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第一章
第七話
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フェイロンと別れた夜、クラウス達は何とか空いている宿を見つけ、滑り込むように部屋を取った。もう夜更だったので、無駄話はせずに牀に入ったのだが、ソフィアは何度も寝返りを打ち、中々寝付けないでいた。
悠揚なフェイロンに言われた言葉が、何度も彼女の心の中で反すうしているのだ。自分の中で信じていた正義が、却って他者からすれば迷惑だったのではないか、独りよがりで満足していたのは自分一人だったのではないか、等と考えていると、近くで啜り泣きの声がする。
起き上がって周囲を見ると、頼りない灯火が不安げに揺れ、その度に家具や人の顔がチラチラと影になったり照らされたりする。
ふとソフィアは、ランレイの顔を見た。彼女は身体を丸めて眠っているが、眼から涙を流して小さく泣いている。丸まった身体はランレイ自身を守る殻のようで、彼女の顔に光る筋は、彼女の心そのもののようである。
辞めて、と小さくランレイは呟いた。そのか細い声は、普段の彼女の精気溢れる姿からは想像も出来ない。安らかに寝息を立てるクラウスとは対照的に、ランレイは如何にも寝苦しそうで、小刻みに息をしている。
「…ごめんよ。お願いだよ、許して。辞めて欲しいよ…」
「ランレイ? 大丈夫? 」
「辞めてっ」
ランレイはがばと跳ね起きた。満顔の汗は珠のように輝き、涙と汗は混じり合って、ぽたりと麻布の蒲団の上に落ちる。肩で息をする彼女にソフィアは近付いて、大丈夫かと尋ねた。
ランレイは慌てて笑顔を作り、常のように活力溢れる高い声で応えた。ソフィアは心配そうに、あれこれ尋ねるが、その度にランレイは、大丈夫だよ、等と言うのみである。
しかし、そう言ってはぐらかす彼女の笑顔は、灯火の火影に揺れて悄然さが目立ち、その声は次第に、部屋を照らす灯火のように力が無くなっていく。
その時、ランレイの後ろから声がした。二人が声のした方向を見ると、クラウスが寝言を呟いている。白い月光が差し込む窓際に眠る彼は、慣れない寝床でもよく寝られるらしく、腹が減った、俺の肉を取るな、何処行くんだお前ら、等といった寝言を並べている。
ランレイとソフィアは、互いに顔を見合わせて笑い、明日も早いので寝ることにした。ランレイは、クラウスの様子を見て、少し気が安らいだようで、間もなく静かな寝息を立て始めた。
ソフィアは彼女の涙を見、寝言を聞いて、全く謎に包まれた彼女の過去を思い、まだまだ心の距離が離れている事を感じざるを得なかった。
翌朝、水平線の向こう、天地を分ける線のような海の彼方から、東雲を割って朝陽が出て来た。空も海も新しい日を象徴する紅に染まり、黎明の閃光は港街を照らす。
クラウスは常の如く朝陽と共に起き出し、ソフィア達が起きるのを待っていた。窓の外を見ると、船仕事に向かう男達、朝市の準備に向かう女達がばらばらと歩いている。
それを見たクラウスは溜息をついた。成り行き任せとはいえ、故郷から離れて落ち着かない流浪の境遇、溜息の一つもつきたいだろう。
暫くすると、ランレイが起き出した。欠伸を一つ上げ、眼を擦りながら、腹減った、と朝の挨拶もせずに言う。昨夜の涙と悲夢は何処へやら、朝焼けに照らされる素朴な笑顔は懊悩を感じさせない。
ソフィアもランレイの後で起き出し、寝起きにも関わらず早速部屋から出て行こうとした。その壮気溌剌たる姿は昨夜のランレイの涙を見たからか、常よりも勇を奮っているように見える。
昨夜の事など一切知らないクラウスは、鋭気を全身から迸らせるソフィアを見て、呆れたように、
「おいソフィア。あんまり張り切ってると、怪我するぞ。フェイロンさんだって、慎重に行けって言ってただろ」
「何言ってるの。張り切って慎重に行くの。ほらほら、フェイロンさんが待ってるんだから、行こう行こうっ」
「いこういこうっ」
「あ、おいっ。待ってくれよ。せめて朝飯を」
クラウスは勇んでいく女達を追い、慌てて部屋から出て行った。昨夜のやり取りがあったので、ソフィアは確とランレイの手を握り、ともすれば崩れかねない彼女の心を気に掛け、敢えて声を励まし、彼女に語りかけていた。
クラウス達が昨夜の場所、フェイロンと会った海沿いの公園に着くと、そこにはまばらに人影があるのみで、フェイロンはいなかった。
肩透かしを喰らった気分でクラウスが辺りを見回していると、彼の後ろから清流の声音がした。
「やあ、おはよう。相変わらず早いね、君は。旅先でも、いつもと変わらない時間に一番に起きる、君らしいよクラウス君」
「あ、フェイロンさん、おはようございます。どういうことです? 」
「ふふふ。まあ良いじゃないか。さ、行こうか。此処から歩いてすぐだ」
ランレイは何の警戒心無く、フェイロンを見ると嬉しそうに飛び付いてその手を握って歩いていった。クラウスはフェイロンに言われた言葉が妙に心に残り、常と変わらない生活を望む自分の事を客観視された気分になった。
ソフィアが茫然と立っている彼に向かって、行くよ、声を掛けるので、クラウスも我に返ってフェイロン達の後を追っていった。並んだランレイとフェイロンの後ろ姿は、何処となく似たような雰囲気を放っていた。
陽が昇るにつれ、街の雑踏は数を増していく。その人混みの中をクラウスとソフィアは、人波に揉まれるようにして通っていくが、フェイロンと彼に手を取られるランレイは、水流れのように涼やかに通っていく。
身のこなしは流石という他無く、ランレイは何度か手を離しそうになったが、その度にフェイロンは、彼女の手を握る。彼に包まれるような感覚を思いながら、ずっと昔、彼に触れたような感覚を抱きながらランレイは雑踏の中から夢見心地で出た。
一方でソフィアは、人混みで足を踏まれたり流されたり叩かれたりして、這々の体で這い出して来た。クラウスを引っ張り出すようにしてフェイロンを見つけ、何とか彼に付いていく。
小一時間ほど歩いた後、一行は街外れの朽ち果てた宮に辿り着いた。木で造られた祠は苔が生え、緑と茶が混じり合う複雑模様をしている。その祠の裏手、草木や瓦礫で巧妙に隠された洞穴があった。
洞穴は地獄にでも続いているかのように真っ黒な口を開け、中では不気味な風が唸りを上げている。ランレイはフェイロンの腕にしがみ付いて、
「ここ、入るか? 何だか不気味だよ」
「ふふふ。心配しなくて良いよランレイ。此処は浅い海底の下を通る抜け道なんだ。幽霊なんて、この世界にはいないさ。そうだろう、クラウス君」
「あ、ああ。ゆ、幽霊なんて、いないいない。ちょっと不気味だけど…」
「ほら、何怖がってるの。此処以外に道は無いんだから。あたしが先頭で歩いたげる」
ソフィアが先頭で松明を起こして歩き出し、フェイロンとランレイもその後を追う。クラウスは一人、待ってくれ、と洞穴の中に入っていった。そんな彼らを遠くから凝視する人影が草叢から身を起こし、飛鳥のように何処かへと駆けて行った。
海底の洞窟は一寸先も見えず、松明の光は広大な闇の中で飛ぶ小さな蛍のようである。ソフィアも勇んで入ったものの、予想の遙か上をいく晦冥に少しばかり怖気を震っている様子。フェイロンは全く変わらず、暗闇の中でも見えているかのように悠々と進んでいく。
ランレイは彼と手を繋いで歩き、いつしかソフィアも心細くなったのか、ランレイを挟んでフェイロンと並んで歩くようになり、その後塵を拝しているクラウスは、形容し難い感情を心に抱いた。
不安げにフェイロンに話しかけるソフィア、それに優しい微笑みと柔らかな言葉を返すフェイロン、その二人の様子を見て、自身の複雑な思いを吐き出すように溜息を一つする。
洞窟は一本道なので迷うことは無い。しかし無限とも思えるほど長い常闇の回廊は、水の跳ねる音すら強く聞こえる。
恐怖からか、一行はいつしか口数も少なくなり、しんとした道を押し黙って進んでいく。すると、開けた場所に出た。
そこはどうやら古代の休息所らしく、篝火の跡や粗末ながら座れる場所もあった。海底洞窟に入ってから歩き通しの一行はそこで休憩を取る事にし、焚き火を囲んで座った。
不意にソフィアが話を切り出した。
「そう言えば、フェイロンさんはランレイと知り合いなんですか? 同じ世界から来たみたいですけど」
「ふふふ。確かに俺はランレイの知り合いだけどそうでもない。だって、彼女は俺のことを覚えていないからね。殆ど初対面みたいなものさ。でも、知り合いとか友達って何なんだろうね」
「え? 何が言いたいんですか? 友達は何処までいっても友達です」
「仮に友達と呼んでいる人が、自分の前では演技をしていて、本当は全然違う人だったらどうする? その人の本性と君とは友達って言えるのかな? 日頃は余裕そうな人が、実は悲しい過去を心の奥底に隠していたら、君はどうする? 」
「…」
「まあ、今は深く考える必要は無いよ。さ、皆は仮眠でも取ったら良い。俺が見張りをしておくよ」
そう言われる前にクラウスは、焚き火の明るさに安心したのか、剣を枕に夢の世界、ランレイもいつの間にかフェイロンの膝に頭を乗せ、寝息を立てている。ソフィアも横になったが、昨夜と今言われた、フェイロンの言葉が心に渦巻いていた。
人の内面を見ずに付き合っていた自分の事が思い出され、どうにも心が落ち着かないのだ。すると、フェイロンが彼女に声を掛けた。
「ふふふ。今いくら考えても答えは出ないよ。それよりは、これからの為に眠った方が良い。大丈夫だよ、旅をしている内に出なくても、これから人生を生きていればいつか自分が答えを出せるようになる」
その声音にソフィアは、心の底から落ち着く感覚を覚え、いつしか眼を閉じて眠っていた。焚き火が明々と燃え、過酷な旅に一瞬の安らぎを添えていた。
フェイロンは膝の上で眠るランレイの頭を撫で、安心しきった彼女はいつもの悪夢ー木杖を手に襲い掛かって来る恐ろしい女の夢ーを見ず、いつ振りか知れない安らかな眠りに心まで休ませていた。
暫く後、陽が見えないので時刻は知れないが、かなりの時間が経ったであろう時、クラウスがむっくりと起き上がった。
彼が周囲を見回すと、フェイロンが微笑みながら彼を見ていた。一睡もしていないであろうに、彼に疲れた色は無い。
その後、ソフィアとランレイも起き出し、一行はまた歩き出した。
全く頼りない松明の火光を先頭に、フェイロン以外の三人は不安な行脚を続けた。
豁然、彼方に小さな光が見えた。眼を凝らすと、太陽に照らされた青玉のような海面がある。その手前には薄い草叢が茂っている。
ランレイは喜んで走って行き、ソフィアが、危ないよ、と後を追っていく。クラウスも後から走っていこうとするが、後ろでフェイロンが、
「君もいつか、自分の過去と向き合う日が来る。その時、心の支えになるのは仲間と大切な人だ。それを忘れちゃいけないよ。頑張ってね」
え、とクラウスが振り返ると、フェイロンは煙か霞のように消えていた。クラウスが眼を白黒させていると、ソフィアが遠くから手を振って彼を呼んだ。
クラウスは急いで彼女達の方へと走っていき、フェイロンが姿を消したと言うがソフィアは、前もそうだったじゃない、と気にも留めず、まだ心を洞窟に残すクラウスと残念がるランレイの手を引いて外に出た。
洞窟から外に出ると、思わず眼を刺す春の陽差し、クラウス達は手を翳して陽差しを防いだ。その時、ふっと影が視界に入った。
クラウスが手を退かすと、二十路に入るか入らないかの婀娜女、色艶の良い長髪を潮風にたなびかせ、妲己のような妖艶さを惜しげも無く出して立っていた。
背中に背負う巨大な跺刀は良く磨かれ鏡のように輝き、纏う軽甲は閃々と陽光を反射している。
クラウスが先頭に立ち、誰何の声を掛ける。凜々とした姿とは、やや不調和な高い声で女は答える。
「私はアンナ・クレンメ。いくら貴方達でも、名前くらいは聞いた事があるでしょ? 王国に暮らしている人ならね」
「アンナ・クレンメ…まさか?! 」
クラウスは何処かで聞いた名前と同じであると思いだし、全身から冷や汗を出した。
数年前、天変地異の始まりと同じ頃、突如として現れた四人の男女は、民心の揺らぎに乗じて決起した不穏勢力を瞬く間に平定し、その武勇から一躍して国王の信頼を得て、今では「王の四星」として特別の地位を与えられている。アンナはその内の一人なのだ。
アンナは不敵に微笑み、背中の大跺刀を両手に持ち、
「貴方達を追討するように国王から勅命が出ている。大人しく首を渡しなさい。そうでなければ、こいつで野良犬みたいに真っ二つにするしかないけど」
「誰が大人しく殺されるものですかっ。クラウス、ランレイ、行くよっ」
「はいなっ。ランレイ、こんな奴に負けないよっ」
「あら、乱暴なお嬢さん方ね。お兄さんも…勿論殺される気は無いか。ま、大人しくしていても殺すけど」
「あ、当たり前だっ。此処まで来た以上、もう退けるかっ」
「莫迦な子達。せめて苦しまないようにって思ってたのに」
ぱっと地面を蹴ったクラウスが、右手で流星の尾を引いてきらりと一閃、敵の腰車目掛けて斬りつける。アンナも得物を縦翳し、発止と難なく受け止める。怯まずクラウスの放つ二撃目、戛然、刃金の冴え音、火華の香り、丁々発止と両雄は打ち合う。
それを見たソフィアは、アンナの横に回り込み、えいっ、と気合いの放つ裂帛一声、陽光に鈍く光る八角棒を振り下ろす。それより早く動いた敵のアンナ、軽快な身のこなしを存分に発揮して、大振りの一閃! 間一髪でクラウスとソフィアは身をかすめる刃を躱した。
その時走るは黒い影、牛若丸の身軽さを見せて、アンナの死角から躍り掛かる。殺気を感じたアンナ、目にも止まらぬ振り返り、同時に発止と音が立つ。彼女の武器を殴ったランレイは、歯噛みをして二撃、三撃、と攻撃を続けるが、アンナは武器を縦翳し、横翳し、斜め翳し、拳の雨を難なく防ぐ。
「ワン・ランレイッ。そんなものなのっ 」
と、アンナが回し蹴りを放とうとする彼女に、電光の突きを見舞った。はっと気が付いたランレイは、身をよじって倒れ込む。しかし敵の刃は不気味な唸りを上げて彼女に襲い掛かる。
戛、と重い金属音と散る火華、眼を開けたランレイは、アンナと鍔迫り合うクラウスを見た。すかさずソフィアが、敵の脾腹目掛けて横から一撃、ぐっと血を吐いて、敵は後退り。
今だっ、とランレイはアンナ目掛けて疾風の如く躍り掛かり、峻烈至極の脚の技! 面に凄まじい蹴りを受け、アンナは空中で一回転して、地面に叩きつけられた。
「ふん、思っていたよりやるじゃない。今日の所は見逃してあげる」
と、アンナはざんぶと海に飛び込み、クラウスが追っていった時には、もう彼方まで泳ぎ去っていた。
クラウス達は肩で息をしながら互いを見た。クラウスとソフィアは、敵の刃に負わされた刀瘡が所々に目立ち、ランレイも両手から血を流していた。
ソフィアが二人の瘡を手当てしていると、何処からか声が聞こえた。見回していると、祠の中から声がする。
「おい、此処だよ此処っ。全く察しが悪いなぁ。こっちに来てよ」
「え? 男の子の声? 」
「莫迦にするなよ。これでも神様なんだから」
クラウス達が祠に近付くと、少年らしき声ははっきりと聞こえてきた。一見生意気な声で、声の主は語りかける。
「僕が水の精霊シャンミンだよ。君達の実力を見るつもりだったけど、十分強いじゃん。ホウトゥーからも君達の目的は聞いてるし、神子もいるし、止める理由は無いけどな…僕って一応神様じゃん? ほら、格ってものがあるんだよね」
「どういう事ですか? 」
ソフィアが訝しげに尋ねると、声の主は惚けた風に、解るでしょ、と返す。彼女はまだ解しかねているが、クラウスが割って入り不承不承ながらも頭を下げて、
「俺達は無力なので、どうかお力をお貸し頂きたいです」
「お願いだよ、ランレイも頭下げる」
「うんうん。こうやって、お願いされるのって久し振り。やっぱり良いもんだよ。良いよ持って行って」
その声と同時に、祠の木戸が開き、ヤタノ鏡の欠片が顔を出した。クラウスはそれを取って懐に収めた。
すると折良く通り掛かった漁船が三人を見つけ、
「おい、お兄さん達、どうしてこんな所にいるんだい。泳いで帰るわけにもいかねぇだろ、俺も帰る途中だから乗せていってやるよ」
と言って、三人を乗せてメルアドールの港に入った。
上陸してクラウス達は地図を広げ、次のヤタノ鏡の欠片がある場所を探したが、それは海を越えた先の大陸にあるらしく、連絡船の費用が無い三人は頭を抱えてしまった。
そんな彼らに一人の男が声を掛けた。男は海を越えたいという三人の話を聞いて、丁度良い、と笑って、
「実は私は旅の学者で、タリエと言います。私も海を越える用事があるので、皆さんのお手伝いをしますよ。船賃なら私が払います」
「本当ですか。有難うございますっ」
ソフィアは全く疑う様子も無く、タリエの親切を受け入れた。クラウスは、どうして見ず知らずの人間がそこまでしてくれるのかと訝しげだが、他に方法が無いので彼の親切に甘える事にした。
天空の旅路を行く太陽は、中天を抜け、西へ向かう。昼下がりの陽差しを受けた水面は、青々と輝きその水面の上を滑るようにして船は行く。潮風は身体を吹き抜け、時折海鳥が船縁に立つ。
満風を受けた帆は一心に船を進め、クラウス達は新たな地へと向かっていった。
悠揚なフェイロンに言われた言葉が、何度も彼女の心の中で反すうしているのだ。自分の中で信じていた正義が、却って他者からすれば迷惑だったのではないか、独りよがりで満足していたのは自分一人だったのではないか、等と考えていると、近くで啜り泣きの声がする。
起き上がって周囲を見ると、頼りない灯火が不安げに揺れ、その度に家具や人の顔がチラチラと影になったり照らされたりする。
ふとソフィアは、ランレイの顔を見た。彼女は身体を丸めて眠っているが、眼から涙を流して小さく泣いている。丸まった身体はランレイ自身を守る殻のようで、彼女の顔に光る筋は、彼女の心そのもののようである。
辞めて、と小さくランレイは呟いた。そのか細い声は、普段の彼女の精気溢れる姿からは想像も出来ない。安らかに寝息を立てるクラウスとは対照的に、ランレイは如何にも寝苦しそうで、小刻みに息をしている。
「…ごめんよ。お願いだよ、許して。辞めて欲しいよ…」
「ランレイ? 大丈夫? 」
「辞めてっ」
ランレイはがばと跳ね起きた。満顔の汗は珠のように輝き、涙と汗は混じり合って、ぽたりと麻布の蒲団の上に落ちる。肩で息をする彼女にソフィアは近付いて、大丈夫かと尋ねた。
ランレイは慌てて笑顔を作り、常のように活力溢れる高い声で応えた。ソフィアは心配そうに、あれこれ尋ねるが、その度にランレイは、大丈夫だよ、等と言うのみである。
しかし、そう言ってはぐらかす彼女の笑顔は、灯火の火影に揺れて悄然さが目立ち、その声は次第に、部屋を照らす灯火のように力が無くなっていく。
その時、ランレイの後ろから声がした。二人が声のした方向を見ると、クラウスが寝言を呟いている。白い月光が差し込む窓際に眠る彼は、慣れない寝床でもよく寝られるらしく、腹が減った、俺の肉を取るな、何処行くんだお前ら、等といった寝言を並べている。
ランレイとソフィアは、互いに顔を見合わせて笑い、明日も早いので寝ることにした。ランレイは、クラウスの様子を見て、少し気が安らいだようで、間もなく静かな寝息を立て始めた。
ソフィアは彼女の涙を見、寝言を聞いて、全く謎に包まれた彼女の過去を思い、まだまだ心の距離が離れている事を感じざるを得なかった。
翌朝、水平線の向こう、天地を分ける線のような海の彼方から、東雲を割って朝陽が出て来た。空も海も新しい日を象徴する紅に染まり、黎明の閃光は港街を照らす。
クラウスは常の如く朝陽と共に起き出し、ソフィア達が起きるのを待っていた。窓の外を見ると、船仕事に向かう男達、朝市の準備に向かう女達がばらばらと歩いている。
それを見たクラウスは溜息をついた。成り行き任せとはいえ、故郷から離れて落ち着かない流浪の境遇、溜息の一つもつきたいだろう。
暫くすると、ランレイが起き出した。欠伸を一つ上げ、眼を擦りながら、腹減った、と朝の挨拶もせずに言う。昨夜の涙と悲夢は何処へやら、朝焼けに照らされる素朴な笑顔は懊悩を感じさせない。
ソフィアもランレイの後で起き出し、寝起きにも関わらず早速部屋から出て行こうとした。その壮気溌剌たる姿は昨夜のランレイの涙を見たからか、常よりも勇を奮っているように見える。
昨夜の事など一切知らないクラウスは、鋭気を全身から迸らせるソフィアを見て、呆れたように、
「おいソフィア。あんまり張り切ってると、怪我するぞ。フェイロンさんだって、慎重に行けって言ってただろ」
「何言ってるの。張り切って慎重に行くの。ほらほら、フェイロンさんが待ってるんだから、行こう行こうっ」
「いこういこうっ」
「あ、おいっ。待ってくれよ。せめて朝飯を」
クラウスは勇んでいく女達を追い、慌てて部屋から出て行った。昨夜のやり取りがあったので、ソフィアは確とランレイの手を握り、ともすれば崩れかねない彼女の心を気に掛け、敢えて声を励まし、彼女に語りかけていた。
クラウス達が昨夜の場所、フェイロンと会った海沿いの公園に着くと、そこにはまばらに人影があるのみで、フェイロンはいなかった。
肩透かしを喰らった気分でクラウスが辺りを見回していると、彼の後ろから清流の声音がした。
「やあ、おはよう。相変わらず早いね、君は。旅先でも、いつもと変わらない時間に一番に起きる、君らしいよクラウス君」
「あ、フェイロンさん、おはようございます。どういうことです? 」
「ふふふ。まあ良いじゃないか。さ、行こうか。此処から歩いてすぐだ」
ランレイは何の警戒心無く、フェイロンを見ると嬉しそうに飛び付いてその手を握って歩いていった。クラウスはフェイロンに言われた言葉が妙に心に残り、常と変わらない生活を望む自分の事を客観視された気分になった。
ソフィアが茫然と立っている彼に向かって、行くよ、声を掛けるので、クラウスも我に返ってフェイロン達の後を追っていった。並んだランレイとフェイロンの後ろ姿は、何処となく似たような雰囲気を放っていた。
陽が昇るにつれ、街の雑踏は数を増していく。その人混みの中をクラウスとソフィアは、人波に揉まれるようにして通っていくが、フェイロンと彼に手を取られるランレイは、水流れのように涼やかに通っていく。
身のこなしは流石という他無く、ランレイは何度か手を離しそうになったが、その度にフェイロンは、彼女の手を握る。彼に包まれるような感覚を思いながら、ずっと昔、彼に触れたような感覚を抱きながらランレイは雑踏の中から夢見心地で出た。
一方でソフィアは、人混みで足を踏まれたり流されたり叩かれたりして、這々の体で這い出して来た。クラウスを引っ張り出すようにしてフェイロンを見つけ、何とか彼に付いていく。
小一時間ほど歩いた後、一行は街外れの朽ち果てた宮に辿り着いた。木で造られた祠は苔が生え、緑と茶が混じり合う複雑模様をしている。その祠の裏手、草木や瓦礫で巧妙に隠された洞穴があった。
洞穴は地獄にでも続いているかのように真っ黒な口を開け、中では不気味な風が唸りを上げている。ランレイはフェイロンの腕にしがみ付いて、
「ここ、入るか? 何だか不気味だよ」
「ふふふ。心配しなくて良いよランレイ。此処は浅い海底の下を通る抜け道なんだ。幽霊なんて、この世界にはいないさ。そうだろう、クラウス君」
「あ、ああ。ゆ、幽霊なんて、いないいない。ちょっと不気味だけど…」
「ほら、何怖がってるの。此処以外に道は無いんだから。あたしが先頭で歩いたげる」
ソフィアが先頭で松明を起こして歩き出し、フェイロンとランレイもその後を追う。クラウスは一人、待ってくれ、と洞穴の中に入っていった。そんな彼らを遠くから凝視する人影が草叢から身を起こし、飛鳥のように何処かへと駆けて行った。
海底の洞窟は一寸先も見えず、松明の光は広大な闇の中で飛ぶ小さな蛍のようである。ソフィアも勇んで入ったものの、予想の遙か上をいく晦冥に少しばかり怖気を震っている様子。フェイロンは全く変わらず、暗闇の中でも見えているかのように悠々と進んでいく。
ランレイは彼と手を繋いで歩き、いつしかソフィアも心細くなったのか、ランレイを挟んでフェイロンと並んで歩くようになり、その後塵を拝しているクラウスは、形容し難い感情を心に抱いた。
不安げにフェイロンに話しかけるソフィア、それに優しい微笑みと柔らかな言葉を返すフェイロン、その二人の様子を見て、自身の複雑な思いを吐き出すように溜息を一つする。
洞窟は一本道なので迷うことは無い。しかし無限とも思えるほど長い常闇の回廊は、水の跳ねる音すら強く聞こえる。
恐怖からか、一行はいつしか口数も少なくなり、しんとした道を押し黙って進んでいく。すると、開けた場所に出た。
そこはどうやら古代の休息所らしく、篝火の跡や粗末ながら座れる場所もあった。海底洞窟に入ってから歩き通しの一行はそこで休憩を取る事にし、焚き火を囲んで座った。
不意にソフィアが話を切り出した。
「そう言えば、フェイロンさんはランレイと知り合いなんですか? 同じ世界から来たみたいですけど」
「ふふふ。確かに俺はランレイの知り合いだけどそうでもない。だって、彼女は俺のことを覚えていないからね。殆ど初対面みたいなものさ。でも、知り合いとか友達って何なんだろうね」
「え? 何が言いたいんですか? 友達は何処までいっても友達です」
「仮に友達と呼んでいる人が、自分の前では演技をしていて、本当は全然違う人だったらどうする? その人の本性と君とは友達って言えるのかな? 日頃は余裕そうな人が、実は悲しい過去を心の奥底に隠していたら、君はどうする? 」
「…」
「まあ、今は深く考える必要は無いよ。さ、皆は仮眠でも取ったら良い。俺が見張りをしておくよ」
そう言われる前にクラウスは、焚き火の明るさに安心したのか、剣を枕に夢の世界、ランレイもいつの間にかフェイロンの膝に頭を乗せ、寝息を立てている。ソフィアも横になったが、昨夜と今言われた、フェイロンの言葉が心に渦巻いていた。
人の内面を見ずに付き合っていた自分の事が思い出され、どうにも心が落ち着かないのだ。すると、フェイロンが彼女に声を掛けた。
「ふふふ。今いくら考えても答えは出ないよ。それよりは、これからの為に眠った方が良い。大丈夫だよ、旅をしている内に出なくても、これから人生を生きていればいつか自分が答えを出せるようになる」
その声音にソフィアは、心の底から落ち着く感覚を覚え、いつしか眼を閉じて眠っていた。焚き火が明々と燃え、過酷な旅に一瞬の安らぎを添えていた。
フェイロンは膝の上で眠るランレイの頭を撫で、安心しきった彼女はいつもの悪夢ー木杖を手に襲い掛かって来る恐ろしい女の夢ーを見ず、いつ振りか知れない安らかな眠りに心まで休ませていた。
暫く後、陽が見えないので時刻は知れないが、かなりの時間が経ったであろう時、クラウスがむっくりと起き上がった。
彼が周囲を見回すと、フェイロンが微笑みながら彼を見ていた。一睡もしていないであろうに、彼に疲れた色は無い。
その後、ソフィアとランレイも起き出し、一行はまた歩き出した。
全く頼りない松明の火光を先頭に、フェイロン以外の三人は不安な行脚を続けた。
豁然、彼方に小さな光が見えた。眼を凝らすと、太陽に照らされた青玉のような海面がある。その手前には薄い草叢が茂っている。
ランレイは喜んで走って行き、ソフィアが、危ないよ、と後を追っていく。クラウスも後から走っていこうとするが、後ろでフェイロンが、
「君もいつか、自分の過去と向き合う日が来る。その時、心の支えになるのは仲間と大切な人だ。それを忘れちゃいけないよ。頑張ってね」
え、とクラウスが振り返ると、フェイロンは煙か霞のように消えていた。クラウスが眼を白黒させていると、ソフィアが遠くから手を振って彼を呼んだ。
クラウスは急いで彼女達の方へと走っていき、フェイロンが姿を消したと言うがソフィアは、前もそうだったじゃない、と気にも留めず、まだ心を洞窟に残すクラウスと残念がるランレイの手を引いて外に出た。
洞窟から外に出ると、思わず眼を刺す春の陽差し、クラウス達は手を翳して陽差しを防いだ。その時、ふっと影が視界に入った。
クラウスが手を退かすと、二十路に入るか入らないかの婀娜女、色艶の良い長髪を潮風にたなびかせ、妲己のような妖艶さを惜しげも無く出して立っていた。
背中に背負う巨大な跺刀は良く磨かれ鏡のように輝き、纏う軽甲は閃々と陽光を反射している。
クラウスが先頭に立ち、誰何の声を掛ける。凜々とした姿とは、やや不調和な高い声で女は答える。
「私はアンナ・クレンメ。いくら貴方達でも、名前くらいは聞いた事があるでしょ? 王国に暮らしている人ならね」
「アンナ・クレンメ…まさか?! 」
クラウスは何処かで聞いた名前と同じであると思いだし、全身から冷や汗を出した。
数年前、天変地異の始まりと同じ頃、突如として現れた四人の男女は、民心の揺らぎに乗じて決起した不穏勢力を瞬く間に平定し、その武勇から一躍して国王の信頼を得て、今では「王の四星」として特別の地位を与えられている。アンナはその内の一人なのだ。
アンナは不敵に微笑み、背中の大跺刀を両手に持ち、
「貴方達を追討するように国王から勅命が出ている。大人しく首を渡しなさい。そうでなければ、こいつで野良犬みたいに真っ二つにするしかないけど」
「誰が大人しく殺されるものですかっ。クラウス、ランレイ、行くよっ」
「はいなっ。ランレイ、こんな奴に負けないよっ」
「あら、乱暴なお嬢さん方ね。お兄さんも…勿論殺される気は無いか。ま、大人しくしていても殺すけど」
「あ、当たり前だっ。此処まで来た以上、もう退けるかっ」
「莫迦な子達。せめて苦しまないようにって思ってたのに」
ぱっと地面を蹴ったクラウスが、右手で流星の尾を引いてきらりと一閃、敵の腰車目掛けて斬りつける。アンナも得物を縦翳し、発止と難なく受け止める。怯まずクラウスの放つ二撃目、戛然、刃金の冴え音、火華の香り、丁々発止と両雄は打ち合う。
それを見たソフィアは、アンナの横に回り込み、えいっ、と気合いの放つ裂帛一声、陽光に鈍く光る八角棒を振り下ろす。それより早く動いた敵のアンナ、軽快な身のこなしを存分に発揮して、大振りの一閃! 間一髪でクラウスとソフィアは身をかすめる刃を躱した。
その時走るは黒い影、牛若丸の身軽さを見せて、アンナの死角から躍り掛かる。殺気を感じたアンナ、目にも止まらぬ振り返り、同時に発止と音が立つ。彼女の武器を殴ったランレイは、歯噛みをして二撃、三撃、と攻撃を続けるが、アンナは武器を縦翳し、横翳し、斜め翳し、拳の雨を難なく防ぐ。
「ワン・ランレイッ。そんなものなのっ 」
と、アンナが回し蹴りを放とうとする彼女に、電光の突きを見舞った。はっと気が付いたランレイは、身をよじって倒れ込む。しかし敵の刃は不気味な唸りを上げて彼女に襲い掛かる。
戛、と重い金属音と散る火華、眼を開けたランレイは、アンナと鍔迫り合うクラウスを見た。すかさずソフィアが、敵の脾腹目掛けて横から一撃、ぐっと血を吐いて、敵は後退り。
今だっ、とランレイはアンナ目掛けて疾風の如く躍り掛かり、峻烈至極の脚の技! 面に凄まじい蹴りを受け、アンナは空中で一回転して、地面に叩きつけられた。
「ふん、思っていたよりやるじゃない。今日の所は見逃してあげる」
と、アンナはざんぶと海に飛び込み、クラウスが追っていった時には、もう彼方まで泳ぎ去っていた。
クラウス達は肩で息をしながら互いを見た。クラウスとソフィアは、敵の刃に負わされた刀瘡が所々に目立ち、ランレイも両手から血を流していた。
ソフィアが二人の瘡を手当てしていると、何処からか声が聞こえた。見回していると、祠の中から声がする。
「おい、此処だよ此処っ。全く察しが悪いなぁ。こっちに来てよ」
「え? 男の子の声? 」
「莫迦にするなよ。これでも神様なんだから」
クラウス達が祠に近付くと、少年らしき声ははっきりと聞こえてきた。一見生意気な声で、声の主は語りかける。
「僕が水の精霊シャンミンだよ。君達の実力を見るつもりだったけど、十分強いじゃん。ホウトゥーからも君達の目的は聞いてるし、神子もいるし、止める理由は無いけどな…僕って一応神様じゃん? ほら、格ってものがあるんだよね」
「どういう事ですか? 」
ソフィアが訝しげに尋ねると、声の主は惚けた風に、解るでしょ、と返す。彼女はまだ解しかねているが、クラウスが割って入り不承不承ながらも頭を下げて、
「俺達は無力なので、どうかお力をお貸し頂きたいです」
「お願いだよ、ランレイも頭下げる」
「うんうん。こうやって、お願いされるのって久し振り。やっぱり良いもんだよ。良いよ持って行って」
その声と同時に、祠の木戸が開き、ヤタノ鏡の欠片が顔を出した。クラウスはそれを取って懐に収めた。
すると折良く通り掛かった漁船が三人を見つけ、
「おい、お兄さん達、どうしてこんな所にいるんだい。泳いで帰るわけにもいかねぇだろ、俺も帰る途中だから乗せていってやるよ」
と言って、三人を乗せてメルアドールの港に入った。
上陸してクラウス達は地図を広げ、次のヤタノ鏡の欠片がある場所を探したが、それは海を越えた先の大陸にあるらしく、連絡船の費用が無い三人は頭を抱えてしまった。
そんな彼らに一人の男が声を掛けた。男は海を越えたいという三人の話を聞いて、丁度良い、と笑って、
「実は私は旅の学者で、タリエと言います。私も海を越える用事があるので、皆さんのお手伝いをしますよ。船賃なら私が払います」
「本当ですか。有難うございますっ」
ソフィアは全く疑う様子も無く、タリエの親切を受け入れた。クラウスは、どうして見ず知らずの人間がそこまでしてくれるのかと訝しげだが、他に方法が無いので彼の親切に甘える事にした。
天空の旅路を行く太陽は、中天を抜け、西へ向かう。昼下がりの陽差しを受けた水面は、青々と輝きその水面の上を滑るようにして船は行く。潮風は身体を吹き抜け、時折海鳥が船縁に立つ。
満風を受けた帆は一心に船を進め、クラウス達は新たな地へと向かっていった。
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