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恵美の真意を知りたい

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 大学へ向かう途中、僕の所属しているテニスサークルのグループLINEで飲み会の開催日が確定したという連絡が流れてくる。



 そういえば先々週あたりにLINEのスケジュールでアンケートを取っていたんだった。



 開催日は今週末の金曜日。



 タイミングが良いのやら悪いのやら、出鼻をくじかれた気分だ。



 とはいえ、平日の何もない日に佐鳥の情報を探るより、飲み会の場のほうが安全だろう。はやる気を抑えて、スケジュールアプリへ日程を登録した。



 

 

 1限目の教室は少し早くつきすぎたこともあり、まだ人もまばらだった。席につくと途端に睡魔に襲われあくびが溢れる。ここ最近、ベッドで目を瞑っても眠れない日が続いていた。



「おはよう、良くん」



 うつらうつらとしている折に急に近くで声をかけられ体がビクッと震える。



「もしかして寝てた? もうそろそろ始まるよ」



 彼女の恵美だった。いつの間にか隣に掛けて、くすくすとおかしそうに微笑んでいた。



「あーごめん。昨日ちょっと寝られてなくて……」



「本当だ、目もとろんとして眠たそうだね。授業終わったらおいしいコーヒーでも飲みに行こうよ」



 ちょうど気になってたカフェがあるんだ、楽しそうに恵美は続ける。今日は互いに1限目だけの日だから授業さえ終われば暇な日だった。



「さ、もう少しがんばろっ!」



 窓から差し込む朝の光に照らされ、胸の前で小さくガッツポーズを取って励ます姿は天使のような無垢さがあった。



 ここが教室だということも忘れて、知らず知らず見とれてしまった。



 講師が教壇へ向かう足音に持っていかれそうになった意識が、現実に戻ってくる。



 講師の声に無意識でノートを取りながらも、脳内リソースのほとんどを割いている対象は恵美のことだった。



 もっとしっかり考えなければいけない。



 恵美と佐鳥は僕にとって両方とも敵だと思いこんでいたが、もしかしたら恵美は弱みでも握られて、嫌々従っている可能性もあるんじゃないだろうか。



 憎悪の熱にのぼせすぎて、視野狭窄に陥っている可能性はないだろうか。



 もし、そうであるなら恵美を救いたい……。



 恵美の真意を聞き出したいが、僕に相談一つもないことから直球で尋ねても意味がないはず。今はまだ、恵美から打ち明けてくれるのを待ちたいと思った。



 僕は、絶望の淵に垂れ下げられた蜘蛛の糸を救いだと信じたかった。
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