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7章
69話
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楓の指先に光が灯った。光はふわふわとルルカのクリスタルに向けて飛んでいき、そのなかに入っていった。
『こ、これは……!』
「アタシとヘミュエルで作ったんだ。よかったら使ってね。もっとも、使う機会があるならね」
「あのー……いまは一体なにをしたんでしょうか?」
のゐるがふたりのやり取りに質問した。
「あぁ、ルルカの情報を新しくしたんだよ。空に浮かぶ大きなUSBメモリを見たことある人はいるかな? あれは世界観がアップデートされることを合図しているんだよね。それと似たようなものだね」
「あ、あぁそうなんですか……って、空に浮かぶ大きなUSBメモリってそんな意味があったんですか……!?」
「うん。あれはひとつの合図だね。例えば魔法という概念が存在しないゲームに新しく魔法という要素を付け加えるなら、世界のほうも一緒に新しくなる必要があるでしょ? そうやって世界観が新しくなるたび、空に大きなUSBメモリが現れることになってるのさ。たしか、のゐるちゃんは当初USBメモリが現れたことで小説が書けなくなったんじゃないかって当てつけしてたみたいだけど、案外その当てつけは間違っていないんだよね。思考汚染が色濃くなったのがそのころで、たしかにその影響でUSBメモリは現れたから」
「な……なるほど……」
「まぁ、いまルルカにあげたのはちょっと特殊なものだから、ひょっとすると使わないかもしれないけれどね。みんなはまだこのデバッグルームに実際に来ている訳じゃなくてシミュレーターで覗いているだけだから、物理的なアイテムなんかはあげられないんだけど、これくらいはあげておかないとって思ったまでだよ……親としてね」
そうはいうが――のゐるがルルカの顔を覗くと、彼女は難しい顔をしており、どのように受け入れたものか悩んでいるように見受けられた。
楓は、ルルカのその表情を見てなお、ニヤケ顔を崩さない。
のゐるは「この親を持ってしまっては大変だ」と心のなかで思ってしまった。
楓は急に話の矛先を変えた。
「ときにヤクル君、アンタのゐるちゃんに惚れてんの?」
「惚れてるに決まってるよ! 当たり前でしょう!」
「ブフーッ!!?」
のゐるが噴き出した。ヤクルはなおも瞳をキラキラさせて主張する。
「のゐる先生は俺にとって絶対に必要な人だし、俺がこの世界に生きているのは、のゐる先生のおかげだから! だから正直いまの話なんて俺、多分九割くらい意味わかってないけど、それでも俺、のゐる先生のことだけは、ほんとマジで超大事に思っているし、超すっごい尊敬してて鼻の穴とか目玉とか舐めたい!」
「あぁそういえば、アンタって作家の先生以外に敬語使わないんだね……アンタはアンタなりに敬意を払ってるんだね。なかでも、のゐるちゃんは特別ってことかぁ……微笑ましいねぇ」
楓の発言に、ルルカはようやく表情を取り戻した。
『お母さん、動じずにヤクルの発言を対処できるのすごいね……』
いつものように、ルルカのツッコミが冴えわたっていた。
「のゐるちゃん、別にいまはヤクル君に返事しなくても大丈夫だよ。アタシは、のゐるちゃんが幽霊たちを気遣って転生の有無を気にしてくれていたの……偉いと思ったよ。それを見ていたらさ、のゐるちゃんって多分、この先まだまだやることがあるように思うし、アタシはさ、のゐるちゃんのやりやすいように送り出してあげたいと思ってるんだ。どうかこれからもヤクル君とルルカ、ふたりのこと、あと世界のことを……頼んだよ」
言葉を締めくくる楓に、ヘミュエルが慌てふためく。
「ちょ……ちょっと待って楓ちゃん! 楓ちゃんはスサノオのことはいいの? 弟なんだよ?」
「なるようにしかならないよ……それに、あの子はもう、救えなくたって仕方ないさ。魚人族の男はよくこじらすんだ」
『こ、これは……!』
「アタシとヘミュエルで作ったんだ。よかったら使ってね。もっとも、使う機会があるならね」
「あのー……いまは一体なにをしたんでしょうか?」
のゐるがふたりのやり取りに質問した。
「あぁ、ルルカの情報を新しくしたんだよ。空に浮かぶ大きなUSBメモリを見たことある人はいるかな? あれは世界観がアップデートされることを合図しているんだよね。それと似たようなものだね」
「あ、あぁそうなんですか……って、空に浮かぶ大きなUSBメモリってそんな意味があったんですか……!?」
「うん。あれはひとつの合図だね。例えば魔法という概念が存在しないゲームに新しく魔法という要素を付け加えるなら、世界のほうも一緒に新しくなる必要があるでしょ? そうやって世界観が新しくなるたび、空に大きなUSBメモリが現れることになってるのさ。たしか、のゐるちゃんは当初USBメモリが現れたことで小説が書けなくなったんじゃないかって当てつけしてたみたいだけど、案外その当てつけは間違っていないんだよね。思考汚染が色濃くなったのがそのころで、たしかにその影響でUSBメモリは現れたから」
「な……なるほど……」
「まぁ、いまルルカにあげたのはちょっと特殊なものだから、ひょっとすると使わないかもしれないけれどね。みんなはまだこのデバッグルームに実際に来ている訳じゃなくてシミュレーターで覗いているだけだから、物理的なアイテムなんかはあげられないんだけど、これくらいはあげておかないとって思ったまでだよ……親としてね」
そうはいうが――のゐるがルルカの顔を覗くと、彼女は難しい顔をしており、どのように受け入れたものか悩んでいるように見受けられた。
楓は、ルルカのその表情を見てなお、ニヤケ顔を崩さない。
のゐるは「この親を持ってしまっては大変だ」と心のなかで思ってしまった。
楓は急に話の矛先を変えた。
「ときにヤクル君、アンタのゐるちゃんに惚れてんの?」
「惚れてるに決まってるよ! 当たり前でしょう!」
「ブフーッ!!?」
のゐるが噴き出した。ヤクルはなおも瞳をキラキラさせて主張する。
「のゐる先生は俺にとって絶対に必要な人だし、俺がこの世界に生きているのは、のゐる先生のおかげだから! だから正直いまの話なんて俺、多分九割くらい意味わかってないけど、それでも俺、のゐる先生のことだけは、ほんとマジで超大事に思っているし、超すっごい尊敬してて鼻の穴とか目玉とか舐めたい!」
「あぁそういえば、アンタって作家の先生以外に敬語使わないんだね……アンタはアンタなりに敬意を払ってるんだね。なかでも、のゐるちゃんは特別ってことかぁ……微笑ましいねぇ」
楓の発言に、ルルカはようやく表情を取り戻した。
『お母さん、動じずにヤクルの発言を対処できるのすごいね……』
いつものように、ルルカのツッコミが冴えわたっていた。
「のゐるちゃん、別にいまはヤクル君に返事しなくても大丈夫だよ。アタシは、のゐるちゃんが幽霊たちを気遣って転生の有無を気にしてくれていたの……偉いと思ったよ。それを見ていたらさ、のゐるちゃんって多分、この先まだまだやることがあるように思うし、アタシはさ、のゐるちゃんのやりやすいように送り出してあげたいと思ってるんだ。どうかこれからもヤクル君とルルカ、ふたりのこと、あと世界のことを……頼んだよ」
言葉を締めくくる楓に、ヘミュエルが慌てふためく。
「ちょ……ちょっと待って楓ちゃん! 楓ちゃんはスサノオのことはいいの? 弟なんだよ?」
「なるようにしかならないよ……それに、あの子はもう、救えなくたって仕方ないさ。魚人族の男はよくこじらすんだ」
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