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序章
第一話
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夜闇は晦冥に晦冥を塗り重ね、暗幕を張り巡らしたようになっている。頭上には鳥の声、ギャー、と鳴く声すら何処か怖気を震わせる。足元の道は砂、蕭々と風は土煙を上げる。
天は黒雲で覆われ、一寸の光が入る隙間無し。彼方の山々も、黒い漆で塗りつぶされたように不気味なうねりを見せつけている。時折雷鳴が響き、稲光が地を照らす、そんな肌寒い晩であった。
巡邏の衛兵が二、三人、何やら語らいながら通り過ぎる。そんな彼らの後ろを動く、黒い影。人目を忍んでいるのか、時に物陰に隠れ、時には側溝に潜り、とにかく街の外を目指している様子。
黒い人影は街の門に着くと、閉じられている鉄扉には眼もくれず、音も無く鉄梯子を駆け上り始めた。上でうとうと居眠りしていた者は、不意に現れた黒い影に、声出す間も無く蹴り落とされた。
どすん、と地面に人間が落ちる音が響き、詰所にいた兵士達は松明を手に手に、どやどやと出て来た。血反吐を吐いて死んでいる同僚を見た彼らは、警錮を鳴らして半鐘を打ち、街中にいる味方を寄せ集めた。
すると、もう城壁から離れて奔っていく人影を見つけた一人、にわかに声上げ仲間呼ぶ。それを聞いた兵士達は、すぐに城門を八文字に開かせ、三十人ばかりで追撃する。松明の光に盔甲は閃々と煌めき、厳めしい捕物道具は見ているだけで眩暈がする程であった。
やがて逃げていた影は高山の頂きにいた。そこには反り屋根を中天に向ける神殿が一つ、ぴたりと木門を閉じている。
逃亡者がその木門に触れると、途端に光が溢れ出し、それは須臾にして身体を包み込み、瞬く間にその者は消え去った。後には、ただ寂寞とした闇が広がるのみであった。
後から遅れてやって来た兵士達、目的がいない事を知るや否、大声を上げて辺りを捜索し始めた。しかし遅きに失する捜索は何の意味も為さず、空しく彼らは帰投した。
一体逃げていた人影の目的は何なのであろうか、どうして追われていたのであろうか。それをいま紐解くのは野暮であろう。
――この世界、ヴァークリヒラントは、太古の昔は、今の二倍の広さであった。しかし争い絶えぬ人間を見た、創造神ヴァングーは、二つの世界を切り離し、離れた世界はシュピーゲルラントと呼ばれた。
以来数千年、二つの世界の交流は途絶え、二つの世界を繋ぐと言われている霊峰タイ山には、古ぼけた祠がある。
しかしいつか、神に選ばれた神子が現れ、二つの世界の扉を開く。
その神話が伝わるヴァークリヒラントを治める王国では、二つの世界を繋ぐ神子は災いの元凶である、とそれが現れると言われるケルバー村への監視を怠らないのであった。
そんな要注意村の入り口、柵門の前で一人の青年が剣を持って、狼の群れと対峙している。
鳶色の短髪を戴き、面に碧眼輝かせ、片手構えの剣を陽光に煌めかせる青年は、わっと跳び掛かって来た狼を、きらりと一閃真っ二つ。それを見た狂狼共は、我こそと牙を剝くが早いか、三方から一斉に躍り掛かった。
青年は、前後左右の乱牙をしばらく受け払っていたが、やっ、と一声身を廻らし、閃光の輪を描いて狼共を斬り伏せた。
柵門の中から男が一人出て来て、
「いや、有難う。いつも済まないな」
「いえ、良いんです。俺も食い物が採れるし。こいつらの肉、貰って良いですよね」
「ああ、構わんよ」
青年は狼を解体し、その肉を袋に詰めて村に入った。彼の仕事は、時折村を襲ってくる凶暴な獣を退治する事で、彼自身も食糧が手に入るので、むしろ望む所、とばかりに定職にも就かず、その日その日を気ままに暮らしている。
今日も狼の肉を干し肉にする準備を整えると、小高い丘で春眠に耽り始めた。穏やかな春の陽は麗らかに映え、午睡には丁度良い気候である。流れる雲の下、そよ風に揺れる草叢の中、青年は剣を枕に寝息を立てていた。
そんな彼の下から、何やら声が響く。
「クラウス、此処にいたの」
「…」
「クーラーウース」
自分を呼ぶ声に、クラウス・ブレマーは身を起こした。欠伸を一声上げると、丘の下に、薄黒色の髪を戴き、淡青色の瞳、紅唇柳眉の女がいた。
クラウスは午睡を邪魔され、若干不快な色を面に出して、
「何だよソフィア。どうして此処にいるんだ」
「どうしてって、道場の帰りだからだよ。あなた、いつもそこにいるんだから」
「良く続くよ。俺は修行なんて真っ平だよ。獣を狩ってその日生きられたらどうでも良いや」
「またそんな事言って。師範も言ってたよ、獣を相手に良い腕をしてるって。道場で剣を学んだら、きっと良い騎士になれるよ」
「俺は騎士なんてご免被るよ。規則正しく、毎日毎日清く正しい生活なんて嫌だよ。それに騎士の連中は、平民より上だからって威張りやがる」
この世界では、神官を最上位に、王侯騎士、平民、そして奴隷の順に階級が定められ、上から下へ行く以外、原則として生涯、階級が変動することは無い。平民と奴隷が騎士になることが出来る場合もあるが、尋常ならざる実力と権力者との蜜月が無ければ夢物語である。
加えて、下の階級の者が上の者へ不用意に口を聞けば、たちまち打擲され、逆鱗に触れればその場で斬り捨て御免も日常茶飯事であるので、誰あって成り上がろうとする者はいなかった。
クラウスも、定期的に村へ徴税にやって来る、騎士共の尊大倨傲な振る舞いを見ているので、心の底から彼らを唾棄している。
クラウスに話しかけたソフィア・シュピッツは、彼と同じ十七歳で、幼馴染みの彼が獣を相手に自前の剣術を会得しているのに対し、自分は村にある元騎士が開いている道場で、文字通り地獄のような鍛錬を受けて棒術を磨いている。
クラウスは、丘の下で笑うソフィアに厄介そうな口調で、
「おい、もう帰れよ。俺はもう少し寝るから」
「毎日毎日、よく眠ってばかりで飽きないね。あたしなんて毎日同じ生活で飽きて来るよ」
「何言ってるんだよ。何も無い、変わらないのが一番だって。大体変化なんて悪いことが殆どなんだから」
クラウスは変化を望まず、毎日の平穏無事を願って止まない。反対にソフィアは、平坦な人生の道に飽き飽きしており、この先もそれを歩んで一村娘として生きていくのかと思うと、時折胸を掻き毟りたいような衝動に駆られる。
気が合うようで何処か根本的な部分ですれ違っている。鎹を欠いた、梁同士のような関係なのである。
しかしこの世界の常識では、クラウスの方が常識的なのだ。殆どの人間は自分の生まれた街や村から出ず、旅に出るのは商人や遊学者、飛脚、或いはお尋ね者くらいしかいない。村娘、しかも村の畑で働く彼女が、旅に出るなど笑止な事である。
ソフィアは丘の上に登ってクラウスの襟を掴むと、引き摺るようにして丘を降り、
「ほらクラウス、暇なら村祭りの準備を手伝ってよ。皆祭壇を築いているから」
「でも俺、別に最初の方は参加しないし、宴会の時に行くよ」
「何か言った? 」
と、ソフィアは愛用の黒鉄作りの八角棒を彼に突きつけた。クラウスは全身に冷や汗をかいて、不承不承、彼女と一緒に広場へ向かった。
この世界では年に一度、世界を守ると言い伝えられている、四体の神を祀る大祭が執り行われる。
東西南北にある四つの神殿にそれぞれの神々は祀られており、火、水、木、土、の神々は上から下へ、世界中の人間の心に深く根付いているのである。
ケルバー村でも無論、この大祭は盛大に行われるので、もう村は十数日前から大騒ぎ、祭壇の建築や生贄にする家畜の準備に余念が無い。一際大きな祭壇は、材木が組まれた五米程の建築である。
ソフィアは、多くの村人に混じって自ら進んで重荷を負い、自分が疲労するのも厭わない様子である。彼女は、幼い時から自分よりも他人を優先する女で、クラウスは彼女の病的な献身さに、半ば呆れていた。どうして自分を後回しにするのか理解できないのだ。
祭壇は組まれ終わった。夜になると、幔幕を払って、四体の精霊を模した木像が運び込まれた。それらを祭壇の上に祀り、穀物を供えて村人達は篝火の中で頓首再拝し始めた。
クラウスは、いつの間にか集団から抜け出し、木の根に座って星空を眺め、心の底から安らいでいた。そんな彼の後ろから溜息が聞こえる。
「全く…姿が見えないかと思ったら、こんな所にいたの。ほら行くよ」
「まだお祈りの時間だろ。あそこにいると眠くなってくるんだよ。皆して、蹲っちゃってさ」
「そんな事言わない。行こう行こう」
ソフィアがクラウスの手を取ろうとした瞬間、広場の方、晴の場所からどよめきと姦しい叫びが上がった。
見ていると大きな光が広場の中心、祭壇の上に降りて来ていた。光は周囲を照らし、昼間のように明るくなる。大宇宙の中にある星が一つ、地上に落ちてきたかのようである。
クラウスとソフィアは、何があったのかと、人並みを掻き分け掻き分け躍り出る。大きな光は、なおも煌々と輝き眼も眩まんばかりである。儀式を行っていた神官は、普段の傲慢さも忘れ、冠を飛ばし、早くも階段から転げ落ちるようにして逃げ出してしまった。
やがて光は強烈な光を放って爆発し、祭壇は木っ端微塵になった。十方に凄まじい閃光と強風が走り、村人達の眼は眩んだ。クラウスは咄嗟に、危ねぇ、とソフィアと共に地面に倒れ込んだ。
閃光と猛風が止み、辺りは一瞬寂とした。二人が眼を開けてみると、祭壇があった場所に、人影が見える。土煙が晴れて見えたその容貌は、紅い龍紋の短旗袍を纏い、黒漆の髪を両把にまとめる少女であった。
クラウスは何も言えなかったが、ソフィアが声を震わせながら、
「あなた…誰? 何処から来たの? 」
「――――。――――! 」
「ああ忌まわしやっ。神々の祭壇を破壊するとはっ」
そう言ったのは神官であった。瞋恚は爛々と瞳に燃え、憤怒の形相は阿吽のようである。
神官は、怒り半分恐怖半分の震える指で少女を指し、言葉を解しない奴隷に違いないっ、と村人達に殺害を命じた。
盲従する村人達は、たちまち手に棒や鎌、鋤鍬等を持ち、わっと少女に蝟集した。
人垣の中心になってしまったクラウスは、慌てて、
「おいおい。いくら祭壇をぶっ壊したからって殺す事無いだろ。穏便に済ませようぜ」
「そうよっ。こんな女の子を殺そうとするなんて、あんた頭おかしいんじゃないのっ。神官だからっていつもいつも威張り腐って、あたし達だって人間なんだからねっ」
「何だとっ。平民の分際で私に口答えかっ。最早我慢ならぬ、三人纏めて今日の生贄にでもしてくれるっ」
神官がそう叫んだ時である。黒い光が三つ、流星のように落下してきた。落下地点にいた者達は、吹っ飛ばされて消し炭のようになり、光が晴れると、これまた龍紋の衣服を纏い、髪を一巾でまとめる男が三人現れた。
神官はいよいよ以て赫怒し、男共の前に出て、
「貴様ら、何のつもりだっ。神聖な儀式の邪魔をしたばかりか、私の」
「――、――! 」
神官が言い終わる前に、先頭の男がぎらと長剣を抜き、彼の首を斬り飛ばした。驚いたのは村人達、さっきの威勢は何処へやら、蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。
男共は、少女を見るや否、大声で威圧するように何か叫び、剣を向ける。少女も声を挙げて返すが、間にいるクラウスとソフィアには、何を言っているのか解らない。
男の一人、焦れったいと思ったのか、ずかずかと歩み寄り、少女の襟をむんずと掴んだ――が、彼は、発止とソフィアの八角棒に打ち据えられ、肩を押さえて後退り、残る二人は剣を抜く。
クラウスは、最早議論の余地は無いと思ったか、彼もぎらと剣を抜いた。
「おい、俺達が相手だっ」
「こんな女の子に寄って集って何する気っ? 渡すつもりは無いからねっ」
少女も素手のまま身構え、ぱっと三人は跳び別れた。
クラウスが振るう白刃きらりと尾を引き、戛然刃が火華を散らす。敵も負けじと剣を振るうが、たちまちしどろに斬り込まれ、怯んだ首を飛ばされる。
ソフィアは八角棒を手に丁々発止、敵の攻撃を防いでいなす。荒武者仕込みの棒術は、落雷のような一撃を敵に浴びせ、堪らず相手は剣落とす。ぶうん、と唸りがしたかと思えば、男の頭は割られた西瓜のように木っ端微塵に砕けていた。
少女は敵の攻撃を身軽に躱していたが、やっ、とばかりに踏み込んで来た剣先を蹴り上げ、ぱっと手元に躍り込んで、丹田目掛けて一撃、二撃、三撃! 眼にも止まらぬ乱拳を浴びせた。膝を付いた男は、面への峻烈な蹴りを受け、肉餅のようになった頭で、どうと斃れた。
素性の知れぬ少女が現れ、謎の男共が最高権威者たる神官を殺したので、村長はもう気が気では無い。すぐに三人に駆け寄ると、
「おい、おいっ。お前達、すぐにその小娘を追い出せっ。神官が死んだのはそいつの所為だっ。きっと災いの神子に違いないっ」
「そんな村長、こんな女の子を追い出すなんて酷いです。どうか」
「駄目だ駄目だっ。村が危険に晒される。それとも、また村を滅ぼしたいのかっ」
「ち、違う、違うっ」
「おいっ。何で今更昔の事を言うんだっ」
見ていられないのか、クラウスが割って入るが、ソフィアは俯いて明らかに狼狽している様子。呼吸も荒く頭を抱えている。
少しすると彼女は、悄然と、蚊の鳴くような声で、
「…解りました。あたしがこの子を連れて出て行きます…」
と答えた。
祭りは当然中止となり、祝いの場は一転して、お通夜のように寂寥漂う暗澹の谷へと突き落とされた。
瓦礫や死骸が広がり、鬼哭啾々、村人達の気分は歓喜から一気に奈落の底、絶望の晦冥に落ちてしまった。
ソフィアは自宅に帰るや否、旅支度を始めた。それが終わるとクラウスは、すっかり見送るつもりで構えていたが、にわかに彼は頭を押さえた。頭に直接声が響く。
「クラウス…クラウス…貴方も行きなさい…貴方も…」
はっとクラウスが顔を上げると、心配そうにソフィアと少女が彼を見ていた。事情を話すと、ソフィアは、
「それって、クラウスも一緒に来ないと駄目だって、神様のお告げに違いないよっ。行こう行こうっ」
「え、どうして俺が。俺は旅なんて」
「良いじゃない。それにあんな騒ぎを起こしたんじゃ、暫く村にはいられないよ」
「それはそうだけど…仕方無いな、俺も行くぜ。でものんびり暮らせる場所があったら抜けるからな」
クラウスも彼女達に付いて、旅をすることにした。当面の目的は少女の故郷を探すことに決まったが、言葉も解らないのにどうするのかとクラウスが尋ねると、ソフィアは、
「うーん。そう言えば、此処の近くに占い師が住んでる街があるって聞いた事があるよ。そこに行けば解るんじゃない? 」
「そうだな。…でも、この子の名前って何だろうな。名前が解らないんじゃやり辛いよ」
「そうね…ねえ君、あたしソフィア。ソ、フィ、ア、解る? 」
「…そ、ソ、フィア。ソフィア」
ソフィアは、そうっ、と手を打って喜び、今度は、クラウスを引っ張るようにして曰く、
「この人は、クラウス。ク、ラ、ウ、ス」
「く…ク…クラ…ウス。クラウスッ」
意味が通じたと喜ぶソフィアを見て、少女もようやく名前を教えられたと解り、自分も笑顔で自身を指差して、
「――、ランレイッ。ワン・ランレイッ」
「ランレイ、あなたランレイって言うのねっ。宜しくっ」
「良かったな、お互いに名前が解って。それじゃ明日の朝、その占い師の街目指して出発しようぜ」
翌朝、朝陽は暁天を仄赤く染め、何処までも続く新しい陽光が大地を照らす。草木も輝き、今日を生きる勇気と希望を、全ての生命に朝陽は与える。
クラウス達も例外では無く、新たな旅立ちの一歩、昨日までとは全く違う旅路へと踏み出していった。
天は黒雲で覆われ、一寸の光が入る隙間無し。彼方の山々も、黒い漆で塗りつぶされたように不気味なうねりを見せつけている。時折雷鳴が響き、稲光が地を照らす、そんな肌寒い晩であった。
巡邏の衛兵が二、三人、何やら語らいながら通り過ぎる。そんな彼らの後ろを動く、黒い影。人目を忍んでいるのか、時に物陰に隠れ、時には側溝に潜り、とにかく街の外を目指している様子。
黒い人影は街の門に着くと、閉じられている鉄扉には眼もくれず、音も無く鉄梯子を駆け上り始めた。上でうとうと居眠りしていた者は、不意に現れた黒い影に、声出す間も無く蹴り落とされた。
どすん、と地面に人間が落ちる音が響き、詰所にいた兵士達は松明を手に手に、どやどやと出て来た。血反吐を吐いて死んでいる同僚を見た彼らは、警錮を鳴らして半鐘を打ち、街中にいる味方を寄せ集めた。
すると、もう城壁から離れて奔っていく人影を見つけた一人、にわかに声上げ仲間呼ぶ。それを聞いた兵士達は、すぐに城門を八文字に開かせ、三十人ばかりで追撃する。松明の光に盔甲は閃々と煌めき、厳めしい捕物道具は見ているだけで眩暈がする程であった。
やがて逃げていた影は高山の頂きにいた。そこには反り屋根を中天に向ける神殿が一つ、ぴたりと木門を閉じている。
逃亡者がその木門に触れると、途端に光が溢れ出し、それは須臾にして身体を包み込み、瞬く間にその者は消え去った。後には、ただ寂寞とした闇が広がるのみであった。
後から遅れてやって来た兵士達、目的がいない事を知るや否、大声を上げて辺りを捜索し始めた。しかし遅きに失する捜索は何の意味も為さず、空しく彼らは帰投した。
一体逃げていた人影の目的は何なのであろうか、どうして追われていたのであろうか。それをいま紐解くのは野暮であろう。
――この世界、ヴァークリヒラントは、太古の昔は、今の二倍の広さであった。しかし争い絶えぬ人間を見た、創造神ヴァングーは、二つの世界を切り離し、離れた世界はシュピーゲルラントと呼ばれた。
以来数千年、二つの世界の交流は途絶え、二つの世界を繋ぐと言われている霊峰タイ山には、古ぼけた祠がある。
しかしいつか、神に選ばれた神子が現れ、二つの世界の扉を開く。
その神話が伝わるヴァークリヒラントを治める王国では、二つの世界を繋ぐ神子は災いの元凶である、とそれが現れると言われるケルバー村への監視を怠らないのであった。
そんな要注意村の入り口、柵門の前で一人の青年が剣を持って、狼の群れと対峙している。
鳶色の短髪を戴き、面に碧眼輝かせ、片手構えの剣を陽光に煌めかせる青年は、わっと跳び掛かって来た狼を、きらりと一閃真っ二つ。それを見た狂狼共は、我こそと牙を剝くが早いか、三方から一斉に躍り掛かった。
青年は、前後左右の乱牙をしばらく受け払っていたが、やっ、と一声身を廻らし、閃光の輪を描いて狼共を斬り伏せた。
柵門の中から男が一人出て来て、
「いや、有難う。いつも済まないな」
「いえ、良いんです。俺も食い物が採れるし。こいつらの肉、貰って良いですよね」
「ああ、構わんよ」
青年は狼を解体し、その肉を袋に詰めて村に入った。彼の仕事は、時折村を襲ってくる凶暴な獣を退治する事で、彼自身も食糧が手に入るので、むしろ望む所、とばかりに定職にも就かず、その日その日を気ままに暮らしている。
今日も狼の肉を干し肉にする準備を整えると、小高い丘で春眠に耽り始めた。穏やかな春の陽は麗らかに映え、午睡には丁度良い気候である。流れる雲の下、そよ風に揺れる草叢の中、青年は剣を枕に寝息を立てていた。
そんな彼の下から、何やら声が響く。
「クラウス、此処にいたの」
「…」
「クーラーウース」
自分を呼ぶ声に、クラウス・ブレマーは身を起こした。欠伸を一声上げると、丘の下に、薄黒色の髪を戴き、淡青色の瞳、紅唇柳眉の女がいた。
クラウスは午睡を邪魔され、若干不快な色を面に出して、
「何だよソフィア。どうして此処にいるんだ」
「どうしてって、道場の帰りだからだよ。あなた、いつもそこにいるんだから」
「良く続くよ。俺は修行なんて真っ平だよ。獣を狩ってその日生きられたらどうでも良いや」
「またそんな事言って。師範も言ってたよ、獣を相手に良い腕をしてるって。道場で剣を学んだら、きっと良い騎士になれるよ」
「俺は騎士なんてご免被るよ。規則正しく、毎日毎日清く正しい生活なんて嫌だよ。それに騎士の連中は、平民より上だからって威張りやがる」
この世界では、神官を最上位に、王侯騎士、平民、そして奴隷の順に階級が定められ、上から下へ行く以外、原則として生涯、階級が変動することは無い。平民と奴隷が騎士になることが出来る場合もあるが、尋常ならざる実力と権力者との蜜月が無ければ夢物語である。
加えて、下の階級の者が上の者へ不用意に口を聞けば、たちまち打擲され、逆鱗に触れればその場で斬り捨て御免も日常茶飯事であるので、誰あって成り上がろうとする者はいなかった。
クラウスも、定期的に村へ徴税にやって来る、騎士共の尊大倨傲な振る舞いを見ているので、心の底から彼らを唾棄している。
クラウスに話しかけたソフィア・シュピッツは、彼と同じ十七歳で、幼馴染みの彼が獣を相手に自前の剣術を会得しているのに対し、自分は村にある元騎士が開いている道場で、文字通り地獄のような鍛錬を受けて棒術を磨いている。
クラウスは、丘の下で笑うソフィアに厄介そうな口調で、
「おい、もう帰れよ。俺はもう少し寝るから」
「毎日毎日、よく眠ってばかりで飽きないね。あたしなんて毎日同じ生活で飽きて来るよ」
「何言ってるんだよ。何も無い、変わらないのが一番だって。大体変化なんて悪いことが殆どなんだから」
クラウスは変化を望まず、毎日の平穏無事を願って止まない。反対にソフィアは、平坦な人生の道に飽き飽きしており、この先もそれを歩んで一村娘として生きていくのかと思うと、時折胸を掻き毟りたいような衝動に駆られる。
気が合うようで何処か根本的な部分ですれ違っている。鎹を欠いた、梁同士のような関係なのである。
しかしこの世界の常識では、クラウスの方が常識的なのだ。殆どの人間は自分の生まれた街や村から出ず、旅に出るのは商人や遊学者、飛脚、或いはお尋ね者くらいしかいない。村娘、しかも村の畑で働く彼女が、旅に出るなど笑止な事である。
ソフィアは丘の上に登ってクラウスの襟を掴むと、引き摺るようにして丘を降り、
「ほらクラウス、暇なら村祭りの準備を手伝ってよ。皆祭壇を築いているから」
「でも俺、別に最初の方は参加しないし、宴会の時に行くよ」
「何か言った? 」
と、ソフィアは愛用の黒鉄作りの八角棒を彼に突きつけた。クラウスは全身に冷や汗をかいて、不承不承、彼女と一緒に広場へ向かった。
この世界では年に一度、世界を守ると言い伝えられている、四体の神を祀る大祭が執り行われる。
東西南北にある四つの神殿にそれぞれの神々は祀られており、火、水、木、土、の神々は上から下へ、世界中の人間の心に深く根付いているのである。
ケルバー村でも無論、この大祭は盛大に行われるので、もう村は十数日前から大騒ぎ、祭壇の建築や生贄にする家畜の準備に余念が無い。一際大きな祭壇は、材木が組まれた五米程の建築である。
ソフィアは、多くの村人に混じって自ら進んで重荷を負い、自分が疲労するのも厭わない様子である。彼女は、幼い時から自分よりも他人を優先する女で、クラウスは彼女の病的な献身さに、半ば呆れていた。どうして自分を後回しにするのか理解できないのだ。
祭壇は組まれ終わった。夜になると、幔幕を払って、四体の精霊を模した木像が運び込まれた。それらを祭壇の上に祀り、穀物を供えて村人達は篝火の中で頓首再拝し始めた。
クラウスは、いつの間にか集団から抜け出し、木の根に座って星空を眺め、心の底から安らいでいた。そんな彼の後ろから溜息が聞こえる。
「全く…姿が見えないかと思ったら、こんな所にいたの。ほら行くよ」
「まだお祈りの時間だろ。あそこにいると眠くなってくるんだよ。皆して、蹲っちゃってさ」
「そんな事言わない。行こう行こう」
ソフィアがクラウスの手を取ろうとした瞬間、広場の方、晴の場所からどよめきと姦しい叫びが上がった。
見ていると大きな光が広場の中心、祭壇の上に降りて来ていた。光は周囲を照らし、昼間のように明るくなる。大宇宙の中にある星が一つ、地上に落ちてきたかのようである。
クラウスとソフィアは、何があったのかと、人並みを掻き分け掻き分け躍り出る。大きな光は、なおも煌々と輝き眼も眩まんばかりである。儀式を行っていた神官は、普段の傲慢さも忘れ、冠を飛ばし、早くも階段から転げ落ちるようにして逃げ出してしまった。
やがて光は強烈な光を放って爆発し、祭壇は木っ端微塵になった。十方に凄まじい閃光と強風が走り、村人達の眼は眩んだ。クラウスは咄嗟に、危ねぇ、とソフィアと共に地面に倒れ込んだ。
閃光と猛風が止み、辺りは一瞬寂とした。二人が眼を開けてみると、祭壇があった場所に、人影が見える。土煙が晴れて見えたその容貌は、紅い龍紋の短旗袍を纏い、黒漆の髪を両把にまとめる少女であった。
クラウスは何も言えなかったが、ソフィアが声を震わせながら、
「あなた…誰? 何処から来たの? 」
「――――。――――! 」
「ああ忌まわしやっ。神々の祭壇を破壊するとはっ」
そう言ったのは神官であった。瞋恚は爛々と瞳に燃え、憤怒の形相は阿吽のようである。
神官は、怒り半分恐怖半分の震える指で少女を指し、言葉を解しない奴隷に違いないっ、と村人達に殺害を命じた。
盲従する村人達は、たちまち手に棒や鎌、鋤鍬等を持ち、わっと少女に蝟集した。
人垣の中心になってしまったクラウスは、慌てて、
「おいおい。いくら祭壇をぶっ壊したからって殺す事無いだろ。穏便に済ませようぜ」
「そうよっ。こんな女の子を殺そうとするなんて、あんた頭おかしいんじゃないのっ。神官だからっていつもいつも威張り腐って、あたし達だって人間なんだからねっ」
「何だとっ。平民の分際で私に口答えかっ。最早我慢ならぬ、三人纏めて今日の生贄にでもしてくれるっ」
神官がそう叫んだ時である。黒い光が三つ、流星のように落下してきた。落下地点にいた者達は、吹っ飛ばされて消し炭のようになり、光が晴れると、これまた龍紋の衣服を纏い、髪を一巾でまとめる男が三人現れた。
神官はいよいよ以て赫怒し、男共の前に出て、
「貴様ら、何のつもりだっ。神聖な儀式の邪魔をしたばかりか、私の」
「――、――! 」
神官が言い終わる前に、先頭の男がぎらと長剣を抜き、彼の首を斬り飛ばした。驚いたのは村人達、さっきの威勢は何処へやら、蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。
男共は、少女を見るや否、大声で威圧するように何か叫び、剣を向ける。少女も声を挙げて返すが、間にいるクラウスとソフィアには、何を言っているのか解らない。
男の一人、焦れったいと思ったのか、ずかずかと歩み寄り、少女の襟をむんずと掴んだ――が、彼は、発止とソフィアの八角棒に打ち据えられ、肩を押さえて後退り、残る二人は剣を抜く。
クラウスは、最早議論の余地は無いと思ったか、彼もぎらと剣を抜いた。
「おい、俺達が相手だっ」
「こんな女の子に寄って集って何する気っ? 渡すつもりは無いからねっ」
少女も素手のまま身構え、ぱっと三人は跳び別れた。
クラウスが振るう白刃きらりと尾を引き、戛然刃が火華を散らす。敵も負けじと剣を振るうが、たちまちしどろに斬り込まれ、怯んだ首を飛ばされる。
ソフィアは八角棒を手に丁々発止、敵の攻撃を防いでいなす。荒武者仕込みの棒術は、落雷のような一撃を敵に浴びせ、堪らず相手は剣落とす。ぶうん、と唸りがしたかと思えば、男の頭は割られた西瓜のように木っ端微塵に砕けていた。
少女は敵の攻撃を身軽に躱していたが、やっ、とばかりに踏み込んで来た剣先を蹴り上げ、ぱっと手元に躍り込んで、丹田目掛けて一撃、二撃、三撃! 眼にも止まらぬ乱拳を浴びせた。膝を付いた男は、面への峻烈な蹴りを受け、肉餅のようになった頭で、どうと斃れた。
素性の知れぬ少女が現れ、謎の男共が最高権威者たる神官を殺したので、村長はもう気が気では無い。すぐに三人に駆け寄ると、
「おい、おいっ。お前達、すぐにその小娘を追い出せっ。神官が死んだのはそいつの所為だっ。きっと災いの神子に違いないっ」
「そんな村長、こんな女の子を追い出すなんて酷いです。どうか」
「駄目だ駄目だっ。村が危険に晒される。それとも、また村を滅ぼしたいのかっ」
「ち、違う、違うっ」
「おいっ。何で今更昔の事を言うんだっ」
見ていられないのか、クラウスが割って入るが、ソフィアは俯いて明らかに狼狽している様子。呼吸も荒く頭を抱えている。
少しすると彼女は、悄然と、蚊の鳴くような声で、
「…解りました。あたしがこの子を連れて出て行きます…」
と答えた。
祭りは当然中止となり、祝いの場は一転して、お通夜のように寂寥漂う暗澹の谷へと突き落とされた。
瓦礫や死骸が広がり、鬼哭啾々、村人達の気分は歓喜から一気に奈落の底、絶望の晦冥に落ちてしまった。
ソフィアは自宅に帰るや否、旅支度を始めた。それが終わるとクラウスは、すっかり見送るつもりで構えていたが、にわかに彼は頭を押さえた。頭に直接声が響く。
「クラウス…クラウス…貴方も行きなさい…貴方も…」
はっとクラウスが顔を上げると、心配そうにソフィアと少女が彼を見ていた。事情を話すと、ソフィアは、
「それって、クラウスも一緒に来ないと駄目だって、神様のお告げに違いないよっ。行こう行こうっ」
「え、どうして俺が。俺は旅なんて」
「良いじゃない。それにあんな騒ぎを起こしたんじゃ、暫く村にはいられないよ」
「それはそうだけど…仕方無いな、俺も行くぜ。でものんびり暮らせる場所があったら抜けるからな」
クラウスも彼女達に付いて、旅をすることにした。当面の目的は少女の故郷を探すことに決まったが、言葉も解らないのにどうするのかとクラウスが尋ねると、ソフィアは、
「うーん。そう言えば、此処の近くに占い師が住んでる街があるって聞いた事があるよ。そこに行けば解るんじゃない? 」
「そうだな。…でも、この子の名前って何だろうな。名前が解らないんじゃやり辛いよ」
「そうね…ねえ君、あたしソフィア。ソ、フィ、ア、解る? 」
「…そ、ソ、フィア。ソフィア」
ソフィアは、そうっ、と手を打って喜び、今度は、クラウスを引っ張るようにして曰く、
「この人は、クラウス。ク、ラ、ウ、ス」
「く…ク…クラ…ウス。クラウスッ」
意味が通じたと喜ぶソフィアを見て、少女もようやく名前を教えられたと解り、自分も笑顔で自身を指差して、
「――、ランレイッ。ワン・ランレイッ」
「ランレイ、あなたランレイって言うのねっ。宜しくっ」
「良かったな、お互いに名前が解って。それじゃ明日の朝、その占い師の街目指して出発しようぜ」
翌朝、朝陽は暁天を仄赤く染め、何処までも続く新しい陽光が大地を照らす。草木も輝き、今日を生きる勇気と希望を、全ての生命に朝陽は与える。
クラウス達も例外では無く、新たな旅立ちの一歩、昨日までとは全く違う旅路へと踏み出していった。
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