4 / 4
恵美の真意を知りたい
しおりを挟む
大学へ向かう途中、僕の所属しているテニスサークルのグループLINEで飲み会の開催日が確定したという連絡が流れてくる。
そういえば先々週あたりにLINEのスケジュールでアンケートを取っていたんだった。
開催日は今週末の金曜日。
タイミングが良いのやら悪いのやら、出鼻をくじかれた気分だ。
とはいえ、平日の何もない日に佐鳥の情報を探るより、飲み会の場のほうが安全だろう。はやる気を抑えて、スケジュールアプリへ日程を登録した。
1限目の教室は少し早くつきすぎたこともあり、まだ人もまばらだった。席につくと途端に睡魔に襲われあくびが溢れる。ここ最近、ベッドで目を瞑っても眠れない日が続いていた。
「おはよう、良くん」
うつらうつらとしている折に急に近くで声をかけられ体がビクッと震える。
「もしかして寝てた? もうそろそろ始まるよ」
彼女の恵美だった。いつの間にか隣に掛けて、くすくすとおかしそうに微笑んでいた。
「あーごめん。昨日ちょっと寝られてなくて……」
「本当だ、目もとろんとして眠たそうだね。授業終わったらおいしいコーヒーでも飲みに行こうよ」
ちょうど気になってたカフェがあるんだ、楽しそうに恵美は続ける。今日は互いに1限目だけの日だから授業さえ終われば暇な日だった。
「さ、もう少しがんばろっ!」
窓から差し込む朝の光に照らされ、胸の前で小さくガッツポーズを取って励ます姿は天使のような無垢さがあった。
ここが教室だということも忘れて、知らず知らず見とれてしまった。
講師が教壇へ向かう足音に持っていかれそうになった意識が、現実に戻ってくる。
講師の声に無意識でノートを取りながらも、脳内リソースのほとんどを割いている対象は恵美のことだった。
もっとしっかり考えなければいけない。
恵美と佐鳥は僕にとって両方とも敵だと思いこんでいたが、もしかしたら恵美は弱みでも握られて、嫌々従っている可能性もあるんじゃないだろうか。
憎悪の熱にのぼせすぎて、視野狭窄に陥っている可能性はないだろうか。
もし、そうであるなら恵美を救いたい……。
恵美の真意を聞き出したいが、僕に相談一つもないことから直球で尋ねても意味がないはず。今はまだ、恵美から打ち明けてくれるのを待ちたいと思った。
僕は、絶望の淵に垂れ下げられた蜘蛛の糸を救いだと信じたかった。
そういえば先々週あたりにLINEのスケジュールでアンケートを取っていたんだった。
開催日は今週末の金曜日。
タイミングが良いのやら悪いのやら、出鼻をくじかれた気分だ。
とはいえ、平日の何もない日に佐鳥の情報を探るより、飲み会の場のほうが安全だろう。はやる気を抑えて、スケジュールアプリへ日程を登録した。
1限目の教室は少し早くつきすぎたこともあり、まだ人もまばらだった。席につくと途端に睡魔に襲われあくびが溢れる。ここ最近、ベッドで目を瞑っても眠れない日が続いていた。
「おはよう、良くん」
うつらうつらとしている折に急に近くで声をかけられ体がビクッと震える。
「もしかして寝てた? もうそろそろ始まるよ」
彼女の恵美だった。いつの間にか隣に掛けて、くすくすとおかしそうに微笑んでいた。
「あーごめん。昨日ちょっと寝られてなくて……」
「本当だ、目もとろんとして眠たそうだね。授業終わったらおいしいコーヒーでも飲みに行こうよ」
ちょうど気になってたカフェがあるんだ、楽しそうに恵美は続ける。今日は互いに1限目だけの日だから授業さえ終われば暇な日だった。
「さ、もう少しがんばろっ!」
窓から差し込む朝の光に照らされ、胸の前で小さくガッツポーズを取って励ます姿は天使のような無垢さがあった。
ここが教室だということも忘れて、知らず知らず見とれてしまった。
講師が教壇へ向かう足音に持っていかれそうになった意識が、現実に戻ってくる。
講師の声に無意識でノートを取りながらも、脳内リソースのほとんどを割いている対象は恵美のことだった。
もっとしっかり考えなければいけない。
恵美と佐鳥は僕にとって両方とも敵だと思いこんでいたが、もしかしたら恵美は弱みでも握られて、嫌々従っている可能性もあるんじゃないだろうか。
憎悪の熱にのぼせすぎて、視野狭窄に陥っている可能性はないだろうか。
もし、そうであるなら恵美を救いたい……。
恵美の真意を聞き出したいが、僕に相談一つもないことから直球で尋ねても意味がないはず。今はまだ、恵美から打ち明けてくれるのを待ちたいと思った。
僕は、絶望の淵に垂れ下げられた蜘蛛の糸を救いだと信じたかった。
11
お気に入りに追加
39
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
男女比1:10000の貞操逆転世界に転生したんだが、俺だけ前の世界のインターネットにアクセスできるようなので美少女配信者グループを作る
電脳ピエロ
恋愛
男女比1:10000の世界で生きる主人公、新田 純。
女性に襲われる恐怖から引きこもっていた彼はあるとき思い出す。自分が転生者であり、ここが貞操の逆転した世界だということを。
「そうだ……俺は女神様からもらったチートで前にいた世界のネットにアクセスできるはず」
純は彼が元いた世界のインターネットにアクセスできる能力を授かったことを思い出す。そのとき純はあることを閃いた。
「もしも、この世界の美少女たちで配信者グループを作って、俺が元いた世界のネットで配信をしたら……」
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
旦那の真実の愛の相手がやってきた。今まで邪魔をしてしまっていた妻はお祝いにリボンもおつけします
暖夢 由
恋愛
「キュリール様、私カダール様と心から愛し合っておりますの。
いつ子を身ごもってもおかしくはありません。いえ、お腹には既に育っているかもしれません。
子を身ごもってからでは遅いのです。
あんな素晴らしい男性、キュリール様が手放せないのも頷けますが、カダール様のことを想うならどうか潔く身を引いてカダール様の幸せを願ってあげてください」
伯爵家にいきなりやってきた女(ナリッタ)はそういった。
女は小説を読むかのように旦那とのなれそめから今までの話を話した。
妻であるキュリールは彼女の存在を今日まで知らなかった。
だから恥じた。
「こんなにもあの人のことを愛してくださる方がいるのにそれを阻んでいたなんて私はなんて野暮なのかしら。
本当に恥ずかしい…
私は潔く身を引くことにしますわ………」
そう言って女がサインした書類を神殿にもっていくことにする。
「私もあなたたちの真実の愛の前には敵いそうもないもの。
私は急ぎ神殿にこの書類を持っていくわ。
手続きが終わり次第、あの人にあなたの元へ向かうように伝えるわ。
そうだわ、私からお祝いとしていくつか宝石をプレゼントさせて頂きたいの。リボンもお付けしていいかしら。可愛らしいあなたととてもよく合うと思うの」
こうして一つの夫婦の姿が形を変えていく。
---------------------------------------------
※架空のお話です。
※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。
※現実世界とは異なりますのでご理解ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる