上 下
9 / 13

幼馴染がカナヅチだった

しおりを挟む

「忍!プール行こう!!俺はこの暑さに耐えられない!!!だから逃げようこの大気から!!!!」
「いや…大気はどう考えても無理じゃね?」
「あ、うん。」

 前回行った時は空いてなくて営業時間調べたから、今日は行けるはず!だと思う!!

「まぁ、行くか。市営なら歩いていけるだろ。」

 水着あったか…?去年のは…黒のスポーツブランドのやつだな。それ着ていきゃいいか。

「え~、ウォータースライダーは~???」
「市民プールだぞ?(無ぇに決まってんだろ。)」
「いや無駄に格好良く言うなって。」

 という訳で、市営プールに向かった。
 市営プールまでは自転車で片道15分といったところで、どんどん日が高くなるのがわかった。
 たぶん、帰りはもっと暑くなるのだろう。





 俺の前を、弾むように歩く暁斗に目を奪われる。藍色に白でヤシの葉が印刷された海パンは、やたらと暁斗に似合っていた。

 軽くシャワーを浴びてプールに入ってみる。冷たい。それはわざわざ自転車に乗って来たかいがあると思えるレベルだった。

 ノリノリで来たわりに歩いてばかりいる暁斗を見て、思い出した。

―そういや待てよ?こいつ、カナヅチじゃん…―

 そして俺は使命感に駆られた。こいつが泳げるようになるまで特訓する…!!!…と。


「始めるか。」
「えっ何怖い。目が怖い。何が始まるの?え?」
「泳ぎの練習。」
「ヒィィッッッ!」

 こいつも一応顔を水につけるレベルならいける。浮くのは…浮くのからか。

「暁斗、今から浮く練習するぞ。足持ち上げるからな。せーの!」
「やっ、待って!!怖い怖い怖い!!」
「大丈夫、怖くない怖くない。案外沈まないから。とりあえず肩持ってるから脚から力抜け。沈むのは変に力んでるからだと思う。ほら、目ぇ閉じてみ。」
「え、目ぇ閉じんの?」
「寝てる時とおんなじと思っていい。」
「………うん、わかった…。」


「ほらできた。」

 そういって手を離すと、暁斗は暴れ出した。

「えっうわ、無理無理無っぶっ!」

 沈む!と思って腕を掴んで引き上げる。勢い余って暁斗の顔が俺の胸辺りにぶつかった。

「大丈夫か!!」

 気がついたら抱き寄せるような形になっていた。

「っ…全っっっ然大丈夫じゃねーし!!忍の馬鹿!!阿呆!!最後まで離すな!!というか離す前に一言声掛けるとかしろ!!」

 俺にしがみつきながら上目遣いで涙目になりながら訴えてくる暁斗に庇護欲と罪悪感を覚えながら、その日は終わったのだった。

 ちなみになんだかんだ頑張ったご褒美とお詫びの意味を込め、300円以内で帰りにアイスを奢った。

 帰りに食べていたが、食べてたら思っていたより寒くなってきたと言って半分くれた。

 ちなみに俺も食べていたら思っていたより寒くなった。うまいからいいけど。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

この愛のすべて

高嗣水清太
BL
 「妊娠しています」  そう言われた瞬間、冗談だろう?と思った。  俺はどこからどう見ても男だ。そりゃ恋人も男で、俺が受け身で、ヤることやってたけど。いきなり両性具有でした、なんて言われても困る。どうすればいいんだ――。 ※この話は2014年にpixivで連載、2015年に再録発行した二次小説をオリジナルとして少し改稿してリメイクしたものになります。  両性具有や生理、妊娠、中絶等、描写はないもののそういった表現がある地雷が多い話になってます。少し生々しいと感じるかもしれません。加えて私は医学を学んだわけではありませんので、独学で調べはしましたが、両性具有者についての正しい知識は無いに等しいと思います。完全フィクションと捉えて下さいますよう、お願いします。

からっぽを満たせ

ゆきうさぎ
BL
両親を失ってから、叔父に引き取られていた柳要は、邪魔者として虐げられていた。 そんな要は大学に入るタイミングを機に叔父の家から出て一人暮らしを始めることで虐げられる日々から逃れることに成功する。 しかし、長く叔父一族から非人間的扱いを受けていたことで感情や感覚が鈍り、ただただ、生きるだけの日々を送る要……。 そんな時、バイト先のオーナーの友人、風間幸久に出会いーー

花いちもんめ

月夜野レオン
BL
樹は小さい頃から涼が好きだった。でも涼は、花いちもんめでは真っ先に指名される人気者で、自分は最後まで指名されない不人気者。 ある事件から対人恐怖症になってしまい、遠くから涼をそっと見つめるだけの日々。 大学生になりバイトを始めたカフェで夏樹はアルファの男にしつこく付きまとわれる。 涼がアメリカに婚約者と渡ると聞き、絶望しているところに男が大学にまで押しかけてくる。 「孕めないオメガでいいですか?」に続く、オメガバース第二弾です。

美人に告白されたがまたいつもの嫌がらせかと思ったので適当にOKした

亜桜黄身
BL
俺の学校では俺に付き合ってほしいと言う罰ゲームが流行ってる。 カースト底辺の卑屈くんがカースト頂点の強気ド美人敬語攻めと付き合う話。 (悪役モブ♀が出てきます) (他サイトに2021年〜掲載済)

好きなあいつの嫉妬がすごい

カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。 ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。 教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。 「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」 ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」

学園と夜の街での鬼ごっこ――標的は白の皇帝――

天海みつき
BL
 族の総長と副総長の恋の話。  アルビノの主人公――聖月はかつて黒いキャップを被って目元を隠しつつ、夜の街を駆け喧嘩に明け暮れ、いつしか"皇帝"と呼ばれるように。しかし、ある日突然、姿を晦ました。  その後、街では聖月は死んだという噂が蔓延していた。しかし、彼の族――Nukesは実際に遺体を見ていないと、その捜索を止めていなかった。 「どうしようかなぁ。……そぉだ。俺を見つけて御覧。そしたら捕まってあげる。これはゲームだよ。俺と君たちとの、ね」  学園と夜の街を巻き込んだ、追いかけっこが始まった。  族、学園、などと言っていますが全く知識がないため完全に想像です。何でも許せる方のみご覧下さい。  何とか完結までこぎつけました……!番外編を投稿完了しました。楽しんでいただけたら幸いです。

成り行き番の溺愛生活

アオ
BL
タイトルそのままです 成り行きで番になってしまったら溺愛生活が待っていたというありきたりな話です 始めて投稿するので変なところが多々あると思いますがそこは勘弁してください オメガバースで独自の設定があるかもです 27歳×16歳のカップルです この小説の世界では法律上大丈夫です  オメガバの世界だからね それでもよければ読んでくださるとうれしいです

合鍵

茉莉花 香乃
BL
高校から好きだった太一に告白されて恋人になった。鍵も渡されたけれど、僕は見てしまった。太一の部屋から出て行く女の人を…… 他サイトにも公開しています

処理中です...