけにはいかないと思ったらしく、
「僕の母さんは・・・僕が七歳の時に殺されたんだ。僕の目の前で・・・男達に滅茶苦茶にされて・・・。僕は連れていかれそうになった所を逃げ出したんだけど、そこで盗賊に捕まったんだ。それで、あいつらの奴隷代わりに四年も働かされてたんだ。ちょっとだけの食事で、死体の片付けとか全員の荷物持ちとか。隠れ家にいる時は足枷を付けられていたんだけどこの間、あいつらが酔っ払って眠りこけている内に、何とか逃げ出して、この村に着いたんだ」
「・・・」
そこで初めてマオは、シャオユウの身体を洗ってやっている時に見えた、全身の瘡や年齢にしては小柄な彼の身体の原因を理解した。盗賊共の虐待の所為で、彼は他人にひどく怯えているのだ。
最後の方は絞り出すようにして語ったシャオユウの顔は、月光に照らされて黙然と、しかし悲哀の涙を頬につたわせ、寂しいよ、と呟いた。
マオは彼の哀絶極まる過去を聞き、軽々しく尋ねて彼を傷付けた事を後悔した。しかしそこで終わる彼女ではない、彼を自分に向き直らせ、犇と抱き締めて、
「シャオユウ、ごめんね。でも、今は一人じゃない。お父さんもお母さんも、シャオユウの事を本当の子供だと思っている。それにあたしだって・・・あなたを大切な人だって思ってる。だから泣かないで」
「マオ・・・有難う・・・」
シャオユウもまた、彼女の背に手を回した。空に浮かぶ黄金色の満月に照らされて、二つの影は長らく語り合っていた。ここにシャオユウは本当に心を開いた。
やがてマオが村に来てから一年が経った。彼もすっかりマオや仲間達と打ち解け、童子達を連れて遊び廻っていた。村人達も彼を村長家の養子として認識し、悪戯少女マオの相棒だと困り顔しながらも、村の一員として受け入れている。
最近、マオはシャオユウに感じた事も無い感情を抱いていた。彼が隣にいるのは以前からだが、最近では何か胸が熱くなる感じがする。彼の動作、言葉、表情、全てが一々気になるのである。それで彼女は、ぽつねんと一人で悩む日が多くなった。
頬杖付いて考えている間も、頭にはシャオユウの顔が浮かんで止まない。二つ下の彼が、どうして自分の頭にこびりついているのか、それを考えれば考える程、彼女の若い血は滾りを見せる。両親に尋ねても、互いに顔を見合わせて微笑むばかり。
「マオ、大丈夫? 入っても良い? 」
シャオユウは、彼女が最近部屋から出ないのを心配して部屋の戸を叩いた。マオが戸を開けるとシャオユウが笑顔で立っている。一年前とは全く違い、彼の顔には快活さがある。
頬に淡紅を注いだ少年は少し吃りながら、
「さ、最近、ずっと部屋にいるから心配で。もし良かったら、出掛けない? さ、散歩でもどう? ほら、最近あまり話せてないから」
「う、うん。待ってて」
マオは早口にそう言って、急いで鏡台の前に座った。今まで殆ど使った事のない鏡台ではあるが、彼女は何気なしに短い髪を梳いてみたり、普段全く気にも留めない衣服を少し鏡に映してみたりした。
マオとシャオユウは、街外れの丘まで行った。眼下には村が一望でき、遠くには霊峰ウーメイ山が屹立と聳えている。初夏の太陽は瑠璃のような空で麗らかに輝き、深緑の絨毯のような縹渺たる草原が、うねりながら地平線の彼方まで続いている。
それらの風景から流れ込んでくる風が、さっと二人をかすめる。不思議と鳥も何処かに飛び去っている。
二人は木陰に腰を下ろし、ぎこちなく雑談を始めた。機を計っていたシャオユウは、懐から小さな琅玕を取り出して、
「これ、この間洞窟で拾ったんだ。綺麗だから、その・・・良かったらあげるよ」
「え? あ、有難う・・・」
と、マオが手を伸ばすと、その手はシャオユウの手と重なった。はっと二人は血が顫くのを感じた。シャオユウはマオの手を握って離さず、その双眸で彼女を見据えた。マオは襟足まで淡赤くして、二人は無上の幸福感以外、全てを忘れていた。
少しして、シャオユウの方から、
「マオ・・・僕は」
と言い掛けた時、俄に村の方から山津波のような喊声が起った。二人が振り向くと、濛々と黒煙が上がり、炎が所々に上がっている。
シャオユウは、一も二もなく駆け出し、マオも琅玕をしまって後を追った。
村は真っ赤であった。陽が沈み始めた黄昏時の茜空よりも赤い、死に誘う炎である。むうっと蒸されるような熱さの中、バチバチと炎が燃える音がする。牛馬は身体に火を纏い、彼方此方で狂奔している。人肉が焼ける異臭や煙が、喉には咽せて眼にも沁む。
鉄甲を纏った夜叉のような人影が、槍や剣や矛を振るって、手当たり次第に逃げ散る村人を老若男女構わずに殺害して廻っている。親を呼んで泣く幼児は槍に貫かれ、子の名を叫ぶ親は首を斬り飛ばされる。眼を覆いたくなるような地獄が展開されている。
茫然と立っているマオとシャオユウに村長が駆け寄ってきた。
「おい二人とも、早く隠れろっ。理由は解らないが、奴らはシャオユウを捜している。私達が気を引いている内に、早くっ」
「お父さん、一体何がっ。どうしてシャオユウをっ」
「良いから。早く行きなさいっ。シャオユウ、頼むぞっ」
おじさん、と彼が叫んだ時、バキバキと民家が倒れてきた。猛炎の津波と熱風に追われるように二人は走り廻った。靴が燃えて足元から煙が立っている。四方八面、全て黒煙か炎である。火の粉を払いながら、二人はやがてウーメイ山の麓にある、小さな廟に辿り着いた。
汗を拭って振り返ると、村を焼いている炎は、廣野に燃える、夜の野火にしか見えない。取り敢えず此処に隠れようと、二人は廟に入った。しくしくとマオは泣き出した。彼女の両親も、普段から彼女に連れられていた童子達も恐らくは謎の集団によって剣の錆にされているであろう。初めて彼女は、己の無力さを悟ったものとみえる。
シャオユウはそんな彼女を慰めていたが、本心では彼も泣き叫びたかった。一年くらいしか滞在していなかったが、彼に取っては故郷と変わりはない。何も出来なかった自分を、この時強く憎んでさえいた。
「確かにこっちに二人の子供が逃げていったんです」
不意に外から声がした。驚いた二人が息を殺していると、五人ほどの足音が聞こえ、錚々と甲や佩剣の音がする。
狭い廟の中でマオとシャオユウは必死で口を押さえ、心臓の音さえ聞こえてしまうのではないかと気が気ではなかった。無情にも足音と声は近付いて来る。
シャオユウは、マオに向き直り、
「あいつらは僕を捜しているんだ。僕が捕まればあいつらは帰って行く。マオは此処に隠れてて。あいつらがいなくなったら逃げるんだ」
「やだ、やだよ。シャオユウ、行かないで。あたしを一人にしないでっ」
しかし彼はマオを突き放し、廟の戸を開いて躍り出た。わざと廟から離れ、集団に向かって呼び掛けた。それを見た兵士達は、須臾にして彼を囲繞し、一人が彼の顔をじっと見て、こいつだ、と怒鳴った。
忽ち兵士達がシャオユウを代わる代わる暴行した。顔を殴られ、鳩尾を蹴られ、倒れたところを足蹴にされても、彼は堪えた。しかしそこへ、廟の戸を蹴って、躍り出た人がいる。
「シャオユウから離れてっ」
「マオッ。来ちゃ駄目だっ」
マオは勃然と怒り心頭、鉄鞭を片手翳しの青眼構え、きっと敵を睨み付ける。不意に強風が雑木林を揺らした時、マオは地を蹴り跳び掛かる。侮り切っていた兵士が一人、発止と頭を潰され斃れ伏す。
驚いたのは兵士達、あなやと一気に本気を見せる。マオは次に中段構え、近くの者に打ち掛かる。戛と高鳴る金属音、旋風纏う|単語《鉄鞭》は、すかさず二撃目横払い。ぐわっと血飛沫吐いた敵、脾腹を打たれて吹っ飛んだ。
しかし、ただの少女であるマオにはこれが限界、後ろから跳びかかった兵士の一人、即座に彼女を組み伏せて、哀れ、鉄鞭はカラリと蹴飛ばされた。
「よくもこちらの兵士を二人も殺してくれたな。お前はただでは殺さぬ・・・おいっ。シャオユウを木に縛り付けろっ」
「な、何をするんだっ。マオを離せっ」
「ははは。お前は黙ってそこで見ていろ」
兵士達は彼には耳も貸さず、厳重に縛り上げた後、マオの衣服を寸裂した。その場で三人の男に、マオは代わる代わる玩弄された。悲痛な叫びがシャオユウの耳を打ち、想い人が無理矢理玩弄されるという悲惨極まる光景が、目の前で展開されている。ああ、地獄の牛頭馬頭でもこの光景には眼を背けるであろう。
やがて自分達の穢らわしい欲望を発散した兵士達は、マオの後ろ袈裟を斬り、呆然としているシャオユウを引っ担いで去って行った。
寂寞とした夜更けとなった。つい先頃の兵乱が嘘のように辺りは寂寞としている。村人達は嬰児に至るまで口封じのために鏖殺され、雑木林では赤裸のマオが血まみれで斃れている。
(シャオユウ・・・シャオユウ・・・)彼女は何度もその名を心で唱えていたが、とうに事切れている。すると、霊峰の方から一匹の獣、雪のような白い体躯に縦縞模様、鼻端の毛は鋭い針のようで鏡のような双眸を持っている。毛が白い事以外は、容貌こそ虎そのものではあるが、目の前にいる死にたての獲物を襲わない。
それどころか、耳元で何か囁くような素振りを見せ、マオを咥えて霊峰へと戻っていった。
マオが眼を覚ますと、そこは昔語りにある仙境のような場所であった。頭上では鶴が唄って神雲が漂い、目の前に所々に高楼や神廟が見えている。彼女が呆気に取られて周囲を見渡していると、目の前に一人の仙女が現れた。
「マオ、お前は死にました。此処は浄土の入り口です。そして私はウーメイ山の主バエフー、お前を浄土まで送りにきました」
「えっ。じゃ、じゃあシャオユウは、シャオユウはいないの? 」
「あれからもう三ヶ月だから、当然彼も死にました。彼の最後は、皇帝の前で殺されるというものでした。最後まで、お前を守れなかったという事を悔やんでいましたよ。自分が弱いから、弱いからマオも皆も守れなかったと。それで・・・成仏出来ずに今も現世を彷徨っています」
「そんな・・・あたしの所為で・・・」
マオは悄然と項垂れた。そこで初めてシャオユウが自分にとって一番大切な存在で、弟ではないたった一人の想い人である事に気が付いた。しかし遅すぎた。最早彼女も彼も命を落とし、シャオユウの方は現世に強い未練を残し、今でも彷徨っている。
するとバエフーが彼女の懐にある琅玕に気が付いたらしい。そして語調を厳しくし、
「もしもお前に覚悟があるなら、現世に蘇らせてあげなくもありません。お前が持っているその琅玕、それは持ち主が最も強く求めるものに反応して輝きます。それに導いてくれる人、それの手掛かり。お前がそれを使ってシャオユウの魂をみつけてあげれば、きっと彼も成仏します」
「覚悟ってなんですか? 」
「一度蘇った者、成仏を拒んだ魂は永遠に地獄へ送られます。最早輪廻転生の輪からも外れ、浄土にもいけません。それでもお前は現世に戻りますか? 」
「・・・はい。シャオユウと一緒にいられるなら、地獄でも何処でも行きますっ」
「解りました」
そう言うや否、バエフーは諸手を広げて何か詠唱した、すると、マオの身体は光に包まれ、気が付いた時には彼女が斃れていた場所、元の雑木林にいた。
それから三百年、彼女は死亡時から歳を取る事なく、シャオユウを捜し出す為の旅を続けている。ただ一言、生前伝えられなかった想いを伝えるために。
悄然と立ち去りかける少女の背中に向かってクラウスが呼び掛けた。少女はゆっくりと振り返り、何、と言った。クラウスは、恐る恐る彼女に誰何した。
「・・・あたしはただ、シャオユウを捜しているだけ。あなた達には関係無い」
「あいつと知り合いなのか? 」
「あなた達・・・その恰好・・・まさかあなたは・・・」
と、少女は懐から小さな琅玕を出し、クラウスに翳した。すると、俄にそれは光り出し、眩い閃光を放ち、辺りは昼のように明るくなった。
少女は驚いてクラウスを見、先の非礼を詫びながら琅玕をしまい、合羽の頭巾を脱いだ。火光に照らし出されたその容貌は、色艶の良い漆黒髪を短く切り、遠山のような蘭瞼を持ち、細い紅唇が白い肌の中で艶やかに映っている。歳頃は恐らく十三か四。しかし、何処か稚さを残すその眸は、深い哀寂をありありと示している。
少女は臙脂が塗られているわけでもないのに、淡紅に輝く唇を開いて、
「あたしはマオって言うの。その琅玕はあの人、シャオユウがあたしにくれた大切なもの。あたしが一番求めているものに繋がる人が近くにいると輝くって、あの方に言われたけど、まさかあなたが・・・。あなた達の目的は解らないけど、手伝ってあげるから、あたしのお願いも聞いてくれる? 」
「構わないけど、誰に言われたんだ? 」
「・・・そこのウーメイ山の神様、バエフー様だよ」
クラウス達は互いに顔を見合わせて、この不可思議な少女の正体を測りかねていた。憂愁晴れるべくもない少女は、火光に白皙を朧気に照らしながら寂然と語り出した。
――約三百年前、まだこの村落が霊峰への参拝者を迎える宿場の一つとして人が住んでいた頃、マオは村長の一人娘として、決して豊かではなかったが、両親の愛を一身に受けて育っていた。
そのマオは普段から、近所の童子達の頭目を気取り、近くの洞窟や林を探検したり、狼や小猪を愛用の鉄鞭で仕留めてその肉を振る舞ったりと姐御肌を振り撒いていた。大人達は彼女の行動を強く顰蹙し、もっと女の子らしくしなさい、と何度も強意見を繰り返したこと数知れなかったが、その度に彼女は、
「男とか女とかどうでも良いじゃない。あたしはあたしが出来る事、したい事があるんだから」
と、大人達の視野の狭さを笑い、いよいよ以てその姐御肌に磨きと冴えを加えていき、最近では両親も放任してある。
そんなマオがある日、盗み食いの調達をするために村の食糧貯蔵庫に入った際、何かが慌てて奥に入っていくのを見た。(お腹を空かせた獣でも迷い込んだのかな)と彼女は思い、大人を呼ぶでもなく、鉄鞭片手に薄暗い貯蔵庫の奥に入っていった。
ガタッと小さな音がした方へ、彼女はゆっくりと進んだ。小さな換気用の格子窓から入ってくる陽光以外に光はない。板敷きの床に格子の影が黒い線を描いている。初夏の昼下がりなので、貯蔵庫の中は少し蒸し暑い。
ふとマオは、蹲っている小さな人影を見つけた。(よし・・・)と彼女は息を殺して、柄手に力を込め、いつでも来たれの備え怠らず、そっとそれの後ろに立った。
「・・・君、誰? 」
「あっ」
人影は愕然と声を上げ、脱兎の勢いで逃げ出した――が、脚が縺れたのか、そのまま前のめりに倒れた。人影の正体は少年であった。ひどく窶れて疲労困憊の様相を示している。
マオは慌てて少年に駆け寄って抱き起こした。少年は消え入りそうな息で、高熱を発している。蒼白い顔で動くこともままならない様子なので、マオは蒼惶と大人達を呼び、彼を自宅に運び込んだ。参拝者以外、殆ど外部から人間の来ない静かな村は謎の少年によって一時騒然となった。
三日三晩苦しんだ後、少年はようやく眼を覚ました。彼は村長の四合院、東廂房の一室で牀に寝かされていた。周囲の壁には竹林とそこに遊ぶ鳥が描かれ、塗り骨の窓からは院子の中庭、初夏の善美を飾り付けたような竹林と築山泉水がある。廻る龍を象った円い正門からは彼方に居並ぶ民家の甍が見える。
そこへ木戸を開ける音がした。少年は驚き、慌てて牀に横たわったが、入って来た人は彼に優しく、
「眼が覚めたんだね。大丈夫だよ。あたしは君に何か酷い事なんてしないから」
「・・・」
少年はゆっくりと眼を開けた。自分を覗き込んで、にっこりと紅唇から白い歯を見せるマオを見て、彼は勃然と真っ赤になった。
少年は慌てて彼女を避けるように起き上がり、動悸めく胸中を隠すような早口で、
「き、君は誰? 此処はどこ? 」
「あたしはマオって言うんだ。此処はあたしの家。君、凄く疲れて風邪までひいていたみたいだったから、運んだんだよ。どうしてあんな所にいたの? 」
「実は・・・盗賊の一味から逃げ出したんだけど、五日の間、何も食べていなかったところに、この村を見つけたらつい・・・」
「そうなんだ・・・君、何処か行く宛てはあるの? そうだっ。無いんだったら家に住みなよ。うん、それが良い」
牀に手を置いて身を乗り出しながら、一人で話を進めてしまうマオに、少年は呆気に取られた様子。ちょっと待ってよ、と手を伸ばした時、彼女の手に触れた。
尋常ならば、すぐに手を退かしていたであろうが、少年は彼女の手の温もりに、全身の血の滾りを感じ、しばしの間、赫っとした面を伏していた。
マオはどう受け取ったか、恐らく何も解っていない様子で、少年の手を確と握り、
「良いって事だねっ。あたし、弟が出来ちゃったっ。これからよろしくねっ。そう言えば君、名前は? 」
当事者の一方がついて行けない程の急速で進んだ話である。少年は茫然と、否、握られた手の疼きに陶酔しながらも、何とか声を絞り出すように答えて曰く、
「シャオユウ」
それからシャオユウは、マオの家に迎え入れられ、養子の待遇を受けた。男児のいない村長夫婦は彼を本当の息子の如く扱い、村の者達やマオの仲間も新参者である彼を迎え入れ、最初は怯え切っていた彼も、次第に言葉くらいは交わすようになっていった。
昼はマオに引き摺られるように野山に入り、夜は彼女から文字を習うなどしている。ふとある夜、涼みの中庭でマオは、シャオユウの両親や故郷について尋ねた。
その質問は彼の心の傷を抉るものであったらしく、彼は静かに頬を涙に濡らした。慌ててマオは謝ったが、彼もまたいつまでも隠しておくわけにはいかないと思ったらしく、
「僕の母さんは・・・僕が七歳の時に殺されたんだ。僕の目の前で・・・男達に滅茶苦茶にされて・・・。僕は連れていかれそうになった所を逃げ出したんだけど、そこで盗賊に捕まったんだ。それで、あいつらの奴隷代わりに四年も働かされてたんだ。ちょっとだけの食事で、死体の片付けとか全員の荷物持ちとか。隠れ家にいる時は足枷を付けられていたんだけどこの間、あいつらが酔っ払って眠りこけている内に、何とか逃げ出して、この村に着いたんだ」
「・・・」
そこで初めてマオは、シャオユウの身体を洗ってやっている時に見えた、全身の瘡や年齢にしては小柄な彼の身体の原因を理解した。盗賊共の虐待の所為で、彼は他人にひどく怯えているのだ。
最後の方は絞り出すようにして語ったシャオユウの顔は、月光に照らされて黙然と、しかし悲哀の涙を頬につたわせ、寂しいよ、と呟いた。
マオは彼の哀絶極まる過去を聞き、軽々しく尋ねて彼を傷付けた事を後悔した。しかしそこで終わる彼女ではない、彼を自分に向き直らせ、犇と抱き締めて、
「シャオユウ、ごめんね。でも、今は一人じゃない。お父さんもお母さんも、シャオユウの事を本当の子供だと思っている。それにあたしだって・・・あなたを大切な人だって思ってる。だから泣かないで」
「マオ・・・有難う・・・」
シャオユウもまた、彼女の背に手を回した。空に浮かぶ黄金色の満月に照らされて、二つの影は長らく語り合っていた。ここにシャオユウは本当に心を開いた。
やがてマオが村に来てから一年が経った。彼もすっかりマオや仲間達と打ち解け、童子達を連れて遊び廻っていた。村人達も彼を村長家の養子として認識し、悪戯少女マオの相棒だと困り顔しながらも、村の一員として受け入れている。
最近、マオはシャオユウに感じた事も無い感情を抱いていた。彼が隣にいるのは以前からだが、最近では何か胸が熱くなる感じがする。彼の動作、言葉、表情、全てが一々気になるのである。それで彼女は、ぽつねんと一人で悩む日が多くなった。
頬杖付いて考えている間も、頭にはシャオユウの顔が浮かんで止まない。二つ下の彼が、どうして自分の頭にこびりついているのか、それを考えれば考える程、彼女の若い血は滾りを見せる。両親に尋ねても、互いに顔を見合わせて微笑むばかり。
「マオ、大丈夫? 入っても良い? 」
シャオユウは、彼女が最近部屋から出ないのを心配して部屋の戸を叩いた。マオが戸を開けるとシャオユウが笑顔で立っている。一年前とは全く違い、彼の顔には快活さがある。
頬に淡紅を注いだ少年は少し吃りながら、
「さ、最近、ずっと部屋にいるから心配で。もし良かったら、出掛けない? さ、散歩でもどう? ほら、最近あまり話せてないから」
「う、うん。待ってて」
マオは早口にそう言って、急いで鏡台の前に座った。今まで殆ど使った事のない鏡台ではあるが、彼女は何気なしに短い髪を梳いてみたり、普段全く気にも留めない衣服を少し鏡に映してみたりした。
マオとシャオユウは、街外れの丘まで行った。眼下には村が一望でき、遠くには霊峰ウーメイ山が屹立と聳えている。初夏の太陽は瑠璃のような空で麗らかに輝き、深緑の絨毯のような縹渺たる草原が、うねりながら地平線の彼方まで続いている。
それらの風景から流れ込んでくる風が、さっと二人をかすめる。不思議と鳥も何処かに飛び去っている。
二人は木陰に腰を下ろし、ぎこちなく雑談を始めた。機を計っていたシャオユウは、懐から小さな琅玕を取り出して、
「これ、この間洞窟で拾ったんだ。綺麗だから、その・・・良かったらあげるよ」
「え? あ、有難う・・・」
と、マオが手を伸ばすと、その手はシャオユウの手と重なった。はっと二人は血が顫くのを感じた。シャオユウはマオの手を握って離さず、その双眸で彼女を見据えた。マオは襟足まで淡赤くして、二人は無上の幸福感以外、全てを忘れていた。
少しして、シャオユウの方から、
「マオ・・・僕は」
と言い掛けた時、俄に村の方から山津波のような喊声が起った。二人が振り向くと、濛々と黒煙が上がり、炎が所々に上がっている。
シャオユウは、一も二もなく駆け出し、マオも琅玕をしまって後を追った。
村は真っ赤であった。陽が沈み始めた黄昏時の茜空よりも赤い、死に誘う炎である。むうっと蒸されるような熱さの中、バチバチと炎が燃える音がする。牛馬は身体に火を纏い、彼方此方で狂奔している。人肉が焼ける異臭や煙が、喉には咽せて眼にも沁む。
鉄甲を纏った夜叉のような人影が、槍や剣や矛を振るって、手当たり次第に逃げ散る村人を老若男女構わずに殺害して廻っている。親を呼んで泣く幼児は槍に貫かれ、子の名を叫ぶ親は首を斬り飛ばされる。眼を覆いたくなるような地獄が展開されている。
茫然と立っているマオとシャオユウに村長が駆け寄ってきた。
「おい二人とも、早く隠れろっ。理由は解らないが、奴らはシャオユウを捜している。私達が気を引いている内に、早くっ」
「お父さん、一体何がっ。どうしてシャオユウをっ」
「良いから。早く行きなさいっ。シャオユウ、頼むぞっ」
おじさん、と彼が叫んだ時、バキバキと民家が倒れてきた。猛炎の津波と熱風に追われるように二人は走り廻った。靴が燃えて足元から煙が立っている。四方八面、全て黒煙か炎である。火の粉を払いながら、二人はやがてウーメイ山の麓にある、小さな廟に辿り着いた。
汗を拭って振り返ると、村を焼いている炎は、廣野に燃える、夜の野火にしか見えない。取り敢えず此処に隠れようと、二人は廟に入った。しくしくとマオは泣き出した。彼女の両親も、普段から彼女に連れられていた童子達も恐らくは謎の集団によって剣の錆にされているであろう。初めて彼女は、己の無力さを悟ったものとみえる。
シャオユウはそんな彼女を慰めていたが、本心では彼も泣き叫びたかった。一年くらいしか滞在していなかったが、彼に取っては故郷と変わりはない。何も出来なかった自分を、この時強く憎んでさえいた。
「確かにこっちに二人の子供が逃げていったんです」
不意に外から声がした。驚いた二人が息を殺していると、五人ほどの足音が聞こえ、錚々と甲や佩剣の音がする。
狭い廟の中でマオとシャオユウは必死で口を押さえ、心臓の音さえ聞こえてしまうのではないかと気が気ではなかった。無情にも足音と声は近付いて来る。
シャオユウは、マオに向き直り、
「あいつらは僕を捜しているんだ。僕が捕まればあいつらは帰って行く。マオは此処に隠れてて。あいつらがいなくなったら逃げるんだ」
「やだ、やだよ。シャオユウ、行かないで。あたしを一人にしないでっ」
しかし彼はマオを突き放し、廟の戸を開いて躍り出た。わざと廟から離れ、集団に向かって呼び掛けた。それを見た兵士達は、須臾にして彼を囲繞し、一人が彼の顔をじっと見て、こいつだ、と怒鳴った。
忽ち兵士達がシャオユウを代わる代わる暴行した。顔を殴られ、鳩尾を蹴られ、倒れたところを足蹴にされても、彼は堪えた。しかしそこへ、廟の戸を蹴って、躍り出た人がいる。
「シャオユウから離れてっ」
「マオッ。来ちゃ駄目だっ」
マオは勃然と怒り心頭、鉄鞭を片手翳しの青眼構え、きっと敵を睨み付ける。不意に強風が雑木林を揺らした時、マオは地を蹴り跳び掛かる。侮り切っていた兵士が一人、発止と頭を潰され斃れ伏す。
驚いたのは兵士達、あなやと一気に本気を見せる。マオは次に中段構え、近くの者に打ち掛かる。戛と高鳴る金属音、旋風纏う|単語《鉄鞭》は、すかさず二撃目横払い。ぐわっと血飛沫吐いた敵、脾腹を打たれて吹っ飛んだ。
しかし、ただの少女であるマオにはこれが限界、後ろから跳びかかった兵士の一人、即座に彼女を組み伏せて、哀れ、鉄鞭はカラリと蹴飛ばされた。
「よくもこちらの兵士を二人も殺してくれたな。お前はただでは殺さぬ・・・おいっ。シャオユウを木に縛り付けろっ」
「な、何をするんだっ。マオを離せっ」
「ははは。お前は黙ってそこで見ていろ」
兵士達は彼には耳も貸さず、厳重に縛り上げた後、マオの衣服を寸裂した。その場で三人の男に、マオは代わる代わる玩弄された。悲痛な叫びがシャオユウの耳を打ち、想い人が無理矢理玩弄されるという悲惨極まる光景が、目の前で展開されている。ああ、地獄の牛頭馬頭でもこの光景には眼を背けるであろう。
やがて自分達の穢らわしい欲望を発散した兵士達は、マオの後ろ袈裟を斬り、呆然としているシャオユウを引っ担いで去って行った。
寂寞とした夜更けとなった。つい先頃の兵乱が嘘のように辺りは寂寞としている。村人達は嬰児に至るまで口封じのために鏖殺され、雑木林では赤裸のマオが血まみれで斃れている。
(シャオユウ・・・シャオユウ・・・)彼女は何度もその名を心で唱えていたが、とうに事切れている。すると、霊峰の方から一匹の獣、雪のような白い体躯に縦縞模様、鼻端の毛は鋭い針のようで鏡のような双眸を持っている。毛が白い事以外は、容貌こそ虎そのものではあるが、目の前にいる死にたての獲物を襲わない。
それどころか、耳元で何か囁くような素振りを見せ、マオを咥えて霊峰へと戻っていった。
マオが眼を覚ますと、そこは昔語りにある仙境のような場所であった。頭上では鶴が唄って神雲が漂い、目の前に所々に高楼や神廟が見えている。彼女が呆気に取られて周囲を見渡していると、目の前に一人の仙女が現れた。
「マオ、お前は死にました。此処は浄土の入り口です。そして私はウーメイ山の主バエフー、お前を浄土まで送りにきました」
「えっ。じゃ、じゃあシャオユウは、シャオユウはいないの? 」
「あれからもう三ヶ月だから、当然彼も死にました。彼の最後は、皇帝の前で殺されるというものでした。最後まで、お前を守れなかったという事を悔やんでいましたよ。自分が弱いから、弱いからマオも皆も守れなかったと。それで・・・成仏出来ずに今も現世を彷徨っています」
「そんな・・・あたしの所為で・・・」
マオは悄然と項垂れた。そこで初めてシャオユウが自分にとって一番大切な存在で、弟ではないたった一人の想い人である事に気が付いた。しかし遅すぎた。最早彼女も彼も命を落とし、シャオユウの方は現世に強い未練を残し、今でも彷徨っている。
するとバエフーが彼女の懐にある琅玕に気が付いたらしい。そして語調を厳しくし、
「もしもお前に覚悟があるなら、現世に蘇らせてあげなくもありません。お前が持っているその琅玕、それは持ち主が最も強く求めるものに反応して輝きます。それに導いてくれる人、それの手掛かり。お前がそれを使ってシャオユウの魂をみつけてあげれば、きっと彼も成仏します」
「覚悟ってなんですか? 」
「一度蘇った者、成仏を拒んだ魂は永遠に地獄へ送られます。最早輪廻転生の輪からも外れ、浄土にもいけません。それでもお前は現世に戻りますか? 」
「・・・はい。シャオユウと一緒にいられるなら、地獄でも何処でも行きますっ」
「解りました」
そう言うや否、バエフーは諸手を広げて何か詠唱した、すると、マオの身体は光に包まれ、気が付いた時には彼女が斃れていた場所、元の雑木林にいた。
それから三百年、彼女は死亡時から歳を取る事なく、シャオユウを捜し出す為の旅を続けている。ただ一言、生前伝えられなかった想いを伝えるために。
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