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6章
52話
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「念話の範囲をのゐる先生まで広げていたから……のゐる先生、ここまでの話は全部聞いていたよね」
「この頭に直接聞こえてくる声はヒカゲ先生のしわざですか……よく聞こえましたよ……」
のゐるはパジャマ姿で怒りを帯びながらその場に登場していた。
明らかに姉のヒナタを切り付けられたヒカゲよりも怒っていた。
「その前にちょっと……いいたいことがあるんです……」
のゐるはそういうと、その場にいないルルカへと、言葉を連ねはじめた。
「ルルカさん……ルルカさんはさっき、ヤクルさんがあの宙に浮いたお城に向かわなくても仕方ない理由をヤクルさんにわざと伝えて、自己犠牲を買って出ましたよね」
ルルカは急に自分にピントが合わさったことを察し、念話越しに驚いた。
『えっ、あぁ……うん。えっと、その……』
一見すると些細な会話の表現だが、のゐるはそれを見逃さなかった。
「ふざけないでください! 私たちはもう家族なんです! ルルカさんが人体改造するってヤクルさんを脅していたときとは違うんですよ!」
『……のゐるちゃん』
のゐるは怒った。しかしそれはただ自分の怒りをぶつけているだけではなかった。
あくまでここに集う一同を想って、彼女は主張をぶつけていたのだった。
「ルルカさん、どうしてそうやって回りくどいことをするんですか……そしてすぐ自己犠牲を買って出ようとする……鉄塔を壊さないといけないってヤクルさんに促していたときもそうです。いまならわかります、あんな鉄塔が存在するのは絶対おかしいじゃないですか……! それをどうしてあんなに回りくどく、自分に疑いがかかってもしょうがないような言い方をしたんですか……!」
『あ、あれは……ヤクルがみんなを率いる図式になったほうがいいと思って……それに、あのときヤクルを後押ししたのは思考汚染されてたのゐるちゃんだよ……!』
「でもルルカさんは鉄塔を壊したら私が小説を書けなくなってショックを受けることをわかっていたし、ヤクルさんを煽ってはいたけど、ヤクルさんがみんなを率いることができないこともわかっていた……だからルルカさんはヤクルさんが鉄塔を壊す決断を下せないと判断したとき、今度は私が鉄塔を壊すことを決めるように会話のなかで導いた。それはせめて私が、自分で小説を書けない未来を選んだって思えたほうが、あとで立ち直るきっかけになるからって……そう思ったからですよね……」
『う……それは、そうだけど……』
「しかも、私が小説を書けなくなったとき、私に恨まれるだろうってことも織り込み済みなんです……恨む訳ないじゃないですか……そんな自己犠牲必要ないんですよ! さっきここでナナジマ先生とヤクルさんと話していたときもそうです。どうしてあんな風にパッチの支配下にあったナナジマ先生を引き合いに出して怒らせるような言い方をしたか……それはただ単に八つ当たりじゃないですよね。もしナナジマ先生がそのことについて怒るのなら、自分が受け皿になろうって思ったからですよね……!」
『あぁそっか……さっきのも聞いてたんだ……のゐるちゃん、ごめんね……』
「ごめんじゃないですよ! もっと偉ぶってください! そして私たちを率いてくださいよ! 私たちはルルカさんなしじゃ駄目なんです! 確かにあの廃屋でヤクルさんが改造手術される前、ヤクルさんがルルカさんへ自己犠牲を説いたのは私もすごいなぁって思いましたよ……でももう私たちは……家族なんですよ……!」
「この頭に直接聞こえてくる声はヒカゲ先生のしわざですか……よく聞こえましたよ……」
のゐるはパジャマ姿で怒りを帯びながらその場に登場していた。
明らかに姉のヒナタを切り付けられたヒカゲよりも怒っていた。
「その前にちょっと……いいたいことがあるんです……」
のゐるはそういうと、その場にいないルルカへと、言葉を連ねはじめた。
「ルルカさん……ルルカさんはさっき、ヤクルさんがあの宙に浮いたお城に向かわなくても仕方ない理由をヤクルさんにわざと伝えて、自己犠牲を買って出ましたよね」
ルルカは急に自分にピントが合わさったことを察し、念話越しに驚いた。
『えっ、あぁ……うん。えっと、その……』
一見すると些細な会話の表現だが、のゐるはそれを見逃さなかった。
「ふざけないでください! 私たちはもう家族なんです! ルルカさんが人体改造するってヤクルさんを脅していたときとは違うんですよ!」
『……のゐるちゃん』
のゐるは怒った。しかしそれはただ自分の怒りをぶつけているだけではなかった。
あくまでここに集う一同を想って、彼女は主張をぶつけていたのだった。
「ルルカさん、どうしてそうやって回りくどいことをするんですか……そしてすぐ自己犠牲を買って出ようとする……鉄塔を壊さないといけないってヤクルさんに促していたときもそうです。いまならわかります、あんな鉄塔が存在するのは絶対おかしいじゃないですか……! それをどうしてあんなに回りくどく、自分に疑いがかかってもしょうがないような言い方をしたんですか……!」
『あ、あれは……ヤクルがみんなを率いる図式になったほうがいいと思って……それに、あのときヤクルを後押ししたのは思考汚染されてたのゐるちゃんだよ……!』
「でもルルカさんは鉄塔を壊したら私が小説を書けなくなってショックを受けることをわかっていたし、ヤクルさんを煽ってはいたけど、ヤクルさんがみんなを率いることができないこともわかっていた……だからルルカさんはヤクルさんが鉄塔を壊す決断を下せないと判断したとき、今度は私が鉄塔を壊すことを決めるように会話のなかで導いた。それはせめて私が、自分で小説を書けない未来を選んだって思えたほうが、あとで立ち直るきっかけになるからって……そう思ったからですよね……」
『う……それは、そうだけど……』
「しかも、私が小説を書けなくなったとき、私に恨まれるだろうってことも織り込み済みなんです……恨む訳ないじゃないですか……そんな自己犠牲必要ないんですよ! さっきここでナナジマ先生とヤクルさんと話していたときもそうです。どうしてあんな風にパッチの支配下にあったナナジマ先生を引き合いに出して怒らせるような言い方をしたか……それはただ単に八つ当たりじゃないですよね。もしナナジマ先生がそのことについて怒るのなら、自分が受け皿になろうって思ったからですよね……!」
『あぁそっか……さっきのも聞いてたんだ……のゐるちゃん、ごめんね……』
「ごめんじゃないですよ! もっと偉ぶってください! そして私たちを率いてくださいよ! 私たちはルルカさんなしじゃ駄目なんです! 確かにあの廃屋でヤクルさんが改造手術される前、ヤクルさんがルルカさんへ自己犠牲を説いたのは私もすごいなぁって思いましたよ……でももう私たちは……家族なんですよ……!」
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