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4章
31話:99%
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「なっ、なにするんだ!!?」
「スサノオ先生! 俺です!」
「うるさい! 誰だ! 危ないだろ! 死ね!」
「死にません! 助けに来たんです! 覚えていますか!? 飛行船のなかで遭ったコネ作家の七尾ヤクルです!」
「はぁ? 飛行船のなか……あ、あぁ、一年前のコネ作家か……」
「お、覚えててくれたんですか! そうですコネ作家です! お久しぶりですスサノオ先生!」
『ヤクルさん相変わらずプライドがないですね……』
久しく再開を果たしたところだが、お互いに手痛い歓迎を受けたような印象であった。
スサノオは塔を破壊しようと目論んでここまでやって来たが、ヤクルにとってはスサノオの無事のほうが遥かに心配なことであり、スサノオに忘れられていないかどうかのほうが遥かに重要なことであった。
「それにしても見ない間に随分姿が変わったものだな。手足がジェット機になっているし……気色悪い神官服なんか着て……」
「き、き、き、きしょくないですよ! あったかいから着てるだけです! お、俺はダサくない! 眼帯もマントもしてませんから!」
『ヤクルさん何気にスサノオ先生のビジュアルには対抗意識持ってるんですね……』
スサノオは相変わらずの嫌味を告げるが、固有スキルでヤクルの様子を見ると、状況を理解しはじめた。
「そうか、お前は頭にパッチが入っていないんだな」
「は、はいそうなんです……! それで俺スサノオ先生が塔に突っこんでいくのが心配で……!」
「そうか、あの塔の役割も知っているように見受けるが、だったらお前は、先の爆発でどれだけの人が死んだか知っているのか?」
「……え?」
「三十億人、三十億人だ。世界人口の九割九分が死んだ。あの機械たちに殺されたんだぞ」
ゾッと、恐怖のあまりヤクルの背筋に鳥肌が立った。
スサノオの言葉の裏側には固い信念が伺えた。あからさまなほどの機械たちへの恨みの心に突き動かされ、彼はこの塔にやって来た。無慈悲たるその言葉に脚色は一切ない。
先の爆発によって人類人口三十億人が殺された。業火に燃やされ、爆風に吹き飛ばされた遺体たちは、焦土に埋もれることもなく腐敗したり白骨化しながら放られている。ヤクルもまた此処に来るまでにそのさまを見てきた。
ヤクルには、彼が目を背けていたことが現実味を帯びはじめたように思えた。これまで新世界という言葉の裏側に隠れていたディストピアがくっきりとした輪郭を持って、急速に浮かび上がってきたように感じていた。
ヤクルはこれから塔を破壊するという意気込みであったが、固い信念を抱くスサノオとは違い、重要なところを理解していなかったのだ。
既に地獄への入り口へと足を踏み入れているのだと。
『――ヤクルさん! 危ない!』
そのとき黒い骸骨たちが二人に襲い掛かった。
「スサノオ先生! 俺です!」
「うるさい! 誰だ! 危ないだろ! 死ね!」
「死にません! 助けに来たんです! 覚えていますか!? 飛行船のなかで遭ったコネ作家の七尾ヤクルです!」
「はぁ? 飛行船のなか……あ、あぁ、一年前のコネ作家か……」
「お、覚えててくれたんですか! そうですコネ作家です! お久しぶりですスサノオ先生!」
『ヤクルさん相変わらずプライドがないですね……』
久しく再開を果たしたところだが、お互いに手痛い歓迎を受けたような印象であった。
スサノオは塔を破壊しようと目論んでここまでやって来たが、ヤクルにとってはスサノオの無事のほうが遥かに心配なことであり、スサノオに忘れられていないかどうかのほうが遥かに重要なことであった。
「それにしても見ない間に随分姿が変わったものだな。手足がジェット機になっているし……気色悪い神官服なんか着て……」
「き、き、き、きしょくないですよ! あったかいから着てるだけです! お、俺はダサくない! 眼帯もマントもしてませんから!」
『ヤクルさん何気にスサノオ先生のビジュアルには対抗意識持ってるんですね……』
スサノオは相変わらずの嫌味を告げるが、固有スキルでヤクルの様子を見ると、状況を理解しはじめた。
「そうか、お前は頭にパッチが入っていないんだな」
「は、はいそうなんです……! それで俺スサノオ先生が塔に突っこんでいくのが心配で……!」
「そうか、あの塔の役割も知っているように見受けるが、だったらお前は、先の爆発でどれだけの人が死んだか知っているのか?」
「……え?」
「三十億人、三十億人だ。世界人口の九割九分が死んだ。あの機械たちに殺されたんだぞ」
ゾッと、恐怖のあまりヤクルの背筋に鳥肌が立った。
スサノオの言葉の裏側には固い信念が伺えた。あからさまなほどの機械たちへの恨みの心に突き動かされ、彼はこの塔にやって来た。無慈悲たるその言葉に脚色は一切ない。
先の爆発によって人類人口三十億人が殺された。業火に燃やされ、爆風に吹き飛ばされた遺体たちは、焦土に埋もれることもなく腐敗したり白骨化しながら放られている。ヤクルもまた此処に来るまでにそのさまを見てきた。
ヤクルには、彼が目を背けていたことが現実味を帯びはじめたように思えた。これまで新世界という言葉の裏側に隠れていたディストピアがくっきりとした輪郭を持って、急速に浮かび上がってきたように感じていた。
ヤクルはこれから塔を破壊するという意気込みであったが、固い信念を抱くスサノオとは違い、重要なところを理解していなかったのだ。
既に地獄への入り口へと足を踏み入れているのだと。
『――ヤクルさん! 危ない!』
そのとき黒い骸骨たちが二人に襲い掛かった。
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