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7章
66話
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ヘミュエルといえば出雲楓と時代を同じくして活躍した、歴史上最も名のある科学者のひとりである。原初のゴーレムを造り上げた、一五〇〇年前の人物のはずだが、いま彼は明らかに、ハッキリとした輪郭を持って、三人の前に君臨していた。
ヘミュエルはヤクルとのゐるを連れて、クリーム色のふわふわした大地を歩く。ルルカのクリスタルが宙に浮かんで後続した。
『それにしても……ここはなんなの……? 見たこともない建造物がたくさんあるし……なにより、死んだはずの発明王ヘミュエルがどうして生きてるの……?』
「だからデバッグルームって言ってるじゃんルルカちゃん。といっても、俺たちはみんなここに閉じ込められて出られないんだけどね。ここにいる人たちはみんなこのMMOゲーム、ワンワールドを構成する為にバックアップされているだけなのさ。だから実際には、生きているっていうよりかは、この世界に組み込まれてしまったっていったほうがいいかもね」
『組み込まれた……? ワンワールド……? それに、どうしてアタシの名前を……』
「特別な場所だからね。情報はなんでも集まるよ。あとはいった通りさ。ここはゲームの世界なんだ。世界最大の大規模多人数同時参加型オンラインゲーム、ワンワールドのなか。サンドボックス環境なもんで、バグの修正は内部から干渉するしかないから、俺みたいな天才科学者とか、新要素を生み出す人は、こうしてデバッグルームに不老不死状態で囲って、保守点検やデバッグの触媒にするように設計されてるんだよ。だから俺が新しいアイディア思い付いても自動的に世界が吸い上げちゃうんだ。俺も大概だけど、この世界をつくった人、頭いいよねぇ」
『ちょちょちょちょっと待って……!? この世界は人工的に作られた世界だってこと!!? じゃあヘミュエル四世は!!? ヘミュエル教団は!!? メイプルは!!? 世界滅亡も作られたもの……!!?』
「やだなぁあの人たちはプレイヤーだよ。だからこの世界の外に生きている……かもしれない人たち。あ、ちなみに俺は死ぬ前からこの世界が仮想現実だって知ってたよ? そんな人滅多にいないんだけど。すごいでしょ」
ヘミュエルは、褒めてほしそうに話した。
「へミュエルさん、ではまず、スサノオ先生が本のなかで書いていた上位世界は、存在していたということですね……」
のゐるとヤクルは、スサノオの書いた本のなかでこの世界にアクセスする方法を知った。
もっとも知っていたのはその方法だけであり、没入型カプセルの存在がなければこの状況を体験することは叶わなかったし、この世界がゲームと呼ばれる娯楽として構成されていることなど、たったいま知ったことではあるが、スサノオの本があったからこそ、ここまで来ることができたのである。
ヘミュエルは更なる驚きの発言を重ねる。
「いやー、というより、スサノオは生前俺が作ったんだよね。俺が手掛けた最後の人造人間で、元はといえば楓ちゃんの亡骸を探す使命を与えた楓ちゃんの実弟なんだよ。へミュエル四世に捕まっちゃったんだけど」
ええええええええ!? と、三人は驚愕の声を上げた。
「そう、楓ちゃんの亡骸を人体改造されちゃったら、誰でも妖精回路を自由に作り出せることになっちゃうからね。それはマズいと思ったんだ。だから楓ちゃんを見つけ出す人が必要だった。ただスサノオは捕まったときに記憶を書き換えられちゃったから、自分が人造人間であることなんか忘れてるだろうし、たぶんあの調子じゃ今度はメイプルに捕まるかもしんないなぁ。そしたらホント、一貫の終わりだよねぇ」
「――ちょっと、適当な言い方しないでよへミュエル」
その聞き馴染みのある声に、ルルカは反応した。
『出雲……楓……?』
ヘミュエルはヤクルとのゐるを連れて、クリーム色のふわふわした大地を歩く。ルルカのクリスタルが宙に浮かんで後続した。
『それにしても……ここはなんなの……? 見たこともない建造物がたくさんあるし……なにより、死んだはずの発明王ヘミュエルがどうして生きてるの……?』
「だからデバッグルームって言ってるじゃんルルカちゃん。といっても、俺たちはみんなここに閉じ込められて出られないんだけどね。ここにいる人たちはみんなこのMMOゲーム、ワンワールドを構成する為にバックアップされているだけなのさ。だから実際には、生きているっていうよりかは、この世界に組み込まれてしまったっていったほうがいいかもね」
『組み込まれた……? ワンワールド……? それに、どうしてアタシの名前を……』
「特別な場所だからね。情報はなんでも集まるよ。あとはいった通りさ。ここはゲームの世界なんだ。世界最大の大規模多人数同時参加型オンラインゲーム、ワンワールドのなか。サンドボックス環境なもんで、バグの修正は内部から干渉するしかないから、俺みたいな天才科学者とか、新要素を生み出す人は、こうしてデバッグルームに不老不死状態で囲って、保守点検やデバッグの触媒にするように設計されてるんだよ。だから俺が新しいアイディア思い付いても自動的に世界が吸い上げちゃうんだ。俺も大概だけど、この世界をつくった人、頭いいよねぇ」
『ちょちょちょちょっと待って……!? この世界は人工的に作られた世界だってこと!!? じゃあヘミュエル四世は!!? ヘミュエル教団は!!? メイプルは!!? 世界滅亡も作られたもの……!!?』
「やだなぁあの人たちはプレイヤーだよ。だからこの世界の外に生きている……かもしれない人たち。あ、ちなみに俺は死ぬ前からこの世界が仮想現実だって知ってたよ? そんな人滅多にいないんだけど。すごいでしょ」
ヘミュエルは、褒めてほしそうに話した。
「へミュエルさん、ではまず、スサノオ先生が本のなかで書いていた上位世界は、存在していたということですね……」
のゐるとヤクルは、スサノオの書いた本のなかでこの世界にアクセスする方法を知った。
もっとも知っていたのはその方法だけであり、没入型カプセルの存在がなければこの状況を体験することは叶わなかったし、この世界がゲームと呼ばれる娯楽として構成されていることなど、たったいま知ったことではあるが、スサノオの本があったからこそ、ここまで来ることができたのである。
ヘミュエルは更なる驚きの発言を重ねる。
「いやー、というより、スサノオは生前俺が作ったんだよね。俺が手掛けた最後の人造人間で、元はといえば楓ちゃんの亡骸を探す使命を与えた楓ちゃんの実弟なんだよ。へミュエル四世に捕まっちゃったんだけど」
ええええええええ!? と、三人は驚愕の声を上げた。
「そう、楓ちゃんの亡骸を人体改造されちゃったら、誰でも妖精回路を自由に作り出せることになっちゃうからね。それはマズいと思ったんだ。だから楓ちゃんを見つけ出す人が必要だった。ただスサノオは捕まったときに記憶を書き換えられちゃったから、自分が人造人間であることなんか忘れてるだろうし、たぶんあの調子じゃ今度はメイプルに捕まるかもしんないなぁ。そしたらホント、一貫の終わりだよねぇ」
「――ちょっと、適当な言い方しないでよへミュエル」
その聞き馴染みのある声に、ルルカは反応した。
『出雲……楓……?』
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