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4章
32話:こんなときだからこそ踊ってみた
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「スサノオ先生!」
スサノオは背中の鞘から短い棒を抜き出す。それは警棒のように素早く伸び、先端でオレンジ色の光が斧槍を象った。
「フン」
「――」
ヤクルの背後にいた黒い骸骨一体を、スサノオの槍の一振りが瞬く間に粉砕した。スケルトンはばらばらとその骨格を崩壊させた。
とはいえ敵はそれだけではない。黒い骸の一団は二人を囲って一斉に襲い掛かる。ヤクルは指の第一関節部分をキャップとして手から外すと、針状の弾丸を全方位に発射、照準は自動補正され、無駄弾を撃つことなくすべて骸の額を貫いた。
「スサノオ先生大丈夫ですか!? あとは俺がなんとかしますからどこか遠くへ離れてください!」
『スサノオ! 塔はバリアで質量のない攻撃は受け付けない! そのハルバートはスケルトンには効いてもバリアのなかにある塔は壊せない! アンタは自分の身を守ることに専念して! ヤクル! ここから離れて注意をこっちに引こう!』
「わかったルルカ!」
クリスタルがのゐるに代わってルルカを映し出し、スサノオに声を掛けながら、ヤクルと共に勢いを増して本丸へと向かっていった。
いよいよ戦いが本格化しようという最中、スサノオはクリスタルから映し出されるメイド服姿の妖精を凝視していた。
「――ルルカ?」
その声に応じる者は誰もいなかったが、スサノオの隻眼は、たしかに過ぎ去っていくルルカを追っていた。
驚愕の表情を浮かべたスサノオの時間が一瞬止まった。彼はそのときなにかを秘めていたが、そのことを話す隙を持ち合わせなかった。
そしてスサノオはヤクルとクリスタルの姿に見せられたのか、ヤクルに倒された魔導バイクへと向かっていった。
……ヤクルは黒いスケルトンたちを引き寄せたくて、逃げるように走っていた。スサノオから距離を取りながらも、自らが戦いやすいように開けた道を行く。
そこら中から躯たちが湧き出し、ヤクルは先ほどより更に多くのスケルトンたちに追いかけられるようになっていたが、まだまだ骸骨たちを煽る必要がある。
『ヤクル! スサノオに集中させないようにゴーレムたちの注意を引いて!』
「わかったルルカ! 七尾ヤクル踊ります! ハァーズットコズットコドコドコズンドコドッコイショ! ヨイショーヨイショードッコイショ! テケテケテケテンテケテケテケテケテンテケズットコドコドコドッコイショ!」
昼間の太陽を背中に背負いヤクルが踊った。走るのをやめたからか、ふしぎな踊りに導かれてか、更に骸骨が集った。その光景を領地から画面越しに見ていたのゐるが白い目で見ていた。
『えぇ……? ヤ、ヤクルさん……』
「ハァードッコイショー! ドッコイショー!」
『よし注意を引けた! ヤクルよくやった!』
呆れたのゐるが正気を取り戻した次の瞬間、驚くべき事態が起きた。
『ヤクルさん……上からなにか落ちッ……!?』
「え……ちょ、うわァッ!!?」
突如黒い塊がヤクルを押し潰した。百体ほどの骸骨たちが自己同一性を失うほどにお互いの骨を絡ませ合い、やがてひとつの塊となって崖の上から位置エネルギーを伴いながらヤクルを押し潰すために落ちてきた。
『ヤ……ヤクルさぁん!!!』
巨大な塊となった黒い骨がとてつもない速さで落ちてきた。重さは数十トンにも及ぶ。並の人間にとっては、人としての機能を大きく失うことになるほどの衝撃だ。
「あれ?」
とは言えヤクルは、自らの硬さで衝撃に耐えただけで、骸骨たちの脆い繋がりを破壊していた。
彼は痛みを覚えていないどころか、ただその場に立って耐えただけで自らの強さを誇示していたのだった。
スサノオは背中の鞘から短い棒を抜き出す。それは警棒のように素早く伸び、先端でオレンジ色の光が斧槍を象った。
「フン」
「――」
ヤクルの背後にいた黒い骸骨一体を、スサノオの槍の一振りが瞬く間に粉砕した。スケルトンはばらばらとその骨格を崩壊させた。
とはいえ敵はそれだけではない。黒い骸の一団は二人を囲って一斉に襲い掛かる。ヤクルは指の第一関節部分をキャップとして手から外すと、針状の弾丸を全方位に発射、照準は自動補正され、無駄弾を撃つことなくすべて骸の額を貫いた。
「スサノオ先生大丈夫ですか!? あとは俺がなんとかしますからどこか遠くへ離れてください!」
『スサノオ! 塔はバリアで質量のない攻撃は受け付けない! そのハルバートはスケルトンには効いてもバリアのなかにある塔は壊せない! アンタは自分の身を守ることに専念して! ヤクル! ここから離れて注意をこっちに引こう!』
「わかったルルカ!」
クリスタルがのゐるに代わってルルカを映し出し、スサノオに声を掛けながら、ヤクルと共に勢いを増して本丸へと向かっていった。
いよいよ戦いが本格化しようという最中、スサノオはクリスタルから映し出されるメイド服姿の妖精を凝視していた。
「――ルルカ?」
その声に応じる者は誰もいなかったが、スサノオの隻眼は、たしかに過ぎ去っていくルルカを追っていた。
驚愕の表情を浮かべたスサノオの時間が一瞬止まった。彼はそのときなにかを秘めていたが、そのことを話す隙を持ち合わせなかった。
そしてスサノオはヤクルとクリスタルの姿に見せられたのか、ヤクルに倒された魔導バイクへと向かっていった。
……ヤクルは黒いスケルトンたちを引き寄せたくて、逃げるように走っていた。スサノオから距離を取りながらも、自らが戦いやすいように開けた道を行く。
そこら中から躯たちが湧き出し、ヤクルは先ほどより更に多くのスケルトンたちに追いかけられるようになっていたが、まだまだ骸骨たちを煽る必要がある。
『ヤクル! スサノオに集中させないようにゴーレムたちの注意を引いて!』
「わかったルルカ! 七尾ヤクル踊ります! ハァーズットコズットコドコドコズンドコドッコイショ! ヨイショーヨイショードッコイショ! テケテケテケテンテケテケテケテケテンテケズットコドコドコドッコイショ!」
昼間の太陽を背中に背負いヤクルが踊った。走るのをやめたからか、ふしぎな踊りに導かれてか、更に骸骨が集った。その光景を領地から画面越しに見ていたのゐるが白い目で見ていた。
『えぇ……? ヤ、ヤクルさん……』
「ハァードッコイショー! ドッコイショー!」
『よし注意を引けた! ヤクルよくやった!』
呆れたのゐるが正気を取り戻した次の瞬間、驚くべき事態が起きた。
『ヤクルさん……上からなにか落ちッ……!?』
「え……ちょ、うわァッ!!?」
突如黒い塊がヤクルを押し潰した。百体ほどの骸骨たちが自己同一性を失うほどにお互いの骨を絡ませ合い、やがてひとつの塊となって崖の上から位置エネルギーを伴いながらヤクルを押し潰すために落ちてきた。
『ヤ……ヤクルさぁん!!!』
巨大な塊となった黒い骨がとてつもない速さで落ちてきた。重さは数十トンにも及ぶ。並の人間にとっては、人としての機能を大きく失うことになるほどの衝撃だ。
「あれ?」
とは言えヤクルは、自らの硬さで衝撃に耐えただけで、骸骨たちの脆い繋がりを破壊していた。
彼は痛みを覚えていないどころか、ただその場に立って耐えただけで自らの強さを誇示していたのだった。
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